一人経理が退職する前にやるべき対処法5ステップ|引き継ぎと後任確保

たった一人で経理を回している担当者が退職する——このとき会社が最初にやるべきことは、引き止めでも求人票の作成でもなく、「引き継ぎに使える日数」を数え、業務を棚卸しして紙に出すことです。

一人経理の退職が怖いのは、給与計算・支払い・決算といった止められない業務の手順が、本人以外だれも中身を知らない状態で消えてしまうからです。

この記事では、退職を告げられた会社側がやるべき対処法を優先度順に整理し、さらに辞める担当者本人が円満に引き継ぐ進め方、後任の確保、そして同じ事態を繰り返さないための属人化の解消までを、具体的に解説します。

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目次

一人経理の退職で会社全体を「止めない」ための対処

一人経理の退職で直面するリスクと対処の優先度を示した全体像の図

まず優先すべきは止まると事業が回らない業務。給与・支払い・税務の期限は待ってくれません。

一人経理の退職対応は、やることが多く見えて混乱しがちです。しかし優先順位ははっきりしています。

期限があり止められない業務を守り、業務を見える化し、後任を確保し、最後に属人化を作り直す——この順番です。

まずは全体像を押さえてから、個別の打ち手に入りましょう。

退職で真っ先に止まる経理業務

給与計算・振込・社会保険・税務申告は、担当者がいなくても期限が来ます。
ここが止まると社員の生活と会社の信用に直結します。

一人経理が抱えている業務のうち、期限が法律や契約で決まっているものは、担当者の退職を待ってくれません。

代表的なのは、給与の計算と振込、源泉所得税や住民税の納付、社会保険・労働保険の手続き、取引先への支払い、そして決算と税務申告です。

→ 表は横にスクロールできます

止まると困る業務主な期限の目安止まったときの影響
給与計算・振込毎月の支給日社員の生活・信頼に直結。遅配は重大
源泉所得税・住民税の納付原則 翌月10日など延滞税・不納付加算税のリスク(国税庁『源泉徴収のあらまし』
社会保険・労働保険入退社時・年度更新手続き漏れで保険関係にトラブル(日本年金機構
取引先への支払い各請求の支払期日支払遅延で取引・信用を毀損
決算・税務申告決算後2〜3か月など申告遅延で加算税・信用低下

期限のある業務は「誰がやるか未定」のまま放置すると、そのまま事故になります。
退職日が決まったら、まずこれらの直近の期限をカレンダーに書き出すことから始めます。

対処の優先順位【早見】

「止められない業務の対応 → 見える化 → 後任確保 → 属人化の作り直し」の順で動くと、限られた引き継ぎ期間でも会社を守れます。

やるべきことに順番を付けないと、採用活動に時間を取られている間に月次の給与や納付の期限が来る、という本末転倒が起こります。

下の優先度で、上から着実に片付けます

  1. 引き継ぎ期間を確保する:退職日と実働の引き継ぎ日数を握る
  2. 業務を棚卸し・見える化する:頭の中の業務を全部書き出す
  3. 業務マニュアルを作成する:棚卸しリストをもとに、業務を標準化する
  4. 後任を確保する:採用・内部登用・外部委託を並行で
  5. 属人化を作り直す:クラウド会計と見える化で再発を防ぐ

一人経理の退職で会社が「詰む」3つの原因

一人経理が退職で詰む原因=属人化とブラックボックス化を示した図

原因は業務量ではなく「本人以外が中身を知らない」こと。
属人化・ブラックボックス化・タイミングの3つが重なると被害が大きくなります。

同じ「担当者の退職」でも、複数人で回している経理なら痛手は限定的です。

一人経理で被害が大きくなるのには構造的な理由があります。

ここを理解しておくと、対処が場当たりでなく再発防止まで届きます。

業務が一人に集中する「属人化」

一人経理は、日常業務から年次の決算まで一人に集約されているため、退職で会社の経理機能が丸ごと欠けます。

属人化とは、特定の人にしかできない状態に業務が偏っていることです。

一人経理はその極端な形で、日次の入出金確認から月次の給与、年次の決算や年末調整まで、会社の経理機能がまるごと一人に乗っています

この状態で退職されると、代わりが効かず、後任も「何から手を付ければいいか分からない」ところから始めることになります。

属人化は本人の責任ではなく、体制の問題です。一人に任せきりにしてきた会社側が、退職を機に業務を分けて持てる形へ作り直す必要があります。

業務の割り振りを見直す考え方については、業務分掌の考え方と決め方も参考にしてください。

とくに中小企業では、限られた人数で管理部門を回すため、一人が経理・総務・労務を兼ねていることも珍しくありません。規模が小さいほど属人化は起きやすく、退職一つで業務が止まる脆さを抱えがちです。

