M&A買収後の社員への対応|離職と不安を防ぐ100日プランの進め方

結論から言えば、買収後の社員対応は「早く・正直に情報を出す → 雇用の不安を消す → キーパーソンを引き留める → 対話と処遇で定着させる → 属人化した業務を見える化する」の順で優先度をつけて進めるのが原則です。

会社を買収した後、事業と同じかそれ以上に難しいのが残った社員への対応。

買収の一報に社員は動揺し、対応を誤ると辞めてほしくない人から先に辞めていく——これはM&Aで最もよくある失敗です。

本記事では、買収した側の経営者・人事の視点で、買収直後から最初の100日、その後の統合までを優先度順の実践手順として解説します。

法的な前提や、つまずきやすい落とし穴、そして根本対策としての業務の見える化まで、ツールを開発・運営する立場から具体的に解説します。

目次

【早見】買収後の社員対応でまずやること(優先度つき)

買収後の社員対応は、「時期」と「優先度」をベースに正しい順番で進めましょう。
まずは不安を消す初動、次に離職を防ぐ定着、最後に業務の見える化という根本対策、の順で動きます。

すべてを同時にやろうとすると、現場は混乱し、こちらの手も足りなくなります。

下の早見表のように「いつ・何を・何のためにやるか」を先に整理しておくと、初動でつまずきません。

→ 表は横にスクロールできます

時期やること目的
買収直後〜1週間全体説明会で背景と当面の体制を開示/雇用・労働条件の方針を伝える情報不足による不安と憶測を止める
最初の2週間キーパーソンを特定し個別面談/業務・取引先の棚卸し事業の要になる人材の流出を防ぐ
最初の100日定期的な1on1で本音を拾う/小さな改善を実行して見せる疑心暗鬼をほぐし定着させる
100日〜半年評価・処遇制度を対話しながら段階的にすり合わせ納得感を保ったまま制度を統合する
継続企業文化の相互理解・統合/属人化業務の見える化組織として一体で回る状態をつくる

「買収後100日」が勝負になる理由

買収後の最初の100日で社員の印象と継続・離職意向はほぼ固まります
ここでの初動が、その後の統合の成否を大きく左右します。

M&Aの世界では、買収後の統合プロセスをPMI(Post Merger Integration=買収後統合)と呼びます。

とくに最初の100日は「100日プラン」として重視され、この期間の対応で社員が「この会社に残る意味があるか」を判断すると言われます。

中小企業のM&Aや事業承継の支援については、中小企業庁(中小M&A・事業承継支援)事業承継・引継ぎポータルが公的な指針・相談窓口を提供しています。

買収後の課題全体を俯瞰したい場合は『M&A後に起きやすい課題とPMI(統合)の進め方』のページも参考にしてください。

本記事はその中でも「社員対応」に絞って、具体的な打ち手を優先度順に掘り下げます。

最初にやってはいけない初動のNG

沈黙・拙速な制度変更・キーパーソンの放置は、買収後の三大NGです。
良かれと思ってやった改革が、離職の引き金になることもあります。

これからの会社の方向性を示さない:何も知らせないと、社員は最悪の想像をして転職準備を始める。

いきなり制度を変える:評価・給与・ルールを説明なしに変えると「否定された」と受け取られる。

キーパーソンを放置:全員を平等に扱ううちに、要となる人材が離職する。

旧経営陣任せにする:買収側が顔を出さないと、誰の会社になったのか分からず不信が募る。

買収後に社員が動揺・離職する3つの原因

買収後に社員が不安を感じ離職につながる主な原因を分解した図

対処法に入る前に、原因を押さえておきましょう。
買収後の離職は「情報不足の不安」「処遇への不安」「文化の衝突」の3つがほとんど。

社員が辞めるのは、給料の問題だけではありません。

「知らされていない」「自分は必要とされていないかもしれない」という心理的な不安が、実際の待遇以上に人を動かします。

原因を分けて理解すると、どの打ち手がどの不安に効くのかが見えてきます。

情報不足による不安(何も知らされない)

