Suit UP

プロジェクト管理やタスク管理で本当に大事なこと ~ なぜスーツアップではこの機能が採用されたのか ~

 

投稿日:2023年11月10日 / 更新日:2024年1月27日

 

株式会社スーツでは、2023年9月27日に経営支援クラウド「Suit UP」(以下「スーツアップ」といいます。)のα版をリリースしました。このスーツアップのα版は、いわゆるMVP(Minimum Viable Product)版で、ユーザーが求める最小限のコア機能のみを提供しているバージョンになります。

今回はα版のリリースを記念して、プロジェクト管理やタスク管理で本当に大事なことと題して、なぜスーツアップのMVP版においてこの画面とこの機能が採用されたのか、また、なぜこの機能は採用されなかったのかについて説明をしたいと思います。

経営支援クラウド「Suit UP」α版のサービス開始のお知らせ

 

【まとめ】

 

1.スーツアップの特徴:表計算ソフトのようなタスク管理画面

 

 

上記のスーツアップの画面をパッと見て、どのように思われたでしょうか?「どこかで見たことがある」、「自分でも操作ができそう」・・・このようなユーザーの声を期待して、私たちはスーツアップのメインとなるこのタスク管理画面の開発を行ってまいりました。

私たちは、中小・中堅企業やスタートアップなど(以下まとめて「中小企業等」といいます。)の労働生産性を高めるために、全社タスク管理を導入したいと考えています。全社タスク管理とは、単なるタスク管理やプロジェクト管理ではなく、個人・部署・経営に至るまで会社全体のタスクを「見える化」し管理する経営管理手法です。

スーツアップは、この全社タスク管理を実現するためのシステムです。中小企業等は、全社タスク管理によって、スタッフが一丸となって組織・チームのタスク管理を行うことで、会社経営に必要な全てのタスクをモレなく・ダブりなく一元管理でき、PDCAサイクルを効率的に回せるようになります。

そのため、当たり前のことではありますが、私たちとしては、あくまでスーツアップは全社タスク管理をユーザーである中小企業等に導入する手段であって、道具でしかありません。それならば、中小企業等のスタッフにとって、できる限り、毎日使いやすく、かんたんな方がいいわけです。

そこで、私たちは、スーツアップでは、多くの社会人にとって馴染み深く、使い慣れたマイクロソフトのエクセルやグーグルのスプレッドシートなど表計算ソフトと似たような入力画面を目指しました。

多くの人にヒアリングをした結果、チームでのプロジェクト管理やタスク管理では、これらの表計算ソフトを使用しているユーザーが多かったのです。しかし、表計算ソフトはあくまで表計算ソフトであって、タスク管理を目的として作られたシステムではありません。そのため、同時に、タスクの期限の通知やチャットツールなど他システムとの連携(API連携)など機能面の物足りなさを指摘する声も多くありました。

昨今のSaaSブームもあって、世の中には素晴らしいシステムが増えました。しかし、本来は手段、道具であるはずのシステムにも関わらず、毎日の入力項目が多過ぎてユーザーが入力に多くの時間を取られてしまったり、その独自性のある入力画面によってシステムの設定や使い方を覚えることに多くの時間を要したりする事例も散見されています。

個人・部署・経営など会社に関する全てのタスクを「見える化」する全社タスク管理の実現のためには、中小企業等のスタッフみんなにスーツアップを使ってもらう必要があります。そのためには、スーツアップは、スタッフの皆さんにとって使い勝手のよい道具でなければならなかったのです。

そのため、スーツアップでは、表計算ソフトのようなインタフェース(入力画面)を採用し、また、後述のとおり、入力項目もあえて少なく絞ることで、毎日かんたんに入力し続けることができることを目指したのです。

α版をリリースして1ヶ月が経過しましたが、私たちのこの取り組みの評判は上々で、スーツアップを導入してくださっている中小企業等のスタッフの皆さんから「(使い始めた)その日から使うことができる!」、「操作説明を教えてもらわなくてもかんたんに使える!」などのコメントをいただいています。

 

2.スーツアップのタスク、組織、コミュニケーションのタブ

 

 

スーツアップには、タスク管理だけではなく、組織とコミュニケーションについても設定する画面があります。

中小企業等の経営者の方には全社タスク管理が導入・運用できないと言う方が多いのですが、スタッフの自主性に任せて全社タスク管理を導入しても、なかなか会社で抱える全てのタスクの「見える化」は実現しませんし、何より全社タスク管理の運用は続きません。

全社タスク管理とは、文字どおり全社でのタスク管理で、組織に所属するスタッフみんなが、組織のために、一丸となって行うタスク管理なのです。

そのためには、スタッフの上司・部下の関係であったり、組織ごとの役割であったりを定める必要がありますし、組織に基づいてタスク管理を行う必要があります。また、先ほどのとおり、スタッフに一任して全社タスク管理が実現できれば問題はないのですが、そういうわけにはまいりません。実際には管理職がしっかりと部下のタスク管理をサポートして、時には一緒になって、タスクの設定やタスク期限の確認などを行うための定例会議の設定をするなどしてタスク管理を行わなければなりません。

