藤本 孝氏(株式会社YMFGキャピタル取締役)と小松裕介(株式会社スーツ代表取締役社長CEO)によるQ&A
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当社では、2025年7月9日にゲスト講師として、株式会社YMFGキャピタル取締役 藤本 孝氏を迎え、第12回目となるスーツアップ特別ウェビナー「サーチファンドと中小企業経営について学ぶ」を開催しました。
本稿では、中小企業の皆様にとって有益な情報が満載だった本ウェビナーの内容を、前編・後編の2回にわたりダイジェスト版としてお届けいたします。
後編は、ゲスト講師の藤本氏(株式会社YMFGキャピタル 取締役)と当社代表者の小松(株式会社スーツ 代表取締役社長CEO)による対談の内容です。藤本氏のご経歴は以下のとおりです。
<株式会社YMFGキャピタル取締役 藤本 孝氏>

山口県宇部市出身。2007年に広島大学を卒業後、山口銀行へ入行。営業店勤務を経て山田コンサルティンググループ株式会社へのトレーニー派遣後、山口銀行審査部、山口銀行事業性評価部にて事業再生支援を担当。その後、山口フィナンシャルグループ投資共創部及びYMFGキャピタルにて、日本初となるサーチファンドの設立に関与する等、ファンドを活用した地域活性化、及び地域企業の事業成長・事業承継課題の解決に取組む。投資先企業複数社の社外取締役を務める他、中小企業診断士資格を保有。九州・アジア経営塾20期卒塾生。
前編のゲスト講師の藤本氏による講演「サーチファンドと中小企業経営について学ぶ」はコチラから。前編のゲスト講師の藤本氏による講演「サーチファンドと中小企業経営について学ぶ」はコチラから。
【まとめ】
- YMFGキャピタルがサーチファンドに取り組んだ背景と成功要因
- サーチファンドに対する日本独自の課題と対応
- サーチャーに求められる「人間力」と現場への適応力
- 長期的な視点と事業経験が成功に導く
- サーチャーの活動期間とリスクヘッジ体制
対談内容
YMFGキャピタルがサーチファンドにいち早く取り組んだ理由
株式会社スーツ 小松裕介(以下「小松」といいます。):
お話を聞いていて多くのの方が気になっていると思うのですが、そもそもなぜYMFGキャピタルが、いち早くサーチファンドに取り組んだのでしょうか?
まるで明治維新の長州藩のように先進的な取り組みにいち早く飛びついた印象があって(笑)。本当に日本のサーチファンドの先駆者だと思います。
株式会社YMFGキャピタル 藤本 孝(以下「藤本」といいます。):
取り組みのきっかけは、やはり後継者不在率の高さが大きかったと思います。山口県は全国でも後継者不在率が非常に高く、当時は8割もの企業が後継者未定という深刻な状況でした。
しかも、人口減少のスピードも他地域より速く、「これは本当にまずい」と、危機感を持たざるを得なかったんです。もう一つは、銀行グループとしての戦略の転換ですね。これまでのように融資だけでは地域経済を支えきれない。
そこで、「エクイティ、株式での支援にも本格的に取り組んでいく必要がある」という考えが出てきたんです。
ちょうど本部でもそうしたセクションを立ち上げるタイミングでもありましたし、何か新しい取り組みでイノベーションを起こさければ、地域も我々もこのまま衰退してしまうという強い危機感が後押しになりました。
正直、このスキームで承継してもらいたいという企業が見つかるか等、最初はうまくいくかどうかは分かりませんでした。
でも、「やってみないと何も始まらない」という思いでスタートを切ったんです。
スタンフォード大学発のサーチファンドモデルが弊社に入ってきたのは、1号ファンドを組成した際にご一緒させていただいた共同GPのパートナー企業がきっかけであり、そこから情報を共有いただいたことによります。
「地方銀行である我々だからこそ、後継者がいない企業の情報が集まっている。だったら、それを活かさない手はないだろう」と、日本で初めての取り組みではありましたが、挑戦する価値があると信じて始めた、というのが背景ですね。

