藤本 了甫氏(株式会社トランスファーデータ 取締役CAO)と小松 裕介(株式会社スーツ 代表取締役社長CEO)によるQ&A

当社では、2025年3月25日にゲスト講師に、株式会社トランスファーデータの取締役CAO 藤本 了甫氏を迎え、第5回目となるスーツアップ特別ウェビナー「中小企業でもできる!コーポレートDXの肝とは?〜なぜSaaSベストプラクティス活用が有効なのか〜」を開催しました。 

本稿では、中小企業の皆様にとって有益な情報が満載だった本ウェビナーの内容を、前編・後編の2回にわたりダイジェスト版としてお届けいたします。

後編は、ゲスト講師の藤本氏(株式会社トランスファーデータ 取締役CAO)と当社代表者の小松(株式会社スーツ 代表取締役社長CEO)による対談の内容です。藤本氏のご経歴は以下のとおりです。

<株式会社トランスファーデータ 取締役CAO  藤本 了甫>

2007年に国際基督教大学を卒業後、製造業の経理部で原価計算担当としてキャリアをスタート。その後、外資系、日系、スタートアップ企業でコーポレート部門を中心に業務改善を主導。スタディプラス株式会社にて管理部部長を経て、2020年に株式会社AIトラベルへCOOとして参画。 現在、株式会社トランスファーデータの取締役CAOとしてコーポレート業務に従事。中小企業診断士/freee認定アドバイザー。

前編のゲスト講師の藤本氏による講演「“BPaaS”で実現する中小企業のDX〜成長ビジネスの最前線 〜」はコチラから。

【まとめ】

    • 大企業と中小企業のSaaS活用
    • SaaS選定の難しさと専門家の役割
    • DX着手の優先順位
    • 中小企業DXの推進主体
    • コーポレート業務の未来
    目次

    大企業と中小企業のSaaS活用:その違いと共通点

    株式会社スーツ 小松裕介(以下「小松」といいます。):

    今日のテーマは中小企業向けのSaaSです。当社のチームのタスク管理・プロジェクト管理ツール「スーツアップ」が中小企業向けのSaaSということもあって、このウェビナーも中小企業をターゲットにやってきています。

    よくSaaSはエンタープライズ(大企業)向けと言われますが、藤本さんがSaaSを手がけてこられた中で、どのようなところに大企業と中小企業の違いを感じられますか?

    株式会社トランスファーデータ 藤本了甫(以下「藤本」といいます。):

    まずエンタープライズでは規模の経済が働きやすいというのがあります。AIトラベルだと3万人くらいの従業員が所属しているホールディングス企業も扱っているので、例えば3万人規模の企業にSaaSを導入すれば、3万人が一気に使い始めると効率が上がるのは確かです。

    しかし、従業員数が50人や100人の中小企業だからといって効果が出ないわけではありません。根本的に困っている課題は、企業規模に関わらず共通していることが多いです。

    例えば、出張でいうと経費精算の手間や個人の立替えの問題は、100人規模の会社でも1万人規模の会社でも発生しています。そこにどれだけコストが投下できるかっていう話になるんですけど、今のSaaSは、会社の規模感に応じて多様なラインナップがあるので、自社の規模に合ったものを選べるのが強みだと感じています。今2025年だからこそできるSaaS戦略じゃないかなと思います。

    SaaS選定の羅針盤:多様化するSaaSの中から最適なものを選ぶには

    小松: 当社も競合製品との比較を説明資料に載せているのですが、SaaSはみんな似たような機能をつけ始めているじゃないですか。そういった中で、どのように最適なSaaSを選べば良いのでしょうか?