そのため、スーツアップの画面上部には、「タスク」、「組織」、「コミュニケーション」のタブが用意されています。

スーツアップの使用に際しては、まず組織階層、役職名や部署の定義など組織の定義をしてもらい、その後、各スタッフの氏名や所属を入力してもらいます。次に会社の1ヶ月の会議体の設定をしてもらって、会社全体の会議についてコミュニケーションをデザインします。これらのセットアップが終わって、その後、個人・部署・経営のタスク入力に移るのです。

私たちは、中小企業等の労働生産性を実現する全社タスク管理は決してスタッフ一人の責任感や努力では実現できず、チームの力でサポートし合わなければ持続できないと考えているのです。そこでスーツアップでは、全社でタスク管理を運用する前提として、組織とコミュニケーションの入力画面を用意しています。

 

3.スーツアップのタスク管理画面の入力項目

 

 

スーツアップのタスク管理画面の全タスク画面では「大項目・中項目」「タスク名」「概要」「重要度」「緊急度」「責任者」「担当者」「期限」「非公開」「Wiki」及び「備考」の11項目が設けられています。この11項目は、ユーザーが、見やすいフォントサイズで、横スクロールをしないで済む最大の項目数となっています。

スーツアップでは、入力項目をあえて少なく絞ることで、中小企業等のスタッフの皆さんが毎日かんたんに入力し続けられることを目指しています。私たちは、この11項目を設定するために、長期間にわたり議論を繰り返してまいりました。これらの項目は、全社タスク管理を実現するために深く考えられて設定されています。

私たちは、まずタスク管理で一番重要なことは、①「タスク名」などタスク情報、そのタスクの②「担当者」、そして、③「期限」であると考えました。次にそのタスクを管理するためには、「大項目・中項目」と「タスク名」の3段階でグループ分けして表示することが視認性の観点から良いと考えました。そして、実際に行動するタスクの中身が「タスク名」だけで分からない場合は、タスクの説明を「概要」に記入することが必要だと考えました。

私たちはチームでタスク管理を行う全社タスク管理の導入を目標としています。そのため、タスク管理を「担当者」だけにするのではなく、実際の組織と同じように「担当者」をサポートする「責任者」の項目を追加しました。これによって、一人でタスク管理を行うのではなく、組織でタスク管理を行えるようになります。こちらは組織の設定を予めしてもらうことでプルダウンでメンバーを選択することができます。

そして、アイゼンハワーマトリクスを取り入れて、タスクの「重要度」と「緊急度」の項目を設定できるようにしています。アイゼンハワーマトリクスとは「重要度」や「緊急度」に応じてタスクを整理し、優先順位を付けるタスクマネジメント手法です。どうしても緊急度が高く期限の近い日常業務に追いやられて、会社にとって「重要度」は高いが「緊急度」が低いタスクは着手されない傾向にあります。そのため、この2つの項目があるだけで「重要度」が高く「緊急度」が低いタスクを「見える化」することができ、一度「見える化」さえされていれば、いつか誰かがリーダーシップを発揮してこの重要なタスクをやろうという話になるのです。

「非公開」については、タスクを「非公開」に設定するための項目です。私たちは全社タスク管理で重要なことは「見える化」だと考えています。2020年に新型コロナウィルス感染症問題が生じて以降、急速に世の中のサラリーマンはオフィスに出社しなくなり、業務のオンライン化が進みました。そのため、同じ部署であっても、同僚スタッフが何をしているのか、何に困っているのかが分からなくなってしまいました。チームでタスク管理を行う際に、全てのスタッフのタスクが「見える化」されれば、経営がどちらに向かっているかを知ることもできますし、チームでの助け合いもできるようになります。本来は会社に存在している全てのタスクは全てのスタッフに公開されても困るタスクはないはずです。しかし、やはり人事や資金繰りに関する情報などを情報共有してしまうと、逆に組織の不安を増やしかねないので、非公開設定ができるように「非公開」の項目を設けています。

「Wiki」は定型タスクのために設けられている項目で、業務の「仕組み化」「標準化」のためのメモ置き場となっています。スーツアップでは、非定型タスクと定型タスクと大きく2つに分けてタスク管理をできるようにしています。これによって業務の「仕組み化」「標準化」を意識しやすくするようにしています。本来は、給与やスキルの観点からも、管理職は非定型タスクが多く、一般スタッフは決められた定型タスクが多くなることが望ましいわけですが、スーツアップでのタスク管理を通じて、スタッフの定型タスク・非定型タスクの実行状況(実行割合)などもモニタリングすることができます。

このように、スーツアップでは、全社タスク管理を導入するうえで必要な項目は残しながらも、不必要な入力項目を減らすことで、中小企業等のスタッフにとって日々の入力をかんたんにすることを第一に考えています。

 

4.ガントチャート、タスクの進捗率は要らない!?

