全社タスク管理とは確実に会社を良くする方法
本稿では、2023年2月7日に株式会社スーツにおいて開催された「全社タスク管理導入講座(初級編)」(講師:株式会社スーツ 代表取締役社長CEO 小松 裕介)をダイジェスト版に加工したものを掲載いたします。
当社では、2014年12月の創業以来、時価総額100億円以下の中小企業やスタートアップ企業に対して、人材投入(ハンズオン)型経営支援を実施してまいりました。その結果、多くのクライアント企業様の企業価値向上を実現し、当社にも中小企業等の経営ノウハウが蓄積されました。
本講座は、これら経営ノウハウの一つである「全社タスク管理」を導入するための講座です。「全社タスク管理」とは、単なる「タスク管理」「プロジェクト管理」ではなく、個人・部署・経営に至るまで会社全体のタスクを「見える化」し管理することです。本講座の受講者は、(1)会社を大きくしたい創業経営者、(2)スタッフの業務を「見える化」したい二代目経営者、(3)事業承継を実現したい創業経営者、(4)組織的な実行力を獲得したいスタートアップ経営者、(5)組織に課題を抱えており、組織コンサルティングや組織研修を探している経営者、(6)その他社長室、経営企画室、子会社・関連会社管理担当及び投資担当等の中小企業等の経営管理を管掌とするご担当者様などを主に対象とするものです。
2023年3月以降は、毎月第1週目の火曜日17時からの開催を予定しております。中小企業等の企業価値向上にご興味ございます方は、是非ご参加いただければと思います。
【まとめ】
- 「全社タスク管理」とは、単なる「タスク管理」「プロジェクト管理」ではなく、個人・部署・経営に至るまで会社全体のタスクを「見える化」し管理すること。
- 全社タスク管理を導入すれば確実に会社が良くなる。
- 良い会社とは組織力がある会社。
- 組織力があるとは、役割分担がされていて、各人が行う仕事も明確で、期限も守られていて、アウトプットされる仕事の品質も保たれていること。
- 社長が本来行うべき会社組織のマネジメントを、社長がしっかりやっていない。
- 組織力をアップするには、組織、コミュニケーションを定義し、タスクを明確化する。そして、仕事を明確にし、担当を明確にし、期限を明確にする。
全社タスク管理とは確実に会社を良くする方法
1.はじめに:全社タスク管理で確実に会社は良くなる
講師:株式会社スーツ 代表取締役社長CEO 小松 裕介(以下同じ):
本日のセミナーですが、別途開催しております「中小・中堅企業のためのプロ経営者育成講座」と同じく、SNSでポッと投稿しただけで15名程度の方にご参加いただいております。昔と違って、サーチファンドへの注目などもあって、中小・中堅企業の会社経営の仕方、バリューアップ・ノウハウを期待する方は増えているのかなと思います。本日は質疑応答を含めて1時間のプログラムになっておりますので、受講者の皆さんには、少しでも新しい気づきをお持ち帰りいただきたいと考えております。リラックスして楽しくご参加いただけたらと思います。
さて、本日の講座のタイトルは「全社タスク管理導入講座」としています。この「全社タスク管理」とは何か、ということについてご説明が必要かと思いますので、最初に申し上げたいと思います。私はこれまで、約20年にわたり中小・中堅企業のバリューアップの仕事をしてきていますが、一昨年2021年の冬に、ふと自分の社会人人生を振り返った時に、今までプロ経営者として様々な業種業態・成長ステージの企業価値向上をしてきた一方、抽象度を上げれば、どのような企業においても、いつも同じことをしているなと思いました。それこそが、本日のテーマである「全社タスク管理」です。具体的には「会社組織を定義して、その組織のコミュニケーションをデザインして、それで全社的にタスク管理を行う」です。「この部署に所属するAさんが、この仕事を、いつまでにやる」ということを全社的に管理するのです。
私としては何か新しいことをやっているわけでもなく、ごくごく当たり前のことをやってきているだけなのですが、世間一般の会社では、思っている以上にこれらのことをやっていない社長が多いのです。本日はこのあたりを紐解いて、全社タスク管理を導入すれば、確実に会社が良くなる、ということをご理解いただきたいと思っています。
先ほどのとおり、本講座はSNSで集客しておりますので「はじめまして」の方もいらっしゃるかと思います。改めて自己紹介をさせていただきます。株式会社スーツの代表取締役社長CEOを務めております小松と申します。今まで私が何をやってきたかというと、静岡県伊東市にある伊豆シャボテン公園というレジャー施設の再生、最近だとスタートアップの企業再生の案件でYouTuberプロダクションのVAZの再生、そして、クライアント名は出せないのですが、上場会社の企業再生などを手掛けてきております。
私は、約20年、中小・中堅企業のバリューアップ、特に企業再生の仕事をやってまいりました。ここ最近は特に中小企業の会社経営のできる人材が求められているわけですが、10年前だと「プロ経営者」という言葉は大企業の経営者にしか使われなかったと思います。しかし、現在は事業承継が社会問題になっていまして、統計データからも、外部招聘の経営者がいないと多くの事業承継が実現できないと分かってまいりまして、行政も含めて、対応を考えているのが実情です。
このような背景事情を踏まえて本講座を開催させていただいております。私がやりたいことは、(1)中小・中堅企業で活躍するプロ経営者の育成、(2)日本の中心である中小企業マーケットの改善です。学生時代に社会の授業で習ったこの円グラフを見ていただければ分かるとおり、企業数のうち大企業はたった0.3%、中小企業は99.7%です。働く人も約7割が中小企業です。しかし、中小企業の付加価値額は53%しか出ていない。つまり、中小企業は生産性が非常に低いのです。この問題を、志ある皆さんと一緒に、科学的な経営を取り入れて、中小企業の生産性を上げて、社会貢献をしたいと考えています。
2.良い会社には組織力がある
皆さんに質問があります。良い会社のイメージですが、どのようなものを想像されますでしょうか?
