水口 翼(株式会社fonfun 代表取締役社長 )と小松裕介(株式会社スーツ 代表取締役社長CEO)によるQ&A

当社では、2025年2月5日にゲスト講師に、株式会社fonfun 代表取締役社長 水口 翼氏を迎え、第2回目となるスーツアップ特別ウェビナー「東証スタンダード上場 fonfunに学ぶ M&Aと組織マネジメント」を開催しました。
本稿では、中小企業の皆様にとって有益な情報が満載だった本ウェビナーの内容を、前編・後編の2回にわたりダイジェスト版としてお届けいたします。
後編は、ゲスト講師の水口氏(株式会社fonfun 代表取締役社長)と当社代表者の小松(株式会社スーツ 代表取締役社長CEO)による対談の内容です。水口氏のご経歴は以下のとおりです。
<株式会社fonfun 代表取締役社長 水口 翼>

1982年、東京都生まれ。株式会社fonfun(東証スタンダード上場企業、証券コード:2323)代表取締役社長。8児の父。
2001年、青山学院大学経済学部入学。19歳で個人事業を開始。2004年に株式会社シンクマーク(現社名:サイブリッジグループ株式会社)を設立し、Webインテグレーション、Webメディア、インターネット広告事業を展開。IT企業を中心としたM&Aを推進し、現在は20社以上の企業群を形成。2023年に株式会社fonfunを自己資金でTOBし、同年6月より代表取締役社長に就任。同社では経営戦略の中核をM&Aとし、TOB後に約1年で5件の買収を実行し、売上は約2倍、株価は約3倍(TOB時と2024年12月末比較)となっている。
前編のゲスト講師の水口氏による講演「東証スタンダード上場 fonfunに学ぶ M&Aと組織マネジメント」はコチラから。
【まとめ】
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- M&Aにおける企業文化の統一方法
- PMIの進め方と具体例
- M&Aにおけるキーパーソンの管理方法
- M&A実務でのチェックポイントとソーシング方法
M&Aでの企業文化の統一方法
株式会社スーツ 小松裕介(以下「小松」といいます。):今回「M&Aと組織マネジメント」というテーマでお話いただいたのですが、企業文化について、どのくらい意識されていて、企業文化の統一に向けてどのようなことをされているのか、実務的な観点も含めてぜひ教えてもらえませんか?
株式会社fonfun 水口翼(以下「水口」といいます。):企業文化の統一に関しては、おそらく2つあって、私もまだ迷い中です。1つは、自分のカルチャーに染めていくパターン、もう1つは、それぞれのカルチャーを尊重しながらきちんと成果を出してもらうパターンです。例えば上場企業の株式会社じげんは「カルチャー・コングロマリット」を打ち出して、それぞれのカルチャーを尊重する一方で、会社としての軸を持って成長していくということをしています。
事業やビジネスモデルが出来上がっている企業など、買収した時点の価値が既存のカルチャーによって再現性が保たれているケースでは、そのカルチャーを活かすべきだと思っています。しかし、現時点のfonfunでM&Aできる企業や事業に関しては、カルチャーなどが成長のアクセルになっていない印象なんですね。ですから今のところは、どちらかと言えば、私の考え方になるべく近づけていくような形でM&Aをしています。
小松:水口さんはなかなか珍しいケースだと思います。未上場企業のオーナー創業者だけれども、上場会社を買収して代表者に就かれていますよね。未上場企業のオーナーだとどうしても「オレが一番」となりがちです。
上場会社を買収した後で、内部統制など意識した点や今回M&Aでグループインする社員に対するマネジメントスタイルなどはいかがでしょうか?
水口:まだちょっと迷い中です。上場企業として投資家とか株主に、それぞれの人たちが大事にしているものを、結果としてちゃんと見せていけるのであれば、それはそれでやっぱり尊重しなきゃいけないと思うんですね。
私はfonfunについても過半数以上のシェアを持ってる状態ではありますが、きちんと全ての株主の人たちへのリターンを最大化できることが軸になると考えています。その軸で見た時に、何を大事にするかを判断してるという感じです。