サーチファンド導入における予想と現実
小松:もともとスタンフォードのモデルを参考にされて始めたとお聞きしましたけれど、それを日本、しかも山口という地域で最適化していくにあたって、さまざまな知恵や工夫が必要だったと思うんです。
その中で「ここは想定どおりだったな」と思えた点と、「これは意外だった」と感じたポイントをそれぞれ教えていただけますか?
藤本:正直に言うと、予想外のことの方が圧倒的に多かったですね(笑)。
というのも、最初から「絶対うまくいく」と確信して始めたというよりは、ある意味、実証実験的に、「まずはやってみよう」という姿勢でスタートしたんです。
ですから、山口県での後継者不在率が約80%というデータはありましたが、実際にニーズがどのくらいあるかというのは、やってみないと分からなかったというのが本音です。
そんな中で、想像以上に好意的な反応をいただけたことは、良い意味での予想外でした。
やはり、M&Aという手法自体は知られてきているものの、「株は引き継がれても、経営は誰が担うのか?」という根本的な課題が残ってしまうケースも少なくありません。
その意味でも、人材も含めて承継できるサーチファンドの仕組みは、思った以上に企業の課題感とマッチしていたのかなと感じています。
それから、従業員の反応についても予想外でした。案件によっては「外部から経営者が来るなんて…」と反発があるのではと想定していました。
中にはそうした反応もありましたが、予想していたよりもむしろポジティブに受け止められるケースが多かったんです。「来てくれてありがたい」という声を役員の方から直接いただいたこともありました。
これは本当に大きな発見でしたし、サーチファンドの可能性をさらに確信できた要因の一つでもあります。

小松:これは率直な疑問なんですけど、「サーチファンド」とか「スタンフォードのモデル」とか言っても、正直、地元の方からするとピンと来ないということもあったんじゃないかと思うんです。
地元での反響やリアクションについてもぜひお聞かせいただけますか?
藤本:「サーチファンド」に対する反響という点では、もちろん好意的な受け止めもあったんですが、やっぱり最初は苦労の連続でしたね。
というのも、「ファンド」って聞くだけで、「ハゲタカファンド」等と言われたり、すごく強いアレルギー反応を示される方も少なくなかったんです。特に地方ではなおさらで、慎重な企業ほどその傾向がありました。
例えば、「買収」という言葉を資料に書いているだけで、「うち、買われちゃうの?」と警戒されることもありました。もちろん、私たちとしては人が承継するという文脈でお伝えしているつもりですが、やはり言葉の印象はとても大きかったです。
それ以降、「買収」や「ファンド」といった表現をお客様向け資料には使わないようにしました。代わりに、より柔らかく、意図が正しく伝わる言葉を使うようにしています。
このあたりは、地道に、1社1社説明を重ねながら、少しずつ理解していただくしかなかったというのが正直なところですね。特にネガティブな反応を受けた時に、「じゃあ、どうするか?」を常に考えて改善してきたという積み重ねが、今の仕組みづくりにつながっていると思います。
小松:まさに、黎明期ならではのご苦労があったんですね。
実は今回のこのウェビナー、私たちとしても驚くほどの反響がありまして。事前申込が30名を超えていて、これは実はかなり多い数字です。これまでに開催したウェビナーと比較しても、今回は高い注目度になっています。
やっぱりこのサーチファンドというテーマが、今ものすごく関心を集めているのは、御社が黎明期から取り組んでこられた努力が実を結びつつあるからなんだろうなと感じています。

