スーツアップで実現する全社タスク管理の導入・運用方法
スーツアップで実現する全社タスク管理の導入・運用方法
投稿日:2023年12月13日 / 更新日:2024年2月2日
株式会社スーツでは、2023年9月27日に経営支援クラウド「Suit UP」(以下「スーツアップ」といいます。)のα版をリリースしました。スーツアップは、中小・中堅企業やスタートアップなど(以下まとめて「中小企業等」といいます。)の労働生産性を高める、全社タスク管理を実現するSaaS(Software as a Serviceの略語、月単位・年単位(サブスクリプション)で活用できるソフトウェアサービス)です。全社タスク管理とは、単なるタスク管理やプロジェクト管理ではなく、個人・部署・経営に至るまで会社全体のタスクを「見える化」し管理する経営管理手法です。本稿では、スーツアップで実現する、この全社タスク管理の導入・運用方法について記載したいと考えています。
経営支援クラウド「Suit UP」α版のサービス開始のお知らせ
【まとめ】
- 全社タスク管理は、その導入・運用に特化したスーツアップを採用したとしても、会社のトップである社長がコミットしなければ運用し続けることはできない。
- 全社タスク管理の運用はチームでお互いに協力し合いながら続けていくことが大事。
- スーツアップでは、タスク管理の入力項目を簡素化し、入力作業を自動化するというアプローチを採用。それ以外にも、チームで運用を支えて、全社タスク管理の運用の定着化・習慣化を図ることができるようにしている。
- 社長がコミットして、チームで力を合わせながら行うことも大事だが、スタッフ一人ひとりが入力作業を厭わずに行うことが必要。
- 全社タスク管理の導入・運用を定着させることとは組織力の獲得。
1.社長自らがコミットする
コミットメント(commitment)とは、ビジネスシーンでは約束・公約や深い関与を意味します。私は20年近く中小企業等の経営支援をしてまいりましたが、全社タスク管理は、会社のトップである社長自らがコミットしなければ導入・運用することはできません。
経営者はビジネスモデル、儲かる「仕組み」を創り、維持し、改善・拡大していくことが仕事です。ここでいう「仕組み」とは、社外のお客様への継続的な販売体制や協力会社との取引関係だけでなく、社内の組織やコミュニケーションなどに関するルール、マネジメントシステムなども挙げられます。
しかし、中小企業等のオーナー経営者の多くは、自分が創った「仕組み」を自ら無視したり軽視したりしてオールマイティに振る舞ってしまいます。その結果、せっかく創った「仕組み」がスタッフに定着しないのです。そこはオーナー経営者は、自らがオーナー・株主なのか、経営者なのかはっきりさせなければなりません。オーナー・株主ならば最終的に経済的な損失を被るのも自分自身なのでいいのでしょうが、経営者を名乗るならば「仕組み」を構築し、自らが率先して「仕組み」を尊重し、スタッフに遵守・徹底を求めなければなりません。
スーツアップは、主にスタッフ数が10名以上から100名未満までの中小企業等での利用を想定しています。なお、中小企業白書の「従業者規模別事業所数及び従業者数2021年(令和3年)」によれば、従業者数が10名以上100名未満の事業所数は114万事業所、従業者数は2,754万人で、従業者全体のうち47.94%が働いています。
学校であれば生徒が50名であっても1クラス、100名であっても2クラスです。社長の場合は、学校の先生と違って社会常識と分別のある大人を相手にしていて、なおかつ、時間をかけて「仕組み」を創り、定型の業務を増やすことができるわけです。そのため、本来ならば、社長1名で100名程度のスタッフの管理を行うことができるはずです。
しかしながら、多くの中小企業等のオーナー経営者は、本来の社長・経営者の役割を放棄して「仕組み」づくりをしていません。経営者の仕事を行わず、地域活動や財界活動などの外交活動に勤しみ、景気や政治、同じ地域にある他社の経営状況などの世間話をして”仕事をしたような気”になっているだけです。これらは常勤業務のないオーナーが行うことであって、経営者にはもっとやるべきことがあるのです。それは会社、スタッフのマネジメント(経営管理)です。
