エクセルを使った売上予測(売上予想)の方法を解説!
企業の経営陣や営業部門は、定期的に売上予測を計算し、今後の戦略を立てる必要があります。
しかし、売上予測は確証のあるデータで精度の高い計算をしなければならず、負担の大きい作業です。なかには、「勘で売上予測を算出している」「忙しくて売上予測をする時間がない」という方もいるかもしれません。
本記事では、エクセルで売上予測をする方法をご紹介します。使い慣れたエクセルで効率よく売上予測ができると、負担が軽減されるでしょう。
企業や事業の将来性を左右する売上予測は、最適な方法で作成してください。
売上予測とは
売上予測は、事業の売上実績や市場の動向、社会情勢、自社の状況などを基に、将来の売上を予測することです。
企業の成長や事業を継続するためには、欠かせないデータになります。経営サイドは、売上予測を分析することで、経営判断を下したり、中長期計画を立案したりできるでしょう。現場サイドでは、人員配置や在庫管理、業務効率化に役立ちます。
また、売上予測と混同してしまいそうな言葉に売上目標があります。売上目標は、期待値や努力値を含んだ主観的な理想の数値であるのに対し、売上予測は、実績データから統計的に算出された客観的な数値です。
正確な情報から導き出す売上予測は、指標とし幅広く活用できます。
売上予測の計算方法
売上予測の計算方法には、以下の2通りがあります。
- 過去の実績を基に計算する方法
- 営業パイプラインを基に計算する方法
過去の実績を基にする場合、前年同月の数値や前年までの平均値などをデータとして用いて、以下の式で算出します。
売上実績(過去のデータ)×成長率=売上予測
成長率は、2年前の売上と比較して前年の売り上げがどの程度伸びているかの割合を使用する場合、以下の式で算出できます。
(前年の売上-2年前の売上)÷2年前の売上=前年の成長率
また、過去数年の平均成長率や前年同月の成長率、1年間の平均成長率を用いることもできるでしょう。
一方、営業パイプラインを基にする場合、見込み顧客や進捗状況をデータとします。計算式は以下の通りです。
受注見込み数×商品価格=売上見込み金額(売上予測)
受注見込み数は、予想集客数を用いるか、以下の各商談ステージでの通過率を参考に求められます。(通過率は業界・業種によって異なります。)
商談ステージ | 通過率 |
初回訪問 | 60% |
ヒアリング・打合せ | 50% |
提案 | 50% |
見積 | 60% |
交渉 | 90% |
受注 | 100% |
例えば、初回訪問の案件が1000件ある場合、受注にたどり着くまでの各ステージの通過率を掛けていき、以下が受注見込み数になります。
1000件×60%×50%×50%×60%×90%=81件
いずれの方法にしても、売上予測を計算する手順は以下の通りです。
売上予測をするために必要な実績データを収集しましょう。業種や形態によって、必要なデータは異なりますが、以下が代表例です。
- 過去の売上実績(商品・期間・顧客などに区分する、返品やキャンセル数も数える)
- 在庫数
- 周辺人口や天候のデータ
- 現在の案件状況(各案件の商談ステージや受注率など)
- 成約率やコンバージョン率(部門や担当者ごとの契約成功率)
- 契約期間
- 更新率
- 解約率
- 経済状況(自社や取引先の状況)
- 法律や規則の情報
- 競合情報
情報が多いほど、売上予測の精度は高まりますが、不要な情報を使用しないように精査しましょう。売上に影響する条件のみを揃えてください。
- 過去の実績を基に計算する方法
- 営業パイプラインを基に計算する方法
上記のどちらの予測方法が適しているか検討しましょう。過去の実績があり、同様の傾向で実績が推移すると考えられる場合は、過去の実績を基に計算する方法が適しています。過去の実績がない場合や営業活動が大きく左右する場合は、営業パイプラインを基に計算しましょう。
実際に売上予測を算出できたら、過去の実績や営業データから予測値が妥当かどうか検討しましょう。
市場の動向や社会情勢、関係各社の状況や法改正など、外的要因を分析しましょう。売上予測通りに推移していない場合は原因を明らかにし、修正する必要があります。
売上予測をする目的
売上予測は、客観的なデータから算出した現実的な数値のため、具体的な行動に落とし込みやすいです。
以下の目的に活用できるでしょう。
- 適切な売上目標を設定すること
- 在庫管理や人員配置を改善すること
- 銀行や株主から信用されること
適切な売上目標が設定できる
売上予測を基にすると、現実味のある売上目標が設定できます。売上目標が現実的な数値であれば、従業員の業務指針にしやすく、モチベーションも維持できるでしょう。