人は「分からない」状態に最も強いストレスを感じます
情報不足の時、勝手に悪い憶測をしてしまうことも。

買収の話は、多くの社員にとって突然です。

「会社は売られた」「自分たちはどうなる」という不安の中で、公式な情報が乏しいと、噂やSNS、社外の憶測が事実の代わりになります。

とくに危険なのは、情報が出ないことそのものが「隠しているに違いない」という不信に変わることです。

この不安は、実は情報を早く正直に出すだけで大きく下げられる種類のものです。

だからこそ後述する初動(情報開示)が最優先になります。

処遇・雇用の継続への不安

「クビになるのか」「給料が下がるのか」という生活に直結する不安は、放置すると即・離職に向かいます。

給与・賞与・退職金・勤務地・評価といった処遇は、社員の生活そのものです。

買収を機に処遇が不利に変わるのではという不安は、転職活動の直接の引き金になります。

厄介なのは、この不安が「事実」ではなく「憶測」で膨らむ点です。

実際には現状維持の方針であっても、会社がそれを明言しなければ、社員は「言わないのは悪い知らせだからだ」と受け取ります。

だからこそ、処遇への不安は待遇そのものより先に、まず方針を早く言葉にすることで大きく和らげられます。

労働契約や労働条件の基本的な考え方については、厚生労働省(労働契約・労働条件)が情報を公開しています。

買収スキームによって雇用の扱いが変わる点も、後の章で整理します。

企業文化の摩擦とキーパーソンの流出

仕事の進め方や価値観の違いは、日々の小さな摩擦になります。
とくにキーパーソンの離脱は、連鎖離職の起点になりやすい点に注意しましょう。

会議の作法、意思決定のスピード、報連相のスタイル——目に見えないルールの違いは、買収された側に「やりにくくなった」という感覚を生みます。

そしてもう一つの落とし穴が、現場の要になっている人(キーパーソン)の離脱です。

中心人物が辞めると、その人を慕っていたメンバーが続いて辞める連鎖が起きやすくなります。

文化の摩擦やキーパーソンの離職の背景には、日本の中小企業に多い業務の属人化・ブラックボックス化という構造問題もあります。

多くの日本企業では、組織が「まわっている」のではなく、過去のやり方をただ引き継いで「まわってしまっている」状態にあります(参考:『1+1が10になる組織のつくりかた ── チームのタスク管理による生産性向上』)。

買収は、この属人化した状態が一気に表面化する場面でもあります。

社員が続けて辞めていく状況の原因と対策は『社員が立て続けに辞めるときの原因と対策』のページでも詳しく整理しています。

【初動】社員の不安を取り除く最優先の3つの対応

買収直後にやるべき初動対応3つを優先度順に並べた図

ここからが実践です。
買収直後に最優先で行うのは、情報開示・雇用条件の明示・キーパーソンへの対応の3つ。
いずれも「不安を止める」ための初動です。

初動は速さが命。完璧な計画を待つより、決まっていることから早く伝えるほうが、社員の動揺は小さく済みます。

このセクションでは、買収直後の数日〜2週間で着手するべきことを優先度・時系列順で解説しています。

早い段階で正確な情報を、経営者自身の言葉で開示する(優先度 ★★★ / 買収直後〜1週間)

買収後の社員がまず求めるのは「これから自分はどうなるのか」という情報です。
沈黙は憶測と不安を生むため、決まっていることと未定のことを分けて、早く・正直に伝えます

