ぼくらのスモールビジネス「大手YouTuberプロダクションVAZの企業再生。ビジネスモデル再生から黒字化まで」後編


本稿は、小さく始めて大きく稼ぎ、人生を謳歌するスモールビジネス経営者の知られざる生き様に迫る番組「ぼくらのスモールビジネス」に、第13回ゲストとして当社代表の小松が出演した回(【13-3】大手YouTuberプロダクションVAZの企業再生。ビジネスモデル再生から黒字化まで)について、各人の発言の主旨を変えずに、読みやすいようにテキスト用に再編集したものです。

【13-3】大手YouTuberプロダクションVAZの企業再生。ビジネスモデル再生から黒字化まで
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<パーソナリティ>
アンティークコインギャラリア代表 渡辺 孝祐
WEB/デジタル領域のプロジェクトマネージャー 齋藤 実帆

<ゲスト>
株式会社スーツ 代表取締役社長CEO 小松 裕介

「大手YouTuberプロダクションVAZの企業再生。ビジネスモデル転換から黒字化まで」 前編はこちら

目次

3.企業再生とは凡事徹底

パーソナリティ 渡辺 孝祐(以下「孝祐」といいます。):VAZの企業再生でも凡事徹底をされた、ということですよね?

第13回ゲスト 小松 裕介(以下「小松」といいます。):そうです。VAZで行った企業再生も、まさに当たり前のことを当たり前にやる、ということでした。組織をちゃんときれいにして、コミュニケーションをちゃんと整理してあげて、それで部署ごとに本来やらなければいけないことを全部タスク設定してあげて、それを1年かけてぐるぐる回して良くする、ということをやっただけです。

パーソナリティ 齋藤 実帆(以下「実帆」といいます。):しかし、コストがずっとかかっている中で、コンテンツの世界は、当たるか当たらないか分からないところがありますよね。そのあたりはどう考えていたのですか?

小松:もちろん、やきもきはしますが、そこを焦ってもしょうがないわけです。特にコンテンツとか、芸能の世界は、一個一個を真剣にやらなければいけないのですが、経営の考え方は、やはりポートフォリオの世界なのです。打席に入って10打数10安打はないのです。10のうち1とか、10のうち2のヒットです。それで、この1、2のヒットやホームランで全てのコストや投資額を回収するというビジネスモデルなのです。このため、打席ごとに一喜一憂しているとエンターテイメントはビジネスにならないのですよね。

孝祐:例えば企画が10個あったら、そのうち1、2個を当てれば良い、みたいな考え方ですか?

小松:そうです。ただ、その「1」にのみ集中してしまったら、その他の企画を誰もやらなくなってしまいます。だから、うまくいかない、当たらない可能性が高かったり、失敗したりしてしまったとしても「さぁみんな頑張ろう!」というのが経営者の仕事です。そこで、「なんで、お前赤字なんだ」と言ったら、もう誰もチャレンジしないですよね。

孝祐:確かに。

小松:そうなるとマネージャーや制作スタッフは事務所を辞めてしまいますし、エンターテイメントじゃなくなっちゃうんです。基本的には「面白い話をしながら、次やろうよ!」とか言わなければいけない。やはりエンタメの経営はそういう世界ですよね。

実帆:確かに。そうですね。演者がどこまでモチベーション高く自分の実力を発揮できるかみたいな感じですよね。

小松:そうですね。先ほどの説明のとおり、僕はもともと自分で大学の時には映像制作をやって、それで映画の会社で働いて、というキャリアです。なので、個人的にもエンターテイメントが好きだから口出しをしたいことは一杯あるんです。だけど、僕は現場になるべく行かないようにしていました。なぜなら、そこで自分の言いたいことを言ってプラスになることがないからです。現場で働いている部下たちは、現役でプロフェッショナルとしてやっている人たちで、それこそ冬だったら寒い中にロケをやったり、企画だって、そのYouTuberの子たちと一緒に真剣に考えたりしてやっているわけですよ。それを社長が現場に行って「こうしたら?」とか軽く言えないですし、その場にいても、スタッフに気を遣われるだけで迷惑になってしまうことの方が多いです。

孝祐:そこは、敢えてそうしていたのですか?

小松:そうですね。やはり、そこは組織論としても役割分担がありますし、特に現場スタッフや若者の感性が大事なエンターテイメントの世界ならではだと僕は思っていましたけどね。

実帆:そうですね、確かに。現場の方と経営の方がバランス感覚を持って仕事をされるのが大事なのかなと感じました。

小松:どの業界で仕事をするにしても、やっぱり現場が頂点なのですよ。経営者は現場にいる人たちを支えるのが仕事になります。先ほどは、経営者も現場に行っていろいろ話をすることが大事という話をしましたけれど、このように現場を上手く機能させるために、経営者が敢えて現場に行かないという選択肢もあるわけですよね。

孝祐:社員の方との関わり方のお話を伺いましたが、所属されていたYouTuberの方たちとはどのようなコミュニケーションを取られていたのでしょうか?