売上目標は、売上予測に期待値や努力値をプラスして設定することが多く、経営者やマネージャーからの要望や従業員の育成を兼ねた主観的な数値です。しかし、適正な売上予測があれば、実態から大きく外れることは少ないので、従業員は目標達成に向けて無理のない範囲で努力できるでしょう。その結果、売上アップや利益率の向上に繋がります。
在庫管理や人員配置が改善できる
売上予測があれば、在庫管理や人員配置などの数値的な見直しを検討しやすくなります。売上予測が正しければ、過不足の見通しが容易です。
また、売上予測に対して、在庫や人員の増減や変更を調整しなければ、予測通りの売上にならない可能性もあります。反対に、無駄を省き適材適所な配置ができれば、予測以上の売上や利益を上げられるかもしれません。
銀行や株主から信頼される
経営者は売上予測を用いて企業の将来性を説明し、銀行や株主からの評価を得ます。そのため、売上予測が正確であるほど、銀行や株主からの信用度が高まるでしょう。
また、売上予測を使用した事業計画書があれば、新たな融資を受けられる可能性も高まり、研究開発や事業拡大にも取り組みやすくなります。
エクセルの関数を使って売上予測をする方法
エクセルで売上予測をする場合、以下の3つの関数を用います。それぞれの特徴は、表の通りです。
TREND関数 | 複数のデータから売上予測をするときにおすすめ 必要なデータ:過去の月ごとの売上、広告費・訪問回数・気温などのデータ |
FORECAST関数 | 過去の売上推移が直線的な場合に活用できる 必要なデータ:過去の月ごとの売上 |
SLOPE関数 | 回帰直線と傾きにより予測が可能で、FORECAST関数と同様に、過去の売上推移が直線的な場合に活用できる 必要なデータ:過去の月ごとの売上 |
TREND関数
TREND関数では、複数の条件から売上予測を算出できます。引数は以下の通りです。
=TREND(既知のy,既知のx,新しいx,定数(TRUEorFAUSE))
既知のy:過去の実績(売上金額)
既知のx:日付や年度、環境要因など
新しいx:予測した結果の売上
定数:TRUEの場合はy=a+bx、FALSEの場合はy=bx
手順は以下の通りです。
エクセル上に過去の売上実績の表を作成します。
複数の条件を用いる場合は、上記のように作成しましょう。
将来の売上予測を表示したいセルにTREND関数を入力します。
条件が複数ある場合は、既知のxの範囲を2列分選択してください。(今回の場合だとD列とE列が既知のx)
上記のように条件が年月のみの場合と平均気温も加えた場合では、結果が異なります。
FORECAST関数
FORECAST.LINEAR関数は、以下の数値を入力して、売上予測を算出します。
=FORECAST.LINEAR(予測に使用するx,既知のy,既知のx)
予測に使用するx:将来の年月
既知のy:過去の売上金額
既知のx:過去の年月
手順は以下の通りです。
上記のように、エクセルで表を作り、過去の実績データを入力します。
将来の予測値を表示したいセルに関数を入力します。
過去のデータに基づいた直線的な売上予測ができあがります。
SLOPE関数
SLOPE関数は、以下の数値を入力して、売上予測を算出します。
=SLOPE(既知のy,既知のx)
既知のy:過去の売上金額
既知のx:年月
手順は以下の通りです。
上記のように、エクセルで表を作り、過去の実績データを入力します。
関数を設定すると、傾きが求められます。これは、指定した過去の売上実績をy=a+bxとして傾きであるbの値を算出しています。グラフのように直線的に推移している売上実績の場合に、傾きが求められると売上予測に活用できます。
エクセルの予測シートを使って売上予測をする方法
エクセルには、予測シートという機能があり、売上予測に活用できます。過去のデータを基に、予測値やグラフが作成可能です。エクセルのバージョンが2016以降であれば使用でき、関数を設定する必要はありません。手順は以下の通りです。
エクセル上に、日付と売上実績を入力した表を作成します。
作成した表内のどこかのセルをクリックした状態で、「データ」の「予測シート」のアイコンをクリックします。
す。
「予測ワークシート作成」でグラフのプレビューを確認します。
「オプション」から予測開始日や信頼区間、季節性などの設定を変更することも可能です。
過去の実績データが多いほど、正確な売上予測ができます。
まとめ
エクセルを用いると、売上予測は簡単に算出できます。
しかし、残念ながらエクセルは精度の高い売上予測に特化したツールではありません。手軽に導入でき、操作も難しくありませんが、指定された計算式に沿って数値を導き出しているだけです。データの管理や共有、分析力が必要な場合は、別途システムを導入する必要があるかもしれません。