桐谷 豪(株式会社kubell 執行役員兼 インキュベーションディビジョン長)と小松 裕介(株式会社スーツ 代表取締役社長CEO)によるQ&A

当社では、2025年3月12日にゲスト講師に、ビジネスチャットツール「Chatwork」や業務プロセス代行サービス「Chatwork アシスタント」を提供する株式会社kubellの執行役員 兼 インキュベーションディビジョン長 桐谷 豪氏を迎え、第4回目となるスーツアップ特別ウェビナー「“BPaaS”で実現する中小企業のDX〜成長ビジネスの最前線 〜」を開催しました。

本稿では、中小企業の皆様にとって有益な情報が満載だった本ウェビナーの内容を、前編・後編の2回にわたりダイジェスト版としてお届けいたします。

後編は、ゲスト講師の桐谷氏による講演「“BPaaS”で実現する中小企業のDX〜成長ビジネスの最前線 〜」です。桐谷氏のご経歴は以下のとおりです。

株式会社kubell 執行役員 兼 インキュベーションディビジョン長  桐谷 豪

大学在学中より創業フェーズのスタートアップに参画し、ジョイントベンチャー設立や複数事業の立ち上げに従事し、ユニコーン企業へ。その後、AI系ベンチャーである株式会社ABEJAへ入社し、データ関連サービスの事業責任者を担う。2020年10月にChatwork株式会社(現 株式会社kubell)に入社し、BPaaSのサービス立ち上げ責任者を務めたのち、2024年1月より執行役員に就任。インキュベーション領域を管掌し、新規事業の推進とR&Dを担当。

 

前編のゲスト講師の桐谷氏による講演“BPaaS”で実現する中小企業のDX〜成長ビジネスの最前線 〜はコチラから。

【まとめ】

    • BPaaSが中小企業のDXをどのように加速させるか
    • 具体的な導入事例から学ぶ実践的な知見
    • 「Chatwork アシスタント」の活用による業務効率化の可能性
    • 質疑応答から得られる中小企業経営者の課題と解決策
目次
チームのタスク状況が分からない。
これに多額のコストが発生していることを知っていますか?

BPaaSで最もニーズの高い業務とは?

株式会社スーツ 小松裕介(以下「小松」といいます。):BPaaSを通して労務や総務などいろいろできそうだなと思ったのですが、最もニーズの高い業務や、その代表的な事例について教えていただけますか?

株式会社kubell 桐谷豪(以下「桐谷」といいます。):非常に幅広い業務を受けさせていただいているんですけど、最もニーズが大きいのは経理業務です。実際に「Chatwork アシスタント」が受けている案件の中でも、経理関連が一番多いですね。

具体的には、請求書の受け取りや発行、仕分け、登録、月締め、従業員への支払いに関する勤怠管理、給与計算、振り込み確認といった一連のバックオフィス業務を代行しています。特に、勤怠管理で従業員が打刻を忘れている場合のフォローアップなど、細かく手間のかかる業務も対応しており、これらを「0営業日」で締め、給与計算や振り込みの確認まで行うことで、企業の負担を大幅に軽減しています。

経理業務は月の半ばと月末月初で業務量の差が大きいため、必要な時に必要なだけサポートを受けられるBPaaSのメリットが最大限に活かされています。

小松:やはり中小企業からすると経理1人採用するには重すぎる、というところでまさにドンピシャなサービスですね。

桐谷:そうですね。多くの企業は税理士と契約していますが、税理士は月末月初に非常に多忙になり、個別の細かな業務に手が回りにくい一方で、中小企業は「月末月初だけ優秀な人に手伝ってほしい」という強いニーズを抱えており、そこにうまくハマったのかと思います。

BPaaSの概念はどのように生まれたか?

小松:BPaaSってすごく壮大なお話だと思うんですけど、これは海外の事例を参考に持ち込まれたものですか、それともkubell社内で議論を重ねて作り上げたものなのでしょうか?