だからこそ、人を増やせなくても「業務を見える化して分け持てる状態」にしておくことが、規模に関わらず効く備えになります。

手順が頭の中にしかない「ブラックボックス化」

手順書がなく、やり方が本人の記憶だけにある状態では、退職と同時にノウハウが消えます。

長く一人で回していると、手順書を作る必要がありません。すべて本人が覚えているからです。

その結果、会計ソフトの独自ルール、取引先ごとの例外処理、パスワードやログイン情報、税理士とのやり取りの経緯——こうした情報が一切文書に残らないまま、退職とともに消えます。

消えやすい情報の例:会計ソフトの入力ルール/銀行・ソフトのログイン情報/取引先ごとの例外処理/年に一度の決算・年末調整の段取り/税理士・社労士・銀行担当者の連絡先と経緯。

やっかいなのは、ブラックボックス化した業務ほど「担当者本人は問題を感じていない」ことです。

毎日こなしているので手順を書き出す必要がなく、周囲も回っている限り口を出しません。

結果として、退職の申し出があって初めて「実は誰も中身を知らなかった」と気づきます。

だからこそ、退職の有無に関わらず、平時から手順を軽く文書化しておくことがリスクを下げます。

決算期・繁忙期と重なると被害が拡大する

退職のタイミングが決算・年末調整・賞与と重なると、引き継ぎと繁忙対応が同時に襲ってきます。

経理には季節性があります。決算、年末調整、賞与計算、労働保険の年度更新などは、特定の時期に集中します。

退職がこの繁忙期に重なると、引き継ぎと繁忙業務を同時にこなすことになり、現場は一気に苦しくなります。

だからこそ、退職日をずらせないか、繁忙期の重要業務だけでも先に文書化できないかを、早い段階で検討する価値があります。

退職を告げられた会社がやるべき5つの対処法【優先度順】

会社が退職を告げられてからやるべき対処を優先度順に並べた図

引き継ぎ期間の確保と業務の棚卸しが最優先。後任確保と属人化の作り直しは並行して進めます。

ここからは、退職を告げられた会社側の具体的な打ち手を、着手すべき順に紹介します。

どれも特別なツールがなくても始められるものばかりです。まず今日から動けるものから手を付けましょう。

ステップ1:退職日と引き継ぎ期間を交渉して確保する(告げられた当日)

何よりも先に「引き継ぎに使える日数」を押さえます。
ここが1〜2週間しかないか、1〜2か月あるかで、その後の打ち手がまるごと変わります。

民法上、期間の定めのない正社員は退職の申し入れから2週間で雇用契約を解約できます(就業規則で「1か月前まで」等を求める会社も多いものの、法的な最低ラインは2週間です。詳細は勤務先の就業規則と労働契約を確認します)。

つまり最悪ケースでは、引き継ぎに使える時間は2週間しかありません。

まずは本人と率直に話し、退職希望日・有給の残日数・繁忙期(月次締め、賞与、決算、年末調整)との重なりを1枚に書き出します。

可能なら退職日を月初や決算後にずらす、有給消化中も週数時間だけ引き継ぎ対応をお願いする、といった現実的な落としどころを探ります。

無理に引き止めるより、限られた期間で何を残してもらうかに集中したほうが、会社は確実に守れます。

  1. 就業規則と労働契約で「退職の申し入れ期限」「有給残日数」を確認する
  2. 退職希望日と、月次締め・賞与・決算・年末調整など経理の繁忙期の重なりを一覧にする
  3. 本人と面談し、退職日・有給消化・引き継ぎ対応の分担を合意する(口約束でなく書面で)
  4. 退職後に不明点を質問できる連絡手段(メール・チャット)を、期間を区切って残してもらう
  • ポイント:有休消化を考慮し、「退職日」より先に「引き継ぎに使える実働日数」を数える
  • 対象は、退職の申し出を受けたすべての会社。まだ辞めていない“今日”がいちばん打ち手が多い。

