スーツアップの最終的なターゲットと現時点(α版/2023年9月時点)のユーザーイメージ
株式会社スーツでは、2023年9月27日に経営支援クラウド「Suit UP」(以下「スーツアップ」といいます。)のα版をリリースしました。スーツアップは、中小・中堅企業やスタートアップなど(以下まとめて「中小企業等」といいます。)の労働生産性を高める、全社タスク管理を実現するSaaS(Software as a Serviceの略語、月単位・年単位(サブスクリプション)で活用できるソフトウェアサービス)です。全社タスク管理とは、単なるタスク管理やプロジェクト管理ではなく、個人・部署・経営に至るまで会社全体のタスクを「見える化」し管理する経営管理手法です。本稿では、スーツアップの最終的なターゲットを明らかにするとともに、α版/2023年9月時点のユーザーイメージをお示ししたいと考えています。
経営支援クラウド「Suit UP」α版のサービス開始のお知らせ
【まとめ】
- 中小企業の労働生産性の向上は日本経済の課題。中小企業は、日本全体の従業者の約70%が働いているが、付加価値額は約半分しか産み出せていない。
- スーツアップは、最終的には、スタッフ数が10名以上100名未満の114万事業所、その従業者の2,754万人がターゲット。
- スーツアップはSaaSのためシステム開発が継続され多機能・高機能化。それに伴いターゲットも拡大する。
- スーツアップのα版時点のユーザーイメージは「10名以上100名未満のスタッフ数の中小企業等で、社長を中心にスタッフが全社タスク管理を導入したいと考えていて、論理的な整合性のある組織図がありスタッフと組織の役割分担があって、社内の定例会議を実施しており、そして、タスク設定を少なくとも幹部社員ができる企業」。
1.中小企業等のために作られた経営支援クラウド「Suit UP」
スーツアップは、株式会社スーツの代表者である私の約20年の中小企業等の企業価値向上(バリューアップ)の経験に基づいて作られています。
当社では、2014年の設立当初より、日本全体の従業者の約70%が働いているものの、付加価値額は約半分しか産み出せていない中小企業の労働生産性の向上を取り組むべきテーマとして掲げて会社経営をしてまいりました。
このような中で、2021年12月下旬に、代表取締役社長を務めていた大手YouTuberプロダクションの株式会社VAZの上場会社へのM&Aが決まり、私は気分を新たに当社が経営支援をする他のクライアントの経営者と話をしていました。その時に、ふと、私が今まで経営支援してきた内容は、各社の事業内容や成長ステージこそ違いますが、抽象度を高めると同じことを繰り返しているなと思ったのです。
私は、プロ経営者や経営コンサルタントとして、多くの中小企業等を経営支援を行い、おかげさまで成果もそこそこに出してまいりました。しかし、各社における経営改革は決して難しいことをしてきたわけではなく、人が集まって組織で働くこと、チームで働くことを仕組みとして創ってきたに過ぎません。それをもっと具体的にいうと、主には中小企業等の「組織を定義し、コミュニケーションをデザインし、全社的にタスク管理を行うということ」、つまりは全社タスク管理の導入をしてまいりました。
今まで私は自分の限られた時間の中で1社ずつ中小企業等の経営と向き合ってきたわけですが、この全社タスク管理をシステム化すれば、一気に、より多くの中小企業等に貢献することができます。そこで、2022年元旦に企画書を書いて、全社タスク管理ツール・経営支援クラウド「Suit UP」の企画・開発がスタートしました。
また、この全社タスク管理が必要となる組織の人数ですが、本来は例えスタッフ数が2名であっても、それこそ全社的にタスク管理をしなければ労働生産性は落ちてしまいます。感覚的には、真面目な経営者の方であれば、スタッフ数が5名程度であれば、マイクロソフトのエクセルやグーグルのスプレッドシートなどの表計算ソフトを用いて、全社的にタスク管理をしていることが多いように思います。そして、やはりスタッフ数が10名を超えたあたりから、ちゃんと組織にして、組織運営のためのコミュニケーションのルールも作って、みんなで協力してタスク管理をしなければ全社タスク管理は運用できなくなっていくのです。
このようなこともあって、スーツアップでは、企画当初から、中小・中堅企業、スタートアップ企業のうち10名以上100名未満のスタッフ数の企業がターゲットとして設定されています。
2.スーツアップのターゲットである中小企業等の統計データ
