リーダーシップ往復書簡 005
リーダーシップ研究は、世界で大きな影響力を持っているトップリーダーたちにヒヤリングをして共通項を括りだすといった帰納法によるアプローチも多いように思います。
演繹法ならば「前提が真であれば、結論も必ず真となる」わけですが、帰納法の場合は「前提が真であっても、結論が必ず真にはならない」わけです。
そこにリーダーシップの実践の難しさがあります。
とはいえ、前提条件の違いがあるため、まだ再現性は乏しいかもしれませんが、リーダーシップの領域が、急速に”科学”され始めていることは事実です。
リーダーシップに興味ある方は、リーダーシップの世界が、自己啓発本の世界と違って、”非科学”ではないことを理解して欲しいと思います。
リーダーシップについて疑問がある、質問をしたいという方がいらっしゃいましたら、コメントや個別にメッセンジャーでご連絡ください。
また、コメントも大歓迎です。もし興味ある人がいれば、これを酒の肴に一杯やりましょう!
<コメント>
ご質問に回答する前に、質問文で表現されている「権力関係」を正確に定義する必要があると思います。
ここでは仮に「権力関係」を、人を動かし得る動機を持つ関係と定義したいと思います。
私は組織を語る際にリーダーシップとマネジメントに大別して説明することが多いのですが、「権力関係」には、夢や希望を共有するリーダーとフォロワーの関係のような”リーダーシップの関係”と、地位による力(パワー)を有する組織において役割が固定化され指揮命令系統が明確化された上司と部下のような”マネジメントの関係”があると考えています。
人間は社会的・政治的な生き物です。そのため、人が2人と集まれば、自然とそれぞれが役割を持ち、その役割を果たそうとします。
どのような属性の人たちで構成される組織であれ、人が群れると自然と構成員間で「権力関係」が生じるものと思います。
この「権力関係」の発生を回避することが可能かという問いに対しては、私は可能であると考えています。
しかし、回りくどい言い方になりますが、現実的には、この「権力関係」の発生全てを回避する必要もないのではないかと考えています。
なぜ可能だと考えるかというと「ティール組織」がその答えの一つのように思います。
「ティール組織」とは、上司や部下といった概念や指示命令系統はなく、構成員全体が信頼に基づいて、独自のルールや仕組みを工夫しながら目的実現のために組織運営を行っていく組織のことです。
組織の存在目的、構成員の自主性、さらに全体性があれば、組織そのものがまるで一つの生き物のような存在となり、構成員間の「権力関係」の発生を回避することが可能かもしれません。
但し、私は、現実的には、「ティール組織」は非常にハードルが高いと考えています。なぜならば構成員一人一人が全体性まで意識できるようになるには、相当程度の発達を要すると思うからです。
そのため、現実的には、行き過ぎたマネジメントによる「権力関係」では弊害が生じますので是正しなければなりませんし、地位による力(パワー)によって人を動かすこともできるだけ避けなければなりませんが、少なくとも、個々の構成員が主体的にリーダーシップを発揮し、リーダーとフォロワーの関係を構築するという「権力関係」の発生まで回避しなくてもよいのではないかと思います。
むしろ、そちらの方が、組織のアウトプットがより良く出て、構成員の満足度も高い、極めて現実的な答えのように思います。
※この記事は、2019年8月31日付Facebook投稿を転載したものです。