Suit UP

スーツアップは「経営支援クラウド」から「実現支援クラウド」へ

 

投稿日:2023年12月22日 / 更新日:2024年2月2日

 

株式会社スーツでは、2023年9月27日に経営支援クラウド「Suit UP」(以下「スーツアップ」といいます。)のα版をリリースしました。スーツアップは、中小・中堅企業やスタートアップなど(以下まとめて「中小企業等」といいます。)の労働生産性を高める、全社タスク管理を実現するSaaS(Software as a Serviceの略語、月単位・年単位(サブスクリプション)で活用できるソフトウェアサービス)です。本稿では、単なる全社タスク管理ツールに留まることなく、中小企業向けの経営コンサルタントの代替を目指すスーツアップが最終的に目指している世界観「実現支援クラウド」について記載したいと考えています。

経営支援クラウド「Suit UP」α版のサービス開始のお知らせ

 

【まとめ】

 

1.中小企業向けの経営コンサルタントの世界

 

私はかれこれ約20年ほど中小企業等の経営に携わってきています。2014年に上場会社の代表取締役社長を辞めて独立してからは、経営コンサルタントとして中小企業等の「経営支援」をしてまいりました。本来は、経営コンサルタントですから、企業経営の専門的な事柄の相談や指導をする「コンサルティング」と書くべきところなのですが、「経営支援」と記載していることには理由があります。

私の経験では、多くの中小企業等は「コンサルティング」を受けるだけでは企業価値向上を実現できません。豊富な経験とノウハウを持つ経営コンサルタントが「コンサルティング」すればその会社は良くなるのではないかと思われると思います。しかし、多くの中小企業等の場合は、相談・指導する相手が社長になってしまい、その社長がその改善策の実行について担当者を充てることができないなどの理由から、相談・指導しても、実際に実行されないことが多いわけです。当たり前ですが、実務においては戦略の立案や改善策などのノウハウと実行の間には大きな隔たりがあります。最終的に企業経営で重要なことは実行で、どんなに素晴らしい戦略や改善策であったとしても実行されなければ意味がありません。

そのため、私は、中小企業等に対しては、相談・指導だけではなく実行まで手伝う、「経営支援」をしなければなかなか企業価値向上が実現できるものではないと考えています。

それでは、中小企業等の経営コンサルタントが、クライアント企業の社長からどのような内容を相談され、指導しているかというと、それは決して専門的な難しいことではないことがほとんどです。

企業分析を例にします。大企業の経営企画担当だと、経営学で学ぶようなSWOT分析・4P分析や3C分析のようなビジネス・フレームワークを使うようなことはないと思います。大企業は、論理的な整合性が取れている出来上がったビジネスモデルがキャッシュフローを創出していて、スタッフの多くもその「仕組み」を回す役割を担っています。そのためビジネス・フレームワークという簡便な分析では新たな価値は生み出せないのです。もっと深い分析が必要で、社内外、専門家やお客様にヒアリングを行うなどリサーチに時間をかけて、それら情報をロジカルに分析して、その分析に基づいて戦略立案をするのです。

一方で、中小企業等では、そもそも分析をしたことがないという経営者がほとんどですし、経営資源にも限りがありますから、リサーチに多くの時間を割く余裕はありません。そのため、場合によっては、ビジネス本であったり大学の経営学の教科書であったり、今の時代ですからインターネットでかんたんに取得できる経営ノウハウをどう活用するかが、効率よく企業価値向上を実現する際のポイントになるのです。先ほど事例に挙げたようなビジネス・フレームワークを使って、会社の状況を分析することも多いと思います。何もやったことがない中小企業等の経営者からすれば、これだけでも自社の置かれている状況を整理して理解することができます。

つまり、中小企業等の企業経営では、専門家しかできないような専門性の高いことが求められているというよりも、教科書に載っているような基本的な経営ノウハウを実行できることが求められていて、中小企業等の経営コンサルタントはその実行をサポートしているのです。

業界外の方からすれば、教科書の内容を教えて実行のお手伝いをするだけで経営コンサルタントを名乗っているのかと思われるかもしれませんが、多くの場合、中小企業等に専門的で難しいことを持ってきても実行できる組織的な能力はありません。

 

2.欲しい経営ノウハウにたどりつけない中小企業等の経営者たち

 

私が物心がついてインターネットを始めた時から、インターネットに接続して、YahooやGoogleなどの検索システムを使えば、すぐに世界に散らばっている様々な情報にアクセスできると習い、そのようにインターネットの活用をしてまいりました。

それでは、なぜ中小企業等の経営者が、前項で記載したような教科書に載っているような基本的な経営ノウハウにたどり着けないのでしょうか?

