Suit UP

チームでのタスク設定とオペレーションの改善

 

投稿日:2024年1月16日 / 更新日:2024年2月4日

 

株式会社スーツでは、2023年9月27日に経営支援クラウド「Suit UP」(以下「スーツアップ」といいます。)のα版をリリースしました。スーツアップは、中小・中堅企業やスタートアップなど(以下まとめて「中小企業等」といいます。)の労働生産性を高める、全社タスク管理を実現するSaaS(Software as a Serviceの略語、月単位・年単位(サブスクリプション)で活用できるソフトウェアサービス)です。全社タスク管理とは、単なるタスク管理やプロジェクト管理ではなく、個人・部署・経営に至るまで会社全体のタスクを「見える化」し管理する経営管理手法です。

本稿では、チームでのタスク設定とオペレーションの改善について記載したいと考えています。

経営支援クラウド「Suit UP」α版のサービス開始のお知らせ

 

【まとめ】

 

1.チームでのタスク設定

 

スーツアップは全社タスク管理を実現するサービスです。その考え方はシンプルで、会社の経営理念や経営戦略を実現するために必要となる全てのタスクを書き出して、当該タスクを部署ごとに分類して、それぞれ担当者や期限などを決めるというものです。会社にとって必要なタスク全てを網羅して、担当の部署とスタッフを決めて、期限を設定して、そのタスクが実行されるまでフォローするわけですから、会社が良くならないわけがありません。

私は、スーツアップは経営者の目線でシステム開発されているところが、案外、今までありそうでなかった新しい点ではないかと考えています。私もプロ経営者として中小企業等のDX(デジタルトランスフォーメーション)を沢山やってまいりました。部署の実務担当者の目線で作られた営業部のSFA(営業支援システム)、経理部の経理システムや人事部の労務管理システムなど業務効率化となるシステム導入をしてまいりましたが、経営に関する事項を取り扱い、経営者が使うことを想定しているシステムはあまりないものです。

経営者の目線で考えれば、全社的に、会社に所属するスタッフのリソースを余すことなく、しっかりと網羅的に、会社に必要なタスクが管理され実行されていくことが大事なのです。これは決して個人単位のタスク管理では実現できず、会社全体で考えなければならず、まさに求められるのは経営者の目線です。

一度、現時点で会社にある全てのタスクを書き出してみると分かると思うのですが、中小企業等では、経営戦略を実現するのに必要なタスクが”歯抜け”のようになっていることが多いと思います。

別稿でも記載しましたが、中小企業等の多くは、「人に仕事が紐づいている」状態で、今いるスタッフに特定のタスクが紐づいてしまっているため、経営理念や経営戦略の実現という観点から考えると、本来あるべき姿の組織・スタッフ配置、タスク設定から乖離してしまっていることがほとんどなのではないかと思います。

これを変えて、スタッフにタスクを紐づけるのではなく、まず組織とタスクがあって、その組織のタスクに担当するスタッフを配置することが必要です。スタッフが社内で存在感・発言力を増すためには、当該タスクを「ブラックボックス化」して他のスタッフにはできなくすることが合理的です。そうなると、他のスタッフは、かろうじてタスク進捗や実行結果は分かるものの、やり方・進め方は誰も分からず、代替が利かないスタッフが出来上がります。お客様に商品・サービスを提供する際にそのタスクの実行が必要な場合に、このスタッフは経営者よりも強い発言力を持ちます。さすがに経営者もお客様に迷惑をかけるわけにはいきませんから、そのスタッフのタスクの「ブラックボックス化」を容認せざるを得ないのです。そして、社内外において、そのスタッフが組織の論理を越えた存在であることが知らしめられることになります。こうなったら、当該スタッフからそのタスクを外すことは容易なことではありません。

チームでタスク管理を行うということは、タスクを個人管理から組織管理に変えるということです。組織内にあるタスクの「見える化」を実現し、タスクの実行状況の把握をする。タスクが上手く進捗していないならば、組織内でやり方・進め方を変える相談や助言ができ、組織内で担当者を変更することもできるようになります。これを進めていけば、「人に仕事が紐づいている」状態から、組織にタスクが紐づいていて、その組織に所属するスタッフが当該タスクに対応していく、「組織に仕事が紐づいていて、それを所属する人が担当する」状態に変化していくのです。

なお、このチームでのタスク管理を全社に広げていけば、私どもが推奨する全社タスク管理になります。特にスタッフ数が100名以下の会社であれば、一つの部署でも10名程度ですので、十分に経営管理をすることができます。

