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全社タスク管理から始める経営改革

 

投稿日:2023年2月7日 / 更新日:2024年2月18日

 

本稿は、2023年2月7日に株式会社スーツにおいて開催された「全社タスク管理導入講座(初級編)」(講師:株式会社スーツ 代表取締役社長CEO 小松 裕介)をダイジェスト版に加工した記事の第2回です。

第1回 全社タスク管理とは確実に会社を良くする方法

 

【まとめ】

 

全社タスク管理から始める経営改革

 

4.組織にかかる問題の事例

 

このスライドでは、組織にかかる問題の事例を紹介したいと思います。一応お聞きしたいのですが、本日参加されている皆さんの中で、「会社に組織図がない」という方はいらっしゃいますでしょうか?私は売上高10億円を超えて社員が50人いるにもかかわらず組織図がない、という会社を見たことがあります。社長一人に対して、部下が直接、50人ぶら下がっているというわけです。どう考えても社長一人で50人を管理することはできないはずなのですが、それでもなんとなく会社の売上・利益も右肩上がりで成長しているという状態です。もっとしっかりと組織を作れば、さらに業績が伸ばせるはずですので、もったいないですよね。

組織の定義がされていない問題に続いて紹介したい話題が、業務が属人的になっていて、仕組み化がされていないことです。例えばですが、「この仕事には独自のやり方があって、お前には直接教えない。背中を見て学べ」みたいな話です。令和になっても、職人さんのようなことを言う方は多いです。中小・中堅企業ですと、業務が特定の社員に紐づいてしまっていて、組織に紐づいていないため、本来あるべきジョブ・ディスクリプションを作成することができず、本当に必要な人材採用ができないのです。経営支援をする中で、よく発生することなのですが、採用に関して、社内で活躍する人と同じような人が欲しい、と言われることがあります。具体的に「何の業務をしているのですか?」と聞くと、実際にはその業務はその方だけで十分で、今必要な人材には、実は違うスキルが求められている、などあります。中小企業が人を採用できないには訳があって、仕事が明確化されていないから採用できないのです。なぜなら社内の人ですら、どういうスキルを持った人材の募集をしていいかが分かっておらず、ただ漠然と優秀な人が欲しいという目標しか持っていません。これでは候補者の方に対して、ジョブやキャリアの提示ができません。それこそ優秀な人になればなるほど、自分のキャリアに対する考えもしっかりと持っていますし、自分が任せられる仕事が明確でなければ、その会社に行くモチベーションは下がります。

加えて、中小企業によくありがちですが、複数の部署で、同じ業務をバラバラに実施しています。先ほどのとおり、多くの中小企業は、組織ごとに、それぞれが担当する仕事が明確化されていないので、担当者がよかれと思って、複数の部署にまたがって同じ業務が行われてしまう、ということもよくあります。

また、組織の規模に比して、役職が多すぎる場合もあります。全体で20人の会社なのに本部長がいる。逆に部下がいないのに、なぜか課長の役職に就いている人がいる場合もあります。権限の委譲が一切ない会社もあります。どう考えても業務効率は悪いのですが、部下に権限を渡すのが怖くてできない。全部、社長決裁。そもそも稟議システムがない。現在、私がバリューアップで関与させていただいている会社も、ほぼ稟議システムがありません。どうやっているのかを尋ねたら、「それぞれ勝手になんとなくでやっています」と言っていました。ちなみに、その会社は利益が沢山出ていて、業績だけ考えると優良企業です。しかしながら「いつか事故が起きかねないです」という話をしています。

続いて、コミュニケーションの話題です。本講座に参加されている皆さんはいかがでしょう?会議体は整備されていますか?部署の定例会、課長以上、部長以上などの役職者会議、経営会議や取締役会などについて、社内で開催ルールはまとまっていますか。それとも、なんとなくその場の気分で、不定期開催していますか?当たり前ですが、ちゃんと会議体を整備しなければなりません。会議ごとのアウトプットのイメージはありますでしょうか?モニタリングの会議なのか、意思決定をする会議なのか。これは大企業でもあるのですが、アウトプットが定まっていない場合はよくあります。会議の議事録も同様で、雛型を設けて、しっかりと記録しないといけません。