ステップ2:経理業務をすべて棚卸ししてリスト化する(1週間以内)

一人経理の頭の中にしかない業務を、まず「見える化」します。
日次・月次・年次のサイクルで洗い出すと、抜けなく拾えます。

一人経理が危険なのは、業務量が多いからではなく「何をやっているか本人以外が知らない」からです。

退職までにやるべき最初の仕事は、担当者本人に業務をすべて書き出してもらうことです。

ポイントは頻度の軸で洗い出すこと。

日次(現金・小口・入出金確認)、週次(振込準備、経費精算)、月次(月次締め、給与計算、社会保険、請求・支払)、年次(決算、年末調整、償却資産申告、労働保険の年度更新)に分けると、普段は見えない「年に一度だけ発生する重要業務」まで拾えます。

各業務には、期限・使うシステム(会計ソフト、銀行、給与ソフト)・関係先(税理士、社労士、銀行、取引先)・ID/権限の在りかをひも付けます。

この一覧が、後任探しの要件定義にも、引き継ぎ資料の目次にもなります。

  1. 日次・週次・月次・年次の4区分で、担当している業務をすべて書き出す
  2. 各業務に「期限」「使うシステム」「関係先(税理士・銀行など)」を記入する
  3. 会計ソフト・銀行・給与・税務の各システムのID・権限・契約先を洗い出す
  4. 「本人しか分からない」業務に印を付け、引き継ぎ優先度の高い順に並べる
  • ポイント:年に一度しか発生しない決算・年末調整・労働保険の年度更新こそ最優先で記録する
  • 実施すべきは、退職の合意直後。後任がまだ決まっていなくても、棚卸しは先に始められる

ステップ3:引き継ぎマニュアル・手順書を残してもらう(棚卸し後すぐ)

口頭引き継ぎだけで終わらせないことが最大の防御です。
棚卸しリストを目次に、手順書とファイルの置き場所を残します。

退職者からの引き継ぎで最も多い失敗が「口頭で説明して終わり」です。話を聞いた側はその場では分かった気になりますが、実際に自分でやる段になると細部で必ず詰まります。

棚卸しリストを目次にして、業務ごとに手順書を作ってもらいましょう。完璧な文書である必要はありません。

画面のスクリーンショットに番号を振る、実際の操作を録画する、チェックリストにする——形式は問わず「本人がいなくても再現できる」ことがゴールです。

あわせて、各種ファイル・パスワード・銀行やソフトのログイン情報・税理士や銀行担当者の連絡先などの情報を一箇所に集約します。

属人化の解消と業務の標準化は、経理に限らず組織の生産性を左右するテーマです。

  1. 棚卸しリストの業務ごとに、手順書(文書・スクショ・録画のいずれか)を作る
  2. 特に決算・年末調整・給与・社会保険など年次/月次の重要業務を優先して文書化する
  3. ファイル・パスワード・ログイン情報・関係先連絡先を一箇所に集約する
  4. 後任(または経営者)が手順書どおりに1件やってみて、詰まった箇所を本人がいるうちに補記する
  • ポイント:「手順書を作る」より「後任が手順書を見て実際にやってみる」ほうが抜けを見つけられる
  • 効果的なのは、棚卸しが済んですぐのタイミング。退職まで日数が少ないほど、重要業務に絞って文書化する

ステップ4:後任の確保に並行して動く(採用・内部登用・外部委託)(退職合意と同時)

引き継ぎと並行して後任を探します
採用・内部登用・外部委託の3ルートを同時に検討し、間に合わないなら一時的に外部でしのぎます。

経理人材の採用には時間がかかり、退職までに新しい担当者が入社して引き継ぎまで終わるケースはむしろ少数です。

だからこそ後任確保は「退職に合意した瞬間」から並行で動きます。

ルートは3つ。①採用(求人・紹介)、②内部登用(総務・管理部門の社員に一部を移す、経営者自身が一時的に見る)、③外部委託(記帳代行・税理士の関与拡大・経理アウトソーシング)。

