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中小・中堅企業のプロ経営者の影響力の獲得方法

 

投稿日:2023年1月26日 / 更新日:2024年2月18日

 

本稿は、2023年1月26日に株式会社スーツにおいて開催された「中小・中堅企業のためのプロ経営者育成講座」(講師:株式会社スーツ 代表取締役社長CEO 小松 裕介)をダイジェスト版に加工した記事の第4回です。

第3回 中小・中堅企業のプロ経営者とはリーダーである

 

【まとめ】

 

中小・中堅企業のプロ経営者の影響力の獲得方法

 

12.プロ経営者のタイムマネジメント

 

先ほどより活動量が大事という話をしてまいりましたので、時間の使い方についてもお話したいと思います。このテーマは、サラリーマン的な価値観をお持ちの方からすると「メチャクチャ言っているな」と感じると思います。

結局どのような立場の人であれ、1日24時間というところだけは全員同じです。そうなると、他の人と差をつけるためには、朝、夜や土日・休日をどう効率的に使うかしかないのです。

毎日1日も休まずに朝から晩まで働くのは辛いですよね。それならば、土曜日1日だけ働いてください。それだけで毎週8時間、追加で働けます。そこだけで差がつきます。1ヶ月4週ならば、8時間×4日で32時間も使えるのです。

食事の時間も有効活用したいです。これは外交の世界とかではよく言われますが、人間は一緒に食事をすると親しくなる、というように言われています。だから外交官は海外の要人たちと会食するわけですね。この食事の時間を有効に利用したいわけですが、1日3食しか食事の機会はないわけです。

このように食事の回数にも限りがありますから、経営者が誰と一緒に食事をするのかは大事なポイントになります。会社を取り巻く重要なステークホルダー、具体的には取引先、投資家や株主と予定を組まなければいけない時もありますし、社員と食べなければいけない場合もあるわけです。

朝、夜や土日・祝日、そして、食事の時間という、本来ならば休憩時間と呼べる時間も有効利用すべきという話をしましたが、サラリーマン的な価値観を持っている人からすれば、言っていることがメチャクチャですよね。続けてのお話は、これまでと比較したらややマイルドな内容になるかと思います。これは私が尊敬するエンターテイメント業界の重鎮の方から言われたのですが、「『家族の時間』こそ『仕事の時間』と思え」という格言があります。

家族とは、社会の最小単位です。家族との関係が破綻している経営者は、社員からも心から尊敬されないし、多くの社員だって、自分はそんな人生は送りたくないと思うのではないでしょうか。

家族との時間まで犠牲にして仕事をしようと言ったら、やはりそれはやり過ぎで、人がついてこないです。部下は見ています。家族の時間も大事にしながら仕事でも成果を出す。このため、タイムマネジメントが重要になるのです。

 

13.プロ経営者のコミュニケーション

 

次はコミュニケーションですが、ぜひ会社を取り巻く全てのステークホルダーに対して、気を遣って、忖度してください。これはなかなか辛い仕事です。360度全ての人に忖度する。これが中小・中堅企業のプロ経営者の仕事です。

最近の海外の大学の研究では、人の成長とは自己の抑制と定義付けられている研究があります。そのため、人間は年齢が60歳、70歳、80歳になっても成長することができるわけです。その象徴的な言葉が老婆心だと思います。語源は死を前にした老婆が自分のためではなく純粋に目の前の人のために貢献したいという想いです。

経営者たるもの、自分・自分ではなく、自己を抑制して、それこそ老婆心で関係者全ての人に気遣い、貢献できなければなりません。特に中小・中堅企業の世界では重要です。社内の経営資源がないのですから、関わってくれている人たちに動いてもらわなければ問題解決ができないわけです。気遣いや忖度。これが社長の重要な仕事です。

クイック・レスポンスも大事なことです。仕事ができる人はみな、電話やメールの返信が早いです。この早さとは何かというと、結局、相手の人の尊重なのです。優秀な政治家に陳情に行くと、相談したらすぐにその場で、自ら電話をかけて指示を出してくれたりします。映画とか小説のシーンにもなっていたりしますが、まさにあれが「あなたのことを最優先でやっていますよ」という姿勢なのです。もちろん政治家は影響力で勝負している職業なので、その場で問題解決して力を誇示したい、逆に解決できない頼みごとの場合に“やっている感”を出したい、などの思惑もあるかしれません。

ただ、この政治家のクイックな問題解決への姿勢は、経営者としても見習うべき点があります。お客様から何か依頼ごとを受けて「はい!分かりました!」でその場で指示を出す。これは愛されますよね。こういった素早い対応は経営者レイヤーの人付き合いでは本当に大事です。

最後に「人を見て法を説け」です。これもコミュニケーションの基本です。当たり前ですが、相手によって伝え方を変えるのです。当たり前ですが、人は、その人によって性格も話の理解度の深さも早さも違うし、何よりそれぞれ取り巻くシチュエーションが全く違うわけです。その中で、自分の都合だけ考えて、均一的なコミュニケーションを図るほうが非効率な場合もあるのです。

