山田 一也(株式会社マネーフォワード 執行役員 マネーフォワードビジネスカンパニー CSO)と小松裕介(株式会社スーツ 代表取締役社長CEO)によるQ&A
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当社では、2025年4月9日にゲスト講師に、株式会社マネーフォワード 執行役員 マネーフォワードビジネスカンパニー CSO 山田 一也氏を迎え、第6回目となるスーツアップ特別ウェビナー「新しい中小企業向け金融のあるべき姿 ~ マネーフォワードの提案 ~ 」を開催しました。
本稿では、中小企業の皆様にとって有益な情報が満載だった本ウェビナーの内容を、前編・後編の2回にわたりダイジェスト版としてお届けいたします。
後編は、ゲスト講師の山田氏(株式会社マネーフォワード 執行役員 マネーフォワードビジネスカンパニー CSO)と当社代表者の小松(株式会社スーツ 代表取締役社長CEO)による対談の内容です。水口氏のご経歴は以下のとおりです。
<株式会社マネーフォワード 執行役員 マネーフォワードビジネスカンパニー CSO 山田 一也>

2006年に公認会計士試験に合格し監査法人トーマツに入所。その後、株式会社パンカクにて執行役員CFO、株式会社Bridgeにて執行役員ベンチャーサポート事業担当を経て、2014年にマネーフォワードに入社。社長室長、「マネーフォワード クラウド」開発本部長を経て、現在はビジネスカンパニーCSOとして戦略全体を統括。また、2025年からはマネーフォワードケッサイ株式会社の取締役CSO・CPOも兼任し、グループのFinance領域を牽引する。
前編のゲスト講師の山田氏による講演「新しい中小企業向け金融のあるべき姿 ~ マネーフォワードの提案 ~ 」はコチラから。
【まとめ】
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- 「SaaS × Fintech」構想の背景と進捗
- 「借りる体験」の変革
- 既存金融機関との協業と棲み分け
- 手数料率の課題と今後の展望
- 中小企業像とターゲット層
「SaaS × Fintech」構想の源流:なぜ今、金融サービスなのか?
株式会社スーツ 小松裕介(以下「小松」といいます。):今回は「SaaS × Fintech」についてお話を伺ったのですが、マネーフォワードが「SaaS × Fintech」に進出する意思決定は、どれくらい前から構想されていたのでしょうか?
株式会社マネーフォワード 山田一也(以下「山田」といいます。):この構想自体は、実は2017年頃から考えていました。当時のSaaSユーザー数が10万ユーザー程度で、その規模では金融ビジネスをやるには費用対効果が見合わないと判断していました。そこで、別の事業体を切り出して、将来的にSaaSと統合して提供できるように、金融事業の種まき的なことを細々とやっていたのが2017年頃の話です。
小松:ということは、ユーザー数が増えたことで、「このくらいのデータがあれば与信判断ができるよね」という状態になり、現在は本格的に取り組みを進めているということでしょうか?
山田:そうです。今、「マネーフォワード クラウド」の有料課金ユーザーが約40万事業者ほどになっています。これは面白い話なのですが、とあるメガバンクが法人向けに持っているアカウント数もだいたい40万くらいだそうです。
つまり、メガバンクが抱える法人顧客と同じくらいのユーザー基盤を、当社も持っている状況になってきていて、いよいよ本格的に金融に取り組んでもビジネスになるのではないか、という手応えを感じています。
小松:なるほど。最終的には売掛金、買掛金や未払金など、いわゆる流動資産・流動負債の短期的なサイクルの部分に、マネーフォワードが金融として入っていく、ということですか?