買収の一報は、社員にとって「聞かされていなかった大事件」です。

ここで情報が出てこないと、社員が最悪のシナリオを想像し、転職の準備を始めてしまうことも。

ポイントは、すべてを決めてから話すのではなく、「今わかっていること」「まだ決まっていないこと」「いつ頃決めて伝えるか」の3つに分けて開示することです。

とくに雇用・給与・評価・勤務地といった生活に直結する論点は、たとえ「現状維持」であってもその一言があるだけで動揺は大きく下がります。

説明はメール1本で済ませず、経営者が顔を出して話す場を必ず設けます。

  1. 買収成立の当日〜翌営業日に、全社への一次連絡(背景・目的・当面の体制)を出す
  2. 決定事項/未定事項/決定予定時期の3つに分けて資料化する
  3. 経営トップが登壇する全体説明会を開き、質疑の時間を長めに取る
  4. その場で答えられない質問は「持ち帰り」を明言し、期限を切って必ず回答する
  • ポイント:「詳細は追って」で終わらせないこと。答えられない質問こそ、いつ答えるかを約束する
  • 着手すべきは、買収直後で、社員が「これからどうなるのか」と最も強い不安を抱えているタイミング

雇用と労働条件をどう扱うかを明確に伝える(優先度 ★★★ / 買収直後)

「給料は下がるのか」「辞めさせられるのか」という不安は、放置すると離職に直結します。
株式譲渡か事業譲渡かで扱いが変わるため、法的な前提を押さえたうえで方針を明示します。

株式譲渡による買収では会社の法人格はそのまま残るため、社員一人ひとりの雇用契約や労働条件は原則としてそのまま存続します。

一方、事業譲渡や会社分割では、労働契約の承継に本人の同意や所定の手続きが必要になる場合があり、扱いが異なります。

自社のスキームがどれに当たるかを確認し、労働条件を「当面変えない」のか「いつ・どこを見直す可能性があるのか」を、あいまいにせず伝えます。

制度統合を急いで一方的に不利益変更を行うと、法的トラブルと信頼喪失の二重の損失になります。

  1. 買収スキーム(株式譲渡・事業譲渡・合併等)による雇用の扱いの違いを確認する
  2. 給与・賞与・退職金・勤務地・労働時間について、当面の方針(維持/検討中)を整理する
  3. 不利益変更に当たり得る論点は、社会保険労務士・弁護士に相談してから動く
  4. 「当面は現行条件を維持する」など、決まった範囲を明文で社員に示す
  • ポイント:労働条件の見直しは、たとえ合理的でも「説明→対話→合意」の順を飛ばさない
  • 着手すべきは、社員が処遇や雇用の継続に強い不安を持ち、待遇面の憶測が社内に広がりやすい買収直後

キーパーソンを特定し、優先して個別に向き合う(優先度 ★★★ / 最初の2週間)

買収後にまず抜けてほしくないのは、業務や取引先を握るキーパーソン。
全員に等しく接するのではなく、事業継続の要になる人を先に見極め、個別に引き留めます

買収した会社の価値は、多くの場合「人」に宿っています。

特定の技術者、営業のエース、現場をまとめる番頭役、経理や情報システムを一人で回している担当者——こうしたキーパーソンが辞めると、業務はたちまち回らなくなります。

彼らは待遇だけでなく「新しい体制で自分は必要とされるのか」「裁量は残るのか」を見ています。

買収側の役員が直接会い、期待する役割を具体的に伝え、必要ならリテンション(引き留め)の処遇も検討します。

同時に、その人しか知らない業務を早めに洗い出し、依存を減らす手も打ちます。

  1. 事業継続に不可欠な人材・スキル・取引先の窓口を一覧化する
  2. 買収側の責任者が個別面談を行い、期待役割と今後の関わり方を具体的に伝える
  3. 必要に応じてリテンションボーナスや役割・裁量の設計を検討する
  4. その人に集中している業務・ノウハウを棚卸しし、引き継ぎと見える化を並行で進める

コツ:引き留めは「お金」だけでは続かない。
役割と裁量、そして『あなたに残ってほしい』という直接の言葉が効く。

  • ポイント:引き留めは「お金」ではなく役割と裁量、そして『あなたに残ってほしい』という直接の言葉が効く
  • 効果的なのは、業務や取引先が特定の社員に強く依存しており、その離脱が事業に直結する場合