桐谷:この概念は、社内で議論を重ねて作り上げたものです。海外に似たようなサービスや考え方が全くなかったわけではありません。例えば、中小企業のバックオフィス業務を一点に集約し、それをまとめて効率化することで、社会全体のシェアードセンターのような役割を担うという考え方や、ソフトウェアだけでなくオペレーション業務全体を巻き取るという概念は存在していました。しかし、これらを「BPaaS」という形で、クラウド上で中小企業(SMB)向けに特化して広げていこうというサービスは、私たちが調べた限りでは存在していなかったと認識しています。

当初は「SaaSプラスオペレーション・ウィズ・テクノロジー」といった仮称で呼ばれていましたが、約2年半前から「BPaaS」という言葉を使うようになりました。この言葉自体は以前から存在していたものの、私たちが提唱するような包括的なサービスモデルとして広めたのは、kubellが先駆けでしょう。

小松:この事業構想力はすごいですね!しかも今やBPaaSはビジネスのトレンドワードになっていて、これを広めていることも含めて素晴らしいことだと感じてます。

桐谷:ありがとうございます。まだまだ頑張らないといけないですが(笑)。

中小企業以外でのBPaaSの可能性

小松:今回ご視聴いただいている皆さんも多種多様なわけですが、BPaaSは中小企業以外、例えば大企業やスタートアップでも活用できる可能性はありますか?

桐谷:大企業向けも技術的には可能だと考えます。しかし、この領域にはすでにBPOという成熟したマーケットが存在し、アクセンチュアのような大手プレイヤーが戦略立案からシステム構築、そしてBPOまでをセットで提供しています。彼らはすでに強固な基盤と長い歴史を持っており、競争環境が非常に厳しいため、事業として参入していくのは正直なところ難しいという印象です。大企業の場合は、個社ごとに大規模な業務プロセスがすでに確立されているため、それぞれに対応していく形が一般的です。

それに対して、スタートアップは非常に可能性が高いと考えています。スタートアップに特化した税理士事務所や弁護士チームのように、バックオフィス業務を丸ごと請け負うサービスは実際に伸びています。

スタートアップ企業にとって重要なのは、「コア業務」と「ノンコア業務」の明確な切り分けです。BPaaSは、企業が本来集中すべきコア業務にリソースを集中できるよう、ノンコア業務を巻き取って効率化することを目的としています。最近のスタートアップ企業の中には、バックオフィス業務を効率的に回すこと自体を競争優位と定義しているケースも増えていますが、一方で、人手不足などで成長に追いつかない状況にあるノンコア業務については、BPaaSが伴走することで大きな価値を提供できます。

ただし、採用活動のように、企業によっては「絶対に自社のコア業務であり、外部には任せられない」と考える場合もあり、その企業のスタンスによって対応は異なります。

BPaaSと生成AIの未来

小松:生成AIが急激に進化している中で、BPaaSとAIはどのように連携し、今後の展開を考えていますか?

桐谷:実は、BPaaS事業はAIを組み込むことを前提に考えられたビジネスモデルです。私自身、BPaaSの構想を約2年間温めていましたが、事業化のタイミングを慎重に見計らっていました。Chat GPTがリリースされたのが2022年11月30日で、kubell社内でBPaaS事業の開始が経営層に承認されたのがその直後の12月でした。これは、生成AIの進化、特にAIエージェントの登場が確実視された瞬間であり、この技術がBPaaSを強力に推進すると確信したからです。

未来の話をすると、AIがテキスト入力だけでなく、自律的に作業を実行する世界が到来しています。例えばChat GPTのオペレーター機能やAnthropicのClaudeなど、AIの活用により、業務の工数削減が大幅に進んでいます。このインパクトは非常に大きく、インターネットの登場に匹敵すると考えています。業務効率が5倍、10倍、場合によっては100倍になる可能性を秘めています。このような状況下では、オペレーション業務の総量を多く抱えている企業ほど、AIによる削減幅が大きくなります。

そのため、kubellとしては、オペレーションの幅を広げつつ、同時にAIによる業務圧縮を強力に進めていく戦略です。

「Chatwork アシスタント」への相談経路と今後の展望

小松:「Chatwork アシスタント」への顧客からの相談は、どのような流れで来ていますか?また、今後の展望についてもお聞かせください。

桐谷:現在の主な入り口は、「Chatwork」アプリ内に表示される「Chatwork アシスタント」の告知や、弊社の営業担当者からの説明です。お客様がこれらを通じてサービスを知り、申し込み画面に進むか、直接担当者にご説明を求める形です。

