ぼくらのスモールビジネス「プロ経営者が語る、利益を増やす凡事徹底」前編

本稿は、小さく始めて大きく稼ぎ、人生を謳歌するスモールビジネス経営者の知られざる生き様に迫る番組「ぼくらのスモールビジネス」に、第13回ゲストとして当社代表の小松が出演した回(【13-1】プロ経営者が語る、利益を増やす凡事徹底)について、各人の発言の主旨を変えずに、読みやすいようにテキスト用に再編集したものです。

【13-1】プロ経営者が語る、利益を増やす凡事徹底
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<パーソナリティ>
アンティークコインギャラリア代表 渡辺 孝祐
WEB/デジタル領域のプロジェクトマネージャー 齋藤 実帆

<ゲスト>
株式会社スーツ 代表取締役社長CEO 小松 裕介

目次

1.プロ経営者とは?

パーソナリティ 渡辺 孝祐(以下「孝祐」といいます。):みなさんこんにちは。ぼくスモの孝祐です。

パーソナリティ 齋藤 実帆(以下「実帆」といいます。):実帆です。この番組は小さく始めて大きく稼ぎ、人生を謳歌するスモールビジネスの経営者をお呼びして、その知られざる世界、生き様に迫る番組です。今回のゲストは時価総額100億円以下の中小・中堅企業、スタートアップ企業の経営支援を行う株式会社スーツの代表取締役社長CEOの小松 裕介さんです。

孝祐:小松さんの肩書きは「プロ経営者」ということでよろしかったでしょうか?

第13回ゲスト 小松 裕介(以下「小松」といいます。):そうですね。資本を持たないで、外部招聘の経営者として会社の価値を上げるという仕事をしています。もう少し簡単に言うと、株は持っていないけれど、会社の価値、会社を良くすることのプロ、ということになります。

実帆:経営コンサルタントとは違うのですか?

小松:経営コンサルタントですと、もう少し距離感のあるイメージです。私の場合だと、多少の距離感のグラデーションはあるのですが、実際に社長とか役員とかの肩書きをもらって、社内に入って手を動かして会社を良くする、というのが仕事の内容になります。

実帆:なるほど。やっていることはその会社の社長と同じなのですか?

小松:そうですね。実際に社長という肩書きをもらっているというのが多いですね。

孝祐:ちゃんと登記して社長になるってことですね。

小松:そうですね。

孝祐:言ったら、雇われ社長みたいな。

小松:そうです。雇われ社長をかっこよく言うとプロ経営者になると思います。

孝祐:株を持っていたらオーナー社長だから、株は持っていない社長というところに違いがあるのですね。

小松:そうですね。スモールビジネスという観点で言うと、きっと株式をご自身が持たれて、その上で社長をされて、という人が多いと思います。プロ経営者が経営に参画する場合は、資本と経営が「分かれている」というように考えていただくといいかなと思います。

孝祐:もう少し具体的に「プロ経営者とは?」というお話を聞ければと思います。お仕事を始める段階で、もう会社があるわけですよね?

小松:はい。

実帆:外部から依頼されるものなのですか?「会社経営について助けて」という感じですか?

小松:そうですね。誰から頼まれることが多いかというと、やっぱり株主の方です。株主というと、普通はオーナーや創業株主兼社長がいらっしゃって、そういったオーナーから頼まれるか、未上場の会社の経営権を持たれているファンドや事業会社から頼まれるとかですね。

2.凡事徹底

孝祐:いきなり「社長をして欲しい」と言われたら、まず何をするのですか? イメージが湧かないなと思いまして。

小松:僕は約20年この仕事をやっているのですけど、正直なところで言うと、別に突飛なことは一切やっていなくて、当たり前のことを当たり前にやる、普通のことやっているだけで黒字の良い会社になりますね。

実帆:でも恐らく、みんな頑張ったのに、それでも赤字になってしまったわけじゃないですか。何かそこを立て直すポイントがあるのでしょうか?

小松:私は長年、企業再生と言われる、事業が傾いて赤字になってしまった会社を黒字にする、という仕事をやってきています。もちろん赤字の会社にも社員はいるのですが、大体、社内政治をして、お互いを批判し合って何もしてないとか、本来、他の会社で回っている会社のアウトプットが100だとすると50ぐらいしかアウトプットが出てないとかが、ざらなのです。そのあたりを紐解いてあげて「ちゃんとみんな一緒に前を向いてやろうよ!」という話をするだけで会社は良くなります。

孝祐:いきなり外から来た社長の話を、社員の方は聞いてくれるものなのですか?