キーパーソンが握る業務の引き継ぎを具体的に進める手順は『M&A後の業務引き継ぎを失敗させない6ステップ』、その人しか分からない仕事をほどく方法は『先代の属人化した業務を引き継ぐ5ステップ』のページも参考にしてください。

【定着】離職を防ぐコミュニケーションと処遇の設計

買収後に社員を定着させるための対話・評価・文化統合の打ち手を並べた図

初動で不安を止めたら、次は「辞めない・活躍できる」体制づくりです。
対話・評価・文化の3方向から、定着の土台を整えます。

初動が「出血を止める」対応だとすれば、ここからは「体力を戻す」対応です。

時間はかかりますが、この設計を飛ばすと、会社内での社員の従属意識がじわじわ下がります。

次の3つを、最初の100日以降に継続的に回しましょう。

1on1と傾聴の仕組みを回し、本音を拾う(優先度 ★★☆ / 最初の100日〜継続)

全体説明だけでは、一人ひとりの不安や不満は表に出てきません。
定期的な1対1の対話を仕組みにして、離職の意思を早い段階で止めましょう

「どうせ聞いてもらえない」「目立つと不利になる」と身構えているため、買収後の社員は、新しい経営陣に対して簡単には本音を言いません。

そこで有効なのが、上司や人事による定期的な1on1。

評価面談ではなく、「困っていること」「続けたいこと」「変えてほしいこと」を聞く場として設計します。

大事なのは、聞いた内容のうち一つでも実際に改善して見せること。

『言えば少しは変わる』という実感が積み重なると、疑心暗鬼は徐々にほぐれます。

逆に、聞くだけで何も変わらないと、対話はかえって不信を強めます。

  1. 買収後しばらくは、月1回など高めの頻度で1on1を設定する
  2. 評価と切り離し、傾聴(困りごと・要望・不安)に徹するテーマにする
  3. 出てきた声を分類し、すぐ直せるものは即対応、時間が要るものは方針を返す
  4. 対応状況を可視化し、『聞きっぱなし』にしないルールを作る
  • ポイント:1on1は『やること』が目的化すると形骸化する。1つでも改善が動いた実績をつくることが、続ける価値になる
  • 着手すべきは、社員が新経営陣に警戒心を持ち、不満や離職の兆候が水面下にたまりやすい初期の段階

評価・処遇制度は急がず、対話を挟んですり合わせる(優先度 ★★☆ / 100日〜半年)

買収した側の制度を一気に押し付けると、既存社員は「自分たちのやり方を否定された」と感じます。
制度統合は、目的の共有と移行期間を置いて段階的に進めましょう。

評価制度・給与テーブル・人事ルールは、その会社の文化そのもの。

ここを説明なしに変えると、たとえ新制度が優れていても強い反発を生みます。

まずは現行制度の背景や意図を理解したうえで、「何のために変えるのか」を共有し、移行期間や激変緩和措置を設けて徐々に浸透させます。

急いで統合するほど、優秀な人が先に去るという逆効果が起きがちです。

基本的には処遇は下げず、どうしても見直す場合は個別に丁寧に説明します。

  1. 買収先の既存制度(評価・等級・給与・手当)の実態と背景を把握する
  2. 統合の目的とゴール像を、経営から現場まで言語化して共有する
  3. 移行スケジュールと激変緩和措置(経過措置)を設計する
  4. 個々の処遇変更は、対象者へ個別説明の場を必ず設ける
  • ポイント:『正しい制度』より『納得される移行』を優先する
  • 効果的なのは、買収先と自社で人事制度が大きく異なり、統合の進め方が社員の定着を左右する場合

企業文化を相互に理解し、時間をかけて統合する(優先度 ★★☆ / 継続(PMIのソフト面))