最近はTeams、Slack、Chatwork、LINE WORKSと様々なコミュニケーションツールがありますが、ちゃんとチャンネル設定はされていますか?営業部が10名いるのに7名のグループはできていませんか?登録が漏れてしまっていて、3人に情報共有がされていない、というようなパターンもしばしば発生します。程度の差こそあれ、チャットツール内で似たようなことは頻発していると思います。

カレンダーツールも会社全体で同一のツールを使わなければ効率が上がりません。私が手掛けた企業再生案件でもカレンダーツールがバラバラで困ったことがあります。若い社員がそれぞれ好きなカレンダーツールを使っている。私が全社で同じツールを使わないと予定が把握できないから同じにしようというと、逆に「私が使っているツールがオススメです!」と言ってくる。ツールの利便性ではなく、チームワークが論点なのですが、本人たちに悪気はないわけです。まとめるのに苦労しました。優秀なスタートアップでも似たような話を聞きます。いわゆる“野良SaaS”ですね。現場の部署の決裁で勝手に月額課金のSaaSの契約をしてしまって、会社として全社的に採用したツールでないのに、課金され続けているというものです。

当たり前なのですが、同一のツールを全社的に使うから業務が効率化されるわけです。ただ、これが理解されていないということは、チームで働くという意味を分かっていない人が多いということでもあるのです。優秀なスタートアップですらこの感覚です。いったん冷静に俯瞰してみれば、それぞれが好き勝手なツールを使っているのはおかしい、とすぐに理解できるはずです。

最後に、タスクの設定です。そもそもタスク管理をしていない会社が沢山あります。タスクを「見える化」するだけで、誰が何の仕事をしているのか把握できるようになるため、働きやすくなるはずです。私が今までやってきた企業再生ですと、ある日、Aさんという人が急に出社しなくなるのです。そうなると「今まで彼は何の仕事をやっていたんだ!?」と大慌てになるのです。冷静になればこのやりとりはおかしいですよね。社員数が1,000人いる会社ならばそうかもしれませんが、この会社には社員が20人しかいませんので、誰が何の仕事をしているかぐらい把握しておきましょうよ、という話なのです。でも、それぐらい中小企業の仕事は「見える化」がされていないのが実態です。なぜ会社という複数人で構成される組織で働いているのに、組織、コミュニケーション、そして、タスクと誰も何も管理しないのだろうと思います。

 

 

5.「全社タスク管理」導入のすすめ

 

日常では、タスク管理とプロジェクト管理は、似たような概念として使われていると思うのですが、定義をご紹介したいと思います。タスク管理は個人が自分のために管理するものという定義だそうです。一方で、プロジェクト管理は、プロジェクトなので期間は有限であるものの複数人が共通の目的のために管理するものだそうです。それでは会社の場合はどうなるのでしょうか?結論を言うと、会社の場合はタスク管理もプロジェクト管理も両方必要になります。

会社はよくGoing Concern(ゴーイング・コンサーン)と言って、将来にわたり存続し、事業を継続していくのが前提になっているのです。そのため会社組織の部署は、有期のものではなく無期限。このビジネスが続く限りずっとやっていきますと設計します。このため、部署でプロジェクト管理する場合は、無期限で複数人が共通の目的のために管理するということになります。もちろん個人単位でも、それぞれがタスク管理をしなければなりません。部署以外にも会社にはプロジェクトも存在します。コスト削減委員会やオペレーション改善委員会、今ならばDXプロジェクトとか、これらのプロジェクトは期間が定められて3か月間とか6か月間とか1年間で実施されるものもあります。そのため、会社では、タスク管理とプロジェクト管理の両方が必要になるわけです。それを全てひっくるめて私は全社タスク管理と呼んでいます。

実は全社タスク管理ですが私の造語です。インターネット検索をかけてもらっても全社タスク管理という言葉は出てきません。ですが、今まで100人ぐらいの方にご説明をしてきましたが、全員が違和感なく受け止めてきてくれています。きっと全社的にタスク管理を入れるということは、多くの人が必要性を感じているのではないかと思います。でも、やっていない。

同窓会とか周年記念イベントとかをやる場合は、プロジェクト管理ツールで役割分担してやろうというのですが、なぜか会社になったら、同じぐらいの関与人数なのに管理しなくなってしまうのです。中小企業の社員数と同窓会を運営するためのコアメンバーの人数なんて、そんなに大きな差はありません。同窓会はプロジェクト管理するけど、会社だと全社タスク管理はやらない。これを変えればいいのです。