(以下参加者の皆様からのご発言)
「日本に外貨を稼いでくれる会社」、「儲かっていて、働いている従業員が幸せであることが大事だと思います。」、「社員が働きがい、やりがいを持って働いている会社」。
ご回答ありがとうございます。本日の受講者の皆さんは、売上・利益とかよりも、社会性という目線を持たれていて素晴らしいですね。良い会社の尺度はいろいろありますよね。社会貢献しているとか、従業員にとって幸せだとか、売上が大きい、利益が出ているとか。その中でも私が本日言いたいことは、良い会社とは組織力がある会社なのです。先ほどの、最終的には社会貢献、従業員の幸せ、売上・利益に繋がっていくコアな要素です。良い会社とは、チームで働くことがしっかりと設計されている会社なのです。私は会社の醍醐味は、一人で仕事をやっているわけではなく、一つの事業をみんなで分担して、一人ひとりがベストを尽くして働くことなのだと思うのです。ここに書かせてもらっていますが、「1+1=2」ではなくて「1+1」を3にも5にも10にもできる。やはり良い会社とは組織力なのです。組織力とは、組織という複数人で働くわけですので、役割分担がちゃんとなされていて、各人が行う仕事も明確で、期限もちゃんと守られていて、アウトプットされる仕事もしっかりと品質が保たれている。
本来は、これは当たり前のことなのです。しかし、この当たり前ということが本当に難しいのです。本日の受講者も経営者の方が多いのですが、皆さんも同様に思われているのではないかと思います。いかに当たり前が難しいか。私もこの当たり前を実行することは本当に難しいと思いながら、約20年間にわたり会社経営のお仕事をさせていただいています。
経営学では「ケイパビリティ」という専門用語があります。ケイパビリティとは、企業が全体として持つ組織的な能力のことを言います。ケイパビリティが高い会社の代表例として、先日社長の交代を発表したトヨタがあります。トヨタ自動車はオペレーションのカイゼンが有名ですが、末端の社員までみんなで協力して改善活動をしていて、オペレーション・エクセレンスな会社として有名です。あとは、マクドナルドも著名ですね。オペレーションの改善の際にストップウォッチで計って秒単位で改善を行っているわけです。このような改善活動は、本講座に参加している中小・中堅企業ではそうできることではありません。経営学の世界では、ケイパビリティはライバルとの差別化、競争優位性になる能力だと言われています。しかし、本講座で私が言いたい中小・中堅企業の組織力とは、このような高いレベルのものではありません。
私が求めているレベルのケイパビリティとは、社内ルールを守る、報告をする、決められた期限を守るとか、その程度のレベルです。ただ、いかがでしょうか?簡単なレベルですが、なかなかできないですよね?では、これを身につけるためにはどうすればいいのかということが本講座のテーマです。
この答えは、予め申し上げると、一切の派手さはなく、極めて地味なことです。野球に例えると、もし皆さんが選手で、将来、メジャーリーグに行きたいという夢を抱いたとしても、いきなりメジャーリーグのマウンドには立てません。日本のプロ野球でも甲子園でもなく、最初はランニングや筋トレなど基礎体力づくりをしなければならないわけです。一般的な経営者の中には、この会社の基礎体力づくりを疎かにして、大きな事業をやりたいという方が多過ぎると思うのです。もう一度、初心に立ち返って、ランニングをしましょう、筋トレをしましょうという話が今日の話だと思ってください。
先ほど私はこの答えを地味だと表現しましたが、これが企業の成長を妨げている根本的な原因だと思うのです。しかし、経営者の皆さんは、この組織力に対して問題意識がないのです。多くの経営者は、会社の抱える問題は、競合の商品・サービス、営業力の不足、社員個人の能力不足、資金が不足している、景気が良くないなどと言うのです。異業種交流会など社長同士の集まりでは今のような話ばかりをしています。私も約20年間にわたり会社経営のお仕事をさせていただいておりますが、「当社の組織力に課題感を持っています。」という悩みを持った社長には会ったことがありません。