現実的には「日常業務は内部の誰か+クラウド会計」「決算や税務は税理士」「繁忙期は記帳代行」と役割を分けて、一人に再び集中させないのが安全です。

後任確保の各選択肢は次章で詳しく比較します。

  1. 採用・内部登用・外部委託の3ルートを同時に検討し、着手できるものから動く
  2. 退職までに後任が間に合わない場合の「つなぎ体制」(誰が/何を/いつまで)を先に決める
  3. 日常業務・決算・税務・繁忙期対応を分解し、一人に再集中させない役割分担にする
  4. 税理士・社労士・記帳代行など外部パートナーに、早めに状況を共有し相談する
  • ポイント:一人経理は業務範囲が広く、同等人材は希少です。分担+外部委託の組み合わせで考える
  • 着手すべきは、退職に合意した直後。採用はリードタイムが長いため、着手が早いほど選択肢が増える

ステップ5:クラウド会計とツールの標準化で属人化をなくす(引き継ぎ〜後任定着まで)

退職は「属人化した経理を作り直す」好機でもあります。
クラウド会計と見える化ツールで、誰が担当しても回る形に整えます

同じ悲劇を繰り返さないために、引き継ぎのタイミングで業務そのものを標準化します。

会計ソフトがインストール型で担当者のPCにしか無いなら、クラウド会計へ移して経営者や税理士も同じデータを見られるようにします。

銀行・カード・請求のデータ連携を整えれば、手入力に依存した属人的な処理も減らせます。

そして「誰が・何を・いつまでに」を全員が見られるタスク管理を用意すれば、月次のやることリストや期限が一人の頭の中から会社の資産に変わります。

ツールは目的ではなく手段ですが、属人化を仕組みで防ぐという発想が、次の担当者を守ります。

  1. 会計データを経営者・税理士も閲覧できる状態(クラウド会計など)にする
  2. 銀行・カード・請求などのデータ連携で、手入力・属人的な処理を減らす
  3. 月次・年次の経理タスクと期限を、全員が見られるタスク管理に登録する
  4. 権限とバックアップを整え、担当者が代わっても業務が止まらない形にする
  • ポイント:ただ「ツールを入れる」のではなく「一人の頭の中にあるやり方を、全員が見える場所に出す」
  • 実施すべきは、引き継ぎ〜後任定着の時期。属人化を作り直す絶好のタイミングで、恒久対策として取り組む

後任をどう確保する?採用・内部登用・外部委託の選び方

後任確保の3ルート(採用・内部登用・外部委託)を比較した図

「同じ働き方の後任1名」を探すより、日常・決算・繁忙期を分けて、社内と外部を組み合わせるほうが安全で早いことが多いです。

後任確保でつまずく最大の原因は、退職者と全く同じ範囲をこなせる人を一人だけ採ろうとすることです。

一人経理は業務範囲が広く、同等の人材は希少で採用にも時間がかかります。まずは選択肢を並べて比較しましょう。

後任確保の5つの選択肢をコスト・立ち上げ速度・向く会社で比較した図
図:後任確保の選択肢。一つに頼らず、日常業務は内部+クラウド、決算・税務は税理士、のように組み合わせる。

→ 表は横にスクロールできます

選択肢メリット注意点向いている会社
採用(正社員・派遣)自社に経理機能を残せる/柔軟採用に時間がかかる/人件費/再び属人化しやすい中〜長期・経理を社内に持ちたい会社
内部登用・分担すぐ着手できる/コスト低既存社員の負担増/専門業務は限界つなぎ体制・日常業務の受け皿
記帳代行記帳・入力の負担を外部化/安価な例も自社にノウハウが残りにくい/範囲は限定的繁忙期・日常の入力を軽くしたい会社
顧問税理士の関与拡大決算・税務の専門性/既存の関係を活用月次記帳まで頼むと費用増/範囲要確認決算・税務を確実に回したい会社
経理アウトソーシング(BPO)月次〜決算まで広く委託可能費用は高め/社内が“中身”を見失うリスク経理機能ごと外に出したい会社

