職務権限規程とは?定義や作り方をテンプレート付きで詳しく解説!

組織の中で誰がどの業務を担当しているかはっきりせず、意思決定の権限や範囲が不明確なことはありませんか?
どう対応すればよいか戸惑っている人も、少なくないかもしれません。
職務権限規程は、業務の円滑な運営を実現するためには必要不可欠です。
本記事では、職務権限規程の目的と必要理由、具体的な職務規程の作成手順について解説します。
ぜひ参考にしながら組織内での役割をクリアにして、効率的かつ透明性の高い職務環境を実現してください。
職務権限規程とは?

職務権限規程は、組織内の各職位や役職について、役割や責任を明確に示した規則です。
適切に整えることで、職場の業務プロセスのスムーズな進行を支える鍵になります。
職務権限規程の目的と主な項目について、要点を整理していきましょう。
職務権限を策定する目的
職務権限規程を策定する大きな目的は、組織内の内部管理を強化し、リスクに対処することです。
従業員ごとの職務と権限を明確に定義することで、組織内の役割が整理されます。
業務の円滑な遂行が可能となり、リスクが発生した際にも対応すべき部署や担当者を明確化できます。
職務権限規程は、迅速な対処を可能にするという意味で非常に重要です。
職務権限規程に含まれる主な項目
職務権限規程に含まれる主な項目は、職務の範囲、権限の範囲、責任の範囲の3つです。
- 職務の範囲:特定のポジションに付与された業務内容。それぞれの職位が果たすべき具体的な業務を示す。
- 権限の範囲:職務を遂行する際に行使できる影響力の及ぶ範囲。命令・決定・承認などの権限の適用範囲を定める。
- 責任の範囲:各職位が持つべき責任の範囲。規程することで、組織内の役割分担が迅速かつ効果的に機能する。
職務権限規程で職務・権限・責任の項目を正確に定義すれば、組織運営の基盤が強化されます。
従業員の働きやすさに関わることなので、業務効率の向上にもつながりますよ。
職務権限規程が必要な理由

組織運営において職務権限規程が必要な理由は、以下の3つ。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
責任の所在を明確にするため
職務権限規程は、組織内で誰がどのような責任を持つべきかを明確にするために必要です。
もし責任の所在が曖昧なままだと、問題が起きた際に対応が遅れ、責任の押し付け合いが起こる可能性があるからです。
例えば、クレーム対応や業務上のミスが発生した時に担当者や決裁者がはっきりしていなければ、関係者の間で判断が止まり、対応が後手に回ります。
その結果、信用を損ねたり、業務全体のスピードが落ちることにもつながります。
だからこそ、職務権限規程を整備して責任の所在を明確にしておくことは、組織の安定運営と迅速な対応を支える重要な要素です。
組織での意思決定を迅速にするため
組織内での意思決定をスムーズに進めるという意味でも、職務権限規程が重要です。
意思決定のルートや責任の所在が明確であれば、誰が何を判断すべきかが一目で分かり、迷いや確認の手間がなくなるからです。
例えば、緊急対応が求められる場面で、「どの役職者が決裁できるのか」が明文化されていれば、上申や確認のフローを飛ばしてすぐに判断・行動に移せます。
このように、職務権限規程の整備は、組織がスピード感を持って動くための土台。
意思決定をスムーズにし、競争力を高めるためにも欠かせない取り組みです。
組織内でのコンプライアンスを守るため
職務権限規程は、組織が法律や内部規則を遵守しやすくするためにも欠かせません。
コンプライアンスの確保には、誰がどの範囲で決定を下し責任を負うのかを明確にすることが有効です。
結果的に、法令違反や不正行為を未然に防ぐことにもつながりますよ。
ある食品会社では、職務権限規程を整備することで公正な取引や品質管理が強化されました。
結果として、市場での信頼も向上したそうです。
職務権限を明確にすることで、コンプライアンスが強化され、組織の健全性が高まることが期待できます。
就業規則と職務規程の違い

混合されがちな就業規則と職務規程ですが、目的と内容に明確な違いがあります。
表にまとめたものは、以下の通り。
項目 | 就業規則 | 職務規程 |
---|---|---|
目的 | 労働条件や職場の基本ルールを定める | 職務ごとの権限・責任・業務内容を明確にする |
内容 | 就業時間・休暇・給与・福利厚生・安全衛生など | 部署やポジションごとの具体的な業務・責任 |
対象 | 全社員 | 特定の職務・ポジション |
法的義務 | 労働基準法により周知義務あり | 法的義務はないが、組織運営上重要 |
就業規則は、労働条件や職場の基本ルールを規定し、すべての社員に共通する事項を取り扱うものです。
労働基準法に基づき、社員への周知が義務づけられている就業時間・休暇・給与・福利厚生・安全衛生などを含みます。
一方、職務規程は、特定の職務やポジションごとの権限や責任、業務内容について細かく定めたものです。
各部署ごとの業務範囲や個々の社員の役割を明確化することで、組織の効率的な運営を実現できますよ。
就業規則と職務規程は、それぞれ役割が異なり、どちらも組織運営に欠かせません。
社員それぞれが職場のルールを守りつつ、自分の担当業務を理解し、責任を持って職務を遂行することが重要です。
職務権限規程のテンプレート

