第5回「中小企業でもできる！コーポレートDXの肝とは？〜なぜSaaSベストプラクティス活用が有効なのか〜」

当社では、2025年3月25日にゲスト講師に、出張管理SaaS「AI Travel」を提供する株式会社トランスファーデータの取締役CAO 藤本 了甫を迎え、第5回目となるスーツアップ特別ウェビナー「中小企業でもできる！コーポレートDXの肝とは？〜なぜSaaSベストプラクティス活用が有効なのか〜」を開催しました。

本稿では、中小企業の皆様にとって有益な情報が満載だった本ウェビナーの内容を、前編・後編の2回にわたりダイジェスト版としてお届けいたします。

前編は、ゲスト講師の藤本氏による講演「中小企業でもできる！コーポレートDXの肝とは？〜なぜSaaSベストプラクティス活用が有効なのか〜」です。藤本氏のご経歴は以下のとおりです。

＜株式会社トランスファーデータ 取締役CAO 藤本 了甫＞

【まとめ】

• • コーポレートDXの出発点
  • 理想の姿（To-Be）の描き方
  • 中小企業DXの最適解
  • SaaS導入のポイント
  • 会計システムがDXの要

【ウェビナー内容】

皆さんは「コーポレートDX」って聞いて、どういうことを思い浮かべますか。DXって言葉の意味が広すぎて皆さん困惑されるんですよね。正直何から手をつけていいか分からないという相談も多くいただきます。本日はDXの最重要なポイントを当社のサービスである「AI Travel」を一例としてお話したいと思います。

登壇者紹介

私は、大学卒業後の2007年にアルミニウムメーカーの製造業の会社に就職しました。元々は東京で海外営業を志望して内定もらったはずなんですが、不思議な人事で、なぜか大阪で経理を担当することになりまして、そこから必死で会計の勉強をしました。簿記は持っていなかったし、大学でも会計学を勉強してたわけでもないので苦労をしましたが、そこから経理管理会計や会計システムのリプレイスのような仕事をメインにいろいろと担当しました。

そのような機会に恵まれて、その後は外資系や日系スタートアップなど9社の転職をしてきましたが、キャリアとしては基本的にコーポレートの業務改善を中心に行ってきました。

前職はスタディプラス株式会社にて管理部長を務めておりまして、そこから株式会社AIトラベルにCOOとして入り、現在株式会社トランスファーデータに社名変更をして、取締役CAOとしてコーポレート業務に従事しています。なお、保有資格としては中小企業診断士とフリー認定アドバイザーを持っています。

コーポレートDXの肝心要：As-Is（現状）とTo-Be（理想）の整理

多くの企業、特に中小企業において、DXという言葉は広範すぎて、何から手をつけていいか分からないという状況で相談が来ます。もしくは、ベンダーから話を聞いて良さそうだからシステム導入してみたもののうまくいかなかった、という失敗した後に相談が来ることもあります。システム導入前に悩んで相談する企業もあれば、導入後に課題に直面して相談する企業も多くあります。

「コーポレートDX」も何をやっていいか分からないみたいな状況から入るので混乱が生じています。

DX推進における最初の、そして最も重要なステップは、As-Is（現状）の整理です。

As-Is（現状）の整理とは、現在どのようなシステムが、どのような状態で使われ、どのような情報が流れているのか、いわゆる「情報フロー（情報流）」を明確にすることです。

具体的には、まずは現在使用しているシステムの種類、バージョンや連携状況などのシステムの状態、次にデータがどこから発生し、どのように処理され、どのシステムを経て最終的に会計システムに至るのかなどの情報の流れ、そして、稟議、購買、入出金、経費精算など各業務がどのように行われ、誰が承認し、その目的は何かなどの業務プロセスが挙げられます。

ここの整理が出来ないと、課題が見えず、何をどう変えればいいのか分からなくなってしまいます。現状の認識、何のシステムが、どのようにに動いて、どのような業務をしているのかがとても大事です。

