Suit UP

全社タスク管理が日本の労働生産性を上げる!

 

投稿日:2024年1月23日 / 更新日:2024年2月4日

 

株式会社スーツでは、2023年9月27日に経営支援クラウド「Suit UP」(以下「スーツアップ」といいます。)のα版をリリースしました。スーツアップは、中小・中堅企業やスタートアップなど(以下まとめて「中小企業等」といいます。)の労働生産性を高める、全社タスク管理を実現するSaaS(Software as a Serviceの略語、月単位・年単位(サブスクリプション)で活用できるソフトウェアサービス)です。全社タスク管理とは、単なるタスク管理やプロジェクト管理ではなく、個人・部署・経営に至るまで会社全体のタスクを「見える化」し管理する経営管理手法です。

本稿では、「全社タスク管理が日本の労働生産性を上げる!」と題して、日本の労働生産性が低い事実についてデータを踏まえて説明するとともに、解決策としての全社タスク管理と、それを実現するスーツアップについて記載したいと考えています。

経営支援クラウド「Suit UP」α版のサービス開始のお知らせ

 

【まとめ】

 

1.日本は労働生産性が低い国

 

私が尊敬する有識者に、元ゴールドマンサックスのアナリストで、現在は創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手掛ける小西美術工藝社の社長を務めるデービッド・アトキンソン氏がいます。彼はデータに基づく分析を情報発信していて、同氏が自身の著書で主張をしているのが日本の労働生産性の低さです。

労働生産性とは、スタッフ一人当たりで生み出す成果、またはスタッフが1時間で生み出す成果を指標化したものです。スタッフがどれだけ効率的に付加価値を生み出したかを定量的に数値化したものであり、スタッフのスキルアップや効率改善に向けた努力、経営効率の改善などによって向上します。労働生産性の向上は、経済成長や経済的な豊かさをもたらす要因の一つであると言われています。

実はこの労働生産性が国際比較で下落をし続けているのが日本なのです。

日本は未曾有の少子高齢化によりこれから急激に労働人口が減っていきます。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来総計人口」を基に作成した2015年から2060年までの生産年齢人口の予想によれば、2015年には約7,700万人いる15歳~64歳までの生産年齢人口が2060年には42.5%減の約4,400万人にまで落ち込みます。

また、労働時間も、近年の働き方改革の進行と共に減り続けています。厚生労働省の「令和5年版労働経済の分析-持続的な賃上げに向けて-」によれば、以下のグラフのとおり、2013年以降の従業員5人以上規模の事業所における労働者一人当たりの月間総実労働時間は減少傾向で推移しており、働き方改革の取組の進展等を背景に、 近年は減少幅が大きくなっています。

 

 

GDP(国内総生産)とは、簡単に言えば「人間の数 × 労働生産性」です。そのため日本の場合は人口減で、なおかつ、労働時間も減っているわけですから、本来ならば、なおのこと、スタッフ一人当たりで生み出す付加価値額に関心を示さなければならないはずです。しかし、残念ながら、私も20年ほど中小企業等の会社経営に関わらせていただいていますが、実務感覚的には、今も昔も労働生産性には興味のない経営者が多いように思います。

このような状況下で、公益財団法人日本生産性本部が2023年12月22日付で「労働生産性の国際比較2023」という資料を発表しています。当該資料の中であるのが以下の2つのグラフです。

 

 

 

日本の労働生産性の順位は、OECD加盟諸国の38か国のうち30位です。1970年から2010年ぐらいまでは20位ぐらいに位置していましたが、この10年で10位もランクダウンしています。また、OECD平均の65.2ドルと比較して12.9ドルほど下回り、1位のアイルランドと比較すると3分の1ぐらい、4位のデンマークと比較すると2分の1ぐらいしか労働生産性がありません。日本人から特に馴染みのある国とも比較すると、米国の58.24%、ドイツの59.97%、フランスの62.33%、英国の71.35%、そして、韓国の107.17%などとなっています。これらのデータを見ると、日本の労働生産性の低さに驚かれるのではないかと思います。これだけでなく、前述のとおり、日本は労働人口が大きく減少するばかりか、労働時間も減っているのです。このままの状況が続けば、今後の日本経済の縮小は当然のように思わざるを得ません。