小松:そうですね、そこは腕の見せ所ですね。しかし、実際はシンプルで「膝を突き合わせて話をするだけ」というのが最終的な答えです。プロ経営者、外部招聘の経営者の友達と話していると「部下とお酒を飲み行って」とか「部下の部長が喧嘩しているのを止めて」とか、そんな話ばっかりですよ。

孝祐:結局、やっぱり人間関係というか、信頼関係というか。

小松:そうですね、結局、微分や積分があるようなビジネスはないじゃないですか。事業は足し算と引き算、あっても掛け算、割り算ぐらいしかないわけで、そんなに難しくない。黒字の会社もそういう当たり前のビジネスをやっているだけです。ただ、それが「ちゃんとできるかどうか」だけで、売上とか利益の増え方が変わるのです。「ちゃんとやる」が仕事ですよね。例えば3年とか5年とか業歴の長い会社は、多くの場合、ビジネスモデル自体は間違っていないのです。「ちゃんとやりきれてない」とか、商品・サービスも「しっかりしていない」と自分たちでもなんとなく分かっていながらサービス提供し続けてしまっているとか、そういうのが原因でお客様の口コミで商売が広がっていかないのです。

孝祐:「気が付いているけれども、別に自分の責任じゃないし」といったことですかね。

実帆:正直サラリーマンって、ある程度普通に業務をしていればお給料は滅多に減りませんから、発言して面倒が起きるなら言わない、みたいな時もありますよね。会社にとってはよくないことですが、しばしば発生します。

小松:そうですね。ですので、先ほど言った「当たり前のことを当たり前にやる」というだけで、利益は増えるし、赤字の会社だったら黒字になるというのが実態です。

3.求められているのは、中小・中堅企業のプロ経営者

孝祐:プロ経営者って、元外資系コンサルタントといったような凄くキレキレの方、というイメージを持っています。

小松:そうですね、元々はプロ経営者というと、さっき孝祐さんが話されたような、海外でMBAを取られて外資系コンサルティング会社で働いていた、というような素晴らしいキャリアの方々が多かったですね。ただ、ここ最近で求められているのは、僕は時価総額100億円以下の会社という言い方をしましたけど、中小・中堅企業の企業価値をちゃんと上げるとか、事業承継で後継者不足という社会問題があるので、そういった後継者のいない会社をちゃんと引き継いで良くすることができる人が求められていると思っています。

孝祐:大企業のプロ経営者、とは違うのでしょうか。

小松:そうですね。先ほど申し上げたような「部下の部長が喧嘩しているから、仲裁しなければいけない」とか、こういう人間同士の“生々しい”ことがメインの仕事なのです。こういったことができて、着実に中小・中堅企業を良い会社にしていくということが、今は社会的にも求められています。

実帆:中小・中堅企業の方は人数が少ない分、パフォーマンスが個人に依存してしまうということでしょうか?

小松:やはり中小・中堅企業は、人に仕事が紐づいてしまっています。まさにスモールビジネスはそうだと思うのですが、この人がいるから仕事が回っている。それこそ1人で仕事をしているのだったら、自分が風邪になってしまったら回らなくなってしまう。数人で仕事をしていても似たような世界じゃないですか。本来、会社の経営は、この属人化している仕事を、ちゃんと組織とか仕組みに変えていく。そういうところが腕の見せ所で、属人化せずに組織化・仕組み化ができると会社が大きくなるのですが、ここは少しスキルが要るのです。なぜなら今まで「Aさん、よろしくね。Bさん、よろしくね」と言っていたものが「本来はこういうスキルの人が必要だよね。じゃあ、この部分は外注でも可能だよね」というように考えるのは、考える順番が逆になるのです。このように抽象化して仕組みを作ることにはスキルが要るかなと思います。

孝祐:属人化をやめて、仕組みを作っていくと会社の規模も大きくなっていく。一方で、喧嘩の仲裁もする。人間力が求められますね。

小松:そうですね。さっき当たり前のこと、と言いましたが「長年、喧嘩をしている人たちを、ちゃんと仲直りさせて、一緒に協力して良い会社にしましょう!」というのは、人間力が要る仕事かもしれないですね。

実帆:先ほど例として「商品があまり良くないけど出していた」といったお話があったかと思いますが、これを改善する場合も、小松さん自身が「この商品をこうした方がいいよ」と言うのではなくて、本人たちがそう思っているのを引き出す、という感じなのですか?

小松:僕の場合だと分かりやすいのですが、社員の皆さんは先に会社にいるわけです。社員の皆さんはプロフェッショナルとしてその業界で業歴何年、と長く仕事をしている。僕は縁があって役員になっているといえ、ぽっと出で入社しているわけです。もちろん、その会社のバリューアップをやるという時は、その業界に関する本は大体1週間~2週間で片っ端から買って読むのですが、所詮それは知識でしかなくて・・・。ですので、社員の皆さんには「皆さん、実は気が付いていますよね?」という話をするのです。きっと本人たちもやらない理由に気が付いているのです。それはメンドクサイかもしれないし、上司同士が喧嘩しているということかもしれないし、部署間で「あの部署とは話をしたくない」かもしれない。そういうことを紐解いてあげて「お客様が望んでいることをみんなでやろうよ」と、それを実際に一つ一つやっていくだけで会社は良くなるのです。

4.とにかく当たり前のことをやる!

小松:とにかく当たり前のことをやる。仕事の役割分担を明確にすることとか、コミュニケーションならば、例えば定例会議をちゃんとやる、とか。あとは報告書の提出が決められているのだったら、報告書をきちんと書くとか。もっと初歩的なことを言うと、打ち合わせの時間に遅れない。ちゃんとしている会社は、みんなこれらができます。しかし、売上が増えない、利益が出ない会社はこれができないのです。

孝祐:これって、結局、こういうシンプルで簡単なこともできないから、当然それ以上の、付加価値の高いような仕事もできない、ということなのですかね?