小松:芸能事務所であったりYouTuberプロダクションであたったりは、この事務所の経営者・管理職と所属YouTuberやタレントとの距離感が難しいのです。これには様々な考え方があるのでしょうが、僕はVAZに所属するYouTuberとは直接やりとりをほとんどしませんでした。

孝祐:あ、そうなんですね。

小松:それをしてしまうとマネージャーが飛ばされちゃいますからね。

孝祐:確かに。

小松:もし私が所属のYouTuberたちと直接やりとりをし始めたら、YouTuberたちに何か不平不満があったら「社長に直接言えばいい」というようになってしまいます。しかし、一定の距離感を保ちつつも、所属YouTuberのみんなの活動は毎日見ていましたし、マネージャーを通して話も聞いていました。VAZの社長をやっていたときは、毎日夜に1時間とか、所属のYouTuberたちの活動を見ていました。やはり、みんなの活動をウォッチしないと失礼じゃないですか。所属のYouTuberは自分の人生をかけて一生懸命やっているわけですから。それをちゃんと全部見る、というのはやっていましたね。SNSもみんなチェックして、たまに会ったら「頑張っているな」と言って。マネージャー全員にも毎日ちゃんとコメント出して。

実帆:うわーすごい。

孝祐:それは嬉しい。

小松:まぁ社員が40人ぐらいだったからというのはあります。40人だったらそれぐらいできるじゃないですか。YouTuberも所属が何十人という感じだったので、活動をチェックすることはやっていました。大変は大変ですし、さすがに、中学生の女の子のYouTuberの筆箱の中身の紹介を見ても、僕も年齢が40歳ですからね。YouTubeを見ても、「そっかぁ」としか思わないときもありましたけど「みんな一生懸命やっているな」と思って。

孝祐:社長が気にかけてくれているというのは、凄いモチベーションになりますよね。

小松:YouTuberプロダクションとか芸能事務所というのは、やっぱり人が商品なわけですよ。

実帆:そうですね。みんな身を削ってやってくれていますからね。

小松:所属しているYouTuberが人生かけて一生懸命やっているというのに、やっぱりそれを見ないのは失礼だと思います。もし、それができないならば、その人は社長をやるべきではないですよね。

孝祐:でも、確かに何か特別難しいことを言っている、というわけではないので、逆に難しさも感じますね。私の会社は数十人といった大きさではないですが、それでも、凡事徹底ができているだろうかと自問自答してみると、あんまりできていないところもあるなと思います。そこはもう頑張るしかないところですかね。

小松:頑張るしかないです。

実帆:シャボテン公園の時に園内に何があるかを見て回る、というお話の時に、経営資源の把握、ということを伺いました。YouTuberの作品を見ることも、経営資源を把握して、会社をどうしていくか、ということの一部なのかなと思いました。

小松:そうですね。そういう意味では、エンターテインメント・ビジネスだったら、最後はリアルなライブになるとか、何かしらのコンテンツ、制作物になるわけじゃないですか。となると、そこはチェックしないとしょうがないですよね。

実帆:そうですよね。それがある意味の経営資源だし、それをどうするかが自分にかかっている、みたいな感じですもんね。

小松:ただ、先ほど言ったとおり、どこまで現場に口出しをするのかというと、やっぱり基本は口出ししないですね。だいぶ引いたところで話をすることはあっても、現場が働きやすい環境を作る、ということに注力したと思っています。

孝祐:僕だったら口を出してしまいそうですね。「元気? やっている?」と。

実帆:やりそうです。

小松:それぐらいだったらOKだと思います。しかし、だいたいみんなそれを超えて「カメラワークをこうした方がいい」とか、仕事のことにまで口を出してしまうのです。「企画はこういう方がいいんじゃない?」とか話してしまうと、「それは1日ぐらいかけて、みんなで決めたんですけど……」みたいな話になってしまう。

孝祐:マネージャーにはどのような話をしていたのですか?

小松:感想を送っていたというよりも、マネージャーは苦労が多いので、マネージャーの行動をちゃんと見て「どういうことをしているの?」とか「頑張っているね」みたいな話を言ったぐらいですね。

孝祐:ちゃんと承認してあげる、という話ですかね?でも、それで黒字になりますか?広告案件とかは取ってこなければいけないんですよね?

小松:それはそうですね。そこには担当の部署がありました。いわゆる営業部ですね。

孝祐:そことはどのようなコミュニケーションを取ってきたのですか?

小松:営業は「ちゃんと、みんな商談を入れて」、それから「売ろうね」という話だけですよ。

孝祐:いや、それはそうでしょうけど。

小松:当時で言いますと、TikTokがちょうどマネタイズできるようになったタイミングでしたので、TikTokを戦略的に売った、というのはありますね。VAZはTikTokに強い子が沢山いましたので、TikTokの商売は沢山させていただきました。

孝祐:自分だったら、そういうYouTubeの作品みたいな内容についてはなかなか口出しできなさそうですが、「仕事を取って来て」といった話はしてしまいそうだなと思いました。

小松:もちろん、経営戦略の次元ではちゃんとやりましたよ。さっき言ったTikTokを売ろう、とかもそうですし、どこの業界を狙って、どこのチャネルで売るとか、そういうのはちゃんとやりました。あとはSFAを入れましたね。

実帆:戦略の次元と個別の社員とのコミュニケーションとではバランス感覚を持って使い分ける必要があるということですね。

孝祐:経営者ってそういうことですよね。さて、第3回目はVAZの企業再生のお話を伺ってきました。ありがとうございました。次回ですが、小松さんの未来について、ですね。これからのお話をいろいろ伺っていけたらなと思いますので、よろしくお願いします。本日はありがとうございました。

実帆:ありがとうございました。

小松:ありがとうございました。

孝祐:番組をお聞きの皆様は、ぜひフォローお願いします。TwitterやYouTubeでも発信しておりますので、ぜひチェックください。Twitterではハッシュタグ #ぼくスモ で感想や質問をお待ちしております。では、今日もありがとうございました。

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第7回へ続く)

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