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ぼくらのスモールビジネス「伊豆シャボテン公園を再生!企業再生のプロが出来るまで」前編

 

 

本稿は、小さく始めて大きく稼ぎ、人生を謳歌するスモールビジネス経営者の知られざる生き様に迫る番組「ぼくらのスモールビジネス」に、第13回ゲストとして当社代表の小松が出演した回(【13-2】伊豆シャボテン公園を再生!企業再生のプロが出来るまで)について、各人の発言の主旨を変えずに、読みやすいようにテキスト用に再編集したものです。

【13-2】伊豆シャボテン公園を再生!企業再生のプロが出来るまで
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<パーソナリティ>
アンティークコインギャラリア代表 渡辺 孝祐
WEB/デジタル領域のプロジェクトマネージャー 齋藤 実帆

<ゲスト>
株式会社スーツ 代表取締役社長CEO 小松 裕介

 

「プロ経営者が語る、利益を増やす凡事徹底」 前編はこちら
「プロ経営者が語る、利益を増やす凡事徹底」 後編はこちら

 

1.キャリアのスタートは映画会社!?

 

パーソナリティ 渡辺 孝祐(以下「孝祐」といいます。):というわけで、ゲスト小松さんの第2回目です。よろしくお願いします。

 

第13回ゲスト 小松 裕介(以下「小松」といいます。):お願いします。

 

孝祐:前回は「プロ経営者とは?」という、結構ふわふわした話を聞きました。2回目以降は、新卒で就職したところから、どのように小松さんがプロ経営者になっていったのか、という具体的なお話をお聞きしたいと思います。それでは早速、最初に新卒で入った会社から教えてください。

 

小松:ホラー映画「リング」「らせん」を制作していた映画製作会社に入りました。学生の時に自主制作で映像を作っていて。そういう意味では、ちょっと“甘ちゃん“だったのです。

孝祐:今の感じと違いますよね。

 

パーソナリティ 齋藤 実帆(以下「実帆」といいます。):「映画が作りたい」という動機で入社したのですか?

 

小松:そうですね。映画監督ではないのですが、インディペンデントの映画プロデューサーになりたいと思っていました。ビジネスサイドをしっかりやって、ハリウッドみたいな映画ビジネスをやりたかったのです。当時、コンテンツビジネスという言葉が出てきて、経産省が旗振りして、映画業界を初め、コンテンツビジネスをしっかりやろうと言っていた時期でした。

 

孝祐:ハリウッドみたいというと、スポンサーを見つけてきて、脚本家を見つけてきてというような感じですか?

 

小松:そうですね。映画製作のために、ファイナンスをしっかりやって、お金を集めたらしっかりリターンを出さなきゃいけない。映画ビジネスの代表例がハリウッドです。日本の映画業界には古くからのタニマチ文化があって、孝祐さんみたいにビジネスで成功された方がポーンと「俺が文化事業の映画の制作費を出してやるよ」みたいな、世界観が残っているのです。

 

孝祐:映画の業界からどのように経営のお仕事に繋がっていくのでしょうか?

 

小松:僕は2004年に社会人になっているのですが、それこそ、りそなが国有化されたのが2003年で、2004年ぐらいは不景気真っ只中でした。当時はエンターテイメント業界の会社も沢山潰れて、僕が就職した会社も、入社した時は株価も一桁でしたね。

 

孝祐:一桁!?

 

小松:本当に一桁でした。今では株価が一桁の会社によく入社したなと思うのですが、新卒ではなかなか映画会社に就職が出来なかったのです。それで、とにかく自分の入りたい映画業界に入らなきゃと思って。でも結果から言うと、株価が一桁で潰れそうな状況の会社に入って良かったです。こういう状況でしたから、そもそも上司があんまりいないわけですよ。

 

実帆:上司があんまりいない。悲しい。

 

孝祐:潰れそうですから。

 

小松:新卒で入った映画会社ですが、当時、会社全体をどう立て直すかというタイミングでした。それで不振の映画事業だけ、というわけにはいかないので、事業ポートフォリオの組み換えのためにM&Aをし始めました。買った会社の中には不振な会社もあって、誰かが再生しなきゃいけない。でも上司がいないから「小松君、行ってきて!」みたいな。結局は、誰かがやらなければいけない仕事です。それで、20代前半の時から、ポンっと1人で送り込まれて、投資先企業の役員になって、会社の再生やバリューアップが仕事になりました。

 

実帆:じゃあもう「新卒1年目です。M&Aします」みたいな感じですか?

 

小松:雑な言い方をするとそんな感じですね。

 

孝祐:それで行ったのが伊豆ですか?