サーチャーに求める人物像と成功の秘訣
小松:本日のウェビナーにもサーチャー志望の方もいらっしゃると思うんですが、先ほどご紹介いただいた選考フローや実際に活動されている方の属性等を拝見していて、年齢層もバックグラウンドも、想像以上に多様で興味深かったです。
ただ、御社としては、選考の過程で「こういうタイプの方がサーチャーに向いている」「こういったスキルやスタンスを持っている方にお願いしたい」といった、何らかの判断基準があるのではないかと感じました。
ぜひ、どのような人物像を理想のサーチャー像とされているのか、お聞かせいただけますか?
藤本:一言では難しいのですが、やはり理想のサーチャー像って、「人間力」なんですよね。もちろん、経営の知識やご経験があるのは前提として考えており、それ自体はとても重要な要素です。
ですが、我々が地域の中小企業と向き合う中で、それだけでは足りない場面が多いのが現実です。
地方銀行が支援する案件ですと、例えばサーチャー候補の方が、「経営戦略を描いて成長させたい」と意気込んで来られても、そもそもその規模やステージに至っていない企業もあります。
事業が複数あってもまだ整っていないことも多いですし、「ザ・中小企業」といえるような、現場第一主義の会社が大半です。
営業も自分で足を運ばなければいけませんし、トップセールス的な動きも求められます。従業員も、いわゆる「ビジネス用語」では通じないような方もいらっしゃるので、共通言語で話す力、相手の目線に立てる感覚がとても大切です。
ですので、少し抽象的にはなってしまいますが、「この人と一緒に働きたい」と思ってもらえるような誠実さ、共感力みたいな部分が、やっぱり一番重要じゃないかなと考えています。
小松:非常によく分かります。私もこれまで約20年、中小企業のバリューアップを現場でやってきましたけど、本当にそのとおりだなと実感しています。
ちょっとカタカナの言葉を使っただけで、「え?それってどういう意味?」と従業員の方がポカンとしてしまうような場面を、何度も経験しています。
そのギャップを埋めていけるかどうかって、本当に大事ですよね。
藤本:そうなんです。やっぱり共通言語が通じないというのが、現場では本当によくあるんです。だからこそ、同じ目線に立って、一緒にやっていく姿勢が何より大事だと考えています。
それから、これは私がサーチャーの方々に常々お伝えしていることですが、もちろん「仕組み化」や「マネジメント体制の整備」は必要です。ただ、そこを焦って一気にやろうとすると、社員と利害がぶつかることがあるんですよね。
これは小松さんの著書にも書かれていたことですが、社員の皆さんにとって変化は不安要素でもあります。これまで慣れ親しんできたやり方が変わるというのは、想像以上に大きなストレスなんです。
だから私は、「まずは仲間をつくれ、焦ってはいけない」と繰り返し伝えています。地ならしをして信頼を得てから、少しずつ組織化したり、社内ツールを揃えたり、自分のスタイルや考え方を出していく。それが本当に大事なんですよね。
うちのサーチファンドの場合、その時間をしっかりかけられる仕組みになっていますし、我々自身も長期的な時間軸で伴走していくというスタンスを持っています。だからこそ、焦らず丁寧に進めていける環境になっていると思います。
小松:素晴らしいですね。まさにおっしゃるとおりだと思います。
実は以前、私がスモールキャップ領域のPEファンドが主体となって運営されているプロ経営者協会で講演させていただいたことがありまして、その時に非常に印象的だった話がありました。
「コンサルティング出身の方が、企業価値の向上を急ぎすぎて、結果的に会社を壊してしまうケースがある」というんです。
もちろん、やっていること自体は正しい。でも、ガリガリと改革を進めすぎると、現場がついてこられなくなってしまうことがあると。