 

 

それでは、なぜこのように日本は労働生産性が低いのでしょうか?それは中小企業等の数と、そこで働く従業者数が多いことに問題があります。上記の中小企業庁の2021年版「中小企業白書 小規模企業白書」のグラフのとおり、日本の中小企業数は全体の99.7%を占め、従業員数でみると中小企業で働く人は全体の約7割となっています。それにも関わらず、付加価値額が53%しか創出できていません。この効率の悪さが大きな問題なのです。

日本と同じように先進国では、新興国と違って、人口の大幅増加は見込めません。そのため、新たな労働参加は見込めないため、先進国の労働生産性は、資源配分の効率性、すなわち、労働者が労働生産性の高い大企業で働いているか、中小企業で働いているかで違いが出てくるということになります。

仮に1,000万人の労働者が10人ずつ100万社で働いているのと、10万人のスタッフが100社で働いているのでは労働生産性が大きく違うのです。この10万人というスタッフ数ですが、東京商工リサーチの「上場企業1,898社 2021年3月期決算「従業員数」調査」によれば、トップのトヨタ自動車の7万1,373人、2位はパナソニックの5万9,006人、3位がデンソーの4万6272人であることからも、いかに大企業かということがお分かりいただけるかと思います。

大企業で働いている労働者の割合は米国では約54%なのに対して、日本では先ほどのグラフのとおり約31%と言われています。20人未満の企業で働いている労働人口の割合と生産性を比較した分析からも、労働生産性が高いドイツや米国は20人~30人未満の企業で働く人の割合が少なく、きれいな相関関係が得られています。日本でも1995年から2015年の20年間の間で10人未満の企業で働いている労働人口は16.1%減少しており、生産性が高いところに労働人口が集約する動きがみられます。つまり、日本でも、1社あたりの平均スタッフ数は次第に増えているのです。

それを踏まえて、中小企業庁の2023年版「中小企業白書」の以下のグラフを見てもらいたいと思います。大企業は一人当たりの付加価値額が1,300万円を超えているのに対して、中小企業では大企業の半額以下となる付加価値額は550万円にも満たない数字です。労働生産性は加重平均で求められますので、日本では労働者の約7割が中小企業で働いているわけですから労働生産性が上がらないのは当然のことです。

 

 

この日本経済の足かせとなっている中小企業が「多過ぎる」という問題ですが、別稿でも記載をさせていただきましたが、金融行政とも連動していると考えています。

長らく中小企業の世界では、資金調達と言えば、銀行からの借入のことを指し、昔は非上場企業に投資するベンチャーキャピタルやプライベート・エクイティ・ファンドなどの投資家はいませんでした。その結果、自己資本は薄く過小資本となり、また、株主構成も少数株主はおらず創業者やその一族しかいないオーナー企業が数多く存在することになりました。そのためコーポレート・ガバナンスが効かず、オーナー経営者が公私混同や好き勝手な経営をしても、安定経営ができていて銀行からの借入金の弁済が進んでいる限りは、第三者からは誰からも経営について指摘を受けることがなかったのです。

日本も資本主義が成熟化するにつれて、上場企業を中心にコーポレート・ガバナンスの議論が進み、株主と経営者の役割の分離が進んでいます。しかし、相変わらず中小企業ではこの2つの役割が混同され続けているのです。オーナー経営者が、社長の役割を放棄して、社長という肩書のまま株主をしている。これが多くの中小企業が労働生産性の向上を目指さない原因だと思います。