 

小松:伊豆シャボテン公園のバリューアップは、僕が26歳ぐらいの時なので、だいぶ経ってからです。最初は名古屋の通信会社のCFOをやらせてもらいました。通信会社、システム会社、FXとか商品先物とか、様々な業界の会社の経営に関わらせていただきました。それで26歳ぐらいになってから、レジャー施設で、関東圏の方は分かるかもなんですけど・・・

 

実帆:分かります。シャボテン公園、行きました。

 

小松:ありがとうございます。1回関わった会社だと、癖でずっと「ありがとうございました」って出ちゃうんですよ。

 

実帆:いいですね。

 

小松:静岡県伊東市に5年ぐらい移り住んで、伊豆シャボテン公園を再生するという仕事をやらせていただきました。

 

実帆:新卒でこういった仕事をやるという心境はどんな感じだったのですか?

 

小松:最初は映画をやりたいと思って入社したわけですよ。ただ元々監督・クリエイターになりたかったわけではありません。

 

孝祐:アートというか、クリエイティブ、芸術系じゃなくてって感じですね。

 

小松:ちゃんと映画をビジネスとしてやりたいと思っていたわけです。とはいえ、映画プロデューサーとビジネスプロデューサーはそんなに仕事内容は変わらないわけですよ。もちろん取り扱う商品が映画かどうかという根本的な違いもありますが、当時の僕は視野が狭かったと思います。プロジェクトが「短い・長い」の違いはありますが、お金を集めて、商品・サービスを創って、お客様に喜んでいただいて、対価をいただいて、それで投資資金を回収して、それがビジネスになる、と考えると、そんなに経営者とインディペンデントの映画プロデューサーは違わないなと、自分で納得させながらですかね。

 

孝祐:どう考えたって、新卒ですぐに通信会社のCFOはスキル的に無理じゃなかったのですか?

 

小松:23~24歳のときに、音声サービスを展開している通信会社のCFOをやらせてもらいました。その会社は、元々2社の上場会社による合弁会社で、IPOを目指していたのですが、それが途中で会社が傾いちゃって、私が勤めていた会社が買収しました。僕が関わった時は赤字が1億円ぐらいあって、企業再生を始めて、翌期には黒字が5,000万円になりました。そうしたら当時の上司から「これはいけるよ。IPOだよIPO!」と言われて、再生案件からIPO案件に変わって、そこからはCFOとして社長とベンチャーキャピタルを回って出資をお願いする仕事をやらせていただきました。その時は、社会人人生の中でも、めちゃくちゃ勉強しましたね。

 

孝祐:そうですよね。

 

小松:当時、その会社の経理部長も還暦ぐらいの方だったのです。そういった方とのコミュニケーションは失礼のないようにしなきゃいけないと思ったし、一般的な感覚は持ち合わせていたと思います。若い時に役員になったからと言って、勘違いして「俺は役員だぜ」とは言わなかったですね。元々、学生の時も自主制作で映像を作っていたわけですし、「映画をやりたい若者」からスタートしているので経営に関する知識が一切ないわけですよ。むしろ、勉強して来なかったので知識もなかったから「みんなの知識に追いつかなきゃ」としっかり勉強しました。その会社は30人ぐらいの会社だったのですが、いきなり沢山の部下が増えたら、責任もあるわけですし、さすがに勉強しないわけにはいかないじゃないですか。

 

実帆:何を勉強したのですか?

 

小松:その1、2年は、マーケティング、経営戦略、会計、法律、ファイナンスとか経営に関する勉強をいっぱいしましたね。

 

実帆:すごいな。

 

孝祐:今は軽くエピソードとして聞けるけど、相当大変だったんだろうな。

 

小松:本を片手に実務をやっていたので、勉強の効率がいいのですよ。

 

孝祐:「これ書いてあったヤツだ!」みたいな?

 

小松:いやいや、逆です。実務で必要だから、本を買ってきて、その晩にバーッと読んで、翌日には「こうですよね」というような感じです。

 

実帆:「この法律はなんだ?調べよう」みたいな感じでやって?

 

小松:そうです。僕は若い時に、組織再編で、会社の合併を何回かしているのですが、会社で合併をするとなったら「合併はどうやるの?」となるじゃないですか。そしたら、合併の本を買わないとしょうがない。

 

実帆:そうですね。

 

孝祐:まあ、確かに。

 

小松:それで勉強して、翌日には弁護士とか公認会計士と打ち合わせをやってとか、そんな世界ですよね。

 

孝祐:確かに、そう言われたら一番効率いいですね。

 

小松:効率いいです。

 

孝祐:授業で勉強しても、やはり実務をやらないとよく分からないですもんね。「何のために勉強をやっているのだっけ?」みたいになっちゃうから。

 

小松:「必要に駆られて勉強して」を繰り返しやって、それで結果として、スキルが上がっていたという感じですかね。

 

孝祐:なるほど。

 

 

2.伊豆シャボテン公園の企業再生

 

孝祐:小松さんの実績の一つは、伊豆シャボテン公園ですよね?