スーツアップのターゲットである10名以上100名未満の中小企業等ですが、中小企業白書の「従業者規模別事業所数及び従業者数2021年(令和3年)」によれば、10名以上100名未満の事業所数は114万事業所、従業者数は2,754万人で従業者の47.94%が働いています。
スーツアップは、全社タスク管理を導入・実現するツールですので、Horizontal SaaSと言われる、業界・業種に関係なく、全ての会社で使用することができるSaaSです。
そのため、TAM(Total Addressable Market)と呼ばれる、市場で獲得できる最大の市場規模は、前述のとおり、日本で働く従業者の約半分がターゲットとなり広大にあります。
しかし、当たり前ですが、TAMが大きいからと言って、それがすなわちスーツアップのユーザーになるわけではありません。
また、忘れがちなのですが、所詮、システムは手段・道具でしかありません。スーツアップは全社タスク管理をユーザーである中小企業等に導入する手段・道具なのです。やはり、社長をはじめスタッフみんなに全社タスク管理を導入したいと思ってもらい、その解決手段としてスーツアップを使ってもらわなければならないのです。
特に全社タスク管理で重要なのは、スタッフみんなが継続してタスク情報を入力し続けることなのです。これによって全社のタスクの「見える化」が実現でき、会社の中で、どの担当者が何のタスクをいつまでに期限設定をしているのか、また、どのタスクが期限を超過してしまっているのかなどを把握することができます。そのため、もしタスク情報の入力ができていないスタッフがいるようならば、入力するように連絡・指導したり、時には一緒になって入力をしてあげなければなりません。
また、SaaSのビジネスの面白いところですが、継続してシステム開発を続けていくビジネスモデルのため、時間の経過とともに、システムが多機能・高機能になり、対象顧客が広がっていくのです。
スーツアップでは、最終的には、この10名以上100名未満の事業所数は114万事業所、2,754万人の従業者をターゲットにしていますが、α版の段階では、システムの機能的な制約もあり、もっと絞ったターゲットを狙っています。
3.スーツアップのα版のユーザーイメージ
スーツアップのα版は、いわゆるMVP(Minimum Viable Product)版で、ユーザーが求める最小限のコア機能のみを提供しているバージョンです。
私たちは、中小企業等の労働生産性を実現する全社タスク管理は決してスタッフ一人の責任感や努力では実現できず、チームの力でサポートし合わなければ持続できないと考えています。そこでスーツアップでは、全社でタスク管理を運用する前提として、組織とコミュニケーションの入力画面を用意しています。タスク管理を運用するために、チームの力を発揮できるように予め組織とコミュニケーションの定義をするのです。タスク管理画面だけでなく、これらも合わせてスーツアップのコア機能と定義して、α版で使えるようにしています。
私たちは、このコア機能のみが実装されたスーツアップのα版を使って全社タスク管理を実現できるユーザーイメージを以下のように想定しています。
10名以上100名未満のスタッフ数の中小企業等で、社長を中心にスタッフが全社タスク管理を導入したいと考えていて、論理的な整合性のある組織図がありスタッフと組織の役割分担があって、社内の定例会議を実施しており、そして、タスク設定を少なくとも幹部社員ができる企業
前段の「10名以上100名未満のスタッフ数の中小企業等」、「社長を中心にスタッフが全社タスク管理を導入したいと考えている」については前述のとおりですが、後段についても詳しく説明します。
全社タスク管理の導入のポイントですが、スタッフみんながタスク管理の最低限の項目である「タスク名」「担当者」「期限」を入力し続けることが何より大事なのです。スタッフ任せでは全社タスク管理はなかなか実現できませんので、会社として組織的なサポートを構築する必要があります。それが組織とコミュニケーションなのです。
まず、組織については「論理的な整合性のある組織図がありスタッフと組織の役割分担がある」という会社を対象としています。現時点では、組織図がなかったり、例えば全社のスタッフ数合計が20名の会社にも関わらず本部長がいるような組織階層が多い会社や課という部署は存在するものの課長の部下がいない会社など組織がぐちゃぐちゃだったりするような会社のサポートは、さすがにSuit UPのシステムだけではサポートすることができない状況です。経営学に「組織は戦略に従う」という格言があるように、社長に経営戦略を聞いて、スタッフにもオペレーションの状況を聞かなければ組織を構築することはできません。これらは、さすがにシステムではなく、人の手で行わなければ実行することができません。