そこで、「どうやって仲間をつくり、少しずつ組織を整えていくか。いわば、漢方のようにじっくり効いていくような経営のあり方をテーマに、ぜひ話をしてほしい」とご依頼をいただいたんです。
だからこそ、藤本さんがおっしゃっていた、“焦らず、でも着実に、時間をかけて信頼を積み重ねていく”というスタンスは、まさに中小企業経営の本質を突いていると、改めて感じました。
小松:もう一歩踏み込んで伺ってみたいのですが、2019年から始められて、既に6年ほどのご経験の中で、うまくいっているサーチャーの方の特徴というのは、どのあたりにあるとお考えでしょうか?
先ほどは「サーチャーになるには」というお話が中心でしたが、既に実際に活躍されている方々の共通点、上手くいく人の資質みたいなものがあれば、ぜひお聞かせいただきたいです。
人間力はもちろんあると思うのですが、それ以外に何かプラスアルファで見えてきたものがあれば、ぜひ教えてください。
藤本:そうですね、うまくいっているサーチャーの方の特徴として、やっぱり大きいのは「事業経験がある」という点ですね。これは非常に強みになると思います。
自分自身で事業の現場に立って、ある程度責任を取って物事を進めてこられた経験がある方は、やはり現場への理解や対応力が違うなと感じます。
さらに言うと、サーチャーの方のこれまでの経験の中で、土地勘がある地域や業種に近いケースはやはりスムーズですね。もちろんそれが必須というわけではないですが、やはりスタート地点としては強いです。
また、これは少し人間力の延長かもしれませんが、バランス感覚のある方も成功しやすい傾向があります。特に商社出身の方等は、事業的な視点やコミュニケーション等、バランスをうまく取られている方が多くて、全体を俯瞰して動けるという印象があります。
そしてもう一つ、重要なのが「非合理を受け入れる力」だと考えています。合理的に物事を進めたいという気持ちは分かるんですけど、中小企業の現場では非合理なことがたくさんあるんです。
例えば、取引先との商談がほぼ雑談で終わって、最後の5分だけ本題に入る、みたいなことも普通にあるんですよね(笑)。でも、そこに「非効率だな」と感じてしまうと、そもそも地方や中小企業の文化にフィットしない。
だからこそ、「非合理も含めて受け入れる寛容さ」みたいなものは、実はサーチャーとして成功するための大きな資質の一つじゃないかなと考えています。
サーチャーの報酬と活動中のリスク
小松:サーチャーを目指している方がきっと一番気になっているであろう点をお伺いしたいんですが、サーチ活動中の報酬についてです。
先ほど、プレサーチの段階であれば兼業でもOKという話がありましたけど、実際にSPCを設立して、フルタイムで活動するようになった後の報酬水準って、どのような感じで維持できるのでしょうか?
藤本:報酬面についてですが、大きく三段階に分かれています。
まず一つ目は「プレサーチの期間」。ここは、先ほどご説明したように兼業という形での活動になりますので、基本的には無報酬での取り組みになります。
次に、”職業 サーチャー”として専業で活動を始める段階に入ると、年間でおよそ1,000万円程度の報酬を基本の目線として設定しています。サーチ活動、つまり企業を探す期間は、概ね1年程度を想定しています。
そして、企業を承継した後の報酬ですが、ここは企業ごとにケースバイケースになります。一般的な水準感としては、年収1,000万円程度を想定しており、成果報酬の設計によって変動します。
さらにそれとは別に、サーチファンドSPCの株式を一部保有いただく形になりますので、事業成長・エグジットの際にキャピタルゲインを得る可能性もあります。
そういった意味で、中長期的なリターンも視野に入れた報酬体系になっているのが特徴かと思います。