採用で経理を社内に残す

経理機能を自社に持ち続けたいなら採用が本命
ただしリードタイムが長く、退職までに間に合わないことも多い前提で動きます。

求人や人材紹介での採用は、経理を社内に残せる正攻法です。

一方で、募集・選考・入社・引き継ぎには時間がかかり、現任者の退職までに新任者が入って引き継ぎまで終わるケースはむしろ少数です。

採用は「間に合えばラッキー」くらいの前提で早く動き出し、間に合わないときのつなぎ体制を必ず並行して用意します。

採用で見落としがちなのが、求める人物像を退職者のコピーにしてしまうことです。

一人経理は業務範囲が広いぶん、同じ範囲を一人でこなせる人は市場に少なく、条件を上げても採用は長期化します。

「日常業務を担える人」と「決算・税務を見る外部」を分けて考えると、採用のハードルは一気に下がります。

採用した後任にまた一人で全部を背負わせると、属人化が再発します。
入社時から手順書と見える化を前提に、業務を分けて渡すのが再発防止の鍵です。

内部登用・分担でつなぐ

総務や管理部門の社員に日常業務を移し、経営者が一時的に見る
すぐ着手できる現実的なつなぎ策です。

すぐに動けるのが内部での分担です。振込や経費精算といった日常業務は、総務や管理部門の社員へ手順書とともに渡せば、短期間でも回せます。

専門性の高い決算や税務は外部の税理士に任せ、社内は日常業務の受け皿に徹する——という切り分けが現実的です。

誰がどの業務を持つかを明確にする業務分掌の考え方と決め方の考え方が、ここでも役立ちます。

記帳代行・税理士・BPOで外部化する

記帳代行や経理アウトソーシングは、後任が決まるまでの空白を埋める強力な手段。
既存の顧問税理士の関与拡大も検討します。

後任が間に合わないなら、外部委託でしのぐのが有効です。

記帳・入力だけを外部に出す記帳代行、決算・税務を任せる顧問税理士の関与拡大、月次から決算まで広く任せる経理アウトソーシング(BPO)まで、範囲は選べます。

まずは既存の顧問税理士に状況を共有し、どこまで支援してもらえるかを相談するのが第一歩です。

公的な経営相談の窓口や専門家派遣も活用できます。

資金や体制に不安があるときは、中小企業庁 ミラサポplus(経営相談・専門家派遣)のような支援制度も選択肢に入れておくと安心です。

「一人に再集中させない」役割分担にする

どの手段を選んでも、業務を再び一人に集約しないこと。これが後任確保の設計思想の中心です。

採用・内部登用・外部委託のどれを選ぶにしても、共通の原則は業務を一人に再集中させないことです。

日常業務は社内の複数人+クラウド会計、決算・税務は税理士、繁忙期は記帳代行、というように役割を分けておけば、次に誰かが抜けても会社は止まりません。

役割分担そのものが、最大のリスク対策になります。

【退職する経理本人へ】一人経理が円満に退職する引き継ぎの進め方

一人経理の担当者本人が円満に退職するための引き継ぎ3ステップの図

「自分がいないと回らない」と抱え込まず、退職の意思は早めに、引き継ぎは資料で残す
これが円満退職の近道です。

ここからは、辞める側の一人経理担当者に向けた進め方です。

責任感の強い人ほど「自分が抜けたら会社が困る」と悩みますが、会社を守るのは本人が残り続けることではなく、いなくても回る状態を残すことです。

退職の切り出し方とスケジュール

就業規則の申し出期限を確認し、繁忙期を避けて、できるだけ早めに伝える
引き継ぎ期間を長く取れるほど円満に進みます。

退職は、法的には期間の定めのない雇用なら申し入れから2週間で成立しますが、一人経理の場合はそれでは引き継ぎが到底終わりません。

就業規則の申し出期限(1か月前など)を確認し、それより早めに伝えるのが、自分にとっても会社にとっても得策です。

退職ルールの基本は厚生労働省:労働契約の終了に関するルールでも確認できます。

伝えるタイミングは、決算や年末調整などの繁忙期の直前・最中を避けると、引き継ぎに集中できます。

退職日は、月次締めや決算が一区切りつく時期に合わせられないか、上司と相談してみましょう。

切り出すときは、感情的な不満をぶつけるのではなく「退職したい意思」と「引き継ぎに協力する姿勢」をセットで伝えるのがコツです。

会社側も、限られた期間で何を残してもらうかに集中でき、結果として自分の引き継ぎ負担も軽くなります。