以上のように、チームでのタスク管理によって、タスクをスタッフ個人の手から組織の帰属に取り戻すことができたら、次はそれぞれ個別のタスクの「簡素化」、「標準化」や「システム化」による自動化などのオペレーションの改善を論点とすることができます。また、個別のタスクの改善だけではなく、タスクの廃止、タスクの「外注化」やタスクの「集約化」など組織として全体最適を考えたタスクの設定が大事になってくるのです。

 

2.オペレーションの改善方法

 

私は長年にわたり企業再生の仕事をしてまいりましたが、オペレーションの改善によって、多くの利益を創出することができます。多くのビジネスでは販売管理費に占める人件費の比率が高いため、スタッフの労働生産性を上げることによって利益を増やすことができるのです。

日本の中小企業等で働くサラリーマンは本当に優秀です。真面目なサラリーマンは、社長が「これをやっといて!」という雑な指示をしても、自らタスク設定して、そこそこの期限と品質で、当該タスクの実行をしてくれます。

これは現場スタッフのレベルの高さを象徴するエピソードなのですが、果たしてこれが本当に労働生産性の高いコミュニケーションなのでしょうか。

本来、管理職スタッフは、部下やその部下のタスク状況を管理することが仕事です。それをしっかりと管理していないわけですから、管理職スタッフの個人の目線では業務量も少なく望ましいかもしれません。しかし、会社の目線で考えれば、例えば、前述のスタッフが、雑な指示を上手に「タスク設定」して2週間で実行してくれたとしても、始めから管理職スタッフがちゃんとタスク設定して厳格にタスク期限の管理をしていれば、現場スタッフは10日でタスクを完了させられるかもしれません。それだけで14日→10日で4日もの期間の短縮です。これを改めて数字にすると28.57%もの期間短縮ということになります。

つまり、日本人サラリーマンの優秀さは必ずしも会社の労働生産性を上げているわけではないのです。管理職スタッフが現場スタッフを管理できていないことで、このように現場スタッフは”柔軟な対応”をするわけですが、その結果、一見、業務が「それっぽく」回っているように見えるのです。実際には、むしろ、この管理職が管理をしていないという重大な問題が表面化しないことの弊害の方が大きいように思います。

問題が表面化しないため、組織の構築、コミュニケーションのデザインやタスク管理といったマネジメントシステムの構築が疎かとなり、タスクの定型化や標準化、システム化なども進まず、オペレーションの改善が進まないのです。特に今の時代で、オペレーションのシステム化が進展しないことは致命的です。これではグローバル企業の高い労働生産性に追いつけるはずがありません。

なお、例えば全社で30名のスタッフの会社があって平均の人件費が500万円と仮定すると年間で1億5,000万円の費用がかかることになります。労働生産性の向上により10%の経済的なインパクトを創出できれば、それだけで1,500万円の利益を増大させることができます。

このオペレーションの改善方法ですが、以下のとおり、① タスクの「見える化」、② タスクの「定型化」、③ タスクの「廃止化」、④ タスクの「外注化」、⑤ タスクの「集約化」、⑥ タスクの「簡素化」、⑦ タスクの「標準化」、及び、⑧ タスクの「システム化」と8つのアプローチがあります。それぞれ詳しく説明します。

 

① タスクの「見える化」

 

オペレーションの改善を考える前に、そもそも部署・プロジェクトなど会社で抱えているタスクを「見える化」する必要があります。その際には、現時点でスタッフたちが把握しているタスクをただ単に書き出すだけではなく、本来あるべきタスクは何なのか、どうあるべきなのかを考えて、網羅的にタスク設定を行うことが重要です。組織のタスクを網羅して把握しなければ、タスク同士の連続性や関連性が抜け落ちてしまうリスクがあります。網羅して「見える化」されたタスクの中でも、オペレーションの改善を進めるべきタスクは、一度だけ発生するイレギュラーな「非定型タスク」ではなく、定期的に繰り返される等の「定型タスク」です。まずはその「定型タスク」が何かを把握しなければなりません。

 

② タスクの「定型化」

 

前項によって「見える化」された「非定型タスク」のうち、そのタスクが本当に一度だけ発生するイレギュラーなタスクなのかを問い直す必要があります。「定型タスク」には、分かりやすく毎週や毎月などのように定期的に繰り返すタスクではないものの、実行すべきタスクの内容、部署や担当だけが決まっていて不定期に繰り返すタスクもあります。実行頻度の高い「定型タスク」のオペレーションの改善を行った方がコストに対するインパクトが大きいため、そのタスクの優先順位を上げて改善をする必要があります。

 

③ タスクの「廃止化」

 

