事業承継は何から始める?最初の一歩と5ステップを完全解説

事業承継で最初に迷うのは、税金でも後継者探しでもなく「そもそも何から手をつければいいのか」という順番です。

結論から言うと、最初の一歩は自社の現状を棚卸しして見える化すること

ここを飛ばして後継者や税金の話に進むと、あとで必ず手戻りが起きます。

本記事では、事業承継を「何から始めるか」を5つのステップに整理し、最初の一歩である現状の見える化のやり方、後継者の選定、承継計画、資産の引き継ぎ、そして一人で抱えないための相談先までを図解でひと通り解説します。

中小企業の経営支援と組織づくりに携わってきた立場から、実務で詰まりやすいポイントにも踏み込みます。

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目次

事業承継は何から始める?5ステップと期間の目安

事業承継を始める5ステップと期間の目安を示した全体像の図
図1:事業承継は「現状の見える化→後継者→計画→磨き上げ→実行」の5ステップ。準備に5〜10年をかけるのが目安。

事業承継は「①現状の見える化 → ②後継者の決定 → ③承継計画 → ④磨き上げ → ⑤実行」の5ステップで進めます。最初にやるのは現状の棚卸しで、全体では5〜10年をかけるのが目安です。

事業承継とは、会社の経営を現経営者から次の経営者へ引き継ぐことです。やることは多岐にわたりますが、順番を間違えなければ複雑ではありません。

まずは全体像を5つのステップでつかみましょう。

事業承継を始める5ステップ(早見)

迷ったら、次の5ステップを上から順に進めます。特に①を飛ばさないことが、後戻りを防ぐ最大のコツです。

事業承継は、大きく次の5段階に整理できます。

それぞれの中身はこのあとの章で詳しく解説しますが、まずは「どこから始まり、どこへ向かうのか」を押さえてください。

  1. 現状の棚卸し・見える化:会社の資源・業務・強みを洗い出し、引き継げる形にする(=最初の一歩)
  2. 後継者の決定:親族・従業員・第三者(M&A)のどれで承継するかと、誰に継ぐかを決める
  3. 事業承継計画の策定:いつ・何を・どう引き継ぐかを5〜10年の計画に落とす
  4. 会社の磨き上げ:業績・組織・財務を整え、引き継ぐ価値を高める
  5. 承継の実行:株式・資産の移転、税務・法務の手続き、経営のバトンタッチ

このうち①〜④が「準備」、⑤が「実行」。準備に時間の大半を使うのが、うまくいく承継の共通点です。

まず着手すべき「最初の一歩」は現状の見える化

「何から始めるか」の答えは、自社の現状を棚卸しして見える化することです。
ここが後続のすべての判断材料になります。

後継者を誰にするか、税金がいくらかかるか、いつ引き継ぐか——こうした判断は、すべて「いま会社に何があるか」が分かって初めてできます。

資産・負債・取引先・業務の流れ・自社の強みが見えていないまま後継者を探しても、何を任せ、何を教えればいいのか決まりません。

とくに中小企業では、重要な仕事や情報が経営者個人の頭の中に集中していることが多く、この状態のままでは事業を渡せません。

だからこそ、承継の第一歩は現状の見える化になります。

準備期間の目安は5〜10年|なぜ早く始めるのか

事業承継の準備には5〜10年かかるのが一般的です。
後継者の育成や会社の磨き上げに時間が必要なため、着手は早いほど選択肢が増えます

承継そのものの手続きは数か月でも可能ですが、後継者を育て、会社を引き継げる状態に整えるには年単位の時間が必要。

中小企業庁も、後継者育成には5〜10年程度を要するとして早期着手を促しています(中小企業庁:事業承継(事業承継ガイドライン等))。

背景には経営者の高齢化があります。経済産業省中小企業庁は、2025年までに70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者が約245万人に達し、その約半数で後継者が未定になると試算していました(いわゆる2025年問題)。

準備不足の廃業が増えれば、約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性があるとも指摘されています。

早く始めるほど有利な理由:①後継者を選び育てる時間が確保できる/②業績・財務を計画的に改善できる/③贈与など税負担を平準化しやすい/④「後継者不在で廃業」という最悪の選択を避けられる。

事業承継とは?引き継ぐ「3つの資源」と「3つの型」

事業承継で引き継ぐ3つの経営資源と3つの承継の型を整理した図
図2:事業承継で引き継ぐのは「人(経営)・資産・知的資産」の3つ。承継の型は親族内・社内・M&Aの3種類。