買収の失敗の多くは、数字ではなく「文化の衝突」で起きます。
どちらかを正解とせず、両社の良さを残しながら、共通の価値観と進め方を少しずつ作りましょう

PMI(Post Merger Integration=買収後の統合)で最も難しいのが、この文化・組織の統合です。

意思決定のスピード、会議の作法、報連相のスタイル、残業への考え方——目に見えないルールの違いが、日々の小さなストレスを生みます。

ここで買収側が「うちのやり方が正しい」と一方的に押し付けると、現場は面従腹背になります。

両社混成のプロジェクトや交流の機会を作り、共通言語を育てていくのが王道です。

そのうえで、組織図・役割分担・意思決定ラインだけは早めに明確化し、『誰に聞けばいいか分からない』状態を解消します。

  1. 両社の意思決定・会議・情報共有の作法の違いを洗い出す
  2. 『どちらが上か』ではなく、残す慣行・変える慣行を対話で決める
  3. 混成チームや交流機会を設け、共通の進め方を実務の中で作る
  4. 組織図・役割・意思決定ラインを明文化し、相談先を全員に周知する
  • ポイント:文化統合は短期で終わらない前提で設計する。 急ぐほど、見えないところで軋みが大きくなる
  • 効果的なのは、買収先と自社の仕事の進め方・価値観が異なり、現場レベルの摩擦が起きやすい場合

対話の設計は、1on1を形だけで終わらせない工夫が要ります。

1on1ミーティングを形骸化させない進め方』や、『本音を言わない部下との対話のコツやる気が出ない社員への向き合い方』のページも具体的な進め方の参考になります。

【根本対策】属人化した業務を「チームで見える化」する

属人化してブラックボックス化した業務をチームで見える化する前後の対比図

買収後の社員対応で見落とされがちなのが、業務そのものを見える化するという根本からの対策です。
人に依存した仕事を「チームで見える」状態にすると、不安も離職リスクも同時に下がります。

情報開示や1on1が離職意思という「気持ち」への対策だとすれば、見える化は「仕組み」への対策です。

買収した会社の業務が特定の社員の頭の中にしかない状態だと、その人が辞めた瞬間に事業が止まります。

属人化・ブラックボックス化が引き起こすこと

「その人しか分からない」業務は、買収後のリスクが集中する場所です。
引き留めのプレッシャーも、そこに偏ります。

経理を一人で回している、主要顧客との関係が特定の営業に紐づいている——こうした属人化は、平時は問題なく回っているように見えても、買収という変化の局面で一気に弱点になります。

その人が辞める・休む・不満を持つだけで、業務全体が回らなくなるリスクが発生するからです。

買収側にとっても、属人化は「何が起きているのか分からない」という不安の源です。

引き継ぎ資料がなく、業務の全体像が担当者の記憶にしかない状態では、経営判断もリスク管理もできません。

つまり見える化は、社員の安心のためだけでなく、買収した側が事業をコントロールするためにも欠かせない対策なのです。

だからこそ、キーパーソンを引き留める努力と並行して、その人に集中している仕事を少しずつチームでの業務へ移すことが欠かせません。

業務の見える化そのものの進め方は『タスクの見える化の進め方』のページでも解説しています。

「誰が・何を・いつまでに」を全員で共有する

見える化の第一歩は、難しいことではありません。
チームのタスクを「誰が・何を・いつまでに」の形で、全員が見られる場所に置くことです。

買収後は、両社のメンバーが「今、誰が何をやっているのか」を互いに把握できていないことがほとんど。

ここでタスクを一覧で共有すると、業務の全体像が見え、抜け漏れや期限遅れが減り、特定の人への依存も徐々にほぐれていきます。

新しい体制でも仕事が滞りなく回るという実感が、社員の安心につながります。

買収で組織を一つにしていく過程では、まず仕事を見える化し、そのうえで無駄や重複を整理していく順番が効きます。

組織づくり全体の考え方は『組織マネジメントの基本』のページも参考にしてください。

とはいえ、買収直後の慌ただしい時期に、複雑な管理の仕組みをゼロから作るのは現実的ではありません。

両社の社員が同じ操作感ですぐ使えて、毎日続けられることが、見える化を定着させる条件になります。

買収後の業務を「チームで見える化」するなら『スーツアップ』

私たちが開発・運営するスーツアップは、表計算ソフトのような操作で、チームの「タスクの見える化」をして、タスクの抜け漏れや期限遅れを防ぐツールです。「「誰が・どのようなタスクを・いつまでに」の3つに絞って、みんながいつでも見られるチームのタスク管理」に絞っているので、買収で一緒になったばかりのチームでも迷わず使えます。