小松:これは少しセンシティブかもしれませんが、サーチ期間中に承継ができなかった場合はどうなるのか、という不安を抱えている方も多いと思うんです。
今回のセミナーに参加してくださっている方も、非常にキャリアのある方が多く、サーチファンドに対する関心は確かに高まっていると感じる一方で、その分、キャリア上のリスクを慎重に考えている方も多いと思うんです。
ぜひ率直にお話しいただければと思います。
藤本:承継できなかった場合はどうなるのか、という点ですが、これは正直、これまでの活動の中でも実際にありました。
特に活動初期の頃は、いきなり正式サーチャーとしてフルコミットいただくスタイルにしていて、企業探索期間も1年間と短めでした。そういった背景もあって、企業が見つからなかった方も一部いらっしゃいました。
そのようなケースでは、状況に応じて期間の延長等を柔軟に対応させていただいたこともあります。
ただ、やはり企業を見つけられなかった場合のリスクというのは、一定程度あると私たちも認識しています。
そうした反省や改善を踏まえ、2号ファンドからは「プレサーチャー制度」を設けました。
これは、いきなりフルタイムで取り組むのではなく、まずは兼業等でサーチ活動を試していただく期間を取り入れた制度です。
このプレサーチ活動期間では、自分自身がサーチ活動に適性があるかどうか、対象企業が実際に見つかりそうかどうか、YMFGキャピタルという組織との相性、といった点を、事前にご自身の目で確かめていただくことができます。
そのため、リスクを最小限に抑えた形で、サーチャーとしての一歩を踏み出せるように設計しているのが特徴です。
承継対象企業の業種・経営成績のイメージ
小松:最後にもう一つ、お聞きしたいことがあります。
先ほど、対象となる企業の年商が「1億円から50億円」と、かなり幅広いというお話がありました。また、企業評価の基準としては、最終的には利益、特にEBITDAが重要になるため、年商1億円規模の企業では、どうしてもEBITDAの水準が限定的になるのではないかと考えています。
もちろん、今回の「地域未来共創サーチファンド」は、地域のためにIRRのハードルレートが比較的低めに設定されているというお話も伺っています。
本日は、プロフェッショナルなご経歴をお持ちの方々にも聴講者として多数ご参加いただいておりますので、少し専門的な内容になりますが、対象企業の業種・業態の傾向や、年商以外で重視されている経営指標やパフォーマンス水準の目安について、ぜひお聞かせいただけますでしょうか。
藤本:率直に申し上げますと、対象企業の紹介元として、出資いただいている銀行からご紹介いただくケースと、M&A仲介会社からのご紹介に大きく分かれます。
それぞれ性質が異なりますので、私たちも分けて考えているというのが実情です。M&A仲介会社経由でのご紹介については、多くの案件をご相談いただく中から、弊社にて検討可能な案件を選定し、各サーチャーの希望条件や事業との親和性を踏まえて紹介・協議を行っております。
選定させていただく案件は、EBITDAで数千万円規模が見込まれる、あるいは年商が5億~10億円以上あるといった、ある程度の事業基盤がある企業が多いです。
一方で、銀行のお客様に関しては、我々も出資を受けている立場として、地域の中小企業に対して事業承継の選択肢を提供するという責務があります。そのため、年商1億円程度の比較的小規模な企業であっても、積極的に承継のご支援をさせていただいています。
業種や業態も非常に多様ですが、EBITDAの絶対額としては当然低くなる一方で、EBITDA率について一定の目線は持ちつつ、最低限クリアしていれば検討対象としています。
また、赤字企業についても、再生可能性があると判断されれば検討しています。 ただし、債務超過の状態にある企業については一定の制約があります。
資金繰りの安定性という観点から、債務超過の度合いが深いケースは、さすがに難しいという判断をすることもあります。一方で、軽微な債務超過であって、改善の見通しがある場合には、前向きに検討させていただいています。
聴講者からのQ&A
聴講者A:先ほど御社におけるサーチャーの方々の事例をご紹介いただきました。実は、同業他社のサーチファンドについても一部お話を伺っておりますが、正直なところ、御社のように順調に成果が出ている事例はあまり多く見受けられない印象を持っています。
この違いはどこにあるのか、大変興味深く感じております。やはり御社が地域に深く根ざし、地元金融機関との強固なネットワークを基盤としていることが、成功の大きな要因なのでしょうか?そのあたりの背景について、お伺いしたいです。
藤本:ありがとうございます。我々としても案件の組成には日々苦労しながら、地道に取り組んでいるのが実情です。ただ、やはり企業様ごとにニーズは千差万別ですので、その点を丁寧に汲み取ることが非常に重要だと感じています。
先ほど申し上げたとおり、弊社としては「単に事業会社に売却したくない」「長期的な視点で経営を引き継いで欲しい」といった、譲渡企業側の想いにしっかり応えていきたいと考えております。
その中で、サーチャーが単独で動くことに対する不安というのは、当然あるかと思いますが、そこに地方銀行が後ろ盾としていることで、「この人たちは変なことはしないだろう」と一定の信頼を得られていると感じています。
そうした意味でも、譲渡側のニーズと我々のスタンスが合致した場合には、比較的スムーズに話が進んでいく傾向があるのかなと考えています。