小松:そうですね。万事同じなんですよ。プロダクトやサービスは、1個、1個の作業の集積で良くなります。ということは、ちゃんと1個、1個決められた作業を約束通りできるか。あとは、この作業を早くできるかだけなのです。このように仕事は、多くの人で分業して、細かく作業にして実行されていくのです。普通は仕事をより細かな作業に分けていく過程で、この作業だけが難易度が難しいという工程にはしませんから、一般的に思われているほど、仕事の難易度は論点にはならないのです。もしそれでいったら、頭の良い人が難しい仕事をしないと利益が出ない、となってしまいます。実際には決してそのようなことはなくて、どんなに大企業であっても、そこにはいろんなキャリアの方がいて、それこそハイキャリアではないアルバイトとかパートの方とかも沢山います。大会社は、こういったアルバイトとかパートの方たちもしっかりと仕事をしているのです。しかし駄目な会社になると、あらゆる仕事がグダグダになっていて、生産性が出ていなくて、売上も伸びなければ、経費もたくさん使っている、といった状況になっています。

実帆:特に定例会議とか、やっているけれど、形骸化してしまっている、とかはよくありそうですよね?

小松:ありますね。ただ、スモールビジネスとか中小企業の感覚で言うと「やってない」が多いですね。

孝祐:会議体がない、みたいな感じですね。

小松:そうですね。10人の会社で役割分担がなされているのだったら、2部署か3部署ぐらいで、それぞれの部署に3人、3人、4人で合計10人のように分かれて業務をしています。本当は、それぞれの部署で、週に1回ぐらい1時間ぐらいスタッフの業務を確認して「仕事はどんな感じですか?」とやるだけでめちゃくちゃ生産性が上がるのです。でも、大体の社長は部下に業務を丸投げして「私はちょっと異業種交流会に行ってきます。あとはよろしく。」と言っていなくなる。結果、管理する人がおらず、生産性が上がらない。

孝祐:「トップ営業だ!」とか言って。

小松:そう。ですので、私は、ビジネスが上手くいってない中小企業の社長は、社長の仕事をやっていないと思っていますね。

孝祐:社長の仕事ってなんですか?

小松:本来は社長の仕事は、リーダーシップとマネジメントだと思っています。リーダーシップというと「こんな素晴らしいビジネスをやっているから手伝ってよ」とか、やっぱり「この指とまれ」です。例えば、お金集めであったり人集めであったり、セールスだったり、これらはまさにリーダーシップの世界ですよね。あとはマネジメント。中小企業の経営者はこのマネジメントをやっていない方が多くて、ちゃんと組織やスタッフの経営管理をしてないのです。最近は、スモールビジネスやスタートアップの社長が、例えばティールだとかフラットな組織だとかを、組織や社員の管理をしない言い訳に使っている方も多いです。社長は「うちは自由な企業風土だから」と言っている。だけど、実際オンラインの先ではスタッフが何をやっているか分からない。スタッフ同士で声掛けもしないし、そうなるとスタッフも成長もしないから働きづらい。人数が少ないのに、風通しの悪い会社が沢山あります。スモールビジネスといえど、ちゃんとマネジメントをやらないとみんな幸せになれないですよね。

孝祐:マネジメントは、どうすればいいんですか?

小松:先ほど言ったとおり、当たり前のことを当たり前にやる。例えばコミュニケーションの仕組み・ルールを作るとか、属人的な業務を切り替えて仕組みにする。マネジメントとは仕組み作りなのです。沢山の人が働くのだったら、役割分担して一緒に働いた方が、効率が良いし、楽しいし、知恵も集まる。そうすれば、売上も増えるし、コストも下がる。それをやるのが社長の仕事ですよね。複数人で働くときには、その目的を達成する上で、みんながどう分業すれば効率的かを考える。コミュニケーションや組織のルールを決める。別にこれは難しいことではなくて、当たり前のことをやるだけで良くなると思います。

実帆:そうですよね。逆に、ガチガチのマネジメントの会社は、ルールが形骸化しちゃって意味がなくなっちゃっているとかもありそうですよね?

小松:大企業の問題で多いのは、社歴が50年経って、例えば定例会は開催しているけど、参加者みんなの心が入ってない。まさに形骸化です。でも、それは仕組みが悪いわけじゃなくて運用の問題です。そこはもう一度みんなの心に火をつけて真面目にそれをやらなきゃいけない。仕組みを否定する必要はないと思います。

孝祐:なるほど。形骸化しているなら、仕組みを変えようではなく、心持ちを変えようということか。

実帆:心に火をつけるという言葉がありましたが、やはり何を目指して仕事をしているのかは大事そうですね。

小松:仕組みが悪いわけではなく形骸化しているのだったら、社長がリーダーシップを発揮して「みんな、真剣にやろうよ!」という話をするだけで、古い会社でも良くなりますよ。

第2回へ続く)

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