小松:M&Aの時には様々なチェックポイントがあると思うのですが、組織の観点でのチェックポイントは何でしょうか?実務的に水口さんはどういうところをチェックしていますか?
水口:その点に関してもまだトライ&エラーなのですが、「キーパーソンは誰か」「キーパーソンにどこまで依存しているか」「キーパーソンをグリップできるか」の3点ですね。
社長がキーパーソンの場合、M&Aした後にはその社長がいなくなるケースもあるので、社内の「番頭さん」の立場の人をちゃんとグリップできるか、「グリップできるか」というより、正確には「一緒に働けるか」ですね。それがすごく大事です。
社長が残るケースであれば、社長のモチベーションも含め、一緒に働ける関係を構築できるかが大切ですね。ある程度、組織として出来上がってる企業であれば一般的な組織形態になっているはずなので、「キーパーソンのグリップ」の実現が重要だと思ってます。
PMIの進め方と具体例
小松:短期間でM&Aを5件やられていて、これからもきっと続けられると思いますが、例えばPMIを標準化しているなど、M&Aを効率よく進める上で注意している点は何かありますか?
今日、M&Aのプロの方や上場会社でM&A担当されている人もたくさん参加しておられますので、水口さんが実務的に気にしている点を教えていただきたいです。
水口:結論から言うと、できていません。やりたいけど、できていない状態です。
例えばコスト削減のポイントを100とか1,000個洗い出し、点検リストを作り、まずはそれを実施する方法などがあると思います。今後もM&Aを繰り返して実施する予定ですので、再現性のあるチェックの必要性は感じていまして、途中まで作りかけたものが、実はいくつもあるんですが、しっかりワークできるところまでまだ持っていけていないのが現状です。今後の課題ですね。やらなきゃいけないとは思っています。
小松:たくさんのM&A経験の中で、管理部門など間接部門の社員はどのようなマネジメントをされていますか?
水口:直近のケースでの話になりますが、管理部門に関してはメンバーを統合しました。しかし、未上場企業と上場企業では求められる管理のレベルが異なるために、今まで未上場企業で仕事をしていたメンバーの中には、上場企業のレベルやスピード、スケジュール感でやらなきゃいけないタスクをこなすのが難しく、離脱してしまったメンバーもいました。
小松:弊社では「スーツアップ」というチームのタスク管理ツールを作っています。このような業務管理ツールをはじめ様々な社内ツールがある中で、M&AによってITの統一や仕組みをどうしていますか。
水口:各事業や各会社で使っているツールは異なるので、業務フローを落とし込んでワークできる状態にした統一ツールを作り、そのツールに人がつくような状態にすることがベストだと思っています。
タスク管理とかマネジメントとか、統一された標準フォーマットを用いて、標準的なツールを使ってタスクや業務が回せるようにできたらいいなと考えています。比較的みんながスムーズに移行しやすいものに関しては統一ツールに移行できているのですが、同時並行でM&Aを実行している中で、社員も足りない状況だったりして、まだ様々なツールが残った状態で、情報とかも分散してしまってる状況です。どこかで改善しなければいけないなと思ってます。
小松:この論点は伸び代がいっぱいあるようで、これからに期待ですね。
水口:分かりやすく売上が増えたりするのであれば、もうとっくにやってるんですよね。微妙なさじ加減、微妙な規模感のものが多いんです。
「今まで100人でやってた仕事が、このツールを導入したら50人で回るよね」といったレベルの規模感の会社はまだ買収できていないです。「3人でやってた仕事が2人で終わるかな」の規模の場合、ツールの統一を頑張るかどうかですね。
小松:本日はM&Aの担当者の方とM&Aをされたいと考える方も参加されています。ぜひ双方に対して、「M&Aと組織マネジメント」という観点でアドバイスをそれぞれいただけませんか?
水口:M&Aされたことは一度もないんで、そちらのアドバイスはわからないです(笑)。
ファンドと考え方が違うかと思いますが、私はずっとオーナー経営なので、「買う時に愛を持って接することができるか」がとても大事だと思っています。