中小企業の人数ですが、10人から100人未満で114万5,939事業所です。働いている人は約3,000万人です。でも、大半の会社は全社タスク管理をやっていないのです。これをやれば、会社はとても良くなりますね、というのが私の提案です。

皆さんもご存知の通り、中小企業は経営資源がほとんどありません。経営資源がないだけでなくケイパビリティ、組織力もないのです。スタッフ数が少ないのは如何ともし難いとしても、その少ないスタッフにしっかりと働いてもらうことを考えてもらいたいのです。それにはタスクの明確化をして、担当を決めて、仕事の期限をしっかりと守る必要があります。それだけで働きやすくなってスタッフのモラルやモチベーションの改善につながります。大企業と比べて、中小企業は労働生産性が低いと言われますが、それはマネジメントシステムがしっかりしていないからだと思うのです。どんぶり勘定で各担当者の自主性に任せて仕事を推進していたら労働生産性は落ちますよね。そのため、会社の組織力を獲得するためには、まず全社タスク管理を導入すべきだと思うのです。

私が経営支援の仕事をしていると、経営者の方が「実はPDCAが回っていないのです」と相談しにきます。もしかすると本講座を受講して下さっている皆さんも同じ悩みを抱えているかもしれません。しかし、私からすると、組織の定義もしてない、コミュニケーションのデザインもしてない、タスクも明確化していないのに、PDCAが回るわけがない。下準備を一切していないからです。先ほど野球の例え話をしましたが、いきなり野球を初めて上手くいかないのと同じです。予めランニングをして筋トレをして基礎体力をつけなければプロ野球にはいけません。こういった準備を一切せずに「PDCAが回らない、回らない」と言っている。私は中小・中堅企業の経営の大半はこのような状態だと思っています。

つまるところ、経営者が組織マネジメント、経営管理に興味のない人が多い、ということが原因なのです。そこを改めないと会社は良くならない。これが、私が中小・中堅企業のバリューアップを約20年やってきて気が付いたことです。私は、組織とコミュニケーションの定義をして、全社タスク管理を導入する、これでPDCAがまわるようにするということをやってきました。逆に言うと、これしかやっていない。これをやるだけで5,000万円~1億円ぐらいの利益が出る会社にはなるという感覚があります。

もちろん経営理念、経営戦略も大事です。ちゃんと作らなければなりません。KPI設定をして管理会計を整備する。こちらも同様です。ただ、実行に紐づいているのは全社タスク管理なのです。経営戦略、KPI設定、管理会計を新しくしなくても、例えば20人いる社員全員が、しっかり役割分担をする、決められたことをちゃんとやる、期限を守る。これだけで会社は良くなると思いませんか?私は、そこそこの業歴・社歴がある中小・中堅企業は、大きく経営戦略を変える必要はないと思っていますし、新しいこと・難しいことをやる必要もないと思っています。まずは「全社タスク管理」を導入して、当たり前のことを当たり前にやる組織にしませんか、というのが経営改革の第一歩だと思っています。

 

(続く)第3回 全社タスク管理の方法と導入ノウハウについて

 

【関連ブログ】

1.スーツアップの導入方法について

2.プロジェクト管理やタスク管理で本当に大事なこと ~ なぜスーツアップではこの機能が採用されたのか ~

3.スーツアップで実現する全社タスク管理の導入・運用方法

 

【全社タスク管理導入講座(初級編)】

第1回 全社タスク管理とは確実に会社を良くする方法

第2回 全社タスク管理から始める経営改革

第3回 全社タスク管理の方法と導入ノウハウについて

 

※ 「経営支援クラウド」「Suit UP」及び「全社タスク管理」は株式会社スーツの登録商標です。

 

株式会社スーツ 代表取締役社長CEO 小松 裕介

2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、東証スタンダード上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に当社の前身となる株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より、総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師登録。2019年6月より、国土交通省PPPサポーター。
2020年10月に大手YouTuberプロダクションの株式会社VAZの代表取締役社長に就任。月次黒字化を実現し、2022年1月に上場会社の子会社化を実現。
2022年12月に、株式会社スーツを新設分割し、当社設立と同時に代表取締役社長CEOに就任。

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