    藤本: そうですね。確かに営業資料だけを見ると、どのSaaSも同じような機能を持っているように見えますが、実際にはプロダクトの設計思想や使い方は全く異なります。営業資料にはパッと見、みんないいこと書くんですよ。それを見ると、どれも同じような機能を持ってるじゃないかという話になると思うんですよ。でもやっぱり明確に差はあります。例えば、会計ソフトでいうとfreee、マネーフォワード、弥生では、根本的な思想が違うため、どれも同じようなできることを書いてあるけど全然プロダクト設計が違うんですよね。導入後の運用フローも変わってきます。この違いを自社で見極めるのは非常に難しいでしょう。

    小松:私はあんまり詳しくないからどれも同じようなことができそうだなと思うのですが、やはり違うものですか?

    藤本:freeeが合う会社もあれば、マネーフォワードが合う会社、弥生が合う会社もあります。特にマネーフォワードと弥生は似ているので、この違いが分からないで導入してしまうと会社のカラーがズレちゃって不幸なことが起きてしまいます。今の時代でも、システム選定やリプレイスを社内全員が誰もやったことがないというケースもやっぱりあるんですね。できないこと、やったことがないのはしょうがないので、そこは知っている人の知見を借りるのが一番早いかなと思います。

    小松:やっぱりSaaS運営企業の営業マンではなくて、その分野のエキスパートみたいな人に聞きながらじゃないと答えは分からないですか?

    藤本:そう思いますね。SaaS運営企業の営業担当者だけでは、客観的な比較は難しいでしょう。失敗した後に来る会社っていうのもあります。会社の実名も具体的なプロダクト名も伏せますが、中小企業だけど「大舟に乗ったカンジで数千万投資しちゃいました」、「結局全く運用が進まなくて5千万ぐらいドブに捨ててしまった」、「結局何一つ進んでないけど投資してしまった」、「次は失敗できない」っていう話になって、一体どうしたらいいのかと相談が来るケースとかいうのはあります。

    小松: このウェビナーは主に中小企業向けに提供させてもらっていて、前回のゲストの「Chatwork」を提供している株式会社Kubellと、「中小企業という言葉自体にグラデーションがあるよね」っていう話を最近よくしていますが、藤本さんの考える中小企業のサイズ感はどれくらいでしょうか?

    藤本: 難しい質問ですね。いわゆる「中小」を切り取ると、1,000人以下というイメージもあれば、1人から50人という小規模なイメージもあります。当社では、数名から1,000名くらいまでが中小企業の範疇ですが、規模感が大きく違うのはおっしゃるとおりです。

    小松:やっぱり1,000人超える会社とかになるとシステムの入れ替えとかの経験はみんな少なからずあるかな、といった感じですか。

    藤本:そこは会社によります。1,000人を超える規模の会社でもシステムの入れ替え経験者が社内にいないケースはあります。30~40年同じプロダクトを使い続けてきた会社が初めてシステムを入れ替える際などは、導入担当者が既に退職しているというようなケースもあります。そういった会社では規模が大きいのにシステムのリプレイスをやったことがある人がいないので、何も知識がないまま突っ込んでしまい失敗に終わることが多いです。

    小松:ちなみに当社のターゲットとなる中小企業は10人以上100人未満で、ここに従事する従業員の方だけでも約3,000万人くらいいますので同じ中小企業の捉え方と言っても一桁違います(笑)。

    うちはリプレイスというよりもDX、下手したらデバイスを買うところから始める企業とよく話しているので捉え方だいぶ違うな、と正直思います。

    藤本:今はどの会社でも会計システムが入っているので、外注している可能性はあるけど、15人くらいの規模の会社の相談に乗ることもあります。

    小松:御社の資料に急成長のスタートアップっていう区分けがありましたけれど、オールドな会社とスタートアップの違いとかはいかがですか。

    藤本:スタートアップはJカーブを描くので、「非連続な成長をする会社」と定義すると、短期間で別の会社みたいになるんですよね。2、3年で従業員数が数百人増えるとかっていうケースもあるので。それこそ当社も3年前は20人ぐらいだったのが今は100人超えています。システムのリプレイスを考えなくてはいけないところの変数が早い気がします。

    コーポレートDXの着手点:どこから手をつけるべきか

    小松: 先ほどのAs-Is(現状)とかTo-Be(理想)の話はまさにおっしゃるとおりと思いました。「コーポレートDX」を始める際はどこから着手することが多いですか?会計システム、人事労務、経費精算などさまざまなシステムがあって、みんなAPI連携で繋がったりとかもしているじゃないですか。このあたりの優先順位とかのイメージはありますか?