その後、業務内容のヒアリング、作業の分解、見積もり、契約手続き、そしてキックオフミーティングを経て、実際の作業が開始されます。お客様に寄り添い、丁寧なコミュニケーションを通じて課題を把握するプロセスを重視しています。これは、お客様が「今すごく忙しいんだけど、どうすればいいかな」といったラフな相談をしやすい環境を作るためでもあります。

将来的には、「Chatwork」から直接、より手軽に業務を発注できる仕組みを構築したいと考えています。例えば、「Chatwork」のタスク機能を発展させ、チャット上で「この仕分け登録よろしくね」といった依頼をボタン一つで発注できるようにする構想です。

これにより、お客様は「今日これやらないといけないけど面倒だな」と感じた時に、「Chatwork」画面から、例えば「請求書作成しますよ。1件10円で」といったメニューを選び、すぐに発注し、作業完了の連絡を受け取るといった、細かいタスクベースでの丸投げが可能になります。 また、「Chatwork」のプラットフォーム特性(全職種のユーザーがブラウザを常時立ち上げている)を活かし、ユーザーの登録情報や利用しているテキスト情報から、その人が今何に悩んでいるのかを類推し、パーソナルアシスタントのようなチャットボットを「Chatwork」内に組み込むことも検討しています。これにより、お客様のニーズに合わせた最適なサポートを、より能動的に提供できるようになるでしょう。

BPaaS導入にかかる時間

小松:私も中小企業向けのSaaSをやっていて中小企業のITリテラシー の低さというのは感じているんですけど、BPaaSの導入までには、どれくらいの時間がかかりますか?ヒアリングなども含めると、時間がかかるイメージがあるのですが。

桐谷:最短で2営業日、あるいは3営業日で開始することが可能です。時期や業務量によって変動はありますが、私たちはお客様の「とにかく今この瞬間、使ってほしい」という切実な悩みに迅速に対応することを重視しています。例えば、「担当者が辞めてしまったので、明日からどうにかなりませんか」といった緊急のご相談にも、「どうにかします」という形で対応し、今月の月次決算を回す必要があるといった状況からサービスを開始することもあります。

従来のBPOサービスでは、まずお客様側でマニュアルを作成したり、既存システムを整理したりといった準備が必要となることが多く、そのプロセスだけで1ヶ月以上かかることも珍しくありませんでした。しかし、「Chatwork アシスタント」では、「マニュアルがない」というお客様の声がほとんどであるため、「正直、作業した方が早い」という思想でサービスを提供しています。

お客様から「これどうやるんですか?」と聞かれたら、私たちが実際に作業しながら動画などでマニュアルを作成し、「マニュアル作っておきました」という形で提供することで、お客様の導入負担を大幅に軽減し、迅速な業務開始を実現しています。

中小企業のDX問題の核心

小松:中小企業のDX問題の核心は、ズバリ何だと思いますか?

桐谷:ズバリ「DX人材の不足」です。これが一番の問題だと考えています。

小松:そこは地方だからですか。それとも中小企業に必要な人材がいないということなんですかね?

桐谷:変数はあるんですが、地方の人材不足の背景には、人材の偏在や、生産年齢人口の減少という構造的な社会問題があります。日本全体で人が増える政策は難しい現状であり、外国人労働者の増加や労働年齢の変更といった施策も、人口減少の角度に対しては誤差の範囲に過ぎません。

この根本的な課題を解決する唯一の策は「生産性を上げる」ことです。しかし、世の中のビジネスの多くは「良いツールを作りましょう」というアプローチに偏りがちです。もちろん、それ自体は素晴らしいことですが、ツールだけを提供しても、それを使いこなせる人とそうでない人の間で生産性の格差が広がってしまいます。

この格差を是正し、全体的な底上げ(ボトムアップ)を図るためには、SaaSやAIを使いこなせる人材を増やす必要があります。つまり、DX人材の不足という課題に対し、ツール提供だけでなく、その運用までを支援するBPaaSのようなアプローチが不可欠であると考えています。

小松:SaaSを作ってる身としては耳が痛いところですがおっしゃる通りですね(笑)DXできる会社さんには刺さりますがボトムアップというところまでは実現できていないなのかなっていう感じがしてますので、まさにそうだな、と。

BPaaSサービスの競合と顧客の比較対象

小松:最後にですね、御社のBPaaSサービスにおけるライバル(競合)はどのような会社ですか?