事業承継とは、「人(経営)・資産・知的資産」の3つを次代へ引き継ぐことです。
引き継ぎ先によって親族内・社内・第三者(M&A)の3つの型に分かれます。

「事業承継=株や資産を渡すこと」と思われがちですが、それは一部にすぎません。

何を・誰に引き継ぐのかを正しく理解しておくと、準備の抜け漏れがなくなります。

引き継ぐ3つの資源:人・資産・知的資産

承継で引き継ぐ経営資源は、大きく3種類。どれか一つでも欠けると、事業はうまく回りません。

中小企業庁の事業承継ガイドラインでは、承継の対象を「人(経営)」「資産」「知的資産」の3つに整理しています。

目に見える資産だけでなく、目に見えない価値まで含めて引き継ぐ、という視点が重要です。

→ 表は横にスクロールできます

引き継ぐもの具体例つまずきやすい点
人(経営)経営権・後継者・従業員・取引先との関係後継者の選定と育成に最も時間がかかる
資産自社株式・事業用資産・不動産・設備・資金株価評価や税負担、個人保証の扱いが複雑
知的資産技術・ノウハウ・信用・ブランド・顧客基盤書き出さないと引き継げず、承継時に失われやすい

この3つのうち、資産は税理士や専門家の力を借りて手続きできますが、人と知的資産は時間をかけて引き継ぐしかありません。だからこそ準備の早さが効いてきます。

とくに見落とされがちなのが知的資産です。長年の取引で築いた信用や、職人的な技術、従業員のチームワークは決算書に一切表れません。

しかし後継者にとっては、この「なぜ自社が選ばれているのか」こそが最も知りたい部分です。

目に見えないからこそ、意識して言葉にして引き継ぐ必要があります。

引き継ぎの3つの型:親族内・社内(従業員)・M&A(第三者)

承継の型は3つ。近年は親族内承継が減り、従業員承継やM&A(第三者承継)が増えています。

誰に引き継ぐかで、進め方も準備も大きく変わります。自社にとって現実的な選択肢を早めに見極めましょう。

→ 表は横にスクロールできます

承継の型引き継ぐ相手メリット留意点
親族内承継子ども・親族関係者の理解を得やすい/早くから育成できる後継者の意思と適性、相続・遺留分の調整
社内承継役員・従業員事業をよく知る人に継げる株式取得の資金、個人保証の引き継ぎ
M&A(第三者)外部の会社・個人後継者不在でも会社を残せる/創業者利益相手探し・条件交渉、従業員や取引先への配慮

後継者が身近にいない場合でも、廃業する前にM&Aで会社を残す選択肢があります。

相談先は事業承継・引継ぎポータルサイト(中小機構)独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)が入り口になります。

自社に合う型の選び方

「継がせたい人の有無」と「本人の意思」から逆算すると、現実的な型が絞れます。

まずは親族や社内に後継者候補がいるか、そして本人に継ぐ意思があるかを確認します。

候補がいない、または意思がない場合は、早い段階でM&Aを含めて検討を始めると、選択肢を残したまま進められます。

一つの型に固執せず、複数の可能性を並行して探ることも珍しくありません。

「息子がいるからいつか継ぐだろう」という思い込みは、承継が遅れる典型パターン。
早めに本人の意思を確認しておく

ステップ1:棚卸し|現状の見える化から始める

会社の現状を棚卸しして見える化する3つの視点(経営資源・業務・知的資産)の図
図3:最初の一歩は現状の棚卸し。経営資源・業務フロー・知的資産の3つの視点で会社を見える化する。

事業承継の「何から」の答えがここです。会社の現状を棚卸しし、見える化することから始めます。
棚卸しは「経営資源」「業務・タスク」「知的資産」の3つの視点で行います。

後継者選びや税金の検討に進む前に、まず自社の現状を洗い出します。ここが曖昧なまま先に進むと、後で必ず戻ることになります。

見える化は次の3つの棚卸しに分けて進めると、抜け漏れなく整理できます。

経営資源(ヒト・モノ・カネ)を棚卸しする(対象:会社の現状把握 / 目安 1〜3か月)

まず「会社に何があるか」を一覧にします。
人・設備・資産・負債・取引先を書き出し、承継で引き継ぐものと整理するものを分けるのが出発点です。

事業承継の第一歩は、後継者探しでも税金の計算でもなく「自社の現状を正確に把握すること」です。

従業員数と年齢構成、主要な設備や不動産、預貯金・借入金・保証、主要取引先との関係——これらを一覧にすると、引き継ぐべき価値と、承継前に整理・改善しておくべき課題がはっきりします。

