Suit UP

ぼくらのスモールビジネス「プロ経営者が語る、利益を増やす凡事徹底」後編

 

 

本稿は、小さく始めて大きく稼ぎ、人生を謳歌するスモールビジネス経営者の知られざる生き様に迫る番組「ぼくらのスモールビジネス」に、第13回ゲストとして当社代表の小松が出演した回(【13-1】プロ経営者が語る、利益を増やす凡事徹底)について、各人の発言の主旨を変えずに、読みやすいようにテキスト用に再編集したものです。

【13-1】プロ経営者が語る、利益を増やす凡事徹底
Spotifyの方は  spoti.fi/3XQYLo2
Podcastの方は  apple.co/3UcwN4Y
YouTubeの方は youtu.be/byC1_xypwx0

 

 

<パーソナリティ>
アンティークコインギャラリア代表 渡辺 孝祐
WEB/デジタル領域のプロジェクトマネージャー 齋藤 実帆

<ゲスト>
株式会社スーツ 代表取締役社長CEO 小松 裕介

 

「プロ経営者が語る、利益を増やす凡事徹底」 前編はこちら

 

5.一緒にやろう!

 

パーソナリティ 渡辺 孝祐(以下「孝祐」といいます。):乗り込んだ先の会社の社員さんたちは、そう簡単に話を聞いてくれるのですかね?

 

第13回ゲスト 小松 裕介(以下「小松」といいます。):当たり前なのですが、「社長だから俺の言うこと聞いてくれ」と言ったら誰も聞かないですよ。

 

孝祐:そうですよね。

 

小松:今日、私がお話しをさせてもらっている内容は、私の立場とは無関係です。どのような立場であれ、同じ話をするのです。今日は皆さんとこうやって初めてお会いさせていただいていますが、それこそ初めての人にも同じ話をします。私は今日の話を真実、普遍的な話だと思っているのです。みんなにとって納得度の高い内容で「一緒にやりませんか?」と対等な関係で話をすることが一番大事ですね。

 

孝祐:なるほどね。立場を超えた話かな。

 

小松:そうですね。やはり「新社長が言っているのだから、言うこと聞いてくれ」と言ったら部下はやらなくなりますよ。

 

パーソナリティ 齋藤 実帆(以下「実帆」といいます。):確かにちょっと嫌ですよね。

 

小松:決して難しい話ではないと思います。「一緒にやりましょう」という言葉を1回言うだけでは聞いてくれないので、100回とか、1,000回とか10,000回、同じようにするのが社長の仕事ですかね。1回言っただけでは誰も納得して動いてくれません。

 

実帆:小松さんは合理的な指示を出しているのだと思うのですが、それでもやはり伝わらないですかね?

 

小松:そうですね。私は今、約20年の経験を話しているわけですけど、そんなに難しい話をしてないと思うのです。それでも、やはり当事者でメンドクサイとか、上司同士が喧嘩しているから動けないとか・・・

 

実帆:そんなこと言われても、みたいな。

 

小松:そう。よく「他責」という言い方をしますけど、誰かのせいとか今日寒いから嫌だとか、少しでもやらないための言い訳があると人はやらなくなってしまうのです。社長は、そのような社員の心に火をつけて「一緒にやろうよ」と言わないといけません。漫画の「ROOKIES」とか、ちょっと世代が違うのですが古くはテレビドラマの「スクールウォーズ」とか、そういう青春物語のような世界観はとても大事です。

 

実帆:説得じゃなくて「一緒にやろうよ」なんですね。

 