円満に送り出してもらえれば、退職後に不明点を質問できる関係も保ちやすくなります。

引き継ぎ資料に何を残すか

日次・週次・月次・年次の業務一覧を目次に、手順書とログイン情報・関係先を1か所へ。
口頭説明だけで終わらせないことが最重要です。

引き継ぎ資料は、完璧な文書である必要はありません。後任や経営者が「これを見れば再現できる」ことがゴールです。

次の要素を1か所にまとめておくと、抜けが出にくくなります。

引き継ぎ資料に入れておきたいもの
  • 日次・週次・月次・年次の業務一覧(頻度別のやることリスト)
  • 各業務の手順書(画面スクショや操作の録画でも可)
  • 会計・銀行・給与・税務システムのログイン情報とID・権限の所在
  • 取引先ごとの支払い条件や例外処理などの注意点
  • 税理士・社労士・銀行担当者など関係先の連絡先とやり取りの経緯
  • 年に一度の決算・年末調整・労働保険の年度更新の段取り

とくに年に一度しか発生しない業務は、記憶を頼りに後任が再現するのが困難です。

手順を残す際は、抜け漏れを防ぐ工夫もあわせて共有すると喜ばれます(抜け漏れが多い人の原因と対策)。

「自分がいないと回らない」から抜け出す

抱え込みは本人にも会社にも負担。
属人化を解く引き継ぎは、次の職場でも評価される「仕組み化のスキル」です。

「自分がいないと回らない」状態は、一見すると頼られている証のようですが、本人の休みも取りづらく、会社にとってもリスクです。

退職を機に業務を見える化して残すことは、後ろめたいことではなく、会社への最後の大きな貢献です。

そして、属人化した業務を誰でも回せる形に整えるスキルは、次の職場でも必ず評価されます。

根本解決|属人化をなくして「チームで回る経理」にする

属人化した一人経理からチームで見える化して回る経理へ移行する概念図

退職対応は苦しい局面ですが、属人化した経理を作り直す好機でもあります。
見える化して「一人の頭の中」を「会社の資産」に変えましょう。

目の前の引き継ぎを乗り切るだけでなく、二度と同じ事態を繰り返さない体制へ変えることが、本当の解決です。

カギは、業務を個人の記憶から切り離し、チーム全員が見られる状態にすることです。

見える化が属人化解消のはじまり

何を・いつまでにやるかを全員が見られる状態にするだけで、業務は特定個人から切り離せます。

属人化を解消する第一歩は、業務を「見える化」することです。

誰が・どのタスクを・いつまでにやるのかが全員に見えていれば、担当者が抜けても、残った人や後任がすぐに状況を把握できます。

この考え方は経理に限らず、組織の生産性そのものに関わるテーマです。

生産性向上の土台には「チームのタスク管理」と「タスクの見える化」があります。

一人経理の退職という痛みは、裏を返せば見える化に踏み出す最適なきっかけでもあります。

具体的な進め方は業務の見える化の進め方タスクの見える化のやり方も参考にしてください。

個人の作業からチームのタスクへ変える

月次のやることリストや期限を、個人のメモから全員が見える場所へ移すだけで、経理は「チームで回るもの」に変わります。

一人経理の月次業務は、本人のカレンダーや頭の中のリストで管理されていることがほとんどです。これを、期限つきのタスクとして全員が見られる場所に置き換えます

情報を一箇所に集約する一元管理とは?メリットと進め方の発想で、経理のやることと期限を会社の共有資産にすれば、担当者が代わっても業務は止まりません。

標準化の考え方については、標準化とは何かをわかりやすく解説も参考にしてください。

とはいえ、見える化を「気合い」で続けるのは大変です。誰が・何を・いつまでにを全員が同じ画面で見られる仕組みがあると、引き継ぎも日々の運用も一気に楽になります。

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私たちが開発・運営するスーツアップは、表計算ソフトのような操作で、チームの「タスクの見える化」をして、タスクの抜け漏れや期限遅れを防ぐチームのタスク管理ツールです。重厚なシステムではなく「誰が・どのようなタスクを・いつまでに」に絞って、表計算ソフトのような操作感で毎日続けられることに振り切っています。