中小企業庁の事業承継ガイドラインでも、承継は会社の現状把握から始めることが示されています。

  1. ヒト:役員・従業員の名簿、年齢・役割・保有スキルを一覧化する
  2. モノ:不動産・設備・在庫・許認可・知的財産を棚卸しする
  3. カネ:資産・負債・借入・経営者保証・保険を貸借対照表ベースで整理する
  4. 取引:主要な取引先・仕入先・金融機関との関係と契約を書き出す

コツ:「社長の頭の中にしかない情報」を紙かデータに出すことが目的。
完璧さより、抜けなく可視化することを優先する。

向いているのは承継を意識し始めたすべての経営者。数字が苦手なら顧問税理士や商工会議所と一緒に進めると早い。

業務フロー・タスクを棚卸しして属人化を解消する(対象:日々の仕事の見える化 / 目安 3〜6か月)

「社長にしかできない仕事」を洗い出し、手順を見える化します。
ここが後継者に渡せるかどうかを分ける、承継準備の最重要ポイントです。

多くの中小企業では、受注・仕入・資金繰り・重要顧客の対応などが経営者個人に集中し、手順が本人の頭の中にしかない「属人化・ブラックボックス化」の状態になっています。この状態のままでは、後継者は事業を引き継げません。

日々のタスクと業務フローを書き出し、誰が見ても分かる形に見える化することが、承継できる会社をつくる土台になります。

  1. 1週間〜1か月、経営者と各担当の業務を時系列で書き出す
  2. 「その人しかできない仕事(属人業務)」に印をつける
  3. 属人業務の手順・判断基準・連絡先をマニュアルやチェックリストにする
  4. 権限を少しずつ後継者・幹部に移し、任せた範囲を見える化して共有する

コツ:全部を一度に標準化しようとしない。
頻度が高く・止まると困る業務から順に手順化するのが挫折しないコツ。

向いているのは経営者に業務が集中している会社、後継者候補はいるが「渡し方」が分からない会社。

知的資産(強み・ノウハウ・関係)を言語化する(対象:目に見えない価値の承継 / 目安 3〜6か月)

決算書に載らない「自社の強み」を言葉にします。
技術・信用・顧客との関係といった知的資産こそ、承継で最も引き継ぎにくく、最も価値があるものです。

事業の価値は、資産や利益だけでは測れません。

長年培った技術やノウハウ、地域や取引先からの信用、従業員の結束といった「知的資産」が競争力の源泉であることが多く、これらは書き出さないと後継者に引き継げず、承継を機に失われがちです。

中小機構なども知的資産を言語化することを推奨しています。

自社が選ばれている理由を言葉にしておきましょう。

  1. 顧客に「なぜ自社を選ぶのか」をヒアリングし、強みの仮説を立てる
  2. 技術・ノウハウ・取引関係・ブランドなど無形の価値を書き出す
  3. その強みが「誰の・どんな行動」で維持されているかを特定する
  4. 強みを保つための仕事を、承継後も続く仕組み(手順・体制)に落とす