全社タスク管理は、個人・部署・経営に至るまで会社全体のタスクを「見える化」し管理する経営管理手法です。このマネジメントシステムは全社で行うからこそ価値が生まれるものです。一部の部署やスタッフのみがタスク管理をしても、それは抜け・漏れのある歯抜けのデータベースに過ぎず、毎回入力していないスタッフに問い合わせを行わなければならないので業務効率は上がりません。そのため、全社タスク管理は一旦、導入すれば終わりというものではなく、全てのスタッフに運用をし続けてもらわねばならないのです。
そのため、スーツアップでは、会社としてシステム導入はしたものの運用が続かないという問題に対応すべく、予めかんたんに運用が継続できるように、タスク設定の入力項目の数を必要最低限に簡素化する、その少なくなった入力項目への入力作業すらなるべく自動化するなどの設計がされています。しかし、このような設計思想であっても、システムは、あくまで人間が使う道具で、どうしてもそのシステムを使いこなすための人間の行動を規定するのです。
会社組織において最高の決定権を持つ社長といえど、配下の人間の日々の行動を変えることは至難の業です。読者の皆さんが今まさに働いている自分の会社を想像してみてください。社長に人事権があってボーナス支給額を決める権限があったとしても、社員の遅刻はなくならないですし、整理・整頓も常にできるものではありません。日々しっかりとタスク設定・更新をし続けることも同様に難しいことなのです。つまりは社長が組織的な”パワー”を有しているだけでは組織に所属する人間の行動は変わらないのです。そのため、社長が会社をより良くするため、スタッフのためという大義名分のもと、リーダーシップを発揮して、社内でコミュニケーションをしていかねばならないのです。会社組織で一番強い公式の権限を持つ社長がリーダーシップを発揮すれば、少なくとも社内スタッフに対して影響力を行使できないことなどはありません。全社タスク管理の導入・運用に向けて、社長はスタッフと向き合わねばならないのです。
以上のとおり、全社タスク管理は、その導入・運用に特化したスーツアップを採用したとしても、会社のトップである社長がコミットしなければ運用し続けることはできません。
2.チームでタスク管理する
私たちは、前提として、全社タスク管理は、決してスタッフ一人の責任感や努力だけでは実現できず、チームの力でサポートし合わなければ持続できないと考えています。
スーツアップのα版のサービス開始から2ヶ月が経過しましたが、お問い合わせをいただく多くのお客様は、全社タスク管理を継続して運用できないことに悩みを抱えられています。そういったお客様に今までの運用方法を伺うと、タスク設定の入力項目が多過ぎてスタッフが入力してくれない、プロジェクトを立ち上げて全社タスク管理の導入・運用に担当者を就けているが社長がその担当者に”丸投げ”している、そのプロジェクト担当者が入力作業を各部署の管理職や所属スタッフに任せっきりにしているなどの問題点があります。多くの場合は、そもそも、なぜ全社タスク管理を導入したいのかというコミュニケーションも圧倒的に不足しています。タスク設定・更新の入力項目も多いですし、スタッフの業務負担の重い肝心な入力作業を現場任せにしています。これでは全社タスク管理は導入・運用できません。
スーツアップでは、前述のとおり、タスク管理の入力項目を簡素化し、入力作業を自動化するというアプローチを採用していますが、それ以外にも、チームで運用を支えて、全社タスク管理の運用の定着化・習慣化を図ることができるようにしています。
そのため、タスク管理に入る前に、スーツアップ内で、組織とコミュニケーションの設定ができます。チームでタスク管理を行うためには、そもそも会社が経営理念、経営戦略の実現という共通の目的に向かって所属するスタッフたちが毎日の業務を行っているということを再認識する必要があります。そして、その戦略の実現のために最適な組織を構築する必要があります。
中小企業等では、それこそオーナー社長一人が頂点でそれ以外のスタッフが横並びという「鍋ぶた型組織」も多く見られますが、しっかりと組織構築をすることで業務効率が飛躍的に向上するのです。会社内の組織を定義して、それぞれの部署の業務を規定し、スタッフがどの部署に所属するかを決定します。また、管理職・一般スタッフなど役職についても、それぞれの役職の権限を規定し、スタッフがどのような役職に就いて業務を行うのかを決定します。組織における役割分担を決めないで、スタッフの責任感に期待をしてタスク管理をするには限界があります。