例えば、よそのお子さんが我が家に来たとしたら、その子も同じようにちゃんと愛してあげることが、買い手としてはすごく重要だと私は思ってます。愛してるからこそ厳しくすることもあります。でもこれがただの臓器売買屋だったら、子どもが来ても健康状態をチェックして売ってしまうだけなので、そこに愛はない、嘘の愛だと思うんです。私は「愛を持ってM&A」をしています。
小松:さすが上場企業の代表者で一番お子さんの人数が多い水口さんですね。最後に「M&Aは愛」という水口さんのお話で、私からのご質問は終わりにしたいと思います。ありがとうございました。
聴講者(Aさん):M&Aのソーシングには様々な方法があると思いますが、御社がメインで取られているソーシングの方法と、なぜそのソーシング方法を採用しているのかを、それぞれお伺いしてもよろしいでしょうか?
水口:今日の説明では具体的なソーシング方法にはご説明をしてきませんでしたが、fonfunでは1年半で、社70社ほどのM&A仲介会社とNDAを締結して、案件を送信していただいています。こちらについては情報開示もしています。1年半でIMレベルで5〜600件くらい受け取り、その中から買収したのが5件になりますが、仲介会社経由は2件だったかと思います。
縁故や知り合いからの紹介が実際は多いです。シンプルに、仲介手数料がかからない方が買う側としては買いやすいというのが理由の一つです。情報の幅は広げておいて、いろいろな情報をいただきながらM&Aをしています。
東証には「不適当合併等の軽微基準」がありまして、fonfunは私がTOBをして買収した会社という背景があるので、fonfunの売上高・総資産・経常利益のいずれかを超えるような会社をM&Aする際には、東証の審査が入るんです。
これは上場企業より大きな会社を買収するということは、「M&Aの対象会社が存続会社として、事実上、上場会社を乗っ取るんじゃないか?」という論点が出てくるからです。これに該当するM&Aは、私にとってはメリットがないのでやらないようにしています。
その上で、基本的にはインターネット領域を軸に案件情報をいただいてM&Aの実行をしています。
聴講者(Bさん):御社では何名くらいの人がM&A専任なのか、兼業・兼任も含めてM&A実務にあたられている人数を教えていただけますか?
水口:はい。M&A担当の専任は取締役が1名、業務委託のパートナーが1名。私も含めて合計3名です。PMIに関しても、基本的には取締役メンバーが実働するという体制です。
弊社は小さな会社なので、M&AやPMIなどに関してそれなりのキャリアや実績を持った人を1人雇うと、場合によっては業績の下方修正になるリスクがあります。労働者ではない役員が24時間働くという体制で頑張っている状況です。
聴講者(Bさん):業務委託のパートナーの業務は、例えば、M&A仲介会社と接触する役割とエグゼキューションを担う役割のように役割に応じて分けていますか?
水口:はい。過去にM&A業務の経験があるパートナーで、一通りの業務ができる人に業務委託をお願いしています。案件の初期面談やスクリーニングをお願いしたり、クロージング後の関係構築まで含めて対応してもらったりしています。
明確に役割分担を固定しているというよりは、それぞれの得意分野や状況に応じてフレキシブルに対応しているという感じですね。
小松:本日は「M&Aと組織マネジメント」をテーマに、株式会社fonfun代表取締役社長の水口さんからお話をいただきました。本日は本当にありがとうございました。
チームのタスク管理 / プロジェクト管理でこのようなお悩みはありませんか?

そうなりますよね。私も以前はそうでした。タスク管理ツールを導入しても面倒で使ってくれないし、結局意味なくなる。

じゃあどうしたらいいのか?そこで生まれたのがスーツアップです。

これ、エクセル管理みたいでしょ?そうなんです。手慣れた操作でチームのタスク管理ができるんです!

見た目がエクセルだからといって侮るなかれ。エクセルみたいに入力するだけで、こんなことも

こんなことも

こんなことまでできちゃうんです。

エクセル感覚でみんなでタスク管理。
まずは以下よりお試しいただき、どれだけ簡単か体験してみてください。