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一人経理の退職でよくある3つの失敗

一人経理の退職対応でよくある3つの失敗を示した図

失敗の多くは「時間切れ」「口頭引き継ぎ」「関係の断絶」の3つ。先回りで対策すれば、どれも避けられます。

最後に、一人経理の退職でありがちな失敗を挙げます。

どれも「知っていれば防げた」ものばかりなので、対応を始める前に目を通しておきましょう。

引き継ぎ期間が短すぎる

退職日だけ決めて有給消化を計算に入れず、実働の引き継ぎ日数が数日しか残らないケースです。

よくあるのが、退職日を決めて安心してしまい、有給消化を差し引くと実際に引き継げる日が数日しかない、というパターンです。

退職日ではなく実働の引き継ぎ日数で計画を立て、足りなければ重要業務に絞って文書化し、退職後も質問できる連絡手段を残しておきます。

「口頭引き継ぎ」だけで済ませてしまう

その場では理解した気になっても、いざ自分でやると細部で詰まります。必ず文書と実地テストをセットに。

口頭やメモの走り書きだけの引き継ぎは、後で必ず穴が出ます。

手順書を作るだけでなく、退職前に後任や経営者が実際に手順書どおり1件やってみて、詰まった箇所を本人がいるうちに補記する——この「テスト実行」を1回はさむと、引き継ぎの精度が大きく上がります。

退職後に質問できる関係を切ってしまう

円満に送り出し、期間を区切って質問できる関係を残すと、年次業務でつまずいたときに救われます。

引き継ぎ資料が完璧でも、年に一度の決算や年末調整では想定外の疑問が出るものです。

退職者と円満な関係を保ち、一定期間はメールやチャットで質問できる状態にしておくと、いざというときに助かります。

そのためにも、退職の申し出を受けた段階から、対立ではなく協力の姿勢で臨むことが大切です。

よくある質問(FAQ)

一人経理の退職について、とくに質問の多いポイントをまとめました。

一人経理の担当者が退職するまでに、まず何をすべきですか?

最初にやるのは「引き継ぎに使える実働日数の確認」と「業務の棚卸し」です。退職日と有給消化を踏まえて実際に引き継げる日数を数え、担当者に日次・週次・月次・年次の業務をすべて書き出してもらいます。並行して、給与・納付・支払いなど直近で期限のある業務を誰が対応するかを決めます。

退職の申し出は、法律上いつまでに受理しなければなりませんか?

期間の定めのない正社員の場合、民法上は退職の申し入れから2週間で雇用契約を解約できます。ただし就業規則で「1か月前まで」などと定めている会社も多く、実務では就業規則と労働契約を確認します。一人経理は引き継ぎに時間がかかるため、できるだけ早く申し出て期間を長く取るのが双方にとって得策です。

後任がすぐに見つかりません。どうつなげばよいですか?

採用に時間がかかる前提で、つなぎ体制を先に用意します。日常業務は総務・管理部門の社員へ手順書とともに移し、決算・税務は顧問税理士に、記帳・入力は記帳代行に、というように役割を分けて外部委託と組み合わせると空白を埋められます。まずは既存の顧問税理士に状況を相談するのが第一歩です。

引き継ぎ資料には何を残してもらえばよいですか?

日次・週次・月次・年次の業務一覧を目次に、各業務の手順書(スクショや録画でも可)、会計・銀行・給与・税務システムのログイン情報とID・権限の所在、取引先ごとの例外処理、税理士や銀行担当者など関係先の連絡先を1か所にまとめてもらいます。とくに年に一度の決算・年末調整の段取りは最優先で文書化します。

同じことを繰り返さないためにはどうすればよいですか?