それは、そもそも、経営ノウハウのページにたどり着くための検索ワードにすらたどり着くことができないからです。

スタートアップ起業家など時代の最先端を走っている方からすれば驚くかもしれませんが、世界は思っている以上に断絶しているのです。よくインターネットによって「世界が小さくなった」と表現されますが、確かにインターネットを使いこなすことができる人にとってはそうかもしれませんが、使いこなせない人からすれば、世界のサイズは昨日も今日もそのままなのです。情報格差は広がるばかりです。

私の仕事の環境では、この約10年でメールの使用は激減していて、社外の取引先の方ともビジネスチャットツールを使用してやりとりをしています。しかしながら、統計データ(※ Chatwork株式会社の2023年12月期第3四半期決算説明資料に記載の2023年3月第三者機関調査による)を見ると、未だにビジネスチャットツールの普及率は18.6%しかない状況です。

大企業では当たり前のように行われていることや、東京の会社では当たり前に行われていることが、地方の中小企業等では決して当たり前ではありません。地方の中小企業等で働く人々が決して能力的に優秀ではないということではなく、インターネットによって「世界が小さくなった」はずなのに、情報の偏在は広がるばかりなのです。

この事実からすれば、決して検索エンジンは万能ではなく、情報へのアクセスを可能にすることと、情報にアクセスできることには大きな隔たりがあることが分かると思います。

そのため、中小企業等の経営者は、企業経営に役立つ、大企業や東京の企業では当たり前になっている検索ワードにすらたどり着けていないのが実情です。そこで中小企業等の経営コンサルタントが、検索エンジンに代わって、その検索ワードや経営ノウハウを中小企業の経営者に提供しているのです。

 

3.専門家とAIによるタスク雛型という解決策

 

私たちは日本の従業者の7割が働く中小企業等の労働生産性の改善をしたいと考えています。そこで、この問題に対応するために、スーツアップでは専門家とAIによるタスク雛型の提供の準備をしています。

スーツアップでは、単なる全社タスク管理ツールに留まることなく、中小企業向けの経営コンサルタントの代替、つまり中小企業等の経営コンサルタントのシステム化を目指しています。そのため、スーツアップの正式名称は経営支援クラウド「Suit UP」としており、全社タスク管理ツールであることよりも中小企業等の経営支援を実現することを前面に出したサービス名にしています。

前述のとおり、中小企業等の経営者は、インターネットを用いても、教科書に載っているような基本的な経営ノウハウにたどり着けていません。そのため、誰かが介在して、その情報を提供する必要があるのです。それを私たちはスーツアップで解決したいと考えています。

タスク管理では、誰が、どのようなタスクを、いつまでに実行しなければならないかを決めます。このタスク管理で、特に巧拙が生じるのは、どのようなタスクを行うかというタスク設定です。極端な話、そもそもスタッフが行うべきタスク設定を誤ってしまうと、労働生産性の向上どころか、そのタスクが終了しても目的が達成されないのです。

スーツアップではタスク設定を、スタッフが実行する最小単位の作業や課題である「タスク名」、この「タスク名」を管理しやすくグループ分けするための「中項目」「大項目」と用意しています。この3つの区分けでタスク設定をするわけですが、並列関係を意識してタスクを網羅して記載するのもいいでしょうし、時系列を意識して記載するのもいいと思います。「タスク名」については、特定のスタッフだけではなく誰でも理解しやすく、実行に着手しやすい具体性と抽象度・粒度で設定しなければなりません。

中小企業等の経営者やスタッフの方だと、このタスク設定が上手くできない会社もあると思います。知っている経営ノウハウについてはタスク設定することができると思いますが、やはり大企業や東京の企業では当たり前になっていることであっても、経営ノウハウを知らなければタスク設定をすることはできません。

そこでスーツアップでは、業種業態や職種に応じて、専門家のアドバイスに基づいて作成したタスク雛型を用意しようと準備をしています。自分の仕事に最適なタスク雛型があれば、経営ノウハウの詳細を知らない人であっても、こういうタスク設定があるのかと知ることができ、コピーしてそのまま使うことができます。タスク設定ができれば、あとはそのタスクを実行する担当者と、いつまでに実行しなければならないかという期限を決めれば、最低限のタスク管理は完成していると言えます。