① タスクの「見える化」によって「見える化」された「定型タスク」のうち、そもそもそのタスクが必要であるのかどうかを問い直す必要があります。最大の効率化は、現在行っているタスクそのものを無くして廃止してしまうことです。タスクそのものの必要性を見直し、場合によっては、レポートの作成や複雑な承認手続きのような付加価値の小さいタスクは廃止する割り切りも必要になります。ピーター・F・ドラッカーはその著書で「本来不要な業務を効率化しようとする努力ほど非効率的なものはない」と指摘しています。最も効果の高い効率化は、タスクの「廃止化」であることを常に念頭に置くことが重要です。

 

④ タスクの「外注化」

 

付加価値の小さいタスクを全て自社の正社員で実行しようとすると、高コスト体質になる可能性があります。現在は、派遣会社の契約社員、フリーランスへの業務委託、クラウドソーシングやBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスなどが充実してきているので、タスクを内製した場合のコストと社外から購入する場合のコストを比較した上で、そのタスクの社外への外注を検討します。特に労働力不足・人手不足が社会問題にもなっており、中小企業等では人材採用が進まない会社も多いため、全ての業務を正社員で行うのではなく、積極的にタスクの「外注化」を検討した方が良いです。また、これにより、経費の変動費化が進み、固定費の少ない柔軟なコスト構造にすることができます。

 

⑤ タスクの「集約化」

 

大企業ではなくスタッフ数が少ない中小企業等であっても、共通性、類似性が高い日常的な「定型タスク」が、社内の複数の部署で分散されて行われている場合があります。これではスケールメリットを生かすことができませんし、そのタスクの業務経験にもバラつきが生じて効率的な人材活用もできません。例えばデータ入力作業、お客様からの受発注や各種問い合わせに対応するコールセンター業務など、日常的な「定型タスク」は可能な限り一つの部署に集約して、経済合理性を追求することが重要です。なお、IT化がここまで進んでいない昔は場所の制約もありましたが、近年は、タスクの「集約化」にあたってITを活用することで、場所を選ぶ必要はなくなってきています。

 

⑥ タスクの「簡素化」

 

タスクの「簡素化」とは、タスクの廃止まではできないが、従来あったタスクの内容をよりシンプルにして手間を減らすことです。例えば、パワーポイントで作成していた画像やグラフを多用した社内資料を、ワードで作成した文字情報だけの1ページの文書にするなどです。日頃、当たり前のように何気なく行っているタスクを見直してみると、かなり多くの無駄や付加価値の低いタスクが存在します。タスク内容そのものを必要最低限のシンプルなものに改める視点が必要になります。

 

⑦ タスクの「標準化」

 

「定型タスク」については、マニュアルや雛型を整備することによって、タスクそのものを「標準化」することが可能です。「標準化」は労働生産性の向上に役立つだけでなく、安定的な業務品質を確保することにもつながります。タスクの「標準化」が進むと、専門性のないスタッフであってもそのタスクを実行することができるようになり、前述のとおり、昨今の人材採用難を考えると、採用候補となるスタッフの選択肢を広げる施策でもあります。

 

⑧ タスクの「システム化」

 

従来、スタッフが行ってきたタスクをITを最大限に活用して自動化します。タスクの「システム化」によって、当該「定型タスク」そのものを日々のタスク管理の対象から外すことができるようになります。近年は様々なSaaSがあり、毎月の使用料さえ払えば、システムの個別の開発をしなくとも良くなっています。そのため、手軽にタスクの「システム化」ができるようになってきています。

 

3.スーツアップを活用したオペレーションの改善方法

 

本項では、スーツアップを活用したオペレーションの改善方法について記載をします。まずスーツアップのタスク管理画面の説明をした上で、前項に記載をした①~⑧に対応して、スーツアップの活用を当てはめて記載します。

スーツアップは、全社タスク管理を実現するツールで、全社的に、会社にとって必要となるタスクを網羅して設定し「見える化」することができます。スーツアップに設定されたタスクは、個人、部署・プロジェクト、経営及び全社という単位で表示することができます。

スーツアップのタスク管理画面では「非定型タスク」と「定型タスク」に大別して管理ができます。「定型タスク」は、毎週、毎月と繰り返し同じタスクを同じ担当者が行う「定期タスク」と不定期ながら同じタスクを同じ担当者が行う「不定期タスク」の2つにさらに分類できます。「定型タスク」は個別タスクの自動生成も可能となっています。「定期タスク」は予め決めたタイミングで、また、「不定期タスク」はタスクが完了して完了チェックボックスにチェックを入力したタイミングで、それぞれタスクが自動生成されます。