また、スーツアップでは、コミュニケーションも、会社で開催される1ヶ月の定例会議の流れを可視化します。これによって社長の声が全てのスタッフに伝わるようになります。そうすれば全社タスク管理の必要性や、このマネジメントシステムが中長期的に会社やスタッフに貢献してくれることをしっかりと伝えることができるようになります。
このように組織とコミュニケーションを定義して、会社をしっかりとしたチームにするのです。その上で全社タスク管理を運用します。
スーツアップでは、個人、部署・プロジェクト、経営などの単位でタスク管理を行うことができます。個人以外についてはチームでの共同作業になります。また、1つのタスクあたりに責任者と担当者の2名を設定できるようにしています。1人であれば、どんなに優秀なビジネスパーソンであっても、長い年月の中で気乗りがしない仕事もあるでしょうし、体調が悪い時もあるかもしれません。それこそ人間ですから、タスクの期限を勘違いするなどのミスが生じることもあると思います。それを防ぐのがこの2名体制なのです。2名いれば、タスクそのものの実行方法・進め方の相談や業務を直接的に助け合うなど協力し合うことができます。
なお、スーツアップでは、このように1つのタスクあたりに責任者と担当者の2名を設定できるようにしていますが、責任者や担当者を2名に設定することはできないようにしています。これは責任の所在が不明確になることを防ぐためです。もし責任者や担当者が2名いたら、もう一人が自分の代わりにそのタスクを実行してくれるかもしれないと甘えが生じます。このようなことを生じさせないようにするため、複数の責任者や担当者を設定できないようにしています。
また、私たちは、全社タスク管理の運用において、タスク設定・更新作業を各スタッフに任せるのではなく、定例会議のその場でチームで行うことを推奨しています。もちろん組織の実行力があって全スタッフが入力作業をしっかり行える会社であれば、このように会議の場でタスク設定・更新作業を行うことは非効率なことなのですが、全社タスク管理の運用が完全に定着化・習慣化するまではチームで入力作業を行った方が良いと考えています。
スーツアップでは、タスク設定の入力項目を減らし、チャット機能等を実装せずタスク管理に機能特化することなどで、あえてチームのコミュニケーションが活発になるような”余白”を作っています。スーツアップに入力されたタスクは、「非定型タスク」ならば概要や備考欄、また、「定型タスク」ならばさらに「Wiki」に外部リンクを貼るなど追加情報を設定できますが、それでもなおタスクに関する情報が不足している場合は、システム内に情報を拡充するのではなく、一度、人間同士でやりとりをした方が効率的にコミュニケーションができると考えています。なお、個別のタスクの実行方法の標準化を目指すならば別途それに特化したシステムを採用することをお勧めします。
このように、全社タスク管理の運用はチームでお互いに協力し合いながら続けていくことが大事なのです。
3.決められたことをしっかりと行う
今まで社長のコミットやチームでの運用について書いてきましたが、本項ではスタッフ全員に当てはまることを記載したいと思います。それは、個々のスタッフが決められたことをしっかりと行う必要があるということです。
これは社会人として、組織人として”当たり前”のことではあるのですが、会社として決めたルールの対象が細かい日常業務の場合は、しっかりと行い続けることは大変なことなのです。
私の中小企業等の経営支援の経験だと、製造業の現場でよく張り紙などがされている「4S」(整理・整頓・清掃・清潔)ができている会社は本当に良い会社だと思います。製造業以外の業種の方からすると馴染みのない方も多く、ともすればビジネスからは遠く軽んじられそうな整理・整頓ですが、中長期的な視点で、会社全体の労働生産性を上げ、リスクを減らすには重要なことなのです。特に製造業では、それこそ爪に火を点すぐらいのコスト意識で経営をされている会社が多いので、こういった細かい日常業務に対する意識が他の業界と比較して各段に高いです。
このようなことを実行できる全社の組織的な能力を獲得するには、細かい日常業務までを組織的に評価する仕組みや企業文化が必要となります。それこそ全スタッフに行動を習慣化させるには多大な努力を要するのです。