    藤本: まずやらなければいけないのは、データの最終的な集約地点である会計システムです。会計システムが最終の終着駅、データベースなので、そこが定まらないと、他のどのシステムをどのようにセットアップすべきかが見えてきません。

    もし会計システムの変更が視野に入っているのであれば、間違いなく会計システムを最初に考えるべきです。そこが決まれば、経費精算などをどう連携させるかといった議論に移れます。会計システムとワークフローのリプレイスは導入ハードルが高いので、そのスコープ(範囲)をどう設定するかが重要になります。

    小松:そういう意味では、まるっとゼロから「コーポレートDX」をやることに関してはゼロからデザインできるやりやすさがあると思うのです。

    ただ現実的には、部分的にシステムをリプレイスしていかなきゃいけない場合もあると思います。そうなるとその難しさがある気がするんですが、藤本さんはどれくらいの期間で「コーポレートDX」を実現しているのですか?

    藤本:実際には、会社の規模にもよりますし、一社だけなのかグループ会社もあるのかみたいな話もあるのですが、例えば一社で会計中心にデザインもしくはリプレイスするという場合ならば、早くて3ヶ月ぐらいです。長いと半年から1年かかるプロジェクトもあります。先ほど言った100名規模であれば3~4ヶ月あれば大体終わるかなと思います。

    小松:結構短いんですね。もっとかかるかと思っていました。

    藤本:大体、四半期あれば、ある程度見えますね。既存の運用がぐちゃぐちゃな会社の場合は、アドレスの整理に時間がかかるので、そこだけで3~4ヶ月かかるケースもあります。

    小松:「 コーポレートDX」は、社長の意向から始まるのか、それとも現場の部長などから始まるのか、どちらが多いですか?

    藤本: 100人規模の中小企業であれば、社長の意向から始まるケースが多いですね。社長が「なんとなく無駄が多い気がする」「現場が疲弊しているから何とかして欲しい」と感じて相談に来ることが多いです。現場から課題が上がってくることもありますが、最終的な決裁は社長なので、社長の意思が重要になります。

    小松:藤本さんがおっしゃるような中小企業DXに詳しいコンサルタント、フリーランスの方も含めて、こういう方たちっていうのはどういうところで出会えるんでしょうか。

    藤本:コーポレート担当者を集める懇親会みたいなのをやっているんですよね。SaaS系のコーポレートを扱っているSaaS運営会社がイベントを開催しています。そうすると数十人、数百人まるっと会えたりするので、その中からオンリーワンを探すのがいいんじゃないかなと思います。会計士だからいいってわけでもないし、現場経験が長いからいいってわけでもありません。これは本当に相性と金額に尽きると思います。あとはTwitterで探す感じですね。

    中小企業DXの未来予測:BPOとAIの影響

    小松: 中小企業DXは今後どのような展開を見せるでしょうか?SaaS側はさらに成熟化すると思いますが、今、現場で活躍されている藤本さんの中小企業の「コーポレートDX」の未来予測をお願いします。

    藤本: BPOがさらに広がると予測しています。BPaaSまで行くかどうかっていうのはちょっと別の話なんですけど、これまでは、経理業務などは内製すべきという暗黙の了解がありました。

    なぜかというと、税理士事務所へ記帳と申告を全部外注するところが多かったのですが、税理士にあまりビジネスの中身まで理解してもらえない課題がありました。しかし今後は、ビジネスを理解したコーポレート業務の外注が増えていくでしょう。ノンコア業務とコア業務の峻別が進み、経理や仕訳といったノンコア業務は、SaaSを活用して外部に任せる動きが加速すると思います。

    小松: 生成AIの進展によって、DXはどのように変わるでしょうか?