・表計算ソフトのような操作性で、両社のメンバーが同じ最新の状況を見られる
・自動の期限通知で、引き継ぎ中の抜け漏れ・期限遅れを防ぐ
・「誰が・何を・いつまでに」を可視化し、属人化した業務をチームに開いていける

※ 無料トライアルあり(最新の料金・機能は公式サイトでご確認ください)

買収後の社員対応でつまずきやすい落とし穴と対策

買収後の社員対応でありがちな失敗パターンと対策を対比した図

最後に、良かれと思ってやったのに逆効果になりやすい落とし穴を、対策とセットで押さえておきます。

買収後の対応は、正しさよりも「順番」と「納得感」が重要。

頭で分かっていても、スピードを優先して手続きを飛ばすと、下のような失敗が起きがちです。

「変えすぎ」で反発を招く

ルールや業務フローを急いで一気に統合すると、現場は『自分たちのやり方を全否定された』と感じ、優秀な人ほど離職意思が芽生えます。

→ 表は横にスクロールできます

ありがちな失敗なぜ起きる対策
初日から制度・ルールを刷新早く成果を出したい焦り現状維持を基本に、変更は目的を共有し段階的に
買収側のやり方を一方的に強制『買った側が上』という意識残す慣行・変える慣行を対話で決める
エースに旧来業務を丸投げ回っているから触らない属人業務を棚卸しし、見える化・分担を進める

『正しい変更』でも、説明と合意の順番を飛ばすと反発が起こりがち。

スピードと納得できる説明のバランスを意識しましょう。

キーパーソン依存と情報の偏りが続く

特定の人に情報と業務が集中したままだと、その人自身が事業の生命線になってしまいます。

買収直後はキーパーソンに頼らざるを得ませんが、その状態を放置すると、リテンションの交渉力が相手に偏り、処遇のエスカレートや、離脱時のダメージが大きくなります。

引き留めと並行して、依存を減らす動きを必ずセットで進めます。

  • 業務の棚卸し:誰が何を握っているかを一覧化し、リスクの高い業務から着手する
  • ドキュメント化・見える化:手順や取引先情報をチームで共有できる形に残す
  • 複数担当化:重要業務は最低2人が分かる状態にし、単一障害点をなくす

中小企業の経営資源やM&A・事業承継に関する支援情報は、J-Net21(中小企業基盤整備機構)独立行政法人 中小企業基盤整備機構にまとまっています。

生産性や労働に関するデータは公益財団法人 日本生産性本部労働政策研究・研修機構(JILPT)が参考になります。

よくある質問(FAQ)

買収後の社員対応について、よく寄せられる疑問に答えます。

買収されると社員は解雇されるのですか?

株式譲渡による買収では、会社の法人格はそのまま残るため、社員の雇用契約や労働条件は原則としてそのまま引き継がれます。買収そのものを理由に自由に解雇できるわけではありません。ただし事業譲渡や会社分割では労働契約の承継に手続きが必要な場合があり、扱いが異なります。具体的な労働条件の考え方は厚生労働省などの公的情報を確認し、判断に迷う場合は社会保険労務士・弁護士に相談してください。

買収後、社員にはいつ・どう伝えるべきですか?

原則は「早く・正直に」です。買収成立の当日〜翌営業日には一次連絡を出し、経営トップが登壇する全体説明会を開きます。その際、決まっていること・まだ決まっていないこと・いつ頃決めて伝えるかの3つに分けて伝えると、憶測による不安を抑えられます。

買収後にキーパーソンが辞めそうです。どう引き留めますか?

