第18回スーツアップ特別ウェビナー「事業承継起業の実例 〜 事業承継から2年半で上場企業へEXIT 〜」

当社では、2025年10月22日にゲスト講師に、株式会社エムワン 代表取締役の土金 輝行氏を迎え、第18回目となるスーツアップ特別ウェビナー「事業承継起業の実例 〜 事業承継から2年半で上場企業へEXIT 〜」を開催しました。

本稿では、中小企業の皆様にとって有益な情報が満載だった本ウェビナーの内容を、ダイジェスト版としてお届けいたします。

前編は、ゲスト講師の土金氏による講演「事業承継起業の実例 〜 事業承継から2年半で上場企業へEXIT 〜」です。土金氏のご経歴は以下の通りです。

<株式会社エムワン 代表取締役 土金 輝行>

早稲田大学商学部卒業、在学中に美容メディア事業の起業・売却。JAFCOでの投資業務の後、美容クリニックのMS法人、工務店、住宅会社特化のマーケティング会社にてマーケティング責任者歴任。2021年より美容業界の事業会社2社(実店舗/SaaS)を共同創業、投資、ハンズオン中。2022年に医薬部外品・化粧品販売事業へバイアウト投資を実行し、事業承継後に経営改善・上場企業への売却を実現。現在、子会社として事業運営を継続するとともに、引き続き美容業界の共同創業先2社の経営を行う。

後編のゲスト対談(ゲスト講師:株式会社エムワン 代表取締役 土金 輝行氏、株式会社スーツ 代表取締役社長CEO 小松 裕介)はコチラから。 

【まとめ】

  • LBOではないスキームでの譲渡
  • ビジネス・法務・会計/税務の3点から細部に至るデューデリジェンスを実施
  • 譲受時の3倍の月商にバリューアップ
  • コストの最適化アクションが重要
  • 約500社の中から平均NET IRRを大きく上回る数値で売却先を決定
目次

ウェビナー内容

本日は、株式会社エムワンを事業承継し、その後2年半で上場企業であるabc株式会社へ譲受するに至った経緯をお話します。

個人PEやサーチャー、マイクロファンドの運営者、事業会社でM&Aに携わる方など、さまざまな立場の方にとって、参考になる事例になるのではないかと思います。

また今回のケースは、私自身の周囲にたまたま存在した縁がきっかけとなっています。皆さんにも事業承継は意外と身近なところに機会がある、と感じていただければ幸いです。

自己紹介

はじめまして、土金と申します。1993年生まれの32歳です。現在、美容領域で3社、株式会社エムワンの他に美容サロン向けCRMツール提供のSalon Brain株式会社、美容サロン運営・美容クリニックの経営支援の株式会社chizuの経営に関わっております。その他に個人会社で、中小企業様向けに経営コンサルティングを行っています。

大学在学中にインフルエンサーマーケティング会社で営業職を1年半ほど経験した後、美容領域の動画メディア・SEOメディア運営で起業しました。スタートアップではありましたが資金調達は行わず、デットの借入れと動画制作の受託業務、この2つを軸に事業を成長させました。2019年にこの事業を売却した後は、VCとバイアウトの両方に関わるファンドを希望し、ジャフコに入社して幅広く学びました。

ジャフコでは、スタートアップへの投資業務に携わりましたが、バイアウト投資のファンドも運営していたため、歴史の長い収益企業への投資というものがあるというのも学びました。スタートアップや今でいう利益を多く出しておられる経営者、バイアウト投資の先になっている利益体質の安定企業をみているその中で、ビジネスモデルの組み立て方や市場の大切さはさることながら再度起業をしてビジネスを伸ばすなら、いわゆる売上を作れる能力、営業力やマーケティングの中でも直接顧客へ売るセリングの能力が必要だと感じました。