この現状整理を徹底することで、初めて真の課題が見えてくるのです。私はコンサルテーションをやらせていただく時も、まずヒアリングから入り、例えば会計システムのリプレイスをしたい場合では経理部だけでなく、それに付随する経営企画、現場の請求処理をしているチームや営業まで幅広く情報収集を行います。現状のワークフローや承認プロセス、どういう人たちがどういう情報を扱っていて、どのように処理して会計にいくかを詳細に確認していきます。

ここをスタートポイントに、自分たちがスタートに立っているかをまず整理しましょう、というのがAs-Is（現状）です。後でどういう確認を実際にすればいいかを簡単な例を用いて説明できればと思っています。

As-Is（現状）の整理をしていくと次に目指すべきTo-Be（理想）を明確にすることができます。To-Be（理想）とは、自社が構築したい理想の業務フローやシステムの状態を指します。やっぱりAs-Is（現状）の整理をして現状の無駄や非効率な点がわからないと、「ここを直したい」「このように改善したい」という具体的なイメージを描くことは出来ないので、よく「As-Is To-Be分析」と言いますが、まずはAs-Is（現状）の把握が不可欠です。

この現状認識ができないと将来図なんて書けません。そのため、まずこのAs-Is（現状）に対して、何が課題かを抽出して、ようやくTo-Be（理想）が書けるようになるのです。To-Be（理想）は自社が構築したい理想形と書いてるのですが、理想型が分かれば、どこを直せばいいかがよく分かってきます。

多くの企業がDXを検討する背景には、何かしらの無駄が発生してることが分かっているということです。直感なのかもしれないし、手作業が多いという現状で「コレって自動化できる話はよく聞くけど･･･」、など不満や課題を感じるはずなんです。そこで、その差分を理解するために、As-Is（現状）とTo-Be（理想）を比較することで、どこに改善の余地があるのかがより鮮明になり、「こんな無駄があったのか、じゃあここは直さないといけないね」と具体的な改善策へと繋がるのです。

As-Is（現状）の例:

例えばこのような業務フローのシステムで業務が行われている企業があるとします。

稟議がシステムで申請され、承認された後、支出が発生する。購買申請から購入へ。入出金・売上管理は全てエクセルで管理。請求書・経費精算には 専用システムとコーポレート・カードを使用しているが、データソースはバラバラ。各システムやエクセルからのデータを手作業で加工・管理し、会計システムへ手動でインポート。固定資産・給与計算は個別の処理後、加工を経て会計システムへ入力。

この業務フローの課題は、「データ管理・加工」という工程に膨大な無駄が発生している点です。基本的に会計システムが真ん中に来るはずなんですよね。会計システムが真ん中にあって、さまざまなところから自動でデータが流れてくるのが理想なのですが、このサンプルの企業の場合は、ぐちゃぐちゃな入り口データのインフローが問題です。全部フォーマットが違うので、さまざまなフォーマットのデータを手作業で加工し、会計システムに流し込む作業が大きな非効率を生んでいたのです。これを全てまるっといきなり会計システムに流し込めたらどれだけ楽だろう、と思いますね。

To-Be（理想）の例:

会計システムを変更します。

To-Be（理想）でクラウド会計システムのfreeeを中心に構築した場合、会計システムを真ん中に、売上管理とか営業データを自動的に連携できるようになり、出張データや経費データっていうのも自動的にAPIで連携できるようになって、会計システムにデータが集まります。

そこからさらに変えたいならば、「じゃあ、中心にある会計システムをマネーフォワードに変えましょう」「マネーフォワードやfreeeに変えるとどのようないいことがあるんだっけ？」みたいな感じで考えていきます。

例えば、入出金データも今までエクエルで入出金明細オンラインバンキングから出して仕分けていたけど自動連携できれば自動的に仕分けが入力されます。

As-Is（現状）とTo-Be（理想）を認識することで、課題と直したいこと・やりたいことがよく分かると思います。DXの具体的な方向性が見えてくるのです。

中小企業のDX戦略：SaaSベストプラクティス活用のすすめ

DX推進に必要なステップとして、As-Is（現状）の整理、To-Be（理想）の決定、情報フローの整理、要件定義、そして、そこからシステム選定という話になります。これが正当なDXですが、これらのプロセスを自社で完遂できる人材は、中小企業には限られています。いたとしても、高額な報酬が必要となるため、なかなか採用が難しいのが現状です。