私は、つまるところ、社長が本来行うべき会社組織のマネジメントを、社長がしっかりやっていないのではないかと思うのです。経営者が行うべき仕事は何かと言われれば、事業を創るとかもありますが、業務を効率よく回すという、やはり会社の経営管理が挙げられます。そのため、経営者は会社をマネジメント・経営管理しなければならないはずなのに、多くの社長は「それは私の仕事じゃない」とまで言う人が沢山いるわけです。組織運営をするための当たり前の経営管理という仕事を経営者がやらなければ誰がやるのか。中小・中堅企業では誰も代わりにこの仕事をやる人はいないのです。そのため、自分たちでもう一度、組織マネジメントを行っていただきたいと考えています。
3.全社タスク管理は、組織力をアップする方法
ここでは「組織力をアップする」と書いていますが、組織力という話をするとマネジメントサイクルの話になります。いわゆるPDCAサイクルですね。それこそPDCAという言葉は長年使われていると思いますが、それぐらいいろいろな会社で回っていないのです。では、「組織力をアップする」ためにはどうすればいいのか。その解決策が、今日お話する全社タスク管理です。
全社タスク管理とは何かというとシンプルです。全社的に行うべき仕事と、その役割分担を明確化します。まずタスク管理をする前提として、組織の定義と、その組織のコミュニケーションを定義する必要があります。組織として複数人で働くためには、どの部署が何の仕事をするのか、誰がどの部署に所属するのかが明確でなければなりません。これらが決まれば、どこの部署の誰が何の仕事をするのかが決まります。次にコミュニケーションですが、会社ですので、1人だけ完結する仕事はほとんどないはずです。このことを考えたら、他の部署との間のコミュニケーションを予め定義する必要があります。具体的には、定例会議であったりチャットツールであったり、だとかになります。これを定義すれば、組織として、複数人で働きやすくなります。そのうえでタスク管理です。各部署に所属するAさんはこの仕事、Bさんはこの仕事と、仕事を明確化して、それぞれに期限を設定して、タスク管理をすればいいのです。
全社タスク管理によって、仕事を一定の品質に保つことができます。結局、会社にいる誰かが仕事の最終的なアウトプットに対して責任を持たなければならないのです。でも、世の中には、やりっぱなしの仕事も沢山あります。それはなぜかというと、そもそも職責が明確になっていない仕事が多いのです。この仕事はAさんが担当、と明確になっていたら、ちゃんと実行されるのです。しかし、多くの場合は、その担当が不明確だから、仕事の品質が担保されない。例えば、AさんとBさんの2人に対して「この仕事をよろしく頼む」と言ったら、「お見合い」するのです。もしかするとAさんがやってくれるかも、Bさんがやってくれるかも、という「お見合い」になって、それで仕事が宙ぶらりんになったり、品質が担保されなくなったりしてしまう、ということが頻発しています。
同じような話として、期限の話もあります。期限を明確にしないまま振る・振られる仕事は沢山ありますよね。「この仕事をよろしく頼む」とそれだけで指示が終わっていて、いつまでに完了すればいいのか分からないから、担当者に後回しにされる。特に担当者にとって難しい仕事であったり煩雑な仕事になったりすればするほど、ほったらかしになります。期限がなければ優先順位をつけられません。嫌な仕事・苦手な仕事になれば、優先順位を後ろにしても、理屈では許されますからね。
以上のように、組織力をアップするのは決して難しいことではなく、そもそも組織、コミュニケーションを定義する。タスクを明確化する。仕事を明確にし、担当を明確にし、期限を明確にする。このあたりができれば、仕事の品質も担保され、仕事の期限も守られる。これをやらなければなりません。
(続く)第2回 全社タスク管理から始める経営改革
【関連ブログ】
1.スーツアップの導入方法について
2.プロジェクト管理やタスク管理で本当に大事なこと ~ なぜスーツアップではこの機能が採用されたのか ~
3.スーツアップで実現する全社タスク管理の導入・運用方法
【全社タスク管理導入講座(初級編)】
第1回 全社タスク管理とは確実に会社を良くする方法
第2回 全社タスク管理から始める経営改革
第3回 全社タスク管理の方法と導入ノウハウについて
※ 「経営支援クラウド」「Suit UP」及び「全社タスク管理」は株式会社スーツの登録商標です。