リーダーシップ往復書簡 020
リーダーシップ往復書簡 020
リーマン・ショックあたりの時期に「ブラック・スワン」という本が流行りましたが、コロナウイルスはまさに「ブラック・スワン」なのではないでしょうか。
これだけテクノロジーが進化した21世紀に、まさか疫病が世界を覆うとは、多くの人々の想像を超えた事態が起きているのではないかと思います。
「ブラック・スワン」とは当たり前だと考えられていることがひっくり返ることを意味しており、統計上の外れ値(例外)であって、過去の分析をしても予想が難しいです。そのため、この予測不能な出来事が与えるインパクトは極めて大きいです。そして、発生した後では、説明可能で、予測可能と思わせるのです。
リーダーとは、暗闇の中、集団の先頭で、たいまつを持って、フォロワーを率いて進む存在です。
リーダーは、この「ブラック・スワン」を含め、予測不可能な暗闇を、少しの勇気をもって、前に進まなければなりません。
この困難を乗り越えれば、「ブラック・スワン」は当たり前の生き物として捉えられるようになり、私たちは一つ前に進むことができます。
リーダーシップについて疑問がある、質問をしたいという方がいらっしゃいましたら、コメントや個別にメッセンジャーでご連絡ください。
また、コメントも大歓迎です。もし興味ある人がいれば、これを酒の肴に一杯やりましょう!
[no_toc]
【Q.20】
コロナウイルスやコロナウイルスによる経営不安が長引く可能性もあるようです。そのため、前回に引き続いて、非常時、危機的状況下において、どのようにリーダーは振る舞えばいいのかを教えてもらいたいです。
<コメント>
平時であれば、今の日常が永遠に続くかのように思わせるためか、組織のトップをはじめ、人々が持っているリーダーシップを意識することはないかもしれません。
しかし、非常時、危機的状況下になると、「性善なれど弱し」なフォロワーでは背負えない責任や期待が一気にリーダーにのしかかります。そして、今まで興味がなかった人までが、急にリーダーの評価をし始めるのです。
さて、このような状況下で、どのようにリーダーは振る舞えばいいのでしょうか。
まず理解しなければならないことは、リーダーの行動原理(プリンシプル)・「あり方」は、平時であっても、非常時であっても変わらないということです。
むしろ逆に、リーダーは、非常時においても、平時と同じ価値観で動けているか、同じことを言っているか、言行一致しているかが注目されることが多いと思います。
平時に、きれいごとを言っているリーダーが、実際に問題に直面した途端、「焼け火ばし」を持つことができずに、我が身かわいいで、条件反射的な対応をしてしまったり、今まで貢献してきたフォロワーに対して冷淡な対応をしてしまったりなどはよくあることかと思います。
リーダーたるもの、非常時、危機的状況下において、問題と向き合う強さ・胆力がなければなりません。こういった時にリーダーの真価が問われます。
平時に日本電産の永守社長は「良いときも悪いときも分かち合うのが日本の強みだから、雇用は守る。リストラはしない。」と言っていました。その後、リーマン・ショックが起きた際に、同社は誰もリストラをせず、そのかわり平均5%の賃金カットをしましたが、このような言行一致はなかなかできるものではありません(なお、その後、同社は賃金カット分に利子まで付けて弁済しました。)。
次に、リーダーの具体的な振る舞い方ですが、非常時においては、外部環境が目まぐるしく変わったり、状況の見通しが悪くなったりすることを意識しながら、適時適切に、以下を意識して立ち振る舞うと良いと思います。
特に、不安定な組織や組織のルールを守ることに注力するのではなく、リーダーは、目の前にいる人のことを考え、正しいことをし、未来志向で、長期的な視野にたって方向を示すことが必要です。
リーダーは、組織を優先するのではなく、人間を優先させる。
リーダーは、管理して人を動かすのではなく、心に働きかけて人を動かす。
リーダーは、正しく手続きを処理するのではなく、正しいことをする。
リーダーは、数字を追いかけるのではなく、未来を目指す。
リーダーは、管理するのではなく、変革する。
リーダーは、現状を受け入れるのではなく、現状に挑戦する。
リーダーは、目先のことを考えるのではなく、長期的な視野を持つ。
リーダーは、複雑さに対処するのではなく、方向を示す。
※この記事は、2020年3月9日付Facebook投稿を転載したものです。