コツ:強みは「当たり前すぎて社内では気づかない」もの。
外部の目(顧客・支援機関)を借りると言語化しやすい

向いているのは技術・信用・顧客基盤が強みの会社。M&Aで第三者に承継する場合は企業価値の説明材料にもなる。

この3つの棚卸しは、実は事業承継のためだけの作業ではありません。

会社を強くし、日々の経営を楽にする作業そのものです。

とくに業務の見える化と属人化の解消は、承継の成否を大きく左右します(属人化からの脱却とタスクの見える化業務の見える化の進め方も参考になります)。

ステップ2:後継者を決める・育てる|承継の方向性を固める

後継者を選び、育成し、権限を移譲していく流れを示した図
図4:後継者は「選ぶ」だけでなく、意思を確認し、権限を段階的に移譲しながら時間をかけて育てる。

現状が見えたら、次は誰に・どう引き継ぐかを決めます。
後継者選びは「選ぶ」より「意思を確認し、育てる」ほうに時間がかかります。

後継者に関する意思決定は、事業承継の中核です。

候補を洗い出し、本人の意思を確かめ、時間をかけて育てる——この順番で進めます。

後継者候補を洗い出して意思を確認する

親族・社内・社外の3方向で候補を洗い出し、本人の意思を早めに確認します。
ここが承継スケジュールの起点になります。

子どもや親族、右腕となる役員・幹部、さらに社外の人材やM&Aまで、選択肢を広く並べます。

大切なのは、候補者本人に「継ぐ意思があるか」を早い段階で確認することです。

意思のないまま話を進めると、直前で白紙に戻り、準備期間を失いかねません。

後継者との対話では、会社の現状(ステップ①で見える化した内容)を共有すると話が具体的になります。

借入や保証まで含めて包み隠さず伝えることが、後継者の納得と覚悟につながります。

後継者を育成し、権限を移譲する

後継者育成の要は、経営の実務と判断を「任せて見える化する」こと。
少しずつ権限を移し、経験を積ませます。

後継者育成は、知識を教えることだけではありません。実際に部門や案件を任せ、意思決定を経験させることがポイント。

いきなり全部を渡すのではなく、権限を段階的に移譲し、任せた範囲と結果を見える化して振り返るサイクルをつくります。

この過程で、経営者と後継者の役割・権限を明文化しておくと引き継ぎがスムーズです。

業務分掌とは』や『組織図の作り方』のページを参考に、「誰が何を決めるのか」を組織で共有する仕組みを整えましょう。

育成でやること:①現場・部門を任せて実務を経験させる/②数字(決算・資金繰り)の見方を教える/③取引先・金融機関へ紹介し関係を引き継ぐ/④経営者としての判断を隣で見せ、任せる範囲を広げる。

育成でよくある失敗は、経営者がいつまでも実権を手放さず、後継者が「お飾り」のまま歳を重ねてしまうことです。

任せると決めた業務は、多少の失敗があっても口を出しすぎず、振り返りで学んでもらう姿勢が育成を進めます。

反対に、放任して丸投げにするのも禁物で、任せた範囲を見える化して定期的に対話する仕組みが要ります。

後継者がいないとき(M&A・引継ぎ支援センター)

身近に後継者がいなくても、廃業は最後の手段。第三者承継(M&A)や公的窓口という選択肢があります。

親族や社内に後継者が見つからない場合でも、会社をたたむ前にできることがあります。

M&Aによる第三者への承継や、公的な引継ぎ支援を活用すれば、従業員の雇用や取引先との関係を守ったまま事業を残せる可能性があります。

まずは事業承継・引継ぎポータルサイト(中小機構)や各地の事業承継・引継ぎ支援センターに相談してみましょう。

M&Aは「大企業のもの」という印象があるかもしれませんが、小規模な事業のマッチングも広がっています。

準備として、ステップ③で言語化した自社の強み(知的資産)が、相手に価値を伝える材料になります。

ステップ3:事業承継計画をつくる|10年計画と会社の磨き上げ

事業承継計画書と、承継までに会社を磨き上げる流れを示したタイムラインの図
図5:事業承継計画で時期と手順を決め、並行して業績・組織・財務を磨き上げて引き継ぐ価値を高める。

方向性が固まったら、いつ・何を・どう引き継ぐかを事業承継計画に落とします。
あわせて、引き継ぐ価値を高める「磨き上げ」を並行して進めます。

計画がないと、承継は「いつかやること」のまま先送りになります。

時期と手順を紙に落とし、関係者と共有することで、はじめて動き出します。

事業承継計画書に書く項目

承継計画書は、5〜10年先までの引き継ぎスケジュール。
会社の将来像と、年ごとの引き継ぎ内容を書き込みます。

難しく考える必要はありません。中小企業庁や商工会議所が計画書のひな型を用意しています。

まずは大枠を埋め、専門家や後継者と話しながら精度を上げていきます。

事業承継計画書に含める項目
  • 会社の現状と将来像:見える化した資源・業績・課題と、目指す姿
  • 承継の時期と方法:いつ・どの型で・誰に引き継ぐか
  • 後継者の育成計画:年ごとに任せる役割・権限・研修
  • 資産・株式の移転計画:株式や資産をいつ・どう移すか(税負担の平準化)
  • 関係者への周知:家族・従業員・取引先・金融機関への説明の順番と時期

計画のひな型や進め方は中小企業庁:事業承継(事業承継ガイドライン等)が参考になります。
まず埋めてみて、専門家と磨くのが早い。

会社の価値を高める(業績・組織・財務)

磨き上げとは、引き継ぐ価値を高め、引き継ぎやすくすること。
業績・組織・財務の3方向で整えます。

後継者に「継ぎたい」と思ってもらうにも、M&Aで良い条件を得るにも、会社そのものの魅力を高めておくことが有効です。

磨き上げは、承継準備であると同時に、経営改善そのものでもあります。

→ 表は横にスクロールできます

磨き上げる領域やること承継での効果
業績・収益力不採算事業の見直し、主力事業の強化引き継ぐ価値が上がる/後継者が継ぎやすい
組織・人材属人化の解消、幹部育成、業務の標準化経営者が変わっても回る組織になる
財務・資産余分な資産の整理、借入・保証の見直し株価評価や税負担、資金面の負担を抑えられる