最初のキャリアが営業だったこともあったので、いつかもう一度事業にチャレンジする前に運用型広告で顧客に直接何かを売る能力も身につけたいと思い、ジャフコを退職した後はマーケティングで事業を急拡大されていた美容クリニックの立ち上げに携わったのち、リスティング広告やMeta広告、LINE広告など、あらゆる広告媒体の運用を自分一人で担当し、まさに職人のようにやっていました。

そうした中で、大学の同級生が起業した会社に誘われ、工務店専門のマーケティング会社で、WEBマーケ部署の立ち上げやマネージャー業務などにも関わりました。

ここからは、現在の活動についてお話します。私は人生テーマに、職人さんや美容師さんなど直接現場で価値を作り届けることができる方々が、その後に経営者として会社をやっている中小企業市場をより良くしていきたいと考えており、その中でもこれまでのキャリアから好きな領域として美容領域をメインに動いております。

美容領域をより良くするための企業を作りたいと考えておりますが、投資という業も同時に好きなのでそれがどちらも両立できるように、現在は大きく2つの活動をしています。

1つ目は創業投資です。美容領域で2社(Salon Brain株式会社、株式会社chizu)を創業しています。この活動ではまず、利益が見込まれる領域を選定し、事業計画を立て、その領域に適した代表者を私の人脈から招聘しました。代表者には会社のマジョリティを持っていただき、私は最初の数年、役員報酬といったものを受け取らず、取締役やオーナーとしてハンズオン支援する、という形で関わっています。

2つ目は、今回の会社になりますが、バイアウト投資です。事業を譲り受けた後、代表としてグロースさせ、最終的に株式を譲渡するといった形になります。

実例紹介

背景

今回のテーマである事業承継の背景として、まず売主である元の運営会社についてお話します。

2006年に大分で創業した株式会社SARABiO温泉微生物研究所様という会社です。大分の温泉成分に含まれる微生物の研究を化粧品に生かすことに端を発する会社で、一族で支えてきた家族経営の組織です。温泉に含まれる藻類を抽出した成分を生かした、肌に優しいプロダクトを数多く開発され、中でも育毛剤がWEB通販の流行とともに大ヒットしました。育毛剤に関しては競合の出現やSEOの変化などもあり、2015年からはテレビ通販やカタログ通販などに軸足を移して現在に至っています。

今、この会社は温泉藻類をさらに研究しており、ヒラメなどの養殖に使用する餌を中心に事業を展開されています。

私との関係性についてですが、2017年に売主が売却対象事業をグロースするために資金調達に動いている時期がありました。経営者の知り合いから紹介され、私がボランティアベースで資金調達のお手伝いをさせていただいたことがきっかけとなり、お付き合いが始まりました。プロダクトをプレゼントしていただいたことをきっかけに、育毛剤とシャンプーは現在まで継続して愛用しており、本件とは関係なく品質の良さを気に入っています。

その後も社長とは定期的に情報交換していましたが、そうした関係の中、2022年夏に本件のご相談をいただいた、という経緯です。

スキーム図

製造販売元は他の事業もされていましたが、今回エムワンというブランド事業だけを早く売却したい、とのお話でした。いくつか売却先を検討されたようですが、そもそもの知り合いだったこととプロダクトのこともよく知っているということで、紆余曲折あり、私が事業譲受させていただく流れになりました。

また、売主である会社が早期の売却を希望していたため会社分割なども検討しましたが、手続きが期限に間に合いそうではなかったので、最終的に事業譲渡という形を選びました。

デューデリジェンス

今回のデューデリジェンスは、期間が短かったため、実施する範囲を絞り、大枠と方向性を策定しました。

まずビジネス面では、正常収益の把握と譲渡後の数値変動の見通しを立てるようにしました。ビジネスモデルの要諦である商品力、顧客販路の価値、顧客との関係性の確認も含めました。また、創業家の方々が作り上げてきた事業でしたので、私でも同じように運営できるかどうか、ビジネスオペレーションの確認や創業家への依存度の検討も行うようにしました。