山田:はい、そうです。もちろん、中小企業・中小事業者向けの金融というのは、メガバンクも取り組んでおられますし、地方銀行や信用金庫、信用組合なども努力されています。ただ、それでもまだまだ伸びしろはあると考えています。
中小企業金融の「借りる体験」を革新する
山田:今の中小企業金融は「借りられればいい」「決済できればいい」という最低限の機能にとどまっていて、「より良い借り入れ体験」「より良い決済体験」を期待する人って、実は少ないと思うんです。
ですが、 私は借入一つとっても、もっとユーザー体験を良くできると思っています。
今の借入の流れを考えると、例えば起業して1年目の経営者が資金調達をしようとすると、何から始めて良いか分からない。そのため税理士の先生に相談して銀行を紹介してもらう、あるいは、紹介もなくて自分で窓口に行く。そして、初回の面談があって、「融資を受けるにはこのような資料が必要です」と説明を受けて、資料を作って再度提出。2回目の面談で質問に対応し、必要に応じて請求書や契約書、試算表なども提出する。そして、3回目くらいでようやく方向性が見えてきて、最終的に融資が下りる。場合によっては、下りないこともあります。
小松:膨大な時間と労力がかかりますよね。
山田:このプロセスだと、初回面談から資金調達まで、早くても2~3ヶ月かかります。この体験は決して良いものとは言えないと思うんです。でも、今の金融機関の設計では、こうならざるを得ない、という価値観に基づいて設計されていると思います。
小松:今回のウェビナーでは「中小企業」をテーマにしていますが、「SaaS × Fintech」という文脈で、中小企業の皆さんがリテラシー的についていけるのかどうか、そのあたりはいかがですか?
山田:非常にいいポイントです。これは「新しいものだ」と感じさせない努力が必要だと思っています。
いかに、モノを売り買いしたり、請求書を受け取ったり、銀行で支払ったりという、日々の業務の中に自然と溶け込ませられるかというのが鍵でしょう。
「SaaS × Fintech」みたいな大げさな言葉ではなく、通常のビジネスサイクルの中に「1つ機能が増えただけ」というように見せることができれば、十分に使っていただけるサービスになるのではないかと思います。
小松:そうですよね。便利な世の中になっていくんだなという期待感がある一方で、改めて聞くと、やはり一つひとつに難しさがあるんだなと思いました。今後そのあたりをどう乗り越えていくのかが気になりましたね。
中小企業金融のターゲットと普及戦略
小松:今までの話は主に短期の資金ニーズを扱っていますよね。でも、もし日々の活動データを持っていて、それが見える状態になれば、将来的に中長期のファイナンス、つまり「銀行っぽいこと」もできると思うんですが、そのあたりは視野に入れているんですか?
山田:中長期のファイナンスの可能性は、もちろん視野には入れています。ただ、そこには相当ハードルがあると思っています。
というのも、我々が握っている情報は、基本的にトランザクションベースのデータで、どちらかというと短期的な与信に向いていると感じているんです。そのため、中長期の融資については、ある意味で銀行と協業して実現していける部分ではないかと思っています。むしろ我々は、短期かつ中小企業向けの部分にフォーカスして、SaaSの文脈で展開していくのが自然かなと。
小松:少し話は変わりますが、M&Aについてお聞きしたいです。私自身、最近システム開発に取り組んでみて、「異なるシステムを繋ぐのは本当に大変だ」と実感しました。先ほど、コンポーネント単位で進めているとお話がありましたが、実際に買収先のシステムとデータ連携はきちんとできるものなのでしょうか?
山田:まさにおっしゃるとおりで、これは本当に大変です。M&Aで新しくグループに入ったところと初日から完全連携みたいなことは現実的には難しいと思っています。
一方で、最近はiPaaSやAPI連携の技術も進化していて、APIさえ揃っていれば、別環境で作られたプロダクトであっても、比較的早い段階でデータ連携することは可能になってきていると感じています。
マネーフォワードが見る中小企業像と今後の伸びしろ
小松:本日の参加者の中にはさまざまな立場の方がいらっしゃると思いますが、「中小企業」というテーマでも、実際には個人事業主やフリーランスの方から、社員数30~50人の中小企業、さらには200人を超えるような中堅企業まで、幅広い層が含まれていると思います。
マネーフォワードが想定している「中小企業」とは、どのくらいの規模感をイメージされているのでしょうか?