経営資源が乏しく、なおかつ、労働生産性の低い中小企業が多いことによる悪循環は続きます。中小企業ではスタッフ数が少ないため、社内に代替するスタッフもおらず、育児休業や有給休暇の取得も進みません。その結果、女性活躍が難しくなり、少子化問題も解決されなくなります。その他にも中小企業の企業体力では、研究開発費を十分に充てることもできずイノベーションを阻害しますし、また、IT投資も十分にできないためデジタルデバイドも広がってしまいます。このように諸問題の原因は中小企業が「多過ぎる」ことに帰結するのです。

 

 

本項で最後にご紹介する上記グラフは、厚生労働省の「令和5年版労働経済の分析-持続的な賃上げに向けて-」の労働生産性向上のための取組みに関するアンケートです。これを見てもらうと、企業は労働生産性の向上のため、営業力・販売力の強化、業務プロセスの見直しによる効率化や商品・サービスの高付加価値化などに取り組んでいることが分かります。しかし、本来ならば一番の労働生産性の向上を実現するであろうデジタル技術の導入は予想以上に後順位であることが分かると思います。

最近でこそビジネスパーソン全体におけるSaaSの認知も上がり、導入する企業が増えつつありますが、いかに日本の中小企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)に疎いかが分かるデータだと思います。

労働生産性の向上にはイノベーションが大事なことは言うまでもありませんが、このテクノロジーが普及するか否かのほうが経済的なインパクトがあります。素晴らしいテクノロジーがあったとしても、誰も使わなければ意味がありません。このテクノロジーを普及させるためには、IT投資と、そのシステムを使うスタッフの教育が必要になるわけです。

以上のように、日本の人口減、労働時間の減少に鑑みると、労働生産性の向上が課題であるものの、大企業と比較して付加価値を産み出せていない中小企業の数が多過ぎ、そこで働く労働者も全体の7割にも及んでおり、また、個別の企業を見てもデジタル技術の導入に積極的ではなく、日本経済全体としての効率の悪化が社会問題になっています。

 

2.全社タスク管理と、それを実現するスーツアップという解決策

 

私たちは、日本の労働生産性の改善のために、全社タスク管理と、それを実現するSaaSとしてスーツアップのサービス提供を行っています。

スーツアップは中小企業等の全社タスク管理を実現するサービスです。会社の組織とコミュニケーションの設定も行うことができ、個人、部署・プロジェクト、経営や全社などの単位で全社的にタスク管理を行うことができます。

スーツアップでは、主なターゲットを10名以上100名未満の中小企業等と定めて、これら中小企業等に最適化されたシステムを開発しています。具体的には、スタッフのITリテラシーに合わせてシステム導入しやすいように、エクセルやスプレッドシートなどの表計算ソフトを参考にしたインターフェースと、継続してシステム運用できるように、タスク管理の前提として、会社の組織やコミュニケーションの設定もできるようにしています。

前項において、主にマクロの視点、すなわち統計データから日本の中小企業の労働生産性が低いことを記載してまいりましたが、一方でミクロの視点で考えると、個別の会社において労働生産性が低い原因は、経営者が、自分の会社の組織やコミュニケーション、そして、マネジメントシステムに興味がないことが一番の問題点ではないかと考えています。

日本の中小企業は、今までは、日本国内市場が大きいということ、また、労働人口も多かったということもあって、ある程度のビジネスモデルが確立できれば、金融機関から融資を受けることで安定的に拡大することができたと思います。しかし、未曾有の人口減を迎える日本では、もう既に一部の業界では始まっていると思いますが、労働者の取り合いがスタートしているのです。賃金の向上を含めて、労働環境を良くしなければ、スタッフの確保もままならず、そのためには一人当たりの労働生産性を高めていくしかありません。