財務・税務・人事労務に関しては、今回は事業譲渡のスキームなので、不良在庫など承継資産に対しての確認のみとしました。

法務に関して今回は医薬部外品・化粧品の販売事業なので、商標やブランドの権利を承継することでカバーできる範囲を確認する方針にしました。また、既存取引先との承継対象の契約にCOC(チェンジオブコントロール)条項など、懸念される条項がないかの確認なども含めました。

ビジネスデューデリジェンスの実務では、細かい項目に分けたプロジェクションを作成し、ヒアリングシートなども用意しました。紙で保管されていた請求書類を全て確認し、プロジェクションに反映させ、今後の正常収益も同程度見込めるかを検証しました。

また、仮に取引が継続されない場合の影響も試算しました。不良在庫の状況や在庫の保管状況、出荷までのオペレーションなどは、実際の倉庫を訪問したり動画を見たりして把握しました。これらの作業はBtoCのビジネスや医薬部外品・化粧品の販売では重要と思われるので参考にしていただければと思います。

法務のデューデリジェンスは弁護士に依頼し、法務の観点から全ての契約書をチェックしていただきました。また、会計・税務デューデリジェンスについては、事業譲渡ではありましたが、公認会計士に事業価値の評価算定書の作成を依頼しました。

税務リスクを考慮すると株価算定や事業価値評価を行っておいた方が良いというアドバイスを受けて、公認会計士への依頼に至りました。ファンドの方やM&Aに慣れている方は問題ないかもしれませんが、個人の方やこれからM&Aをしようという方はその点も参考になるかと思います。

こうしたデューデリジェンスを経て、正常収益が見込まれると判断でき、条件のすり合わせも進んだため、最終的に事業譲渡契約を結ぶ流れとなりました。

実際に行ったPMI/経営改善

事業譲渡契約を締結した後のPMIについてお話します。

PMIは大変な作業でしたが、まず細かくタスクブレイクした一覧表を作成し、その表をもとに、どの作業をどこで誰が担当するかを現場の方や先方企業の方々と話し合いながら、一つひとつ進めました。

私は、各社取引先への直接のご挨拶をはじめ、銀行口座の開設、ECサイトへの登録などの申請業務、顧客データを新しく契約したカートシステムに移行する作業などを行いました。

製造フローや取引先とのやり取りについては、引き継ぎを受けながら業務を習得しました。

今回は事業のみの譲受で、先方の社員の方々には異動せずそのまま稼働していただいていましたので、新たに必要となった分だけの人員を採用し、業務マニュアルを整備したうえで配置しました。

経営管理体制の構築では、税理士に依頼して月次決算が翌月15日までに締まるように調整しました。私は引き続き残る前提だとしても、2〜3年後にバトンタッチする際、相手が上場企業であれば月次決算を翌月15日、場合によっては10日までに求められる可能性があります。そのため、遅くても15日までには締められる体制を整えておくことが重要だと考えていました。

実際のアクションについては皆さんの関心があるところかと思いますが、いろいろと行った中で本当にバリューアップできたアクションはあまり多くありませんでした。なかなか思いどおりにはいかないものだというのが実感です。

大きく改善できたところとしては、AmazonでのEC関連業務です。SEO対策や広告運用など、WEB広告出身という私のメリットを生かしてバリューアップできたと思います。月商では、譲受した時点から大幅に伸長しています。

皆さんがよくされているコスト最適化については、PEファンドの方からも有効だと聞いていましたが、本当にその通りだと身に染みて感じました。

コスト最適化の具体的なアクションとしては、コールセンター費用、物流倉庫費、梱包材の見直しを行いました。さらに決済系プランの見直し、成果の出ていなさそうな広告宣伝費の調整も行いました。

これらの最適化により、事業承継前と比べて一定の金額を最適なものにできました。

コールセンターや物流倉庫に関しては、泥臭い作業に思われるかもしれませんが、実際に現場に足を運んでコミュニケーションを取っておくことが大事と考えていました。その上で、コールセンター、物流倉庫それぞれかなりの数に見積もりを依頼して、相場感をつかみました。見積もりの内容だけでなく、現場の雰囲気や人を考慮した上で最終的に決めた内容で大幅な削減に繋がりました。