職務権限規程の基本的な形式・内容について、以下に例を示します。
第1章 総則
第1条(目的)この規程は、会社の業務執行に関する各職位の責任と権限を明確に定め、~を目的とする。
第2条(用語の定義)この規程における用語の定義は、次のとおりとする。
(1)職位とは、~。
(2)職務とは、~。
(3)責任とは、~。
(4)権限とは、~。
第2章 責任および権限
第3条(職位の責任・権限)各職位には、明確な責任の範囲及びその責任遂行に必要な権限が与えられる。
第4条(権限の形態)主な権限については、次のとおりとする。
(1)命令とは、~。
(2)決定とは、~。
(3)承認とは、~。
第5条(権限行使の基準)権限の行使については~。
第6条(権限の行使者)権限は、原則として職務を処理する立場にある職位のものが自ら行使する。
第7条(権限の代行)権限を行使すべきものが権限を行使することができない場合は、~。
第8条(権限の委任)職務の一部を委任する場合は~。
第3章 基本職務
第9条(○○の職務)○○は、社長の命を受けて△△部を統括し~。
……
WEB上にも職務権限規程の無料テンプレートがいくつかあるので、自社用にアレンジして使ってください。
職務権限規程の作り方

効率的なマネジメントと職務の明確化を実現するには、職務・権限の枠組みを整備する必要がありますよ。
職務権限規程を効果的に作成するための6つのステップを紹介します。
実際に現場で取り組む際のヒントにし、職務権限規程を整えてみましょう。
まずは、現状把握からスタートです。
組織内の全体像を把握し、どのような業務がどの部門や担当者によって進められているのかを把握します。
組織図を作成することによって、職務内容や重要度が見えてきますよ。
次に、各従業員がどのような権限を持ち、どこまで責任を負うのかを明示します。
決定権や報告義務などを職務ごとに明確に定め、職務記述書に落とし込んでいきましょう。
職務規程は、必ず法令に準拠している必要があります。
労働基準法やその他関連法規との整合性を確認し、法的リスクを最小限に抑えましょう。
社内のコンプライアンス担当者や法務部と連携しながら内容を精査してください。
規程の内容を分かりやすく明確な言葉で文書化します。
誰が読んでも理解できる表現を心がけましょう。
組織内のドキュメントテンプレートに沿って、一貫性のある内容にまとめてください。
作成した規程は、全関係者に周知することが必要です。
説明会や研修会を開催して、規程の目的や重要性を伝えることも効果的ですよ。
イントラネット(内部ネットワーク)で、公開して常に確認できる環境を整えましょう。
市場環境や技術の進展、法改正などに対応するため、定期的な見直しの仕組みを構築します。
組織の変化に合わせて職務規程を適宜更新し、常に現状に適した内容を維持してください。
見直しの期限を設定し、関係部門と共に改善点を洗い出すプロセスを確立しましょう。
現実に即した効果的な規程を維持することが、組織運営の健全性と効率性を支えるポイントですよ。
職務権限規程についてよくある質問

最後に、職務権限規程について、よくある質問をQ&A形式でまとめました。
職務権限規程とは?
職務権限規程とは、組織内の各メンバーの役割・権限・責任を明確に定めた文書です。
誰がどのような業務を担当し、どこまでの決定権を持つかを明文化し、業務の円滑化と効率向上を図ります。
とくに大規模な組織では、部署間の連携や責任の所在を明確にするためには欠かせません。
職務権限とは何ですか?
組織において、各職位に付与される職務遂行上の決定権や指示権が職務権限です。
それぞれの立場でどこまでの判断ができるのか、どのような指示を出せるのかを明確に定めます。
就業規則と職務規程の違いは何ですか?
就業規則と職務規程は、目的と内容が異なる文書です。
就業規則
- 労働基準法に基づいた労働条件や職場の基本ルールを定める
- 労働時間・休暇・給与・懲戒処分など労働契約に関わる事項を網羅
- 組織全体に適用される一般的な規則
職務規程
- 特定の職務や役職に関する業務内容や権限を定める
- どのポジションがどの業務を担当し、どんな権限を持つかを記載
- 個々の役割に特化した詳細な規程
両者はそれぞれ異なる目的を持ちますが、どちらも組織運営において重要な役割を果たしています。
【まとめ】職務権限規程とは?

職務権限規程とは、組織内で誰がどこまで決定や行動ができるかを明確に定めた文書です。
職務権限規程を整備することで、責任の所在が明確になり、各メンバーの役割や責任範囲を正確に把握できます。
業務フローの見直しによって、無駄のないプロセスを整理しましょう。
適切な権限範囲の設定によって、メンバーが自信を持って業務に取り組める環境を整えられるはずです。
組織改革に取り組みたいときこそ、ぜひ職務権限規程の整備から着手してみてください。
組織の持続可能な成長と健全な運営を支える基盤を構築して、企業の発展につなげていきましょう。