タスク設定・更新はまさに細かい日常業務です。この入力作業を全スタッフが行い続けることができなければ全社タスク管理の導入・運用はできません。
スーツアップでは、予めかんたんに運用が継続できるように、タスク設定の入力項目の数を必要最低限にしています。具体的には、スーツアップのタスク管理画面では「大項目・中項目」「タスク名」「概要」「重要度」「責任者」「担当者」「期限」「通知」「非公開」「Wiki」及び「備考」の11項目を入力項目として設定しています。これは、文字の視認性を確保しながらも、ユーザーの利便性を考えて横スクロールを一切しないで済む、画面幅を最大限に利用した項目数です。
上記項目のうち、タスク設定で本当に重要な項目は「タスク名」「担当者」「期限」の3つです。その他はこれらを補完する項目です。「大項目・中項目」では、タスクに大項目や中項目を設定してグループ分けできるようにしています。「概要」では、「タスク名」だけでタスクの内容が把握できない場合に、タスクの概要を記入できるようにしています。「重要度」ではA~Cをプルダウンで選択できるようにしており、チーム内のタスクの優先順位を分かりやすく表現できます。これはアイゼンハワーマトリックスというタスク整理手法です。なお、スーツアップでは、この項目を特に設定しない場合はBに自動的に設定するようにしています。「責任者」では、部署・プロジェクトのスタッフをプルダウンで選択できるようにしています。「責任者」は主にタスクの完了を確認することと担当者を支援する役割を持っており、一般的には担当者の上長になります。組織の設定がされていれば、そのタスクが属する部署の管理職が自動的に選択されます。「非公開」は、スーツアップでは原則として全てのタスク設定を全てのスタッフが見られるようになっているため、例外的に非公開とするための機能です。「Wiki」は「定型タスク」のみの項目でマニュアルやメモ書きなどの外部リンクを挿入することができます。
全社タスク管理を運用していくには、これらの項目にしっかりと入力し続けていくことが大事になります。社長がコミットして、チームで力を合わせながら行うことも大事ではありますが、やはりスタッフ一人ひとりが入力作業を厭わずに行うことが必要です。時には面倒に思うこともあるかもしれませんが、一人ひとりのこの作業の積み重ねが、会社の労働生産性の向上には欠かせないのです。
もしタスク設定・更新ができていない場合があったら、周囲のメンバーが声掛けをする、必要に応じて、一緒にタスク設定・更新を行うことでもいいかもしれません。将来の完璧な入力を目指して、徐々に入力項目を増やしていくことでも構いませんので、会社全体で粘り強く、あきらめないで進めていくことが大事です。全社タスク管理の導入・運用を定着させることとは組織力の獲得です。組織的な能力の獲得には思っている以上に時間がかかるので、焦らずにじっくりと腰を据えて取り組むことが必要です。その成果は、最終的には、大幅な企業価値の向上を実現するだけではなく、その会社で働く全てのスタッフの皆さんの報酬増や働きやすさの改善に繋がるものと思います。
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※ 「経営支援クラウド」「Suit UP」及び「全社タスク管理」は株式会社スーツの登録商標です。
2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、東証スタンダード上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に当社の前身となる株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より、総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師登録。2019年6月より、国土交通省PPPサポーター。
2020年10月に大手YouTuberプロダクションの株式会社VAZの代表取締役社長に就任。月次黒字化を実現し、2022年1月に上場会社の子会社化を実現。
2022年12月に、株式会社スーツを新設分割し、当社設立と同時に代表取締役社長CEOに就任。