属人化そのものを作り直します。会計データを経営者や税理士も見られるクラウド会計にし、月次・年次の経理タスクと期限を全員が見られるタスク管理に登録します。「誰が・何を・いつまでに」を会社の共有資産にすれば、次に担当者が代わっても業務は止まりません。

自分が一人経理で、辞めたいけれど会社が回らないか不安です。

会社を守るのは、あなたが残り続けることではなく「いなくても回る状態」を残すことです。就業規則の申し出期限を確認して早めに伝え、繁忙期を避けて退職日を調整し、業務一覧と手順書を残しましょう。属人化を解く引き継ぎは会社への大きな貢献であり、次の職場でも評価されるスキルです。

プロジェクト管理にAIタスク管理ツールを活用するならスーツアップ

スーツアップは、チームの業務を可視化できる優れたAIタスク管理ツールの1つ。

期限通知や定型タスクの自動生成などの機能をエクセル感覚で使うことができます。

加えて、専門家とAIが作ったタスクひな型が充実しているので、プロジェクト管理にも活用できます。

また、定型タスクの設定期限の通知外部ツールとの連携など、便利な機能も備えています。

スーツアップの特徴
  • エクセル感覚で操作!

スーツアップは、エクセルのような感覚で操作できますが、期限通知や定型タスクの自動生成など、エクセルにはない便利な機能が充実。日々のタスク更新もストレスがありません。

  • 業務の「見える化」でミスゼロへ

チームのタスクや担当、期限などを表で一元管理。全員が進捗を把握できるから、抜け漏れや期限遅れがなくなり、オペレーションの質もアップします。

  • テンプレートでプロジェクト管理が楽

よくある業務はタスクひな型として自動生成できるので、毎回ゼロから作る手間なし。誰でもすぐに運用を始められるのがスーツアップの強みです。

「かんたん、毎日続けられる」をコンセプトに、やさしいテクノロジーでチームをサポートする「スーツアップ」。

導入を検討してみませんか?

まとめ:退職をきっかけに、経理を「チームで回す」仕組みへ

一人経理の退職は確かに大きなリスクですが、優先順位を守って動けば会社は止まりません

まず止められない業務を守り、引き継ぎ期間を確保し、業務を棚卸しして見える化し、後任を確保する——この順番が基本です。

一人経理の退職・対処チェックリスト
  • 直近の給与・納付・支払いの期限を確認し、対応者を仮でも決めた
  • 退職日と、有給消化を差し引いた実働の引き継ぎ日数を握った
  • 日次・週次・月次・年次で業務をすべて棚卸ししてリスト化した
  • 重要業務の手順書を作り、退職前にテスト実行で穴を確認した
  • 採用・内部登用・外部委託を並行で検討し、つなぎ体制を用意した
  • クラウド会計と見える化で、一人に再集中しない形へ作り直した

覚えておきたいのは、ゴールは「一人の担当者を引き止めること」ではなく誰が担当しても経理が回る状態をつくることだという点です。

退職という痛みを、属人化した業務を見える化して作り直す好機に変えられれば、会社は以前より強くなります。

参考文献・出典

チームのタスク管理 / プロジェクト管理でこのようなお悩みはありませんか?

そうなりますよね。私も以前はそうでした。タスク管理ツールを導入しても面倒で使ってくれないし、結局意味なくなる。

じゃあどうしたらいいのか?そこで生まれたのがスーツアップです。

これ、エクセル管理みたいでしょ?そうなんです。手慣れた操作でチームのタスク管理ができるんです!

見た目がエクセルだからといって侮るなかれ。エクセルみたいに入力するだけで、こんなことも

こんなことも

こんなことまでできちゃうんです。

エクセル感覚でみんなでタスク管理。
まずは以下よりお試しいただき、どれだけ簡単か体験してみてください。

 

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この記事を書いた人

小松裕介のアバター 小松裕介 代表取締役社長CEO

株式会社スーツ 代表取締役社長CEO 小松 裕介

2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、東証スタンダード上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に当社の前身となる株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より、総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師登録。2019年6月より、国土交通省PPPサポーター。
2020年10月に大手YouTuberプロダクションの株式会社VAZの代表取締役社長に就任。月次黒字化を実現し、2022年1月に上場会社の子会社化を実現。
2022年12月に、株式会社スーツを新設分割し、当社設立と同時に代表取締役社長CEOに就任。

2025年5月に、『1+1が10になる組織のつくりかた チームのタスク管理による生産性向上』を出版。

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