小松:「コレやっといて」で勝手に会社が良くなるのだったら、こんなにも楽なことはありません。実際は、一緒にやらないと物事は進まないですね。スモールビジネスという観点だったら「みんなで机を並べて一緒にやろうよ」とか「一緒に時間を取るから入力しようよ」とか、「一緒に連絡しようよ」とか「一緒に客先に行こうよ」とか、それをやるから社長だと思うのです。私は経営者の仕事はそこだと思っています。もちろん、会社組織としては役割分担をしているわけですから、社長がずっと一緒に現場の仕事をやることは組織論としては正しくありません。しかし、時には気持ちが沈んでいる人がいたら声をかけて一緒にやる、ということは非常に大事なことだし、もっと言うと、現場でお客様と接している、そこの現場が商売でいうと最前線じゃないですか。そこを知らないでマネジメントを語ってはいけないですよね。「アレやれ。コレやれ」だけでは会社は良くなりません。現場の声、お客様の声を吸い上げて、もしかするとお客様に一緒に謝りに行くこととかもあるかもしれないですけれども、それが経営者としては必要なことですよね。

 

孝祐:なるほど。

 

小松:細かいところですが、会議の進め方もやり方があります。みんなの意見を聞いていく時は、役職が低い人や若い人から先に発言させないといけません。だって、先に部長が発言したら「いや、それ違いますよね!?」とは、さすがに若い子は言いづらいじゃないですか。若手社員から「みんなどうなの?」と意見を聞いていって、最後に社長が発言するとかにしないと意見が出なくなりますよ。ちょっとした配慮ですけど、そういうものの積み重ねが企業文化になったり、働きやすさになったりするのかなとは思いますね。

 

実帆:ここで小松さんがちょっと厳しめの人だったら、きっと新人の子とか言いづらいじゃないですか。多分すごく柔らかい形でいらっしゃるのだろうなと思いました。

 

小松:どうなんですかね?きっと厳しいと思いますよ。先ほどお話したとおり、当たり前を求めることに関しては、そこそこ厳しいです。もちろん、言い方が厳しいわけではありません。「ちゃんとやりましょうね」というのをしっかりやります。ひたすらリマインドもするし、ひたすら同じことを言いますからね。やってない人に「やってないよね?」と言うわけですが、一番、本人がやってないことを分かっているわけだから、辛いと思いますよ。

 

実帆:確かに。

 

小松:大事なのは「人格を変えましょう」ではなく、「行動を変えましょう」なのです。企業再生の仕事をやっていると、関わり始めは大体、会社がぐちゃぐちゃで、特に最初は人間関係も距離があるので、みんな「できない」と言うのです。それなので「あなたの人間性を否定しているわけじゃないのだけれど、この行動は変えてもらいたいです」と、ちゃんと丁寧な言い方をしますよ。

 

孝祐:なるほど。当たり前のことを、当たり前にやるのは、当たり前なのですけれども、この「当たり前のことをやって!」と言っても、反発したり聞いてくれたりしない人はやっぱりいると思うのです。そういう時はどうします?

 

小松:1回言うだけでは言うことは聞いてくれないので、繰り返し言うしかありませんね。そこは根気が要ると思います。場合によっては嫌われる仕事だと思っていて、特に本人も自分がやっていないとか、できていないことは分かっているので、正しいことを言われるのは辛いですよ。ですので、先ほど言ったとおり、人格と行動を分けて話をするとか、それこそユーモアが大事ですよね。一緒に働く仲間なのだから、他愛のないユーモアで、笑い合うシーンがなければもったいない。でも、「この行動は変えてくれないと困る」というのは別ですよね。

 

孝祐:そうですね。

 

小松:正しいことを言った結果、それで対立してしまう。ユーモアも全部なくなっちゃって、「あいつは駄目だ」みたいな話になってしまうと、言われた相手もちょっと追い込まれちゃうじゃないですか。やはり居場所を作ってあげた上で「行動を変えてくれ」というのが大事だと思うのです。スモールビジネスの観点で言ったら、そもそも多くの人を採用できるわけでもないですし、その人とどう向き合うかですよね。特に日本社会はアメリカと違って人材の流動性が高くないので、今いる人と向き合うことは大事になりますよね。

 

実帆:今まで「この人はなかなか変わらないな?」「何が引っかかっているのだろう?」みたいな人はいるのですか?