決済手数料やNP後払いのプランは、月商に応じてコストが変動したり利率を下げる交渉ができたりすることがあります。

例えば、大手上場企業が赤字のD2C企業を買収するケースでは、大手企業のバルク契約によって決済手数料を下げられるため、買収後に早期で黒字化できるといった背景があることもあります。

想定外だった点についてもお話します。

まず良かったことは、譲り受けした時点で16年目になる事業でしたが、思ったよりロイヤルカスタマーが多かったことでした。

私自身、プロダクトの品質は良いと思っていましたが、コールセンターに寄せられる解約理由の多くが、年金生活になってしまったなどの、不可抗力な内容でした。

もう一つは生協のファンやテレビショッピングのファンといった、チャネルに紐づく顧客の存在を認識したことです。商品そのものではなく、番組が好きだから買うといった動機を持つ顧客が一定数いたおかげで、売上が落ちなかったという点がありました。

一方で、難しかったところは、商品原価については当初よりも早くコストプッシュがどの業界もあり、物流、商品原価などにヒットしてくるのだなといったところ。

また、テレビショッピングは一度卸してから返品されるビジネスですが、毎年の返品数の変動が予測できないものでした。その他に、営業しても思ったより販路が広がらなかったり業界のしがらみがあったりして難しいと感じることもありました。

売却までの流れ

売却までの流れについてお話します。一部アドバイザーに依頼したところもありますが、最終的なディールは私が進行しました。

まず、ロングリストとIM(インフォメーションメモランダム:事業の概要書)を作成しました。ロングリストの対象会社の経営陣は、紹介してもらったり、メッセンジャー・メール・電話などで直接問い合わせしたりしました。具体的に提案やIMの一部をその会社に向けてカスタマイズし、シナジーが感じられるポイントを織り込むと良い反応が得られると感じました。一方で、仲介の方にも非専任で相談し、候補を探してもらいました。

3社ほどの候補に絞ったところで、トップ面談を実施して意向表明を受領しました。条件が良さそうな企業や私がロックアップしても良いと思える相手と交渉や相談を重ね、可能な限り条件を引き上げた上で最終的な意向表明を受諾しました。

最終的に何社か手を挙げていただきまして、途中ではブレイクなども経験しながらも、2年と3ヶ月で今の会社に株式売却に至りました。

PE投資の平均Net IRRを大きく上回る成果を上げることができ、投資家の方にもご満足いただけました。

おまけ

現在、私が運営している美容サロンの会社(株式会社chizu)ではロールアップを進めています。バトンズで案件を紹介していただき、トップ面談を経て意向表明を提出しました。その後デューデリジェンスを実施し、事業譲渡契約の締結に至りました。

こういった美容店舗の事業承継もグループ会社では取り組んでいます。

チームのタスク管理 / プロジェクト管理でこのようなお悩みはありませんか?

そうなりますよね。私も以前はそうでした。タスク管理ツールを導入しても面倒で使ってくれないし、結局意味なくなる。

じゃあどうしたらいいのか?そこで生まれたのがスーツアップです。

これ、エクセル管理みたいでしょ?そうなんです。手慣れた操作でチームのタスク管理ができるんです!

見た目がエクセルだからといって侮るなかれ。エクセルみたいに入力するだけで、こんなことも

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エクセル感覚でみんなでタスク管理。
まずは以下よりお試しいただき、どれだけ簡単か体験してみてください。

 

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この記事を書いた人

スーツアップの広報担当です。スーツアップは、AIでかんたん、チームで毎日続けられるプロジェクト・タスク管理ツールです。表計算ソフトのような操作で、チームの「タスクの見える化」をして、タスクの抜け漏れや期限遅れを防ぎます。チームのタスク管理を実現することで、業務の効率化やオペレーションの改善が進み、大幅なコスト削減を実現します。

お問い合わせ先:pr@suits.co.jp

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