聴講者B:これは地方に限った話ではありませんが、年商規模でいうと一桁億円から十億円前後の中小企業の中では、建設業が非常に多いというのが、実感としてあります。
私自身も、承継案件のボリュームゾーンとして、こうした業種が大きな割合を占めていると感じています。
その一方で、サーチャーを目指す方々のご経歴を見ると、比較的ホワイトカラー寄りのバックグラウンド、具体的には経営企画や経営管理、あるいはコンサルティング出身といった方が多い印象を受けます。
そうなると、実際に現場での業務経験が求められる建設業に対して、なかなかフィットしにくいのではないか、という懸念もあるかと思います。
そこでお伺いしたいのですが、建設業等の分野における承継案件の状況や、実際にそういった業種に挑戦されるサーチャーの方々の傾向について教えていただけますでしょうか。
藤本:実際、弊社がこれまでに承継をお手伝いさせていただいた企業のうち、およそ3分の1は建設業関連の企業です。
ご指摘のとおり、建設業では経営業務の管理責任者や専任技術者といった許認可上の要件が求められるため、この点は非常に重要なポイントになります。
特に、こうした資格を有する方が承継のタイミングで抜けてしまうと、例えば公共工事の入札ができなくなる等、事業の継続性に大きな影響を与えかねません。
ですから、事前に「その会社が体制としてしっかりしているか」「資格者がどういう形で在籍しているか」といった点をきちんと見極めることが、成功の鍵になります。
なお、弊社のサーチャーの中に、建設業界で必要とされる、管理責任者のような特定の資格をお持ちの方はいらっしゃいませんが、それでもフィットしているケースは多々あります。
例えば、業種は異なっていても、現場の職人と直接やり取りした経験がある方や、泥臭い現場に身を置いていたご経験のある方等は、建設業の現場にも自然と馴染んでいく印象があります。
つまり、完全なドンピシャの業界経験ではなくても、「現場を理解できる感覚」や「現場の人たちと同じ目線で会話ができる力」がある方であれば、建設業の承継にも十分対応できるというのが、弊社の実感です。
聴講者B:なるほど、やはりそうなんですね。いわゆる徹底的に管理するといったスタイルよりも、現場をしっかり理解していて、実務の動かし方がうまい方が入ってこられると、比較的小規模な企業でもうまくスケールさせていける印象を受けました。
藤本:やはり現場の職人とのコミュニケーションがしっかり取れることは非常に重要ですし、そうした現場感覚を持っている方が現場に入ると、組織にも自然と溶け込んでいける傾向があると感じています。
一方で、管理面のスキルもやはり欠かせません。財務や数値管理の視点を持ち合わせているかどうかという点も、企業の持続的な成長という観点では非常に大事だと思いますね。