とくに組織の磨き上げは、日々の業務を業務標準化し、特定の人に依存しない状態をつくることが軸になります。

ここはツールの力も借りやすい領域。たとえば、社長がすべての見積もりを承認していた会社なら、承認基準を明文化して幹部に任せる。

特定のベテランしか対応できない顧客がいるなら、対応履歴と勘所を記録して複数人で回せるようにする。

こうした一つひとつの「社長・特定個人がいないと止まる箇所」をつぶしていく作業が、そのまま引き継ぎやすい会社づくりになります。

承継を関係者への周知する順番・タイミング

承継は「知らせる順番」で揉めることがあります。
家族・後継者・幹部・従業員・取引先の順に、時期を計って伝えます。

誰に・いつ伝えるかは、慎重に設計します。順番を誤ると、社内の動揺や取引先の不安を招きかねません。

まず家族と後継者で方針を固め、次に幹部、そして従業員、最後に取引先や金融機関へ——というように、影響の大きい関係者から順に、計画に沿って周知していきます。

特に従業員への周知は、早すぎても遅すぎても不安を生みます。方針がある程度固まり、後継者の顔と役割が見えてから伝えるのが基本です。

取引先や金融機関には、後継者を実際に紹介しながら「事業は問題なく続く」という安心感を伝えていくと、承継後の関係も維持しやすくなります。

ステップ4:資産の引き継ぎと税務・法務の要点|専門家と進める

自社株・資産の移転と税務・法務・経営者保証の3つの論点を整理した図
図6:実行フェーズの3論点=自社株・資産の移転、税務(事業承継税制)、経営者保証の解除。専門家と進める。

実行フェーズでは、株式や資産の移転、税務・法務の手続きが必要です。
ここは必ず専門家と進める領域で、独断は禁物です。

以下は全体像の把握を目的とした基礎知識です。実際の手続きは、税理士・弁護士・公的窓口など専門家と一緒に進めてください。

制度は改正されるため、最新情報の確認も欠かせません。

自社株・事業用資産の移転

承継の実務で中心になるのが自社株の引き継ぎ。
移す方法によって、税金や資金の負担が変わります。

後継者へ経営権を渡すには、自社株式を移す必要があります。

方法は主に「生前贈与」「相続」「売買(譲渡)」の3つで、それぞれ税金や必要資金が異なります。

とくに業績の良い会社ほど株価が高くなり、後継者側の税負担や買い取り資金が課題になりがちです。

事業用の不動産や設備をどう引き継ぐかも、あわせて整理します。

注意したいのは、業績が伸びるほど株価が上がり、後継者へ移すときの税負担も重くなるという点です。

だからこそ、株価が比較的低いうちに計画的に移転を進める、贈与の非課税枠を数年に分けて使う、事業承継税制の活用を検討する——といった手立てを、早い段階から専門家と設計しておくことが効いてきます。

株価の評価や移転方法の選択は専門的。
顧問税理士や、無料相談できる公的窓口を早めに使うのが安全。

事業承継税制・贈与/相続の基礎

一定要件を満たすと、自社株の贈与・相続にかかる税の納税が猶予・免除される事業承継税制があります。

事業承継税制は、後継者が取得した自社株式にかかる贈与税・相続税の納税を猶予・免除する制度です。

適用には要件や手続き、期限があり、内容も改正されるため、国税庁(相続税・贈与税・事業承継税制)中小企業庁で最新の情報を確認し、専門家に相談したうえで判断してください。

相続税・贈与税の基本的な仕組みは国税庁(相続税・贈与税・事業承継税制)で確認できます。

制度を使うかどうかで税負担が大きく変わるため、計画段階から税理士に入ってもらうのが安全です。

経営者保証の解除

見落としがちなのが個人保証。
経営者保証を後継者に引き継がせない・外す動きが進んでいます。

中小企業では、会社の借入に経営者個人が連帯保証(経営者保証)をしていることが多くあります。

これが後継者にとって重い負担となり、承継の障害になるケースがあります。

近年は「経営者保証に関するガイドライン」に基づき、一定の条件を満たせば保証を不要としたり、後継者に引き継がせずに済ませたりする取り組みが進んでいます(中小企業庁:経営者保証(経営者保証に関するガイドライン))。