    藤本: 生成AIは素晴らしいですね。正直、会計データベースをそのままAIに学習させれば仕訳ができるレベルにまで来ていますが、まだ安定的な精度を出す難しさや、イレギュラー業務への対応という課題があります。ある程度は組み込まれていくでしょうが、他のエンジニアリング分野と比べて、そこまで劇的に早く進むかというと、まだ少し時間がかかるかもしれません。

    小松:ありがとうございます。だいぶ私の方から質問をさせてもらったんですけど、最後に一つだけ聞かせてください。藤本さんはCAOなのに話が上手いですね。その秘訣は何ですか?

    藤本: 元々、この仕事をする前から武闘派経理として営業部に駐在し、売上目標を達成する経験をしてきました(笑)。経理こそコミュニケーション能力が高くないと本当はできないんです。経理業務というのは、黙々と仕訳を切っていれば成り立つというのはオールドスタイルで、ビジネスを深く理解し、いかに情報を得て、それをレポーティングする能力が求められます。本来、コーポレート業務に携わる人ほどコミュニケーション能力が高くなければならないのですが、現状はそうではないケースが多いのが正直悲しいです。私は、あるべき姿の経理を体現しているつもりです。

    小松: 今回は「“BPaaS”で実現する中小企業のDX〜成長ビジネスの最前線 〜」をテーマに株式会社トランスファーデータ取締役CAOの藤本さんからお話をいただきました。藤本さん、本日は貴重なお話をいただき、本当にありがとうございました。

    <ご案内>

    本記事は、中小企業の皆様向けに開催したスーツアップ特別ウェビナーの内容をダイジェスト版としてまとめたものです。

    当社では、毎月2回、中小企業の経営者やご担当者様に向けて、 日本経済の中心である中小企業等の経営改善に貢献できるようなテーマのウェビナーを主催しております。

    過去のウェビナーでは、第一線でご活躍されている経営者や専門家の方々をゲスト講師にお迎えし、中小企業を取り巻く経営環境、マーケティング、デジタル・トランスフォーメーション(DX)、労働生産性の向上に繋がるマネジメントシステムの構築、M&Aなど、多岐にわたるテーマでご講演いただいております。

    今後のウェビナー情報や過去のアーカイブについては、当社WEBサイトをご覧ください。

    【中小企業でもできる!コーポレートDXの肝とは?〜なぜSaaSベストプラクティス活用が有効なのか〜】

    • 「中小企業でもできる!コーポレートDXの肝とは?〜なぜSaaSベストプラクティス活用が有効なのか〜」(ゲスト講師:株式会社トランスファーデータの取締役CAO 藤本 了甫氏)
    • 藤本 了甫氏(株式会社トランスファーデータ 取締役CAO)と小松裕介(株式会社スーツ 代表取締役社長CEO)によるQ&A

    チームのタスク管理 / プロジェクト管理でこのようなお悩みはありませんか?

    そうなりますよね。私も以前はそうでした。タスク管理ツールを導入しても面倒で使ってくれないし、結局意味なくなる。

    じゃあどうしたらいいのか?そこで生まれたのがスーツアップです。

    これ、エクセル管理みたいでしょ?そうなんです。手慣れた操作でチームのタスク管理ができるんです!

    見た目がエクセルだからといって侮るなかれ。エクセルみたいに入力するだけで、こんなことも

    こんなことも

    こんなことまでできちゃうんです。

    エクセル感覚でみんなでタスク管理。
    まずは以下よりお試しいただき、どれだけ簡単か体験してみてください。

     

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    この記事を書いた人

    スーツアップの広報担当です。スーツアップは、チームでかんたん、毎日続けられるプロジェクト・タスク管理ツールです。表計算ソフトのような操作で、チームの業務を「見える化」して、タスクの抜け漏れや期限遅れを防ぎます。チームのタスク管理を実現することで、業務の効率化やオペレーションの改善が進み、大幅なコスト削減を実現します。

    お問い合わせ先:pr@suits.co.jp

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