また、スーツアップでは「定型タスク」については「Wiki」の入力項目を用意しています。この「Wiki」に、そのタスクのマニュアルなどを貼り付けることによって「標準化」を実現することができます。

スーツアップを活用したオペレーションの改善方法ですが、まずは会社にあるタスクの「見える化」を行います。これは、現在、会社にあるタスクを、部署・プロジェクトや経営単位でスーツアップのタスク管理画面に入力すればいいのですが、前述のとおり、今あるタスクが網羅的に書き出せているかには留意する必要があります。タスクは「非定型タスク」または「定型タスク」に分類して設定されることになります。

タスクの「見える化」が終わったら、② タスクの「定型化」、③ タスクの「廃止化」、④ タスクの「外注化」及び⑤ タスクの「集約化」の4つの観点から、タスクの見直しを行います。

② タスクの「定型化」では、個別のタスクのオペレーションの改善を考える前に、「非定型タスク」が「定型タスク」ではないかを検討する必要があります。スーツアップでは、個別の「タスク名」で右クリックをすると「タスクを定型化」という選択肢が表示されます。その表示を選択すると、その「非定型タスク」の個別のタスクを、「定期タスク」または「不定期タスク」の「定型タスク」に変更する設定を行うことができます。

③ タスクの「廃止化」では、タスクそのものを廃止するか否かを検討します。労働生産性を上げるためには不要なタスクを消すことが重要です。スタッフ数の少ない中小企業等でも、スーツアップで全社的なタスク管理を行うと、管理の対象となるタスク数が三桁になることも多く、このタスク数を少しでも減らすことが重要です。不要なタスクを管理することにリソースを割くことは極めて非効率です。

④ タスクの「外注化」では、そのタスクを内製で行うか外注するかを検討します。外注を利用する場合は、外注先の企業または個人のタスク管理が社内のタスクとして残ることが多いです。なお、スーツアップでは、組織の設定画面でのスタッフ登録時に、役員や正社員以外にも、「契約/嘱託社員」、「パートタイマー」、「アルバイト」、「インターン」、「派遣社員」及び「業務委託」を選択することができ、外注という形態を採りながらも、社内と同じようなタスク管理をしたい場合にも対応できるようになっています。

また、⑤ タスクの「集約化」では、複数の部署やプロジェクトで同じタスクが入力されていないかを確認します。もし同じ内容のタスクが複数の部署にまたがって設定されている場合は、集約して、1つの部署で実行するようにします。その際は、部署ごとの業務分掌を意識して、当該タスクを本来行うべき部署に帰属させる必要があります。スーツアップでは、タスク表示の際に全社を選択することもできます。キーワードで検索をかければ、同じタスクがあるかどうかを簡単に見つけることができます。

ここからは、個別のタスクのオペレーションの改善になります。⑥ タスクの「簡素化」ですが、スーツアップの「タスク名」または「概要」に簡素に変更した内容を記載します。⑦ タスクの標準化ですが、スーツアップの「Wiki」にそのタスクのマニュアルや雛型などのURLを貼り付けます。これによって、担当者はその「Wiki」を確認しながらタスクの実行ができます。そして最後に、⑧ タスクの「システム化」ですが、「定型タスク」をシステムによって自動化することができないかを検討します。スーツアップでは、このタスクの「システム化」自体が、「非定型タスク」として、例えばシステム化の検討、システムの導入やシステムの運用などとタスク設定されることが多いです。

以上のように、スーツアップを用いて全社的にタスク設定を行うことで、オペレーションの改善に繋げることができます。スーツアップはかんたんに全社タスク管理を実現するツールとして押し出していますが、そのかんたんなタスク管理の中でも、タスク設定そのものを見直し、一つひとつのタスクのオペレーションの改善をすることで、利益を増大することができます。

 

【関連ブログ】

1.チームで働くとは何か ~ 全社タスク管理を行ったほうが良いと考える10の理由 ~

2.スーツアップで実現する全社タスク管理の導入・運用方法

3.チームのためのタスク管理と正しいタスク管理の方法

 

※ 「経営支援クラウド」「Suit UP」及び「全社タスク管理」は株式会社スーツの登録商標です。

 

株式会社スーツ 代表取締役社長CEO 小松 裕介

2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、東証スタンダード上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に当社の前身となる株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より、総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師登録。2019年6月より、国土交通省PPPサポーター。
2020年10月に大手YouTuberプロダクションの株式会社VAZの代表取締役社長に就任。月次黒字化を実現し、2022年1月に上場会社の子会社化を実現。
2022年12月に、株式会社スーツを新設分割し、当社設立と同時に代表取締役社長CEOに就任。

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