前述のとおり、日本の中小企業の経営者は、オーナー経営者として株主と経営者の立場を混同しながら君臨していたわけですが、これからは経営者として貴重な経営資源であるスタッフと向き合って、マネジメントシステムと向き合わなければならなくなっているのです。管理職スタッフも同様です。一般スタッフを確保するためには、部下を管理するという本来の仕事をしなければなりません。

このような状況下で、スーツアップは大きな力を発揮します。スーツアップは、組織の構築、コミュニケーションのデザイン、全社的なタスクの「見える化」、各部署のタスクの「定型化」、そして、全社的なタスク管理を実現します。

今までは特に労働生産性など意識せず、管理職スタッフも一般スタッフに対して「これをやっておいて!」といったような雑な仕事の指示をしていて、それに対して、一般スタッフも柔軟に対応をしていたと思います。しかし、このような”昭和の世界観”は通用しなくなっていくと思います。

このようなコミュニケーションは、ポジティブに表現すると、日本人ならではの阿吽の呼吸と表現されるものだと思いますが、労働生産性の観点から考えた時に、これが本当に効率的かというと疑問が残ります。

もし例え一般スタッフが上司からの雑な指示を上手に対応して2週間で実行してくれたとしても、始めから管理職スタッフがしっかりとタスク管理をしていれば、一般スタッフは10日でタスクを完了させられるかもしれません。それだけで14日→10日で4日もの期間の短縮です。これを改めて数字にすると28.57%もの期間短縮になるのです。

やはり組織で働く以上、管理職スタッフが一般スタッフを管理監督するという仕事を抜きにして労働生産性の向上は実現できないのだと思います。そのためには、前提として、組織の構築を行い、コミュニケーションのデザインをする必要があります。そして、その会社の中で、誰がどこの部署に所属して、その部署が何をしているのか。誰が何のタスクをしているのかを「見える化」する必要があります。タスクについても、それぞれのタスクの内容、担当や期限等のタスク管理を行い、繰り返し行うタスクについては「定型化」を行わなければなりません。

そして、今後、スーツアップでは、専門家とAIによるタスク雛型の提供の準備をしています。全てのユーザーに業種業態や職種ごとのベストプラクティスのタスク設定そのものも自動できるようにし、タスク内容の品質向上を通じて労働生産性の向上を図ってまいります。

私たちは、このタスク雛型によって、同業種のロールアップとなるM&Aを推進したく考えています。前項のとおり、中小企業の数が問題になっているわけですから、直接的な問題解決としては、同業の合併による規模の拡大が考えられます。M&A後による2社の統合作業のことをPMI(Post Meger Integration)と言いますが、スーツアップのこのタスク雛型を用いれば、業界ごとにタスクの「標準化」が進むことになるため、より簡便にロールアップとなるM&Aを検討できるようになると思います。これによって会社は事業規模を拡大することができるようになり、間接部門を統合するなど会社全体で効率化を図ることができます。

以上のように、私たちは、もちろん個別の中小企業等の経営改善に貢献したいという想いも持っていますが、スーツアップを通じて、中小企業に広く全社タスク管理を導入することで、日本経済のために労働生産性の改善をしたいと考えています。

 

【関連ブログ】

1.チームでのタスク設定とオペレーションの改善

2.チームで働くとは何か ~ 全社タスク管理を行うべき10の理由 ~

3.スーツアップは社長をリーダーにするタスク管理ツール

 

※ 「経営支援クラウド」「Suit UP」及び「全社タスク管理」は株式会社スーツの登録商標です。

 

株式会社スーツ 代表取締役社長CEO 小松 裕介

2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、東証スタンダード上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に当社の前身となる株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より、総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師登録。2019年6月より、国土交通省PPPサポーター。
2020年10月に大手YouTuberプロダクションの株式会社VAZの代表取締役社長に就任。月次黒字化を実現し、2022年1月に上場会社の子会社化を実現。
2022年12月に、株式会社スーツを新設分割し、当社設立と同時に代表取締役社長CEOに就任。

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