 

逆に、スーツアップのα版のリリースにあたり、不要だと判断した2つの機能をご紹介したいと思います。

まずガントチャートです。プロジェクト管理やタスク管理ツールの代表的な機能として言われるガントチャートですが、スーツアップでは当該機能をつけていません。ユーザーヒアリングを実施したところ、ガントチャートについては、社外や上司へのプレゼンテーションなどでは使用するものの、タスク管理をしっかり運用する、すなわちタスクの役割分担と期限管理という観点からは、実際に活用していないという意見がほとんどでした。

私たちもガントチャートについては深く考察をしましたが、ガントチャートを作成する際にタスクの実施期間が、スタッフの入力の重荷になると判断をしました。前述のとおり、私たちはタスクの「期限」は項目として採用していますが、実施期間となると「期限」だけでなく「始期」の定義が必要になります。この1つの項目があるだけで管理はとても煩雑になります。

もし「Aというタスクは、来週水曜日から金曜日までに実施してください。また、Bというタスクは、再来週の木曜日と金曜日で実施してください。」と言われたとしたら情報量が多いように感じませんか?「「Aというタスクは来週金曜日まで、また、Bというタスクは再来週の金曜日までに実施してください。」と言われれば情報量がだいぶ減るのです。日常の業務において、期限の遵守は当たり前のことですが、その仕事を行う期間まで指定される仕事はまれだと思います。

次にタスクの進捗率です。他のタスク管理ツールでは、自己申告・自己評価で「このタスクの進捗率は70%」などと記入させる機能が多くありますが、こちらもスーツアップでは機能をつけていません。こちらですが、例えば経験の浅い若手スタッフが「このタスクの進捗は80%!」と意気揚々に評価したとしても、経験のある上司からすれば「う~ん、この80%の進捗率は本当かな? 早い段階でチェックしないと危ないのでは?」となることがあると思います。この自己評価の進捗率に、信憑性や信頼性がないならば、そもそも入力させる意味はありません。スタッフからすれば、この進捗率の項目があるだけで、1つずつタスクの進捗率について評価をせねばならず、とても重い入力作業になってしまいます。

このように世の中にあふれているプロジェクト管理、タスク管理ツールの機能を見直して、本当に必要な機能だけに絞ってスーツアップではシステム開発をしています。全社タスク管理の導入を実現するためには、スタッフみんなが持続して入力し続けることが何より大事なのです。そのため、スタッフに不要な項目を入力させて、その結果、タスク管理が持続できないのでは本末転倒以外の何物でもありません。

 

5.最後に:毎日使われ、愛されるスーツアップを目指して

 

スーツアップでは、中小企業等の労働生産性の改善のために、全社タスク管理の導入を目指しています。

チームでプロジェクト管理やタスク管理を行う場合、決して多くの入力項目やチェック項目があるわけではなく、スタッフ全員が決められた最低限の項目をしっかりと入力をし続けること、チームが一丸となってタスク管理の運用をし続けることが何よりも重要だと思います。

そのため、スーツアップでは、やみくもに多機能を目指すことはなく、とにかく中小企業等のスタッフの皆さんに負荷のないようにかんたんに入力・管理できるようなシステムを目指していきたいと考えています。時にはAIのような新しい技術も必要でしょうし、様々な使用場面を想定して細かい場合分けが必要な場合もあると思います。私たちはユーザーの利便性と操作性を追求して深く考えられたシステム開発を行ってまいります。

あくまでスーツアップは、全社タスク管理を実現するための手段であって道具です。今後も私たちは、スーツアップを、「やさしいテクノロジー」を標榜し、ユーザーの皆様に毎日使われ、愛されるシステムに改善をしてまいります。

経営支援クラウド「Suit UP」のβ版のリリースは2024年3月を目標にしています。それまでの期間にも大規模な機能開発を毎月のようにリリース予定です。今後のスーツアップの機能追加についてもご期待ください。

 

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2.チームのためのタスク管理と正しいタスク管理の方法

3.スーツアップによって実現できる7つのこと

 

※ 「経営支援クラウド」「Suit UP」及び「全社タスク管理」は株式会社スーツの登録商標です。

 

株式会社スーツ 代表取締役社長CEO 小松 裕介

2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、東証スタンダード上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に当社の前身となる株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より、総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師登録。2019年6月より、国土交通省PPPサポーター。
2020年10月に大手YouTuberプロダクションの株式会社VAZの代表取締役社長に就任。月次黒字化を実現し、2022年1月に上場会社の子会社化を実現。
2022年12月に、株式会社スーツを新設分割し、当社設立と同時に代表取締役社長CEOに就任。

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