特に会社のキーパーソンに対して、リスクが生じるようなコミュニケーションをするようでは、プロとは呼べません。重要なステークホルダーに対しては、手土産を持って、「よろしくお願いします」とするのが経営者の仕事です。それが会社にとって費用対効果が良いわけです。相手が会社にとってのVIPだったら、メンドクサイと思っても、会食ぐらいセッティングして、たまには夜も付き合いましょう。そういったコミュニケーションの濃淡も含めて、ちゃんとやらなければいけません。会社を代表しているわけですから、経営者の存在や言葉には価値があります。会社のスタッフのためにも正しくステークホルダーとコミュニケーションをして、アウトプットを最大化しなければなりません。

 

14.プロ経営者としての影響力

 

以下の項目は、小手先なテクニックも含め、ちょっとしたTips(ヒントやアドバイス)です。どうやって影響力を獲得すれば良いのか。多くの経営者が悩まれていると思います。例えばTwitterやFacebookなどのSNSの運用とどのように向き合えばいいか。加えて情報収集に関しては、読書の方法について紹介したいと思います。

まず影響力についてですが、影響力があることによって、コミュニケーション・コストやマーケティング・コストが下がる、という効果が見込めます。例えばインターネットを通じて、相手側が、こちらのキャリアのバックグラウンドや考え方などを知っておいてくれたなら、話も早いですよね。共通理解があれば、コミュニケーションに費やす時間が減るのです。理解してもらう、説得する時間も減ります。自分にトラックレコードがあれば、その実績を背景に「私は今まで実際にこういう成果を出したことがあるのです。だから、こちらがオススメです。」「このような素晴らしいトラックレコードを持つ経験者が言っているならば、それでお願いします。」と説明のショートカットもでき、物事がスムーズに流れるのです。また、ビジネス・インフルエンサーとでも呼べばいいのでしょうか。後でもお話しますがSNSなどで影響力があれば、それこそツイート1つで商品・サービスが売れる時代だと思います。マーケティング・コストも下がります。

この影響力を獲得するためには、私は前提があると思っていて、それはトラックレコードを作ることだと思います。まずは自分のキャリアを代表するトラックレコードを作りましょう。トラックレコードとは過去の実績という意味ですが、これは動かしがたいファクトで強さがあるのです。

多くの人がSNSで誇大広告のように自分を良く見せよう、大きく見せようとしていますが、そんなのは会って話をすれば、すぐにバレてしまいます。実際に現場にいた人ならば、現場でどういうやり取りがあったのか、どういう意思決定があったのか、等の詳細を語ることができるのです。そのため、ありのままの事実をしっかりと伝える。当たり前ですが、これは価値があることなのです。誠実なコミュニケーションをしなければ信頼を損なってしまいます。一時的に知らない人たちからチヤホヤされて注目されるよりも、中長期的に近しい人に正しく信頼してもらう方がメリットは大きいです。

本講座を聞いて下さっている皆さんの中には、既に経営者の方もいらっしゃいますので、まずはそこの会社で一つトラックレコードを作っていただきたいと思います。1つトラックレコードを作れば、それが自分の“名刺”になるのです。“名刺”があれば、人と会うのが楽になります。自己紹介も楽ですし、他人からの人の紹介の数も格段に増えます。

また、トラックレコードはタグにもなると思っています。タグとは商品を判別・識別するための票ですね。SNSとかですと、投稿した文章や画像に一緒にいる人とかを付記するのを“タグ付け”とか呼びますが、私は、人間誰しも、相手に無意識にタグを付けていると思っています。私の場合ですと、上場会社の元代表取締役社長だとか、伊豆シャボテン公園やYouTuberプロダクション「VAZ」を再生させた人だとかが、他人から分かりやすく付けられているタグになるかと思います。

このタグがあると、同じようなバックグラウンドを持った方々とグルーピングしてもらえますので、コミュニケーションの効率が上がります。今まで大企業で経営コンサルタントをしている方など、サラリーマンの方は、会社ではなく、個人がタグ付けされるトラックレコードを作ってください。中小・中堅企業のプロ経営者を目指す方は、プロ経営者になった暁には、バリューアップの実績を語れるようになると良いと思います。

 

15.SNSでの情報発信と本の乱読による情報取得は積極的に

 

 

影響力獲得の延長線でSNSの運用の話をしたいと思います。結論から言うと、TwitterやFacebookなど、SNSの運用はぜひともチャレンジしてもらいたいと思います。

先ほどから申し上げているとおりで、インターネットが登場して以来、凄い勢いで知識はコモディティ化されています。本講座も、上記の理由から無料で開催しているのですが、もはや自分のノウハウを一人で貯め込むような時代ではないと思っています。ノウハウについては、不思議なことにシンクロニシティ(共時性)もありますし、この世の中で自分一人だけが気が付くということはまずなくて、自分が言わなくても誰かも実は気が付いていて、遅かれ早かれ誰かがその情報を発信していきます。それならば積極的に自ら情報発信をして、影響力を獲得していった方が良いと思います。

