リーダーシップ往復書簡 067
リーダーシップ往復書簡 067
リーダーは、私がいつもご紹介する「人は性善なれど弱し」もそうですが、人間の本質について、理解を深めなければなりません。
人間は思っていることと言葉が必ずしも一致しませんし、もっと言えば、人間は嘘をつく生き物なのです。そして、簡単に、善悪・好き嫌い・長所短所などという言葉で言い表すことができないぐらい多面的で複雑な生き物です。
そのため、リーダーが、フォロワーの一面だけ見て、その人そのものの価値判断をしていたら、おかしくなってしまうのです。
本連載でも以前からリーダーは、インテリジェンスを習得する必要があることを書いてきています。
分かりやすい例としては、サラリーマンの愚痴が挙げられます。愚痴を表面的な言葉で捉えると、ただ単に良くない言葉に聞こえるかもしれませんが、その愚痴が生じたコンテキスト(文脈や背景)を正しく理解する必要があります。
例えば、現場が変わろうとしている時や組織全体が成長している時にも、愚痴は付き物なのです。人間は負荷がかかれば、例え大局的にはポジティブであっても、愚痴を言うのです。もちろん、リーダーは、フォロワーの愚痴の声のトーンにも注目する必要があります。成長企業の場合の多くは「明るい愚痴」なのです。スタッフが愚痴をこぼさないならば、スタッフに負荷がかかっていないことでもあり、逆に、成長企業としては問題かもしれません。
特にリーダーとフォロワーの直接的なコミュニケーションにおいては、フォロワーは、リーダーの組織上の地位などの権威に忖度して、あくまで表面的な言葉だけで、本心を言いません。そのため、リーダーは、フォロワーの表情や声のトーンなども含めて、本心を読み取る必要があります。
組織の問題点の把握においても、一人だけからの情報だと事実認識が歪む可能性があります。リーダーは、なるべく複数人から情報取得をして、事実と評価を分けて、多面的に分析をする必要があります。そうすれば、客観的な状況について理解をすることができますし、当事者の心理状況も手に取るように把握することができます。
そして、リーダーは、フォロワーの本心を知るために、これらの行動を繰り返すことが重要になります。例えば、前述のように、リーダーが一人の発言に依拠して意思決定をするということは、フォロワーにとって怖いことでしかありません。このようなリーダーならば、すぐにリーダーの周りには太鼓持ちであふれかえってしまいます。そうなるとリーダーには耳障りの良い話しか入ってこなくなり、中長期的にはマイナスなことしかありません。
このようにリーダーの人間の本質を知ろうという行動は、フォロワーのリーダーに対する信頼にも繋がっていくのです。
リーダーシップについて疑問がある、質問をしたいという方がいらっしゃいましたら、コメントや個別にメッセンジャーでご連絡ください。
また、コメントも大歓迎です。もし興味ある人がいれば、これを酒の肴に一杯やりましょう!
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【Q.67】
最近、サーバント・リーダーシップという言葉をよく聞きますが、これが目指すべきリーダーシップのスタイルということなのでしょうか?
<コメント>
サーバント・リーダーシップは、今から約半世紀前の1970年に、ロバート・グリーンリーフが提唱した「リーダーは、まずフォロワーに奉仕し、その後、フォロワーを導くものである。」というリーダーシップのスタイルです。
一般的な人々が考えるリーダー像として、ネアカで、常に強い人で、いつでも「俺について来い!」と言って先頭を走っている組織のトップという「マッチョなリーダー像」が挙げられると思いますが、サーバント・リーダーシップは、それとは逆のイメージになるのではないかと思います。
さて、いただいたご質問に回答をすると、サーバント・リーダーシップは素晴らしい考え方だと思いますが、必ずしも質問者の方に合ったリーダーシップのスタイルかどうかは分かりません。
私は、リーダーシップとは、リーダーの特性・個性によってスタイルが違うということもありますし、その時その時で、フォロワーから求められるスタイルが変わるものだと思っています。
そのため、歴史上の人物で考えると、織田信長のような人もいれば、豊臣秀吉のような人もいますし、徳川家康のような人もいるわけです。
質問者の方は、あなたにとってのリーダーシップのスタイルを追求すべきだと思いますし、それが必ずしも固定化されるものでもないということを理解したほうがいいかと思います。
極端な話、自分が苦手な状況下においては、他人にリーダーの座を譲ることも含めて、リーダーシップのスタイルには様々あると思います。
※この記事は、2021年1月9日付Facebook投稿を転載したものです。