 

小松:もちろん、そういった方は多いですよ。すぐに人が変われるのだったら、会社の再生とか会社の価値を上げるのは簡単ですね。一緒に3年とか働いても、最後の最後まで言うこと聞いてくれない人もいます。私の感覚ですが、3年目ぐらいになると、その人もどちらが正しいかは、さすがに頭では分かっているのです。皆さんも経験があると思うのですが、子供の時に、友達みんなで遊んでいて、そこに「仲間に入れて」と一言言えないちょっと天邪鬼な人がいませんでしたか?私はそういった天邪鬼な人に「一緒にやろうよ」というのが大事だと思うのです。会社全体で考えたときに、もし10人の社員がいる会社だったら、よく「8対2の法則」と言うと思うのですが、私の感覚では「2対6対2」のグループに分けられるのです。2割の仲間、これは「こっちの方が正しいし、楽しそうだな」という人たち。6割の仲間は、ノンポリというか、特に抵抗勢力でもない。みんながそう言っているのだったら「そうかな」という方たちです。この人たちも先ほどの2割の人たちが仲間になってくれれば味方になってくれる。なので、まずは2割の仲間をどう作るのか。もし可能ならばもう少し多く3割か4割ぐらいの人が共感してくれれば、会社は一気に良くなりますね。

 

 

6.どうすればプロ経営者になれるの?

 

孝祐:最後に 1個お聞きしたいのですが、どうやったらプロ経営者になれるのですか?

 

小松:プロ経営者といっても、まだ日本ではキャリアが確立していませんので、まずは経営の仕事にタッチするということが大事ですね。

 

孝祐:そうですよね。

 

小松:最近は、よく私のところにも「プロ経営者になりたい」という方が来ますが、キャリアとして、会社経営の仕事をやりたいという人が増えているのです。「経営の仕事をやりたい、だけど、スタートアップ企業ではなく、もう少しビジネスモデルが出来上がった会社の経営をやりたい」という方が結構いらっしゃるのです。その人たちに言うのは、まず1個トラックレコードを作りましょうと話をしています。先ほどのとおり、案件を頼んでくる多くは株主の方たちなので、トラックレコードがない方はなかなか頼まれないのです。

 

実帆:まずそこですよね。

 

小松:となると、大企業の子会社とか投資先とかの会社の経営に関与する。経営レイヤーの仕事ならば、金融とか経営コンサルティング。あと最近はスタートアップ企業が増えていますので、もし同年代の友人がスタートアップ企業の経営をしているならばその会社の経営をお手伝いさせてもらって実績を出すというのも1つの選択肢じゃないですかね。

 

孝祐:なるほど。まずは実績を出して。人脈が大事な世界ですかね?

 

小松:そうですね。プロ経営者はプロなので、やはり実績がないとプロとしては認めてもらえないですかね。

 

孝祐:なるほど。マッチングとかないですよね?プロ経営者マッチングサイトみたいな。

 

小松:さすがにまだマッチングサイトまではないかもしれません。最近は、事業承継の案件なのに後継者がいないということが社会問題になっています。そのため、事業承継のため外部招聘の経営者を探していますというような案件は、地方にはいっぱいあるのではないでしょうか。あと、サーチファンドというキーワードも注目されています。

 

孝祐:なるほど。ツテとかもなかったら、そういうところから。でも、そこもトラックレコードがないと無理なのか。

 

小松:もちろん、トラックレコードがあった方が良いのは言うまでもありません。ただ、必ずしもトラックレコードがなければダメということもないと思いますよ。事業承継で後継者がいなくて困っている方からすれば、その方にトラックレコードがないとしても、しっかりと事業を引き継いでくれる方であれば良いという方もいるのではないでしょうか。例えば、息子さんは東京でサラリーマンをしていて継いでくれない、社員は技術の現場の人間なので「社長はできません」と言っている。こういった後継者がいない会社の案件をお持ちの人材会社はありますね。

 

実帆:ちなみに、プロ経営者業はいくらぐらいもらえるのですか?