保証の扱いは金融機関との交渉になります。日本政策金融公庫などの金融機関や公的窓口に、承継を機に保証の見直しができないか相談してみましょう。

後継者が「多額の連帯保証を負うのが不安で、継ぐのをためらう」というケースは少なくありません。保証の見直しは、後継者の心理的なハードルを下げる意味でも重要です。

財務体質を整え、法人と個人の資産・経理を明確に分けておくことが、保証を外す交渉を有利に進める前提になります。

この準備も、早く始めるほど選択肢が広がります。

ステップ5:承継を機に「回る組織」へ|見える化を定着させる

属人化した組織を、承継を機にチームで回る組織へ作り替える対比の図
図8:承継は、属人化した組織を「社長が変わっても回るチーム」へ作り替える絶好の機会になる。

事業承継は、会社を「社長がいなくても回る組織」に作り替える絶好の機会です。
見える化を一度きりで終わらせず、仕組みとして定着させることが、承継後の安定につながります。

ここまでの棚卸し・磨き上げで見えてきた「属人化」や「ブラックボックス」を、承継を機に解消しておきましょう。

ここが定着するかどうかで、後継者の船出が大きく変わります。

「まわってしまっている」組織を承継で作り直す

多くの中小企業は、意図して回しているのではなく、過去のやり方で「回ってしまっている」だけ。
承継はこれを見直す好機です。

経営者が交代しても事業が続くには、仕事の進め方が個人ではなく組織に根づいている必要があります。

ところが実際には、長年の慣習でなんとなく続いているだけ、という会社が少なくありません。

多くの日本企業は「組織がまわっている」のではなく「まわってしまっている」状態にあり、過去から続く仕事をそのまま引き継ぐだけになりがちです。

チームの生産性向上の土台には「チームのタスク管理」があり、見える化がその出発点です。

事業承継はまさに、この「まわってしまっている」状態を見直し、次の経営者が動かせる組織へ作り替える機会だといえます。

組織の整え方は組織マネジメントの基本も参考になります。

タスクの見える化をチームに定着させる

棚卸しで見える化した業務を、日々更新され続ける状態にできるかが分かれ目。
紙やファイルだけでは、更新が止まりがちです。

一度きれいに書き出しても、更新されなければ現状とずれていきます。

「誰が・どのタスクを・いつまでに」を、チーム全員がいつでも見られて、日々更新され続ける形にしておくことが、属人化を再発させないポイントです。

この「個人の頭の中→チームで共有」への移行は、承継の前後で特に効きます。

後継者や幹部が会社の動きをリアルタイムで把握でき、引き継ぎの抜け漏れを防げるからです。

新体制の「100日プラン」とタスクの見える化のように、新体制の立ち上げにタスクの見える化を使う例もあります。

承継後も「回り続けるチーム」にするなら『スーツアップ』

私たちが開発・運営するスーツアップは、表計算ソフトのような操作で、チームの「タスクの見える化」をして、タスクの抜け漏れや期限遅れを防ぐツールです。「誰が・どのようなタスクを・いつまでに」の3つに絞って、みんながいつでも見られるチームのタスク管理に絞り、専門知識がなくても表計算ソフトのような操作で使えます。

・社長の頭の中にあった仕事を「誰が・何を・いつまでに」で見える化
・自動の期限通知で抜け漏れ・期限遅れを防ぐ
・後継者・幹部が同じ最新情報を見て、引き継ぎのズレをなくす

※ 事業承継そのものの手続き(税務・法務)は専門家へご相談ください。無料トライアルあり(最新の料金・機能は公式サイトでご確認ください)

事業承継でつまずきやすいポイントと対策

承継で失敗する原因は、大半が「先送り」「独断」「属人化の放置」の3つ。先回りで対策できます。

→ 表は横にスクロールできます

つまずき何が起きるか対策
着手が遅い後継者育成や税対策の時間が足りず、廃業や急な相続に5〜10年前から着手。まず現状の見える化から始める
一人で抱える税務・法務の判断を誤る、家族や社内と揉める公的窓口・専門家に早く相談し、計画を共有する
属人化を放置後継者が業務を引き継げず、承継後に品質・顧客が離れる業務・タスクを見える化し、標準化・権限移譲を進める
意思確認の不足後継者候補に継ぐ気がなく、直前で計画が白紙に早い段階で本人の意思を確認し、対話を重ねる

どれも「早く始めて、見える化して、一人で抱えない」を徹底するだけで、大きく減らせるつまずきです。

逆に言えば、この3つを外すと、どれだけ資産や税金の準備を整えても承継はうまくいきません。

会社は人が動かすものであり、その仕事が見える化され、組織に根づいていて初めて、次の経営者に渡せるからです。

手続きの前に、まず「渡せる会社」に整えることを意識しましょう。

一人で抱えない|相談先と公的支援の使い方

事業承継の相談先(公的窓口・専門家・金融機関)と使い分けを示した図
図7:まず無料の公的窓口で全体像を相談し、必要に応じて専門家へ。一人で抱えないことが成功のコツ。