まず事業継続に不可欠な人材を特定し、買収側の責任者が個別に面談して『残ってほしい』という期待を具体的に伝えます。待遇だけでなく、役割や裁量を示すことが重要です。必要に応じてリテンション施策を検討しつつ、その人しか分からない業務の見える化・分担も並行して進め、依存を減らします。

評価制度や給与はすぐに統合すべきですか?

急がないことをおすすめします。制度を説明なしに一気に変えると、たとえ合理的でも強い反発を生みます。現行制度の背景を理解し、統合の目的を共有したうえで、移行期間や激変緩和措置を設けて段階的にすり合わせます。処遇は下げないことを基本にし、変更は個別に丁寧に説明します。

買収後の最初の100日で、特に重視すべきことは何ですか?

情報開示による不安の解消と、キーパーソンの引き留めです。この期間に社員の印象と離職意向がほぼ固まるため、初動の速さと誠実さが後の統合の成否を大きく左右します。1on1で本音を拾い、小さな改善を実行して見せることも効果的です。

社員の不安を根本から減らすにはどうすればいいですか?

気持ちへの対応(情報開示・対話)と、仕組みへの対応(業務の見える化)の両輪で進めます。特定の人に集中した業務をチームで共有し、『誰が・何を・いつまでに』を全員が見られる状態にすると、新体制でも仕事が回るという実感が生まれ、不安と離職リスクを同時に下げられます。

まとめ:買収後は、急がず誠実に社員に向き合う

買収後の社員対応は、特別な魔法があるわけではありません。

不安を止める初動、離職を防ぐ定着、業務を見える化する根本対策——この順番を守るだけで、防げる離職の多くは防げます。

買収後の社員対応チェックリスト
  • 買収直後に、決定事項・未定事項・決定予定を分けて開示した
  • 雇用・労働条件の当面の方針を、あいまいにせず明文で伝えた
  • 事業の要になるキーパーソンを特定し、個別に向き合った
  • 評価と切り離した1on1で本音を拾い、小さな改善を実行して見せた
  • 評価・処遇の統合は、目的共有と移行期間を置いて段階的に進めている
  • 企業文化は一方的に染めず、残す慣行・変える慣行を対話で決めている
  • 属人化した業務を棚卸しし、チームで見える化する動きを始めた

最後に大切なのは、社員対応を「気持ち」と「仕組み」の両輪で進めることです。

情報開示や対話で不安に向き合いながら、業務を見える化して属人化を解いていく。

この二つがそろって初めて、買収した会社は「一つの組織」として回り始めます。

参考文献・出典

チームのタスク管理 / プロジェクト管理でこのようなお悩みはありませんか?

そうなりますよね。私も以前はそうでした。タスク管理ツールを導入しても面倒で使ってくれないし、結局意味なくなる。

じゃあどうしたらいいのか?そこで生まれたのがスーツアップです。

これ、エクセル管理みたいでしょ?そうなんです。手慣れた操作でチームのタスク管理ができるんです!

見た目がエクセルだからといって侮るなかれ。エクセルみたいに入力するだけで、こんなことも

こんなことも

こんなことまでできちゃうんです。

エクセル感覚でみんなでタスク管理。
まずは以下よりお試しいただき、どれだけ簡単か体験してみてください。

 

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この記事を書いた人

小松裕介のアバター 小松裕介 代表取締役社長CEO

株式会社スーツ 代表取締役社長CEO 小松 裕介

2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、東証スタンダード上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に当社の前身となる株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より、総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師登録。2019年6月より、国土交通省PPPサポーター。
2020年10月に大手YouTuberプロダクションの株式会社VAZの代表取締役社長に就任。月次黒字化を実現し、2022年1月に上場会社の子会社化を実現。
2022年12月に、株式会社スーツを新設分割し、当社設立と同時に代表取締役社長CEOに就任。

2025年5月に、『1+1が10になる組織のつくりかた チームのタスク管理による生産性向上』を出版。

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