次に、コミュニケーションについては「社内の定例会議を実施している」という会社を対象にしています。繰り返し記載をしていますが、スタッフだけにタスク管理を任せても、なかなか持続できるものではありません。いわゆるTo Do Listのように、自分が担当するタスクの管理だけならば続けられるのですが、他のスタッフのタスク管理まで続けるにはそれこそ強いモチベーションがなければならないのです。そこで必要になってくる仕組みが定例会議です。部署や役職者以上など組織の一部を構成するメンバーで定例会議を行って、そこでタスクの設定、更新や期限管理などを会議に参加するメンバーみんなで一緒に行うのです。作業効率だけを考えると会議に参加するスタッフがそれぞれタスク情報の更新をしてくれることが望ましいのは言うまでもありませんが、多くの場合は、他者への貢献や組織への貢献、すなわち全社タスク管理へのモチベーションがそこまで高くないため、どうしてもタスクの更新作業は滞ってしまうものです。そのため、スーツアップのα版では、複数人による同時編集機能を用意していますので、定例会議のその場で一緒になってタスクの設定や更新をしてもらえればと考えています。
最後に、「タスク設定を少なくとも幹部社員ができる」については、全社的にタスク管理をするためには、まずは会社として必要なタスクの設定が適切にできなければなりません。もちろん一般スタッフも含めて全スタッフが適切にタスク設定をできることが望ましいわけですが、少なくとも幹部社員がタスク設定できないと、全てのタスク設定を社長がしなければならなくなってしまいます。これを大企業に所属する方などは極端な例え話のように感じる方もいるかもしれませんが、中小企業等だと、社長が指示を出さなければ一切スタッフが動かないという会社はそれなりにあるのです。Suit UPのα版では、個人・部署・プロジェクトや全社でタスク管理をすることができますので、少なくとも部署ごとにタスク設定できる幹部社員がいれば、スムーズに運用できると思います。
さらに、他のスーツアップのα版のユーザーイメージとしては、「マイクロソフトのエクセルやグーグルのスプレッドシートなど表計算ソフトでの全社タスク管理の導入にチャレンジしたけれど、挫折した企業」も挙げられるかもしれません。
経営者として、また、会社全体として、全社タスク管理の有用性や必要性について理解があったとしても、表計算ソフトで全社タスク管理を導入し管理し続けるのは至難の業だと思います。私も様々な中小企業等の経営支援で表計算ソフトを用いて全社タスク管理を導入してまいりましたが、全てのスタッフに日々タスク更新をさせ、タスクの期限を遵守させるには、相当きめ細やかに連絡・指導をしなければならず、多大な労力を払わなければなりません。
これらを、かんたんに運用できるようにするためにスーツアップは開発された経緯がありますので、表計算ソフトで、全社タスク管理の導入をしようとチャレンジして挫折された方にはスーツアップはぴったりかもしれません(表計算ソフトではなく、その他のタスク管理・プロジェクト管理ソフトで、全社タスク管理の導入ができなかった方にも、ぜひスーツアップをご使用いただきたく考えています。)。
なお、スーツアップのα版では、上記のとおり、組織、コミュニケーション、タスクとユーザーの皆さんにも一定のレベルを求めていますが、当社では2023年3月より「全社タスク管理導入コンサルティング・サービス」を提供しており、コンサルタントが人の手と頭でサポートすれば全て問題解決をすることもできます。
最後に、スーツアップでは、当社のエンジニアチームが日夜、機能の改善や機能の追加を行っています。そのため、徐々にユーザーイメージの対象も広がってまいりますので、今すぐのスーツアップの使用、並びに、全社タスク管理の導入は難しそうだと考えられる会社も、今後のスーツアップの利便性や操作性の向上をお待ちいただければと思います。
【関連ブログ】
1.スーツアップで実現する全社タスク管理の導入・運用方法
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3.2024年のスーツアップ(α版からβ版への進化について)
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