事業承継は、一人で抱えないのが成功のコツです。
無料で使える公的窓口が各地にあり、まずそこに相談するのが近道です。

承継は税務・法務・組織・家族の問題が絡む総合戦です。すべてを経営者一人で判断する必要はありません。

公的支援と専門家をうまく使い分けましょう。

事業承継・引継ぎ支援センターと身近な窓口

各都道府県に「事業承継・引継ぎ支援センター」があり、親族内承継からM&Aまで無料で相談できます。

国が全国に設置している事業承継・引継ぎ支援センターは、承継全般の公的な相談窓口です。

親族内承継の進め方から、後継者不在の場合のM&Aマッチングまで、幅広く無料で相談できます。

窓口や支援内容は事業承継・引継ぎポータルサイト(中小機構)から確認できます。

加えて、商工会議所・商工会、顧問の税理士・会計士、取引金融機関も身近な相談相手です。

中小機構(独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構))も各種のツールやセミナーを提供しています。

相談は「まだ具体的に決まっていないから」と後回しにされがちですが、方向性が固まっていない段階こそ相談する価値があります。

第三者に現状を話すだけで課題が整理され、次に何をすべきかが見えてくるからです。

無料の窓口であれば、費用を気にせず全体像の相談から始められます。

税制・補助金などの公的支援

承継を後押しする公的支援は、税制だけではありません。
設備投資や専門家費用を支える補助金もあります。

事業承継税制のほか、承継を機にした設備投資・販路開拓・専門家活用などを支援する補助金が用意されることがあります。

募集内容や時期は年度で変わるため、中小企業庁経済産業省の最新情報を確認してください。

補助金は「公募期間」が短いことが多い。
使う可能性があるなら、早めに情報を追い、計画に織り込んでおく

専門家(税理士・弁護士・仲介)の使い分け

専門家は役割が違います。
相談内容に合わせて使い分けると、費用も時間も無駄になりません。

→ 表は横にスクロールできます

相談したいこと主な相談先
株価評価・税金・事業承継税制税理士・公認会計士
株式・遺留分・契約・トラブル弁護士
登記・定款・許認可司法書士・行政書士
後継者不在・M&Aの相手探し事業承継・引継ぎ支援センター、M&A仲介・アドバイザー
借入・経営者保証・資金取引金融機関、日本政策金融公庫

まずは無料の公的窓口で全体像を相談し、必要に応じて各専門家につないでもらう——という流れなら、費用を抑えつつ抜け漏れを防げます。

専門家を選ぶときは、事業承継の支援実績があるかを確認すると安心です。

税理士でも承継や事業承継税制に詳しい人とそうでない人がいますし、M&Aの仲介は手数料体系や利益相反の有無を事前に確認しておくとトラブルを避けられます。

公的窓口は、信頼できる専門家を紹介してくれる中立的な入り口としても使えます。

よくある質問(FAQ)

事業承継を「何から始めるか」で寄せられることの多い疑問を、要点だけまとめました。

個別の税務・法務は必ず専門家に確認してください。

事業承継は、まず何から始めればいいですか?

最初の一歩は、自社の現状を棚卸しして見える化することです。人・資産・負債・取引先・業務の流れ・自社の強みを洗い出すと、後継者選びや税金の検討など次の判断がすべてしやすくなります。後継者探しや税金の話は、その後で問題ありません。

事業承継の準備には、どのくらいの期間がかかりますか?

後継者の育成や会社の磨き上げを含めると、一般に5〜10年が目安です。手続き自体は数か月でも可能ですが、引き継げる状態に会社を整えるには時間がかかります。着手は早いほど選択肢が増えるため、経営者が60代に入ったら準備を始めるのが安心です。

後継者がいない場合はどうすればいいですか?

廃業を決める前に、M&Aによる第三者への承継を検討しましょう。従業員の雇用や取引先との関係を守ったまま、会社を残せる可能性があります。各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターで、無料でマッチングや相談ができます。

事業承継にはどんな費用や税金がかかりますか?

自社株や資産の移転にともなう贈与税・相続税、専門家への報酬、M&Aの場合は仲介手数料などがかかります。一定要件を満たせば納税が猶予・免除される事業承継税制もあります。負担は会社の状況で大きく変わるため、税理士や公的窓口に早めに相談してください。

誰に相談すればいいですか?