とにかく沢山、情報を発信する。世のため人のために、役立つ情報を発信していれば、知らず知らずのうちに影響力を獲得できると思います。人間は接触頻度が高ければ好感を抱きやすいというデータもあります。そのためSNS上では、「いいね!」やシェア・リツイートなどの機能は積極的に活用して、善意をばら撒きながら、積極的に情報発信すると良いと思います。テクニックの話をすると、SNSのプラットフォーマーが期待している機能は全て活用すると、より多くの人に表示されるようにアルゴリズムの設計がされていますので、機能を使いこなすと良いと思います。そうすると、結果として、多くの情報発信をすることになります。

留意点もありまして、皆さんは経営者の仕事をするからには、守秘義務もありますので、発信する情報の選別だけはしっかりとしなければなりません。このあたりはコンプライアンスに留意して対応してもらえればと思います。

もちろんですが、SNS上で、その時の気分や感情、何をしているかなどをそのままさらけ出す必要は一切ありません。そこのマネジメントはしっかりしなければなりません。YouTuberプロダクションの経営をしていた時に何度もそのような体験をしましたが、本当に人気になるYouTuberたちは、自分の見せ方、情報発信の仕方が本当に上手でした。常に相手側の立場に立って、自分の見え方を語れる人が多かったように思います。

やはり影響力を獲得するためには自己PR、自己ブランディングは大事になります。繰り返しになりますが、だからといって嘘や誇張表現は厳禁です。誠実なコミュニケーションをしないとブランドになりません。正しくSNSを活用していってもらいたいと思います。

時間も1時間を超過しましたので最後にしたいと思いますが、中小・中堅企業のプロ経営者を目指す皆さんには、会社のバリューアップがスタートするタイミングで、その会社が属する業界に関する本を全て読破していただきたいと思います。

プロ経営者を名乗るからには、簡単に手に入る、オープンになっている情報は全部読むぐらいのことはやらなければならないと思います。時間に余裕があれば、最初の数冊は精読する方が望ましいのですが、大半の本は乱読でよいと思います。業界本については、途中からだいたい同じ話の繰り返しになっている、ということもありますので、乱読は効率よく情報取得ができ、オススメです。

私も過去にいろいろな業界に関わらせていただきました。伊豆シャボテン公園の企業再生をする時には、テーマパークや動物園・植物園の運営に関する本を沢山読みましたし、YouTuberプロダクション「VAZ」の企業再生をする時にはYouTubeなどのSNSマーケティング、芸能プロダクションやメディアに関する本などを乱読しました。このような経験を積み重ねていった結果、いつの間にか、いろいろな業界の話をできる人間になっていました。

今日はスタートアップ経営者の方もいらっしゃいます。ぜひご自身で起業した業界に関する本を読んでいただきたいと思います。一度しっかりと勉強してしまえば、事業を進めていくうえで、ずっと役立つ知識になってくれると思います。今まで業界全体で何が問題だったのか、これからその業界がどうなっていくと言われているのか。現在儲かっている会社は何をしているのかなど、役立つ情報が沢山あると思います。

しかしながら、このご自身が所属している業界の本を読む。これをやらない方がとても多いです。業界本を乱読するなんて、金銭的にも時間的にも大したコストにはなりません。特に業界本は、ネット書店などを活用して中古で入手すれば本当に安価です。投資で考えれば、小さい金額と少しの時間で、その後の自分の仕事に活かすことができるわけですから、必ず大きなリターンになると思います。ぜひご自身が属する業界本を乱読して、情報取得をしてみてください。

 

(続く)第5回 中小・中堅企業のプロ経営者のリアル

 

【中小・中堅企業のためのプロ経営者育成講座】

第1回 プロ経営者は中小・中堅企業で活躍する時代へ

第2回 中小・中堅企業のプロ経営者の目指すべき人物像

第3回 中小・中堅企業のプロ経営者とはリーダーである

第4回 中小・中堅企業のプロ経営者の影響力の獲得方法

第5回 中小・中堅企業のプロ経営者のリアル

第6回 中小・中堅企業のプロ経営者への道

 

※ 「経営支援クラウド」「Suit UP」及び「全社タスク管理」は株式会社スーツの登録商標です。

 

株式会社スーツ 代表取締役社長CEO 小松 裕介

2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、東証スタンダード上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に当社の前身となる株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より、総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師登録。2019年6月より、国土交通省PPPサポーター。
2020年10月に大手YouTuberプロダクションの株式会社VAZの代表取締役社長に就任。月次黒字化を実現し、2022年1月に上場会社の子会社化を実現。
2022年12月に、株式会社スーツを新設分割し、当社設立と同時に代表取締役社長CEOに就任。

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