桐谷:正直なところ、直接的な競合はあまり多くありません。近年、「BPaaS」という言葉を使ってビジネスを展開する会社は増えてきており、これはDX人材が増えて業界全体が盛り上がるという意味で非常に歓迎すべきことです。

しかし、中小企業向けにウェブマーケティングだけで事業を成り立たせるのは非常に難しいのが現状です。kubellは、「Chatwork」が持つ広範なユーザー基盤から直接発注を受けられるという独自の構造を持っているからこそ、このポジショニングで事業を展開できています。そのため、一般的なビジネスとして同様のサービスを展開している会社は、おそらく少ないのではないでしょうか。オンラインアシスタント系のサービスとは一部重なる部分があるかもしれませんが、中小企業に特化した競合は多くありません。

むしろ、私たちが競合と捉えるよりも、お客様が「何を比較対象とするか」という観点で見ています。お客様が比較するのは、実際に社内で雇用している事務のアルバイトの方、契約社員の方、派遣社員の方、あるいは正社員の方といった、社内のリソースです。実際に地方の中小企業の経営者の方々と話すと、「派遣さんを雇おうか迷っているんだよね」といった相談が多く寄せられます。私たちは、オンラインで効率的に業務を回せるBPaaSが、これらの社内リソースと比較して、どのようなメリットを提供できるかを説明し、お客様の選択肢の一つとなることを目指しています。

小松:ありがとうございます。今回は「“BPaaS”で実現する中小企業のDX〜成長ビジネスの最前線 〜」をテーマに株式会社kubellの執行役員 兼 インキュベーションディビジョン長の桐谷さんからお話をいただきました。どうもありがとうございました。

桐谷:貴重なご機会をいただきどうもありがとうございました。

<ご案内>

本記事は、中小企業の皆様向けに開催したスーツアップ特別ウェビナーの内容をダイジェスト版としてまとめたものです。

当社では、毎月2回、中小企業の経営者やご担当者様に向けて、 日本経済の中心である中小企業等の経営改善に貢献できるようなテーマのウェビナーを主催しております。

過去のウェビナーでは、第一線でご活躍されている経営者や専門家の方々をゲスト講師にお迎えし、中小企業を取り巻く経営環境、マーケティング、デジタル・トランスフォーメーション(DX)、労働生産性の向上に繋がるマネジメントシステムの構築、M&Aなど、多岐にわたるテーマでご講演いただいております。

今後のウェビナー情報や過去のアーカイブについては、当社WEBサイトをご覧ください。

【“BPaaS”で実現する中小企業のDX〜成長ビジネスの最前線 〜】

「“BPaaS”で実現する中小企業のDX〜成長ビジネスの最前線 〜」(ゲスト講師:株式会社kubellの執行役員 兼 インキュベーションディビジョン長 桐谷 豪)

桐谷 豪(株式会社kubellの執行役員 兼 インキュベーションディビジョン長 )と 小松裕介(株式会社スーツ 代表取締役社長CEO)によるQ&A

チームのタスク管理 / プロジェクト管理でこのようなお悩みはありませんか?

そうなりますよね。私も以前はそうでした。タスク管理ツールを導入しても面倒で使ってくれないし、結局意味なくなる。

じゃあどうしたらいいのか?そこで生まれたのがスーツアップです。

これ、エクセル管理みたいでしょ?そうなんです。手慣れた操作でチームのタスク管理ができるんです!

見た目がエクセルだからといって侮るなかれ。エクセルみたいに入力するだけで、こんなことも

こんなことも

こんなことまでできちゃうんです。

エクセル感覚でみんなでタスク管理。
まずは以下よりお試しいただき、どれだけ簡単か体験してみてください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

スーツアップの広報担当です。スーツアップは、チームでかんたん、毎日続けられるプロジェクト・タスク管理ツールです。表計算ソフトのような操作で、チームの業務を「見える化」して、タスクの抜け漏れや期限遅れを防ぎます。チームのタスク管理を実現することで、業務の効率化やオペレーションの改善が進み、大幅なコスト削減を実現します。

お問い合わせ先:pr@suits.co.jp

目次