まずは無料で使える公的窓口である事業承継・引継ぎ支援センターや、商工会議所、顧問税理士が入り口として適しています。そこで全体像を整理し、必要に応じて弁護士やM&Aアドバイザーなどの専門家につないでもらうと、費用を抑えつつ抜け漏れを防げます。

後継者への引き継ぎで、最も大切なことは何ですか?

経営者個人に集中している業務や情報(属人化)を見える化し、後継者が動かせる形にしておくことです。株式や資産は手続きで移せますが、日々の仕事の進め方や判断基準は、時間をかけて見える化・共有しないと引き継げません。

経営者個人の借入の保証(経営者保証)は、後継者に引き継がれますか?

自動的に引き継がれるわけではありません。「経営者保証に関するガイドライン」に基づき、一定の条件を満たせば保証を不要としたり、後継者に引き継がせずに済ませたりできる場合があります。承継を機に、取引金融機関へ見直しを相談してみましょう。

プロジェクト管理にAIタスク管理ツールを活用するならスーツアップ

スーツアップは、チームの業務を可視化できる優れたAIタスク管理ツールの1つ。

期限通知や定型タスクの自動生成などの機能をエクセル感覚で使うことができます。

加えて、専門家とAIが作ったタスクひな型が充実しているので、プロジェクト管理にも活用できます。

また、定型タスクの設定期限の通知外部ツールとの連携など、便利な機能も備えています。

スーツアップの特徴
  • エクセル感覚で操作!

スーツアップは、エクセルのような感覚で操作できますが、期限通知や定型タスクの自動生成など、エクセルにはない便利な機能が充実。日々のタスク更新もストレスがありません。

  • 業務の「見える化」でミスゼロへ

チームのタスクや担当、期限などを表で一元管理。全員が進捗を把握できるから、抜け漏れや期限遅れがなくなり、オペレーションの質もアップします。

  • テンプレートでプロジェクト管理が楽

よくある業務はタスクひな型として自動生成できるので、毎回ゼロから作る手間なし。誰でもすぐに運用を始められるのがスーツアップの強みです。

「かんたん、毎日続けられる」をコンセプトに、やさしいテクノロジーでチームをサポートする「スーツアップ」。

導入を検討してみませんか?

まとめ:迷ったら「現状の見える化」から始める

事業承継は「何から始めるか」で立ち止まりがちですが、答えはシンプルです。

まず自社の現状を棚卸しして見える化し、そこから後継者・計画・資産へと順に進めます。

最後にチェックリストで振り返りましょう。

事業承継スタートのチェックリスト
  • 会社の経営資源(人・モノ・カネ・取引)を棚卸しした
  • 業務・タスクを見える化し、属人化している仕事を洗い出した
  • 自社の強み(知的資産)を言葉にした
  • 後継者候補と、本人の意思を確認した(いなければM&Aも検討)
  • 5〜10年を見据えた事業承継計画の大枠を書き始めた
  • 事業承継・引継ぎ支援センターなど公的窓口に一度相談した
  • 税務・法務・保証は専門家と進める前提にした

覚えておきたいのは、事業承継の準備は「会社を強くする経営改善」とほぼ同じだということです。

早く始めて、見える化して、一人で抱えない——この3つを軸に、次の世代へ無理なくバトンをつなぎましょう。

承継を機に、社長が変わっても回り続ける組織づくりにも取り組んでみてください。

参考文献・出典

チームのタスク管理 / プロジェクト管理でこのようなお悩みはありませんか?

そうなりますよね。私も以前はそうでした。タスク管理ツールを導入しても面倒で使ってくれないし、結局意味なくなる。

じゃあどうしたらいいのか?そこで生まれたのがスーツアップです。

これ、エクセル管理みたいでしょ?そうなんです。手慣れた操作でチームのタスク管理ができるんです!

見た目がエクセルだからといって侮るなかれ。エクセルみたいに入力するだけで、こんなことも

こんなことも

こんなことまでできちゃうんです。

エクセル感覚でみんなでタスク管理。
まずは以下よりお試しいただき、どれだけ簡単か体験してみてください。

 

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この記事を書いた人

小松裕介のアバター 小松裕介 代表取締役社長CEO

株式会社スーツ 代表取締役社長CEO 小松 裕介

2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、東証スタンダード上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に当社の前身となる株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より、総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師登録。2019年6月より、国土交通省PPPサポーター。
2020年10月に大手YouTuberプロダクションの株式会社VAZの代表取締役社長に就任。月次黒字化を実現し、2022年1月に上場会社の子会社化を実現。
2022年12月に、株式会社スーツを新設分割し、当社設立と同時に代表取締役社長CEOに就任。

2025年5月に、『1+1が10になる組織のつくりかた チームのタスク管理による生産性向上』を出版。

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