特にこのような金融サービスだと、どういう会社規模を対象としているのか、気になる方が多いと思います。
山田:当社の感覚だと、「社員数50人前後」をひとつの分岐点として見ています。
50人を超えてくると、一定の管理部門もできてきて、銀行とも継続的にお付き合いしている企業が増えてくる印象があります。なので、金融サービスが本当に届いていないのは「50人以下」が一番多いと見ていて、そこがメインターゲットです。ただ、ビジネスチャンスという観点では、200人〜300人くらいの企業にも十分あると思ってます。
小松:当社も中小企業向けにタスク管理ツール「スーツアップ」を提供しているのですけど、「中小企業」と一括りにされがちだけど、規模もリテラシーも全然違うって、日々感じています。
山田:特に、やはり業種による部分が大きいですよね。ITやサービス業、都心の企業だと、我々のようなサービスをどんどん取り入れているところもありますが、地方に行くとまだまだ全然届いていないと感じます。
小松:先日のニュースで、ついに手形がなくなるという話がありましたが、業界によっては相変わらず手形を使ってるところもありますよね。そのあたりが徐々になくなっていって、マネーフォワードのようなサービスが置き換わっていくんだろうなと思うんですが、業界的に既に導入が進んでいる業界などはあったりするんでしょうか?やはりサービス業とか小売、飲食が多いんですかね?
山田:そうです、小売や飲食です。製造業とかの導入比率は少ないと思います。
小松:それは少し意外でした。小売や飲食って、現金商売で前入金の業種だから、キャッシュフロー的には先にお金が入ってきそうなもので、導入の優先度が低いのかなと思っていたんですが逆なんですね。
山田:我々の製造業向けの生産管理系モジュールがまだ足りていないというのが背景にあると思います。ERPとしての機能が製造業に十分に届いていないという理解です。 逆にいうと、そこは今後の伸びしろという感じです。
小松:建設業などもそうですし、私も若い頃に通信土木の会社に投資して役員をしていたことがあるんですが、その時も半年くらいお金が入ってこなくて本当に大変だった記憶があります。
だからこそ、長期サイクルで売上が立つ事業では、早期に資金が入る仕組みはとても重要だし、求めている企業も多いと感じます。
山田:そうなんです。なので、ERPをフルに使わなくても、資金繰りに特化したサービスだけをピンポイントで使えるような世界観ができるといいなと思っています。ただ、どこまでのデータを取れるかによって、どこまでできるかが決まってくるとも言えます。
金融サービスをやっていく上では、やはりデータがカギになりますから。そう考えると、中小企業特有のITリテラシーの課題というのが、常につきまとうということです。
小松:本日は「新しい中小企業向け金融のあるべき姿 ~ マネーフォワードの提案 ~ 」をテーマに株式会社マネーフォワード 執行役員 マネーフォワードビジネスカンパニー CSO 山田さんからお話をいただきました。どうもありがとうございました。
山田:ありがとうございました。
<ご案内>
本記事は、中小企業の皆様向けに開催したスーツアップ特別ウェビナーの内容をダイジェスト版としてまとめたものです。
当社では、毎月2回、中小企業の経営者やご担当者様に向けて、 日本経済の中心である中小企業等の経営改善に貢献できるようなテーマのウェビナーを主催しております。
過去のウェビナーでは、第一線でご活躍されている経営者や専門家の方々をゲスト講師にお迎えし、中小企業を取り巻く経営環境、マーケティング、デジタル・トランスフォーメーション(DX)、労働生産性の向上に繋がるマネジメントシステムの構築、M&Aなど、多岐にわたるテーマでご講演いただいております。
今後のウェビナー情報や過去のアーカイブについては、当社WEBサイトをご覧ください。
【新しい中小企業向け金融のあるべき姿 ~ マネーフォワードの提案 ~】
- 「新しい中小企業向け金融のあるべき姿 ~ マネーフォワードの提案 ~ 」(ゲスト講師:株式会社マネーフォワード 執行役員 マネーフォワードビジネスカンパニー CSO 山田一也氏)
- 山田 一也氏(株式会社マネーフォワード 執行役員 マネーフォワードビジネスカンパニー CSO)と 小松裕介(株式会社スーツ 代表取締役社長CEO)によるQ&A
チームのタスク管理 / プロジェクト管理でこのようなお悩みはありませんか?

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