 

小松:当社の場合は、報酬体系を成功報酬と固定報酬の2つの組み合わせにしています。私は、時価総額の100億以下の会社、中小・中堅企業を良くするということをやりたいのです。そのため固定報酬だけだと報酬が合わない場合も多いので、成功報酬を組み合わせて報酬をいただいています。プロ経営者はいわば「傭兵」なので、ちゃんと成果を出して、それでお金いただく。成功報酬の割合も大きくしてやっています。

 

実帆:社長を引き受けたときのお金と成功したときのお金の両方がもらえるみたいなカンジですか?

 

小松:そうですね。

 

実帆:今は何件ぐらい受けていらっしゃるのですか?

 

小松:そんなに受けられないのです。当社だと、やって1人当たりで2社とかです。バリューアップの結果、経営が安定してきて、もう手間暇が掛からなくなった場合であれば3社とかもあり得ますが、トラブルが2社同時に発生したら回らなくなってしまいますね。沢山はできないです。

 

実帆:株式会社スーツのスタッフは何名ですか?

 

小松:今は5人でやっています。小さい所帯です。

 

実帆:5人全員がプロ経営者ですか?

 

小松:全員が全員、トラックレコードがあるわけではなくて、アソシエイトというポジションで修行中のスタッフもいます。私含めて3人はベテラン、2人はアソシエイトです。

 

実帆:すごい。じゃあ、その5人で「今ちょっとこういう状況なんだよね」と情報共有しながら、ナレッジを貯めたりしているのですか?

 

小松:そうですね。ただ、私の企業価値向上のやり方は、そんなに難しいことをやっていないのです。先ほど申し上げたとおり、当たり前のことを当たり前にやる。あとは、それをどう早くやるかぐらいです。私は、スモールビジネスとか中小企業の方に対して、例えば商品・サービスの品質、マーケティングや内部管理体制とか経営にかかる様々な論点を「まず30点を70点にしましょう」「合格点まで持ってきましょう」「みんな70点にしましょう」と言っています。大体の経営の論点で70点ぐらい取るとグッと経営効率が上がるのです。それだけで会社は良くなります。経営者の中には、商品・サービスが良くないのにマーケティングを頑張ってしまう要領の悪い方もいらっしゃいます。要領の悪い方は、1つの論点で70点を取って、他の赤点の論点に着手せずに、さらにそれを100点にしようとするのです。70点を100点にするのは、すごい時間がかかるし、大変なのです。自分が得意な経営の論点で70点を取ったのにさらに100点を目指し続けて、他の論点は30点とか20点のままで、全体で考えると著しく経営効率が落ちているという経営者はやり方を変えた方がいいですよね。当社は全ての経営の論点で70点を取ることをひたすらやっています。なので、格別難しいことをやっているかというとそうではなく、当たり前の繰り返しになりますね。

 

孝祐:凡事徹底ですよ。みんなができてないから、こういう言葉があるのでしょうね。

 

実帆:内部にいるとより見えにくいこともある気がして。外からだからこそ見るものもあるのかなとか思ってしまうのですが、これは言い訳ですかね?

 

小松:いやぁ~まぁ。言い訳かもしれませんね。

 

孝祐:言い訳でしたということで。1週目はこれでおしまいにします。今回は、小松さんに「プロ経営者とは」という話を主に聞いてきました。次週は、プロ経営者として小松さんが何をやってきたのかという話をお聞きしますので、もっとリスナーの皆さんにとって、イメージがしやすい回になるんじゃないかなと思います。ということで、今週は以上になります。どうもありがとうございました。

 

実帆:ありがとうございました。

 

小松:ありがとうございました。

 

孝祐:番組をお聞きの皆様は、ぜひフォローお願いします。TwitterやYouTubeでも発信しておりますので、ぜひチェックください。Twitterではハッシュタグ #ぼくスモ で感想や質問をお待ちしております。では、今日もありがとうございました。

Twitter  https://twitter.com/oursmallbiz
YouTube https://www.youtube.com/@podcast9416

 

第3回へ続く)

その他のブログ