 

小松:そうですね。伊豆シャボテン公園の企業再生は、僕が26歳から31歳まで5年間やっていました。関わっている時に、全国的にも有名になった、大きなネズミが露天風呂に入る「カピバラの露天風呂」を仕掛けました。「カピバラの露天風呂」はシャボテン公園で元々やっていて、ちょうど30周年でした。元々やっていたことをメディアに取り上げてもらって集客したわけです。それこそ各局のバラエティ番組はみんな来ましたね。それが企業再生の起爆剤になったと思います。シャボテン公園の再生は分かりやすいトラックレコードだと思います。

 

実帆:ちなみにシャボテン公園に入った当初、入場者はどういう状況だったのですか?

 

小松:正確に言うと、シャボテン公園は、僕が新卒で入った映画会社が、僕が入社した年に投資をしているのです。投資をして、僕の前にプロ経営者を連れてきて、それで企業再生をしたのです。ただ再生が不十分だったところに、リーマンショックがあって再度、経営が傾いてしまった。そのため再度、企業再生をしなければならないという案件でしたね。

 

実帆:「お客さんもなかなか伸びない」みたいな感じだったのですか?

 

小松:僕は、リーマンショックで不景気になって、ちょうどレジャー施設のお客様が減っていくタイミングから関わらせていただきました。中身を良くして、マーケティングを変えるとかをやりましたね。

 

実帆:良いコンテンツがあるけどお客様に見られないというのは、全国のレジャー施設にあるような気がしますが、そこはどうやって「カピバラの露天風呂」を見てもらえるようにしたのですか?

 

小松:伊豆シャボテン公園は動物園とサボテンのある植物園になるのですが、まさに今おっしゃっていただいたとおり、全国の動物園、植物園とかレジャー施設は老朽化して、目玉がなくなっちゃっているのです。とはいえ、実際にその施設に行ってみると面白かったり、知られていなかったりする魅力が沢山あるのです。まずは、そこをちゃんと洗い出さなければなりません。動物園の運営ですと、当時は行動展示で有名になった旭山動物園。

 

孝祐:ペンギンとか。

 

小松:そうです。ペンギンの散歩とか、アザラシが昇っていく、顔を出すとホッキョクグマが来るとかが有名ですね。あれは動物を展示するハードに何十億円ものお金をかけて、それで動物の行動を見せるというやり方です。シャボテン公園でやったのは、ハードを作るお金は企業再生の案件で不足していましたので、展示場にお湯を入れて、カピバラがお湯に浸かる。お金が全然かからない方法で行動を見せるという展示をやったわけです。動物園の展示方法では、ゾウさんは鼻が長い、キリンさんは首が長いと、この動物の形を見せるという形態展示が一般的です。これに対して、先ほど言った旭山動物園は、今もすごい集客をされていますけれども、動物の行動を見せる行動展示という展示をやって一斉風靡した。シャボテン公園の企業再生で何をやったかというと、動物の行動を見せるにしてもハードを作るお金がないので、それをソフト的なアプローチで動物の行動を見せるということをやった。それが経営的な改善ポイントです。

 

孝祐:平たく言うとお金を使わずにアイデアでどうやるかみたいな話ですよね。

 

小松:そう。お湯を出したらカピバラが浸かるみたいな。それを「面白いね」「これ絵的にいいからテレビ呼ぼう」みたいな。

 

孝祐:そこのPR発想があるとないでは全然違いますよね。

 

小松:そうですね。伊豆に行った時に思ったのですが、例えば冬になるとアロエの赤い花がいっぱい咲くのですよ。これは東京の人はみんな知らないのですが、地元の方からすると当たり前の日常なのです。やはり大事なことは、お客様の目線になってちゃんと地元を見られるか。もうちょっと堅く言うと、経営資源をちゃんと認識できているかどうかが大事ですね。観光ビジネスはそこが面白いところだと思います。もう一度、お客様の目線になって考えなければならない。最近だとすぐにインバウンド、海外のお客様となりますが、日本人の僕らからすると当たり前の日常が、訪日外国人の方たちにとって面白いかどうかは、ちょっと感度を高くしてお客様の気持ちにならないと分からないですよね。

 

第4回へ続く)

 

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