それでは未経験の人にはできないのかというと、決してそうではありません。しかし、これらが難しいということで中小企業に推奨したいのがSaaSのベストプラクティスを活用することです。

つまり、SaaSのいいところを活用しましょうということです。さまざまなSaaSが出ていて、当社は「AI Travel」という出張の効率化を目指す尖ったプロダクトを運営しています。SaaSはクラウド上で提供される専門性の高いシステムであり、特定の業務に特化して開発されています。

このベストプラクティスをシステム化したSaaSを導入するだけで業務効率が図られる運用をしたい。そのためには運用方法も、このサービスを作っている会社のシステムに最適化するように「乗っかる」っていうのが重要な話です。自社の運用体制をそのSaaSの運用に最適化することで、特別なカスタマイズをすることなく、導入するだけで最大限の業務効率化の効果が得られます。

しかし、こういった王道のDXをやると非常に大変です。コストもかかります。当社ではDX事業のコンサルティングもやらせてもらっているのですが、「そんなの払えないよ」っていう会社も多くあります。じゃあ諦めるのかというとそうではありません。当社も出張の事例を何千何万と取り扱っているので、どんどんそこに合わせて開発し直していってるわけです。そこに乗らないのはもったいないです。

かつてERPが流行した際、ERPはベストプラクティスの活用は難しかったんです。何が難しかったかというと、ワンパッケージで全体最適を目指していたからです。各社のニーズがある中でカスタマイズありきのプロダクトになってしまいました。そのため、カスタマイズが頻繁に行われ、結果としてベストプラクティスの活用が難しくなるケースが多く見られました。

そこにSaaSが台頭してきて、部分・部分で局所的に最適化のサービスを入れても、それらがAPIで繋がるようになってきて、会計に全部ダイレクトに繋がるようになってきています。中小企業のDXにおいては最も効果的な王道戦略だと思います。

株式会社トランスファーデータの事例紹介：出張業務のDX

今回、その王道の例を一つご紹介したいということで、私が所属する株式会社トランスファーデータが提供する「AI Travel」について説明させていただければと思っています。

「AI Travel」は、出張業務における多角的な課題を解決し、導入するだけで業務効率化を最大化するプロダクトです。

出張業務には、出張者、経営者やコーポレート部門と、それぞれに大きな課題が存在します。

出張者としては面倒な手配、高額な立て替え、煩雑な経費精算と多数のレシートなどの問題があります。経営者は不透明な出張コストやコスト最適化の難しさなどがあり、そして、コーポレート部門は、申請数の多さ、手配業務の負荷、経費精算の手間やデータベース化の不足などの問題を抱えています。

これらのストレスや非効率が、業務全体の生産性を低下させる要因となっています。「AI Travel」は、これらの課題を解決するために設計されたSaaSです。

特徴としては、経費精算の半数以上を占める出張費用を個人の立替えから法人間取引に変えられる、管理会計の自動化、最適価格での手配によるコスト最適化、PLやキャッシュフローの改善、そして、余計な手間なく快適に出張の手配を完了させることができます。また、出張データは蓄積されデータベース化されます。

もちろん導入や運用などの細部について詰めなければならないところもありますが、このように導入するだけでプロダクトの価値が発揮できるSaaSはよくあります。こういうのを活用していって、DX化を一歩ずつ進めていけばいいんじゃないかなと個人的には思っています。

「AI Travel」は、導入するだけでこれらの効果を発揮し、企業の出張業務を大幅に効率化します。このように「入れるだけでプロダクトの価値が発揮できる」SaaSは非常に多く存在し、これらを活用することで、一歩ずつDXを進めることができるのです。「SaaSなんて星の数ほどあるじゃないか」「どういうSaaSを導入すればいいのか」という話については、その道のエキスパートがいます。私含めコンサルタントは、それこそXやFacebookなどのSNSにもいますので、今回ご縁もありますしお気軽にご相談いただければと思っています。