聴講者C:サーチ活動期間中の日中の過ごし方は具体的にどのような形でしょうか?
藤本:プレサーチ活動段階においては、皆さん本業をお持ちのため、基本的にはメールやオンラインでの活動が中心になります。弊社から「このような案件があります」といった情報を提供させていただき、それに対してご関心をお伺いし、もしご興味があれば、面談の調整等を進めていくという形です。
一方で、正式な”職業 サーチャー”として活動を始められた後は、比較的時間の余裕も生まれますので、活動の幅も広がります。具体的には、M&A仲介会社と直接やり取りしながら案件情報をサーチャーの方が取りに行くこともありますし、弊社ならではの取り組みとして、地方銀行の営業店向けの勉強会にサーチャーの方と一緒に伺い、情報収集やネットワーキングの機会を持つ等、より実践的な動きを共に進めております。
聴講者C:ケースバイケースではあると思いますが、承継成立後のサーチャーとのコミュニケーション頻度、方法、内容等をお伺いできますでしょうか?
藤本:やはりケースバイケースではありますが、承継後の関わり方としては、大きく二つのフェーズがあるかと思います。
基本的には、弊社社員が社外取締役として経営に参画させていただき、承継が成立した直後は、定例の経営会議でのディスカッションや、半常駐のような形で、週に1~3回は現地に伺う等、かなり踏み込んだ支援を行っております。
一方で、弊社が重視しているのは、やはりサーチャーが自立した経営者として成長していくことです。ですので、特段大きな問題がなければ、社外取締役としての関与は継続しつつも、月に1回程度のモニタリング面談を基本としています。その中で、必要に応じて、銀行グループとしてのネットワークや金融ソリューションを提供する、いわば伴走型の支援を基本としています。
サーチャーの方との距離の取り方は柔軟に、ただし、経営の主体はあくまでサーチャーご本人にある、というスタンスを大切にしています。
聴講者D:最近、M&A仲介会社各社の決算を見ていますと、業績面で一定の陰りが見え始めているようにも感じられます。
そうした市況感の中で、御社のサーチファンド関連におけるソーシングの状況、難易度についてはいかがでしょうか。
藤本:やはり現在、M&A仲介会社を取り巻く環境には、さまざまな課題が顕在化しつつあります。実際、企業側の警戒感が以前よりも強まっており、その影響で取引に慎重な姿勢を見せるケースも増えてきたように感じています。
ただ、そうした市況だからこそ、地方銀行という我々の立場が改めて評価される場面も増えてきています。お客様から見ても、「地元の金融機関が関わっているなら安心だ」と受け止めていただけることが多くなっており、その点はむしろ追い風と捉えています。
現時点では、M&A仲介会社との連携自体が大幅に減少したという実感はありません。
むしろ、M&A仲介会社が市場環境の変化に対応しようとする中で、いわゆる仕掛け型といわれるような、我々と一緒に案件を発掘しにいくタイプの取り組みに関心を示すM&A仲介会社が増えてきている印象があります。
小松:本日は「サーチファンドと中小企業経営について学ぶ」をテーマにYMFGキャピタルの取締役 藤本さんからお話をいただきました。長い時間お話していただきありがとうございました。
藤本:ありがとうございました。
<ご案内>
本記事は、中小企業の皆様向けに開催したスーツアップ特別ウェビナーの内容をダイジェスト版としてまとめたものです。
当社では、毎月2回、中小企業の経営者やご担当者様に向けて、日本経済の中心である中小企業等の経営改善に貢献できるようなテーマのウェビナーを主催しております。
過去のウェビナーでは、第一線でご活躍されている経営者や専門家の方々をゲスト講師にお迎えし、中小企業を取り巻く経営環境、マーケティング、デジタル・トランスフォーメーション(DX)、労働生産性の向上に繋がるマネジメントシステムの構築、M&A等、多岐にわたるテーマでご講演いただいております。
今後のウェビナー情報や過去のアーカイブについては、当社WEBサイトをご覧ください。
【サーチファンドと中小企業経営について学ぶ】
- サーチファンドと中小企業経営について学ぶ(ゲスト講師:YMFGキャピタル取締役 藤本 孝)
- 藤本 孝氏(株式会社YMFGキャピタル 取締役)と小松裕介(株式会社スーツ 代表取締役社長CEO)によるQ&A
チームのタスク管理 / プロジェクト管理でこのようなお悩みはありませんか?

そうなりますよね。私も以前はそうでした。タスク管理ツールを導入しても面倒で使ってくれないし、結局意味なくなる。

じゃあどうしたらいいのか?そこで生まれたのがスーツアップです。

これ、エクセル管理みたいでしょ?そうなんです。手慣れた操作でチームのタスク管理ができるんです!

見た目がエクセルだからといって侮るなかれ。エクセルみたいに入力するだけで、こんなことも

こんなことも

こんなことまでできちゃうんです。

エクセル感覚でみんなでタスク管理。
まずは以下よりお試しいただき、どれだけ簡単か体験してみてください。