そのため、スーツアップでは、中小企業等の経営者が経営ノウハウにかかるキーワードを検索エンジンで検索できないという問題点をクリアするために、ワークスペースに登録する会社の業種業態、スタッフの方の役職や部署を考慮して、適切なタスク雛型を推薦する仕組みを準備しています。最初はその検索ワードや経営ノウハウを知らなくても、中小企業等の経営コンサルタントに教えてもらうのと同じように、スーツアップが中小企業等の経営者やスタッフの皆さんに新しいタスク設定を提示してくれるのです。

また、スーツアップでは、ユーザーの皆さんが入力してくれるタスクをAIを用いて分析して、業種業態や職種ごとのベストプラクティスのタスク雛型を自動的に制作してまいります。タスク雛型の制作に「集合知」を用いることで、専門家の目線だけではなく統計的に正しいタスク雛型にしたいと考えています。なお、当社では、このAIの制作のために、2020年中国・清華大学による「世界的AI研究者2000人」に選出(※ 日本人は8名)された世界的なAI研究者である榊剛史博士を技術顧問に迎えています。

 

4.経営支援クラウドから実現支援クラウドへ

 

スーツアップは、まずは全社タスク管理ツールとして、組織とコミュニケーションを前提とする全社的なタスク管理を実現します。そして、近日中に実装予定ですが、スーツアップに専門家やAIによるタスク雛型の機能を追加することで、全てのユーザーに業種業態や職種ごとのベストプラクティスのタスク設定そのものも自動できるようにし、実行の支援をし、中小企業等の労働生産性を高める経営支援のツールにしていきたいと考えています。

YahooやGoogleなどの検索システムは世界中の情報を整理しました。しかし、インターネットの世界の中でいかに情報を整理しても、全ての人々が検索ワードを知り得て情報にたどり着けているわけではありません。情報格差は拡大するばかりで、大企業と中小企業等、東京と地方と情報は偏在していて、全ての人々のやりたいことの実現には、多くのハードルがある状態だと思います。

このような状況下で、私たちはスーツアップを通じて、より良いタスク設定の方法を創造し、人々のやりたいことの実現をサポートしたいと考えています。検索エンジンではたどり着けなかったユーザーに必要な検索ワードや経営ノウハウを適切に提供することによって、人々のやりたいことのタスク設定を実現します。タスク設定さえできれば「知らないから、できない」という状況を脱却でき、「知っているけど、できていない」に状況は大きく改善されるのです。知ってさえいれば、あとはそのユーザーにやる気があれば”なんとかなる”状況だと思います。自分で調べてそのタスクを実現するのも良いですし、責任者や担当者に誰か別の人を配置して、誰かに実現してもらうのでも良いと思います(こちらは社内のスタッフに限らず、社外の業務委託先のスタッフや協力会社に委託するのでも良いと思います。)。

そして、将来的には、スーツアップは、企業経営という領域を飛び出して、全ての人のやりたいを実現する実現支援ツールになります。今しばらくはタスクは企業経営に関することを中心に展開していきますが、ゆくゆくは料理や洗濯などの日常生活へと拡げてまいります。そうなると人類の全てのタスク設定がスーツアップで実現できるようになります。その暁には、経営支援クラウド「Suit UP」は、会社経営のタスク設定だけでなく、全ての人々のやりたいことの実現のサポートをする実現支援クラウド「Suit UP」となるのです。

 

【関連ブログ】

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2.優秀なビジネスパーソンの定義は「凡事徹底」ができる人に変わった

3.スーツアップは社長をリーダーにするタスク管理ツール

 

※ 「経営支援クラウド」「Suit UP」及び「全社タスク管理」は株式会社スーツの登録商標です。

 

株式会社スーツ 代表取締役社長CEO 小松 裕介

2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、東証スタンダード上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に当社の前身となる株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より、総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師登録。2019年6月より、国土交通省PPPサポーター。
2020年10月に大手YouTuberプロダクションの株式会社VAZの代表取締役社長に就任。月次黒字化を実現し、2022年1月に上場会社の子会社化を実現。
2022年12月に、株式会社スーツを新設分割し、当社設立と同時に代表取締役社長CEOに就任。

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